Switch 外伝10-2

Beautiful day1

二人で仕事を辞め、今まで貯めたお金で旅行をする。
 けれど派手な旅行ではなく、節約してその国に三ヶ月くらい居る。
 日常をそれぞれの国で送ってみて、色んな事を思う。
 季節によって違う国の様々な事情や人たち。近所になった同じ出身の日本人と知り合いになったり、ショッピングモールなんかにはいかず、近所の雑貨屋さんや果物屋さん、肉屋さんとかパン屋さんを巡る。ある意味贅沢な日常を送るのが目的だった。
 榎木津透耶は、鬼柳恭一と出会うまで日本を出たことはなかった。
 それとは反対に鬼柳は世界各国に出かけたことがあり、紛争地域を筆頭に南国やアマゾン、アフリカや南極など行ってないところはないくらいの人だった。
 そんな彼が企画した世界を二人で回るという楽しい旅は、そうやって各国を移動しては色んな日常を送るだけのものだ。
 もちろん観光はするし、その国のお勧めは堪能するが、それでも三ヶ月もいれば日常がほぼ変わらないことに気付いた。
 約一年半に渡り、欧州からアメリカ、アフリカや東南アジアと渡り歩いて、最後に行った場所は中東の国だった。様々な国の事情がある。なるべく開放的な場所を選んでくれたので、二人はある国に落ち着いた。
 そこで二ヶ月を暮らしていたが、基本的に中東の日常のうち、昼間の高温時間は皆自宅で寝ていることが多い。
 直射日光を浴びるなんて危険なことはしない。
 日陰でただ太陽が過ぎるのを待つ。それだけなのだ。
 だからこの国はゆったりとした時間が流れている。
 透耶はその日もうっつらと、日陰のベッドで眠っていた。
 この国のことにはもう慣れていたので、身体が自然と眠るようにできてしまったらしい。
 そうした透耶が眠っている部屋に、やっと夕食の仕込みを終えた鬼柳がはいってきた。
「何だ、寝てたのか」
 最近の透耶がこの時間に昼寝をするのは鬼柳も知っている。
 しかし旅行に出てからの透耶は、人の気配がすれば起きることの方が多い。それが鬼柳であっても同じ反応を示す。危機感を持って日常を送ることは透耶の中での変化の一つだった。
「いろいろあったしな……」
 鬼柳は呟いて透耶が寝ているベッドに座った。
 透耶の変化は一年半前の事件だ。あの事件で透耶はとうとう日本にいることができなくなった。
 有名人の息子で、アイドルの弟を持ち、その弟の妻さえも有名人である。本人もまた売れっ子作家で、デビュー以来ずっと売れていた。
 売れっ子ということはそれだけ本を読む人が多くいたということで、その分名前はよく知られていた。しかし顔出しはせずにやっていたお陰で、双子の弟とそっくりなはずの覆面作家という、その意味はあるのかという状態だった。
 それがあの事件でとうとう、どこのテレビ局もどこで仕入れたのか分からないが、透耶の写真を公開した。
 被害者の顔写真が加害者と同レベルでプライバシーのない状態で公開される。
 その透耶の妖艶さや、弟は違ったベクトルに成長したことも相まって、透耶の容姿はかなり受けたらしい。そして週刊誌もまた同じ過ちを繰り返し、透耶の事件の記事を掘り返して書いた。
 結果、どこにいっても誰も彼もが透耶の顔と名前が一致してしまう事態になった。
 当然どこにでかけても知らない人が話しかけてくる状態になり、透耶の精神状態は更に不安定になった。
 こんな状況で日本に固執することもないと、鬼柳はすぐに透耶を連れて日本を出た。
 それは結果的によかったことだった。
 事件の報道が収まってもまだ透耶の容姿のことを引っ張り出しては、鬼柳とのことまで記事にしている三流雑誌が存在してゴシップ誌は盛り上がっている。
 そう一年経ってもだ。
 昨今のインターネット時代が、いつまでもそうした記事を検索できてしまうので、興味を持った人が何度も調べているのだろう。
 検索のサジェストには、榎木津透耶と入れると、もれなく、双子、弟、恋人、鬼柳恭一、事件、ホモと出てくる始末。透耶が築き上げた作家としての興味は見事にない。
