switch外伝9 play havoc17
着替えをしろと言われた透耶がベッドサイドで着替え始めると、急にフライドチキンを頬張って食べていた島田が近付いてきた。
身の危険を感じた透耶が急いで服を着ると、島田は透耶の腕を掴んでベッドに押しつけた。
「やっ!」
俯(うつぶ)せに押さえつけられ透耶は逃げようと暴れるも、柾梓(まさし)よりも力がある島田から逃げられない。その島田を手伝うように柾梓が透耶の肩を押さえつけた。それで島田の腕は外れたが、その後ろに立っている島田がズボンを下ろした。そして透耶のズボンにも手をかけて下着も一緒に剥がしてしまった。
「やだ!」
下半身を裸にされ透耶は暴れるもその腰を島田が力強く掴んだ。
ベッドに上半身を押しつけられ、下半身はベッドから落ちた状態で固定され透耶は身動きできなくなる。
「いいケツしてんなぁ」
島田がそう言って透耶のお尻を掴んでなで回す。
そしてそのお尻を掴み、割れ目に島田自身を挟み込んだ。
「洋司くん、入れるのは駄目だよ」
「分かってるって入れやしねえよ、挟んでるんだ。これならセーフだろ?」
割れ目に島田自身を挟みそのまま島田が腰を振り始めた。
最初は肌がすれている感覚だったが、次第にねちゃねちゃという不快な音が聞こえだし、その感覚がお尻の割れ目を伝って太ももにまで落ちてくる。
「やだ……やだ……」
入れないと言ったとしてもそれ以上に不快だった。こんな行為は鬼柳以外は認めない。認めないと思いながら怖くて動くことすらできない自分に吐き気がした。
「これも案外悪くないな」
島田はそういいながらうめき声を上げて早々に達した。さっきもしたばかりだというのに、性欲は旺盛のようだった。
べたりとした物が尻や背中にかかり、透耶は不快感で吐きそうになる。
「洋司くん、せっかく着替えたのに」
「いいじゃねーか、お前、腐るほどそいつの服貯めてるだろ」
満足した島田だったが、自分が吐き出したものを透耶の穴に指で急に押し込み始めた。
「や!」
ビクリとして透耶が顔を向けると、島田が何かを透耶の穴に塗り込み始めた。
「あっ! うっ」
その次に容器を取り出してそれを穴の中にすべて注(そそ)ぎ込んできた。
この感覚にはさすがに透耶も覚えがあった。ジェルだ。
プチプチと音を立てるそれが今日は気持ち悪いものでしかない。いつもなら鬼柳がしてくれることで、気持ちがいいことをするための準備だ。それがこんな不快になるとは本当に心が伴っていないということは、これほどの違いがあるのだと透耶はこんな時からこそ思えた。
だが島田はそれを入れてしまうと、すっと透耶から遠ざかっていった。
困惑するのは透耶であるが、それが何のために行われたのかすぐに察した。
「透耶、着替えだけじゃすまなくなったね。お風呂入ろうか?」
助けるような素振りで、実のところ欲望だけは満たしているのが柾梓だ。
スタンガンを見せつけるように島田がそれを振っている。柾梓の言葉に従わなかったら、スタンガンをやられた上の強姦が始まる。
大人しく柾梓の言う通りにすれば、強姦は強姦でもそこまで酷くならないということなのだろう。
透耶は考える。逃げるチャンスはないだろうが、風呂にいけば何か時間稼ぎができるかもしれない。
だが立ち上がろうとすると穴からジェルがあふれてくる。
「ふ……う」
眉を顰(しか)めてあふれないように力を込める。それを眺めていた柾梓が透耶を抱き上げる。
「歩けないでしょ?」
透耶が何かを言う前に柾梓が先にそう言う。それは事実なので透耶は視線をそらせた。
柾梓はそのまま透耶を風呂まで運び、シャワーの前に立たせた。着ていた服の上からお湯がかかり、ズシリと服が重くなる。それと同時に背中にかかっていた不快な物が流れていくのを感じる。
すると急にお尻の割れ目に指を滑らせた柾梓の手が透耶の中に入ってきた。
「あ!」
突き上げるように指を入れられ透耶は抵抗する術を一瞬奪われる。
「やめろ! あっ!」
「見つけた、ここだね」
透耶がびくりと体を震わせると、柾梓は見つけた透耶の気持ちがいい場所を何度もこすりつける。さっき島田が入れたジェルのせいで、出し入れはスムーズになり、鬼柳ので慣れていた穴は簡単に受け入れることができる体になってしまう。
「あっ! うぁ! あっあ!」
「さあ、いくんだ」
深く指を突き入れられ、透耶は柾梓の指で達した。
屈辱とでもいえる射精に透耶は同時に涙を流した。崩れ落ちそうな透耶の体を抱えて柾梓は透耶の穴に己自身を突き刺した。
「……い、いやぁあああ!」
倒れそうになりながらもそのまま抵抗したが、壁に押しつけられて動きを封じられる。柾梓は入れたと同時に何度も突き上げて透耶の動きを封じる。さっき達したばかりでも、こすられればいやでも勃起をしてしまう場所をこすられ、透耶は無理矢理犯された。
