switch101-11 柔らかい殻
よく、殻に閉じこもっている、そう言われる。
別にそんなつもりはないのだけど、俺が俺らしくいる事が、どうも人に与える印象がそういうモノらしいんだ。
もっと人と付き合って、自分を見せろと言う。
何故、そこまでして人と付き合わなければならないのか。
俺はそれが不思議でならなかった。
「透耶のは、柔らかいんだ」
訳の解らない事を突然言う鬼柳。
「は?」
何だそれ?
「固いとさ、触ろうとも思わないんだけど。見るからに柔らかそうって解る。触りたいって欲が出る。触ると実際に柔らかいんだ。でも、中が見えない。見えないから皆怖いんだ」
全然意味が解らなねえ…。
「まあ、俺は見えるけどね」
得意そうに言われても話が見えない俺。
「何の話だよ…」
そういうと、胸をトンと叩かれた。
「心」
「…?」
「透耶の心。皆、殻がある。透耶のは柔らかい殻」
何だそういう話だったのか。
しかし鬼柳がそういう話をするのは珍しい。
「…鬼柳さんは?」
「さあ? どうだろう? 自分のは解らない。透耶にはどう見える?」
言われて俺はじっと鬼柳を見つめた。
心に殻があるなんて、そんなの聞いた事ない。
アメリカ人的な考え方なのか、鬼柳的考え方なのかは不明。
んー。斗織は壁って言ってなかったっけ?
心の中に幾つも壁がある。誰にも見せないように、自分を取り囲んでいるとか。
難しくて、よく解らなかったけど、そういう事らしい。
だけど、鬼柳の殻は見えない。
俺が真剣に考えていると、鬼柳の悪戯をする手が服の下に…。
「…ちょっと、何やってんだよ」
俺は我に返って、慌てて鬼柳の手を止めた。
でも、まだ動いている。
「ふざけんな! 人が真剣に!」
「…だって、そんな目で見つめられたら」
「や! 動かすな!」
「透耶…」
駄目だ、目がイッてる。
もう!何でこうなる訳!?
殻の話はどうなったんだ!