 透耶がデビューして約七年の月日を費やして書き上げた作品のことなんて誰も興味がないらしい。
 そんな現実は知らなくていいと、透耶は鬼柳の提案に乗った。
 本当は鬼柳が三十五歳くらいになってから、死ぬまでの五年をかけて回るはずだった世界旅行が五年早まってしまった。
 世の中予定通りにはいかないものだが、透耶の周りは本当にそうだった。
 しかし透耶は旅行に出て誰も自分を知らないことに、やっと平常心を取り戻した。普通に街を歩き、鬼柳と腕を組んで歩いても誰もとがめはしない。そんな日常が気に入って、旅行はかなり楽しい物になった。
 一年を掛けて回った国で透耶は色んな事に興味を持った。
 閉鎖した世界で暮らしてきた透耶にとって、世界は輝いて見えたのだ。
「きらきらしてる。全部、きらきらした色に見える」
 透耶は時折そうした表現をする。何でも空間で空気の色が見えることがあるらしく、不思議なことを言い出す。元々音に対しても同じ表現をすることがあって、それは旅行に出てから謙虚だった。
「人の気配とかに、どす黒いとかこいつは赤いなーとか、ブルーっぽいなってやつ?」
 鬼柳はそうした人の気配が分かる時がある。全員のことが分かるのではなく、雰囲気をそう表現するのだが、それと似た感覚らしい。
「そんな感じ。音はキラッキラして星が飛んでる時がある」
「ふうん」
 キラキラしてると言う透耶の方が眩しいくらいにキラキラしていた。
 そういう興奮している時の透耶は、とても積極的だ。
 音楽とか芸術に触れた観光の後は、大抵抑えきれないモノを抱えている。
 知っている。音楽をしている人はライブの後とか、演奏の後とかも興奮が冷めやらなくて、性欲も堪らないほど高くなるらしい。
 透耶も同じでそういうときはこちらから仕掛けないでも、自分から誘ってくる。
「んー、そういや、この国にはそういうのなかったな」
 観光地には行っても、割と遠い上に紛争地にも近いので用心に用心を重ねているからか、緊張が命を守るために使われるので、キラキラしたものは持続しなかったようだ。
 するとぐっすり寝ていたはずの透耶がふっと目を覚ました。
「……れ? 恭……?」
 ベッドで透耶の隣で座っている鬼柳を見て、透耶は眠い目を擦る。
 そういう透耶の頬に鬼柳がキスをしてから言う。
「うん、眠いなら寝てていいよ」
「……ん、も、大丈夫……ふわ、湿度が日本と違うから、暑くても気持ちが良いね」
 日本で同じ状況で昼寝をしようと思ったら、湿度が邪魔をしてエアコンを付けないととてもじゃないか過ごせない気温だ。
「そうだな……」
 そう鬼柳が言うと、透耶が起き上がって鬼柳に近づいて鬼柳にキスをしてきた。
 それも深い口づけのキスで、強請っているように何度も重ねてくる。
 散々キスをした後に鬼柳が透耶をベッドに押しつけて覆い被さると、鬼柳は聞いた。
「どうしたんだ? ここ、もう興奮してるけど……」
 透耶を押し倒して見て分かった。透耶はもう興奮していて股間が膨らんでいる。
 アラブのカンドゥーラに似たものを着ているので、かなり分かりやすい。
 鬼柳はその股間を擦ってあげながら理由を聞いた。
 寝起きに股間を膨らませて、強請ってくるなんて珍しいことだったからだ。
「んああ……んっあっあの……ね……多分、夢だと……思うんだけど、んあっん」
 透耶は股間を擦られるのを感じながら、鬼柳に縋り付いて甘い声を上げながら言った。
「音が聞こえた……んっ綺麗な音、……んあん、楽しそうで……気分がよかった……んあんっ」
「音楽? 結構長くここにいたけど何も聞こえなかったぞ」
 ここは静かな場所で、周りには民家も無い。ホテルの一室の離れみたいな場所で、長期滞在用の住まいだ。長い人では一年以上、短い日とでも三ヶ月はいる。各部屋が自宅のように個別になっていて、住人が会うのはホテル前の道を歩いている時くらいだ。
