switch101-73 煙
今日こそは!
俺は恭より早起きして、ベッドから抜け出す事にした。
起きる時、中々恭が離してくれなくて大変だったんだけど、やっと抜け出せた。
「さてと着替えて」
クローゼットに入って、恭が既に用意してある俺の私服に着替えて下へと降りて行った。
まだ宝田さんも寝ている時間で、俺はそろりとキッチンへ向かった。
今日こそはやりたいことがある!
いつも恭ばかりに頼っているから、それじゃダメだからさ!
目標! 簡単でも朝食!
いつもいつも早起きして、一回くらい恭に手料理をとは思っていても、恭の方が早起きだから無理だったんだよね。
だから今日はチャンスなわけだけど。
作るのは目玉焼きくらいしか出来ないんだよね。
それくらいでもやるべきだよねと思ったわけ。
さっそくキッチンに立って、まず冷蔵庫から玉子とベーコンを取り出した。
それからフライパンを取ってと。
あれ、何処だ?
きっちり片付いたキッチンからフライパンすら発見するのに時間がかかってしまった。
さてと、フライパンを暖めてと、それからベーコンを焼いてと…。
もたもたしてるー!
やっぱ才能ないのかなあと思ってたら。
「透耶様?」
どきーん!
「うわ!はいっ!」
と、大きな声で返事しちゃった。
振り返ると、宝田さんが立っていた。
ちょうど起きてくる時間だったんだ。
もたもたしてて気が付かなかったよー。
宝田さんは、少しキョロキョロしてから俺に聞いてきた。
「恭一様は?」
ああ、恭も一緒に起きてると思ったんだ。
「まだ、寝てますけど…」
「ああそうでしたか。お腹空きましたか?」
「いえ、そうではなくて、えっと…」
俺はしどろもどろで、恭の為に朝食を作ってますと、小声になって説明した。
すると宝田さんはニコリと笑って。
「そうですか。それはそれは」
と納得してくれたみたい。
そうやって宝田さんに説明し終わった所に、恭が起きてきちゃったんだよね…。
「透耶、腹減ったのか?」
もう朝食作ってるのばれてるのね。
どうしてこの家の人は皆早起きなの?
そう俺が頭を抱えていると。
「透耶、フライパン煙り出てるぞ」
と恭が言った。
「え?」
振り返ってみると、フライパンから煙りがモクモクと!
ぎゃー!!
慌てて止めようとする俺の前に、恭が素早く動いて火を止めた。
あうあう…。
恭はフライパンを覗き込んでる。
「ベーコンか」
「う、うん」
「腹減ったなら起こしてくれればいいのに」
恭は何ごともなかったかのように言っている。
うう、そうじゃなくて…。
俺が小さくなっていると、宝田さんが恭に説明していた。
うあ…もうダメ。
「俺の為?」
恭は説明を聞いて、凄く嬉しそうな顔をしている。
で、でも最初から失敗しちゃったし…。
俺が顔を上げないでいたら、恭がしゃがみ込んで俺の顔を覗き込んでくる。
は、恥ずかしいよぉ…。
もう何も言えなくなった俺に恭はニコリと微笑んだ。
「じゃ、一緒に作ろうか?」
そう言われて俺はキョトンとしてしまう。
一緒って?
「作り方、教えてやるよ」
恭はそう言って、何故か二人羽織りみたいになって、一緒に朝食を作る事になっちゃった。
それで朝食は出来たんだけど。
その後片付けの時、俺がボケっとしてるからなのか、お皿割っちゃったんだよね。
それで指を少し切っちゃったら。
結局、俺がキッチンにて食事作るのは禁止になっちゃった…。
とほほ。
何でこんな簡単な事も出来ないんだろう。