恋愛感染エゴイスト-10幸せな日常

「弥斗(やと)……キスしていいか?」
 ベッドに横たえられて顔を覗き込まれた状態でそう言われたら弥斗でなくても拍子抜けするだろう。

「なんだよ、改まって。好きなだけすればいい。なんなら俺もする」
 弥斗はそういうと手を伸ばして三沢の唇に自分の唇を押し当てた。
 こうやって三沢にキスをするのは初めてだったから、どうやっていいのか分からないが、三沢が教えてくれたキスがあったので自然と舌を三沢の口の中に入れていた。

「んん……」
 三沢がそれに答えるようにキスを返してくれて、深いキスになる。

「ふ……あ……」
 キスだけでも頭が真っ白になりそうだった。久しぶりにキスをして嬉しかったのもあるし、緊張しているのもある。興奮もしているし、この先に何があるのかもよく知っている。
 遠慮がちだった三沢に火がついたのか、いきなり弥斗の服をはぎ取っていく。

「お前、がっつきすぎ……」
「仕方ないだろ、もう我慢しなくていいなんて……そんな興奮することを言われたらおかしくなる」
 三沢は真剣にそう言って弥斗のズボンも下着ごとはぎ取った。
 その間に弥斗も三沢の背広を脱がせて、ネクタイも外し、ワイシャツをはだけさせた。
 ゆっくりと触れると三沢の心臓がドキドキと早く脈打っている。

 もう一度キスされているうちに、弥斗の体中を三沢がなで回してくる。しっかりと確かめるように、そして大事に優しく。それが太ももの外側を撫でた。
 弥斗の身体がビクンと揺れる。まるで痙攣するような動きだったが、三沢の手は止まることなく腰を撫でていく。

「う……ふ……」
 撫でられているだけなのに身体が妙にゾクゾクするのはその先にある快感を知っているからだろう。

「み……さわ……はやく……」
 唇が離れた瞬間に弥斗がそう呟くと、三沢は首筋にキスをしてキスマークを残していく。
 そのザラザラ舌が耳なども舐めて下に降りていく。三沢の手が乳首に触れるとそれはもう立っていて、少し固くなっている。待ちわびていたようなそんな感じで、こね回すと弥斗の身体が跳ね上がる。

「あ……あっ……気持ちいい……ん」
 三沢は夢中になって乳首を攻める。片方を舐めて転がし、片方を指でいじる。摘んだり引っ張ったりをすると弥斗の甘い声が上がる。

「は……あん……」
 そのうち舌はどんどん下に下がっていき、腹を舐めた後に太ももにキスをする。
 思わず腰が突きあがってしまうが、それを三沢が押さえつけて、弥斗自身を舐め始める。腔内に含まれ、音を出しながら舐められ吸い上げられると、すぐに達してしまう弥斗。

「あああ……っ!!」
「なかなか濃いな……してなかったのか?」

「ん……だって……できない……んん」
 弥斗は一人では出来ないようになっていた。三沢がしてくれないと感じなくなってしまったようにこういう達し方が出来ないのだ。

「下の方も舐めてやろう……」
 そう言われて腰をぐっと持ち上げられて、穴に三沢の舌が入り込む。

「あっ……あっん……あああ……だめえ……っ」
「気持ちいいだろう……」

「だめ……ああっ」
 そうして舐めたところに指が入ってくる。どんどん穴を解してぐしゅぐしゅと音がするほどにされてしまう。
 指は二本三本を増えて完全にそこを解すと待ちきれないとばかりに三沢が入ってくる。

「ああ……んんんんっ」
「弥斗、息を吐いて……そう、そのまま」

「は……はぁ……ああ……んん」
 全て入ってしまうと弥斗の中で三沢がグンと大きくなる。

「や……おおきい……よ」
「ああ、すまない……動くよ弥斗」
「うん……きて……」
 弥斗は手を伸ばして三沢に抱きつく。そして三沢は動き出す。腰を強く振って今まで出来なかったことを取り返すように強く振り回した。