 さすがに街中に家を借りるわけにはこの国では難しいので、これが妥協点だ。
 そのお陰で、この国においても二人はセックスを営むことができる。
「あんっんふっ……ああんっ……ちゃんと……触って……」
「いいよ、自分で下着も下ろしてみて?」
「あん……うん、ああ……」
 透耶は素直に自分でズボンも下着も下ろした。
 すると勃起したモノが先走りを沢山垂らしながら姿を現した。
「エロいね……夢見ただけで勃起した?」
「ああんっ……そんなんじゃ……ああんっはん、恭が、んふあん触るから……んふあん」 鬼柳は悶える透耶を押さえ込み、股間を弄ってやった。
「あっひぁっ、らめっ……あっやぁっあぁんっ」
「気持ちいい、だろ? こんなに濡れてるし……ここもね」
 そう言うと鬼柳は透耶の孔の中に濡らした指を挿れた。
「ひゃっあぁんっ! あひっあっあんっあぁっ」
「ほら、待ってた」
「あっあんっ、恭……んっやっ、やらっあんっ……っ」
「ここ弄られながら、こっちも弄られて、透耶大変だね……俺は楽しいけど」
 鬼柳はそう言いながら、楽しそうに透耶の股間と孔を弄っている。いつも透耶に自分で調整をさせず、鬼柳が管理していると言い張る孔をじっくりと拡張する。
 いつも弄ってやっているので、すぐに透耶の孔はそれを覚えていて、身体を開いてくる。
「ひっあぁんっ! いいっあっあぁっ」
「開いてきた……うん、良い感じ。エロいな透耶……このまま指で一回いこうな」
「あぁああんっ……あんっいいっっ、あっぁんっ、あんっ」
「ここ、好きだよね……透耶」
「ひっあっあんっ、いくっ……はぁっ、いっちゃうっ……、いっちゃう……ぁんっあんっ」
「イッて、イクとこ見せて」
「ああぁっらめぇっ、ぁんっ、いっちゃうっ、やっあっあひっ、あっぁんっあんっあああんっ!」
 透耶は鬼柳の手によって絶頂をした。
 射精をして絶頂をする透耶をしっかりと眺め、鬼柳は興奮してしまっている自分に気付く。
「ヤバイ透耶、エロすぎ」
 弛緩した透耶の身体を抱え、鬼柳はすぐさま孔の中に己の欲望を突き入れた。
「あひっあっあんっ、んっふああっいいっ、あぁんっ」
「うん、ぴったりくる。透耶の中に挿ると、どうしようもなく安心する。ここだって思う。ああ、締め付けてきて気持ちがいい……透耶」
「んっあっあっあっあんっ」
 鬼柳が挿入を開始すると、透耶はただ快楽を得るだけになっていく。
 透耶はそういう時間が好きだ。鬼柳が与えてくれる快楽も安らぎも何もかもが好きだった。
 人をここまで愛して愛されることが、どこまでも幸せになれるのだと気付いた。
 多少の難はあるけれど、それもこの優しさで乗り越えてきた。
「あっいいっ、恭……いいっんっあんっあひっあ゛っいっああっ」
「透耶、可愛い……いっぱい突いてやるな」
「ひああっ! んっあっはぁっ」
「ここ凄い、エロい。中たまんない……あんまりハメてるから、トロトロにすぐなるな。ここ、俺の形忘れられないんだろうね……絡みついてきてすごい」
「あぁっ、も、そういうことっんっ、いわなっあ゛ひっああんっ」
「透耶、キスする? キス」
「あひっあんっするっキスするっあんっあんっ」
 鬼柳がキスを強請ると、透耶もそれに応じた。繋がったままでキスをして、それでも腰は振る鬼柳。
「ふ、ぅ……ん、ん、んっんっ」
 舌を絡めてお互いに口の中を犯していく。透耶の口の中だったり、鬼柳の口の中だったりと舌が移動しながらお互いに舐め合った。
「ん゛っんんっ……んっふ、ん」
 鬼柳が強く透耶の舌を吸って、透耶の身体が痙攣するようにうごめき、それを喜んでいる。
「んっんっんん……ふぁっ、はあっ、あっはぁっんあっ」
 キスを終わらせて、激しく透耶の腰を鬼柳は打ち付けた。
「あぁんっあひっあっらめ、んっああっ」
「イキそう? 中が締まってきた……中出しする?」
「やっあっあっなか、らめっあっあっあひっあひっやっああぁっもっらめっ……ああっ」