「あっあっあ」
「慣れている体はよくないと思っていたけど、慣れているお陰で苦労しないで済んだことを考えれば、まあ、ありかな?」
透耶を突きながら柾梓が荒い息を吐きながら言う。
たまらないとばかりにぶるっと体を震わせて一回目達した。しかし入ったものは萎えることなく二回目への動作を繰り返し行ってきた。
そこからはなし崩しだった。
透耶は抵抗する気力を快楽に変えられ、三回目まで許した。
「助けて……」
四回目を始めようとする柾梓に透耶が力をなくした声で懇願した。
「仕方ないか……」
透耶の懇願を柾梓はあっさりと受け入れた。
その顔は暴走した自分を制御できなかったことに納得できない顔をしていた。
「あとは洗うだけだから大人しくして」
「自分でできるから、出て行って!」
手を出しだしてきた柾梓を透耶は完全に拒絶した。
こんなことをしたやつは絶対に許さない。絶対にと強い意志が目に宿った。
さすがに様子がおかしい透耶の強気な態度に、スタンガンを持ち出そうとするも透耶はそれに叫ぶ。
「思い通りにしたかったら使えばいい。それでも俺は従わない」
透耶がそう言い切ると、柾梓は初めて動揺した。
まるで透耶がそうした強気な態度に出るとは、想像すらしてなかったような顔をしていた。
透耶は柾梓をしっかりとにらみつけて言った。
「出て行け」
透耶がもう一度そういうと、柾梓は溜め息を吐いて言った。
「十分だけだ」
そう言って脱衣所へ向かった。
もちろんドアを閉めても磨(す)りガラスで様子は見えるので、透耶も無茶はできない。それに透耶は死ぬわけにはいかないから、死ぬ気がないのは柾梓にも伝わっているだろう。
そうして透耶が一人になり、柾梓が出したものをすべて掻(か)き出すまで一人で処理した。柾梓や島田が触ったところは隅々まで洗い、体が赤くなるまで続けて洗った。
風呂から出ると脱衣所には柾梓が立っていた。
透耶が出てくると少しだけ驚いた顔をしていたが、着替えなどを透耶に手渡してくる。
二人は黙ったままで着替え、そのまま部屋まで戻った。
部屋に戻ると島田がいなかった。食べ物を食べ終わったのか、別の部屋で寝ているのか知らないが、とにかく同じ部屋にいる気がないらしい。
それにホッとした透耶だが、柾梓は透耶を連れてやはりベッドに座らせた。
今度は拘束する気がないのか、そのままの状態で待てとされ、島田が食いつぶしたものの中から何かを取りだし、透耶のところに持ってきた。
それはファーストフードであったが。
「ここのハンバーガー好きだったよね」
と柾梓が言った。
その言葉に透耶は更に心臓が凍りそうになった。
このファーストフード店のハンバーガーが好きなのは間違っていない。ただ問題なのは、これをこの三年ほど食べてなかったことだ。鬼柳が研究を続け、同じような味になるお手製のハンバーガーを作れるようになってから、この店のものを食べたことはないのだ。
三年以上前から、親しい人しか知らない好物を持ってきたことが怖い。
柾梓はやはり透耶のことなら何でも知っていることになる。
受け取って食べる。死ぬわけにはいかないし、この食べ物に薬を仕込まれたら元も子もないが、風呂場で散々した後に何かあるとは思えなかった。
精々島田が何かをするのに仕込むくらいはしそうだが、ここでの主導権は柾梓の方にあるようだった。島田もある程度柾梓が寛容にしてくれているから好きにしているようだが、それでも超えたらマズイラインがあるらしい。
それが読み取れたので、透耶は大人しく食べた。
「透耶は、兄貴のことは好きじゃなかった?」
柾梓が隣に座ってそう尋ねてきた。
食べ終わった後に残る紙を渡すと、お手ふきなどを渡される。それで手を拭きながら透耶は言った。
「元々友人という枠組みから外れたことはない」
透耶がそう言うと、柾梓はだよねというふうに頷く。
「俺も友達に急に告白されて好きだって言われて襲われて、挙げ句目の前で死なれたら、トラウマになるよ」
わざと傷をえぐるように言う柾梓であるが、透耶は動揺はしなかった。
「確かに俺はトラウマになっていた。けど、今回のことである程度は克服できてると思っている。おまえたちが無理矢理考えることを要求した。俺はこれを他人に話すことで心の傷をいやしていく感じだ」
「強いな透耶、思ってたより」
急に怯えることを見せなくなった透耶だが、内心は怖い。けれど、怯えた姿を見せることが柾梓の征服欲をかき立てていることが分かった以上、それを見せるわけにはいかなかった。
そうした姿をみせているうちに、柾梓の態度が変わった。
強い透耶というのが想像できてなかったということがだ。
