switch101-71 誘蛾灯
透耶を一人にしておくと。
「彼女、あれ男の子か。でもいいや。俺等と遊ばない?」
「へえ~、美人さんだねえ。今暇?」
「いいじゃん、お茶でもしようよ」
「写真撮ろうぜ」
とまあ、声をかけてナンパしてくる男が多い。
透耶は確かに可愛いけど、男でもいいやと思って声をかける虫が多すぎる。
俺が少し側を離れただけで、透耶はもうナンパされまくり。
そこまでモテなくてもと思ってしまう。
だから透耶の側を離れられない。
ただでさえオヤジキラーな透耶。近所のオバさん達にも人気あるしな。
俺は心配で仕方ない訳なんだが。
「そういう恭だって、女子高生に声かけられてるじゃん」
と透耶につっこまれた。
確かに声はかけられるが、有無を言わさずにしてるんだが。
ん? これって嫉妬かな?
「俺が女子高生に声かけられたから嫉妬してる?」
俺がそう聞くと透耶はさっと顔色を変えた。
自分で嫉妬してた事に気が付いたらしい。
「ち、違うよ!」
透耶は慌ててそういうけど、顔は真っ赤。
一生懸命説明してるけど、やっぱり耳まで真っ赤だ。
「透耶だって、男にナンパされてるじゃん。俺、嫉妬してるんだけどな」
俺が透耶を見下ろしてそう言うと、透耶はまたオロオロしだしてしまう。
「あ、あれは、何だか訳解らないよ」
ナンパされてるとは思ってないらしくて、透耶は迷惑しているみたいだったけど。しっかり対応してる分、ちょっと気になる所だ。
「なんて断わってるんだ?」
「ごめんなさい、連れがいるって」
透耶はそう言って俺を指差した。
そう俺がずっと睨みを利かせてたので、透耶がそう説明すると大体の男は逃げ出してしまうんだよな。
睨みは効果あり。
「恋人って言わないんだ。なんだ」
俺はちょっと拗ねてみる。
俺はそうやって断わってたのにな。
「そんなの言わなくても、恭の姿見たら逃げちゃうもん」
透耶はさらっとそう言った。
「あれだけ睨んでたら恐いよ」
そう言われて俺はそういうつもりでやってるんだと言った。
透耶は笑うけどさ。
そうでもしないと、誘蛾灯の透耶から虫を遠ざける事は出来ないんだよ。これでも苦労してるんだぜ。
俺が側にいるだけで、透耶の事を見ている奴は近付いて来ない。それだけで安心だ。
ちなみに俺に声かける奴もいなくなる。
ただ見てるだけの人間が増えるんだけど。これ不思議だ。
何が楽しいんだか。