switch101-24 ガムテープ
「あ、あのね、鬼柳さん」
俺は言いながら、どんどん下がっていく。
「何だ?」
鬼柳は言いながら近付いてくる。
「それはちょっと」
さすがにそれはどうだろう?
「ちょっと?」
いかん、全然聞いてない…。
「何で、そんな物持ってるわけ?」
俺は鬼柳の手にある物を指差して言った。
鬼柳の手にあるのは、荷物用のガムテープ。
何処から持ってきたのか知らないが、それを持って部屋へ入ってきたとたん、妙に上機嫌でニッコリ笑って近付いてくるから、俺は瞬時に危険を察して逃げてたのだけど。
とうとう、部屋の隅まで追い詰められている訳だ。
「あったから」
当然だ、とでも言い出しそうな口ぶりだ。
「あったら何でも使うのかよ!」
俺が怒って、立ち上がると、鬼柳も素早く立ち上がった。
「うん」
鬼柳は言って、身体の大きさからは想像出来ない程の素早い動きで、逃げる俺を捕獲。
冗談じゃない!!
「嫌だってっば!」
床に押さえ付けられて、俺は力一杯暴れる。
「大丈夫って」
鬼柳は、俺の背中にのしかかって、俺の両腕を背中で纏めて押さえつけている。
右手が使えないから、左手と口で器用にガムテープを切っている。
何でそんなに器用なんだ!!!
ってここ、そんな事で驚く所じゃないし…。
「大丈夫じゃない!」
「痛くしないから」
鬼柳は言って、ガムテープで俺の腕を縛る。
妙に手慣れている手付きで、とうとう俺は一丁あがりーな感じだ。
「十分してるってばー!」
こいつ鬼畜だ!
絶対変態!!
頭、おかしいってば!!
ぎゃあああ!!
誰かこいつを止めろ!!
で、俺がどうなったっかって…。
言えないよ…情けなくて。