 パンパンと強く突き入れられて中を抉られると、透耶はそれだけで絶頂しそうになる。
「あ゛あ゛ああっ! い゛っ……あっ、ああっ」
「イクね……精液、中出しで」
「ひっやっあ゛っああっあ゛あっあんっやっいくっいくっ……! あっあっひあああっ」
 透耶が絶頂するのに合わせて鬼柳が絶頂する。それに伴い、中で精液を射精して達した。
「んっ……」
 それが奥に当たって透耶はそれだけで、身体が震えて、快楽が止まらない。
「あれ……空イキもした? 中出しで感じた? 透耶、エロいよ……はあ、また勃起した」
 透耶の中にまだいる鬼柳が復活してしまい、透耶はギョッとする。その勃起の仕方がまさに孔を抉るくらいに膨らんでいるのだ。
 さっきまではそこまでではなかったけれど、これは本気の鬼柳の勃起具合だ。
「あひっらめっあ゛っあんっあんっあんっ」
「あー透耶の中、気持ちよすぎ……っ」
「あっあっひっあああんっ」
 パンパンと乱暴に突かれ、さっき吐き出した精液がボタボタと孔から溢れて出てくる。
「あ゛っひっらめぇっ……あっあんあんあんあんあんっ!」
「く、いく、いくっ……」
 また絶頂しそうで透耶が身体を痙攣させると、鬼柳はそれを狙って更に奥まで性器を突き入れて挿入を繰り返す。
「あんっあんっあんっ! あ゛ひっんっあぁああーっ」
 こうなるともう透耶も素直に身体を開いて、鬼柳の好きにさせる。
 気持ちが良いのもあるが、それでも鬼柳が止まらないことも知っているからだ。
 それなら鬼柳の身体を開いた方が長時間の拘束からは解放されるのが早い。
 快楽を与えられすぎると苦痛になるのだ。
「ああぁっ……、んっあっあっ、あうっ……」
「ん、ん……エロい腰つき……透耶気持ちが良いね……俺も最高……」
 鬼柳は何度も透耶の中に射精をしながらも、全く萎えることなく抜かずの五回目に突入していた。
「あ゛ひっあひっんもっらめっこわれる……あっあんっんっ」
 透耶の孔からは精液が溢れて、ベッドの上に垂れている。
 透耶も五度目も絶頂をさせられているが、それでも潮を吹くように絶頂している。
「やぁっんっあ゛はっうあっん」
「潮吹いてる……透耶エロい……マジ、今日は特別なくらい中がトロトロすぎる」
「あひっい゛いっあっあっあっあんっ!」
「ここ突くとすごい、……ここが好き?」
「あっすきっいっあんっあっ、すき、い゛っあああっ」
「また出る、この奥に種付けしてやるっ」
「あっんっんんっもっ中出しっやらぁんっああん」
「んっ透耶締め付け、すごい……搾り取ろうとしてる……」
「あ゛ああんっ! いくっいくっあひっあっあああっ」
「ぐっ……はぁ」
 二人は同時に達して、精液を吐き出した。 鬼柳は透耶の中で射精をして、透耶はそのまま精液を射精したあとに、中に出された精液を感じて潮を吹いて絶頂をした。
「んっ、はぁ、あっん……!」
「はぁっ、透耶、すごい搾り取られた……はぁ、透耶見せて、精液が出るところ……」
 鬼柳がそう言うと、性器を孔から抜き、中に散々堪った鬼柳の精液が透耶の孔から盛大に吹き出た。
 ベッドに漏らしたようにビシャッと吹き出て、透耶はそれですら感じて潮を吹いている。
「はぁんっ」
「止まらなくなったな、潮吹き。こうなったら、透耶の中もすごくよくなるんだよな……」
「……も、やら……」
 気付いたらもう夜になりかけている。長い時間セックスをしていたのだと気付いて、鬼柳はふっと息を吐いて欲望を抑えた。
「ご飯食べたらセカンドラウンドな? 今日の透耶、エロくて最高なんだよな。もう勃起が収まらないから付き合ってね。たきつけたの透耶だから責任とってね」
 鬼柳はそう言って透耶の尻を撫でる。
「んんっ……やぁっもっやらっ……あぁっあっんっ」
 断った透耶の孔を鬼柳が指でこじ開けて精液をかき出し初めてしまい、透耶はそのまままた絶頂をさせられた。

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