そして、透耶は手をついた時に手に当たるものを掴んだ。それがさっき柾梓が置いたスタンガンであることを確認した上でだ。
柾梓は兄の柾登のことを聞きたがっていて必死だった。
「兄貴は……傲慢だった?」
真下柾登(ました まさと)のことを知りたいのか。それとも透耶がどう感じていたのかが問題なのか。柾梓は兄の感想を聞きたがった。
「とても傲慢だったと今なら思うよ」
透耶はそう答えた。
何でも透耶を思い通りにできると思っていたところだが、柾登と柾梓はそっくり同じだ。
「兄貴は必要なかった?」
「俺の人生に必要か必要じゃないかなんて、時が経っても分からない」
もし柾登のことが何もないまま終わっていても、透耶はその先は歪(ゆが)んでいただろうし、結局はピアノを辞めていただろう。それとも生きていくことに疲れて一人で死んでいたかもしれない。
だから柾登がどうこうというのは関係なく透耶は歪(ゆが)んでいて、将来を期待すらしてなかった。必要か必要じゃないか、そういう立ち位置に彼は立ってすらいなかった。
「ただ許さないだけ」
透耶はそう言って握ったスタンガンを柾梓の脇腹に当てた。
バチンと大きな音が鳴ったと同時に、柾梓が体を震わせながらベッドから転がり落ちた。
透耶は持っていたスタンガンを投げ捨て、ドアに向かって走った。何処が何処に繋がっているのか分からないが、自分が使っていたトイレや風呂の場所からは出られないことは分かっていたので、もう一つの部屋のドアだけだった。
ドアを引いて開けると、真っ正面に鉄のドアがあった。明らかに玄関と思われるドアだった。
急いで駆け寄って内鍵を開けた。チェーンを外してドアを思いっきり開けると目の前に島田が立っていた。
「お前……」
驚いている島田の横をぎりぎりですり抜け、透耶は廊下を走って階段を目指した。すぐ後ろを島田が追ってくる。
「助けて!」
透耶はそう叫びながら走った。とにかく自分が怪しく、警察に通報されるだけでもいいと思ったのだ。階段に差し掛かった時、下から何人も人が駆け上がってくる音がした。
「助けて!」
透耶がそう叫んで階段を一気に飛ばして踊り場へ出た。
「くそ!」
島田がそう後ろで叫んでいるのが聞こえたが、透耶は急いで下の階を目指した。
叫び声を聞きつけた人たちが「上から悲鳴が聞こえた」と騒ぎだして、その騒ぎが耳に入る。明らかに誰かがいると透耶がハッとして横を見ると、警察官たちが奥のドアから走ってきていた。
「……警察?」
どうして警官がこんな階にいるんだ?と透耶が不思議がっていると島田に追いつかれた。
「捕まえた」
肩を掴まれて、髪の毛も捕まれた。
「何をやっている! そこの男、その子を放しなさい!」
警察官が一斉に走ってくる。
「黙れ!このままこいつの腕折るぞ!」
島田が興奮したように透耶の腕を後ろに引っ張る。座った状態で髪の毛をつかまれ、更に腕を捻(ひね)りあげられて動けなくされると、近づいていた警察官たちも歩みを止めた。
「やめるんだ!」
「うるせぇ!」
島田がそう叫んでいると、表通りから人の叫び声が聞こえてきた。
「きゃー!」
「人が落ちてきたぞ!」
明らかにこのマンションからの騒ぎで、透耶は意味が分かってぞっとした。
「あの馬鹿……」
島田がそう言った。だから透耶が感じた感覚は間違いじゃない。
落ちた人は、真下柾梓(ました まさし)だ。透耶に逃げられた後、この騒ぎを聞きつけて逃げられないと悟ったのか。それとも……。
「……!」
髪の毛を掴んでいた手が肩に当てられて腕を引っ張られる。
腕を折られると思った瞬間だった。
ふっと腕にかかっていた重圧が消え、ドサリと島田が透耶の目の前に飛んできた。後ろにいたはずの島田が前に倒れるという不思議なことが起こって透耶が混乱していると、後ろからすっと優しく抱きしめられた。
「大丈夫か、透耶」
聞き覚えのある声がしたと同時に、覚えのある匂いが匂ってきた。鬼柳が付けている、甘いバニラの香りがする香水の匂いだ。
透耶は自分の体を大事そうに抱えるようにした鬼柳の手を撫でて頷いた。
「うん、大丈夫、ありがとう」
透耶がそうホッとした時には、警察官たちによって島田が確保されたところだった。
鬼柳は透耶をすっと抱き起こすと島田が来る前に先に階段から透耶を誘導して一階まで下ろした。そして待っていた警察の車に乗り込んだ。安全を確保した後、鬼柳がSPたちに周りを警戒させる。
「本当に怪我はしてないか?」
鬼柳がそう尋ね、透耶はうんと頷く。もう少しで腕を折られるところだったが、その腕は少しだけ痛いだけで折れているわけではないだろう。
大丈夫だという証拠に、透耶は鬼柳に抱きついた。
怖かったりした思いが、ふっと消えて透耶は、監禁されていたことが夢だったのではないかと思いだしていた。