「そ……あ……だめっ……そんな……ああああ」
「ほらまだだ」
 三沢がぐっと腰を突き入れると弥斗の身体が反り返る。

「んふ……ぁ……ああ……ふかいよ……あ」
「もっとだろう?」
 三沢はそう言いながら深いところで腰を揺さぶる。それが快感でたまらない弥斗。

「あ……もっと……もっとちょうだい……あああっ」
 もはや何を口走っているのか分からない状況だったが、それは素直な言葉でもあった。

「弥斗の中は気持ちがいい……」
 中から締め付けられて三沢が甘い息を吐きながらそう言う。

「う……ん、きもちいい?」
 うっとりとした顔をした弥斗が三沢を見上げると聞いてくる。本当にそうなのだろうかと不安なのだ。

「ああ、とても気持ちがいい……」
「ん……あ……う……あぁ……いい……いい……」
 急に動きが速くなって、さらに弥斗は振り回される。しっかりと三沢にしがみついてないとどこかに言ってしまいそうで怖かった。

「もっと……ああああ……あっいちゃ……だめっ……いっちゃう……」
 とうとう弥斗は限界だった。
 三沢は弥斗をもっと抱きしめると、最後の力を込めて腰を突き入れた。

「も……だめ……ああぁぁぁ――――――!!」
「……っ」
 弥斗がびくびくと身体を震わせて達すると、三沢も弥斗の中で達した。温かいものが中に溢れて弥斗はさらに身体を震わす。これが気持ちいいのだ。ほっとするし、安心もする。

「はぁ……はぁ……あん」
 休憩するまもなく、三沢が早々に復活してきて弥斗はぎょっとした。

「や……まって……ああ……だめえ……」
 達したばかりで敏感な身体はそれに対応出来なくて、さらにびくびくと震える。

「もっとだろう?」
「ん……もっと……ちょうだい……みさわ……もっと……は……ん……あああぁぁ……もっと……あぁ変になる……」

「もっと変になって……私を求めろ」
「ああ……あぁ……ん……う……あん……っ……また……いっちゃう……ああ……」

「いけ」
 そう言われて突き入れられ掻き回されると、弥斗は二度目の射精をした。精根尽き果てたように横たわっていると三沢が優しく抱きしめてくれる。

「みさわ……」
「ん? なんだ?」

「……すき」
 にっこりと笑って弥斗がそう言うと、三沢は一瞬驚いた顔をしたがそれに優しく微笑んだのだった。



 その二日後に家に戻ってくると退院して家に戻っていた祖父が盛大に文句を言ったものだった。

「なんだい、せっかく戻ってくれば弥斗はいないし、三沢もいない」
 そう言われて弥斗はひやひやしながら祖父の相手をしている。その隣には三沢もいたが、それは仕事の顔つきになっていて全然何ともないという飄々とした態度だったから祖父が気に入らないのだ。

 散々祖父に嫌みを言われても、鋼鉄の三沢の顔は変わらない。
 淡々と仕事をして「では失礼します」と去っていくのだ。それを追いかけて弥斗も席を外す。

 玄関まで来ると、三沢が待っていてくれてさっきまでの表情を捨ててにこりと微笑んでいる。

「大変だよね、おじいちゃんどんどん我が儘ばっかり言うようになっちゃって」
 弥斗がそう言って笑っていると、三沢は気にしてないようで苦笑して言う。

「最愛の孫が自分をかまってくれないから、私に八つ当たりしてるだけですよ」

「えーだって俺散々おじいちゃんの相手してるよ?」
 弥斗はあれだけ相手しても駄目なのかとちょっと不満げになる。

「そういうときに私の自慢話はやめときなさい。それですねてるんですよ」
 三沢は笑ってそう返すと、そういえば三沢がね~とばかり話していたような気がすると弥斗は思い当たったので顔を真っ赤にする。

「や……まあ……気をつける」
「いいですよ、気にしてませんから」
 そう三沢は言うとすっと弥斗の唇を奪っていく。そして言うのだ。

「今夜、お邪魔しますので、鍵あけておいてくださいね」
 これは夜のお誘いの合図だったりする。弥斗が外に出られない時は三沢が忍び込んでくるのだ。隣の家が空き家になったので、侵入ルートはすでに確保済みだった。

「あ……う、うん!!」

「じゃまたあとで、弥斗」
 そう言って三沢は弥斗の頬をちょっとだけ撫でると、踵を返して門に向かって歩いていく。

「うん、またあとで」
 にっこりと笑って玄関で手を振る。ドアを閉めると弥斗は夜が楽しみで仕方なかった。
 その次の日はきっとまた一緒に出かけることが出来る。三沢が忍び込んでくる日の次の日は三沢の仕事が休みの日だからだ。

 明日はどこへ行こうかなと思いながらも、その前に祖父の機嫌を取るのが先だと弥斗は祖父の元へと走り出した。