switch101-10 トランキライザー

 精神安定剤。

 鬼柳にとって、俺はそういう存在らしい。
 よく解らないのだが、可愛いとか色っぽいとか、訳解らない事を言って俺を抱き締めるのは、そういう事らしい。
 
 眠る時。鬼柳は絶対俺を離さない。
 居ないと眠れないという。

「ああ、それって、安定剤みたいなものじゃない?」
 看護婦さんがそう言った。

 は?って所である。

「例えば、クマのぬいぐるみ抱いてないと眠れないとか、小さい頃に使ってた毛布を持ってないと不安になるとか。人間だったら鼓動を聴いてると安心するというのもあるわよ」

 解るけど。
 俺は安定剤なのか…。

 まあ、確かに鬼柳と一緒に寝るのは、嫌ではない。
 寧ろ、安心するし、心地いい。

 ん? 俺にとっても鬼柳は安定剤なのか?


 でもね…この狭い病院ベッド…まあ、普通よりは大きいらしいが…そこで一緒に寝るのはどうだろう?
 俺も甘いんだろうか?

 てか、今、隣にいるんだけど…馬鹿が寝てる。


「本当にラブラブなのねえ。フフフ」
 あああ、看護婦さーん!

 というか、俺…。
 この状況じゃ言い訳は苦しいぞ。