Switch101 8

パチンコ

 物凄い暇だ。

 透耶は、月刊の連載小説の追い上げで、今日は一日、俺がいるのを解ってない。
 悪戯しても、無視だし、話し掛けても聴こえてない。

 夕飯の仕込みはしたし、洗濯も終わった。掃除は業者が来てやってしまったし。

 そこへ、先日の事でヘンリーが謝りに来た。
 色々言い訳してたが、んな事はどうでもいい。

 アレはアレで、まあ、丸く治まったんだしな。

「鬼柳さん、もしかして暇? じゃあ、パチンコいかない?」

「はあ? あんな娯楽が面白いのか?」

 俺にはさっぱりだ。
 玉が出て、入るだけのを見ているだけとは、阿呆らしい。

「ま、暇過ぎるんなら一度やってみればいいんじゃない?」

 そう言われたので、食わず嫌いもどうだろうと思いヘンリーと行ってみた。


 うるさい。
 それが第一印象だ。

 ヘンリーが新台があるからと言うが、意味が解らない。

 某キャラ泥棒が画面に出てくるので、見ていたが、確か、これは透耶が好きなキャラだったなー、とか思った。お城から少女を助け出す話だったな。ギャグ満載で、俺でもあれは面 白いと思ったくらいだ。

 で、それでやってたのだが、まあ、平日だというのに、これほど人がいるとは思わなかった。
 前に聞いたが、これで生活している奴もいると、透耶が言ってたな。

「あ、鬼柳さん、リーチだ」
「はあ? これか?」
 
 数字が揃っていって、アニメが変わる。
 お、なんか、全部揃ったんだけど…。

「ああ? こっちからどんどん玉が出てくるんだが…」
「ああ、放っとけばいいよ。店員が箱持ってきてくれるから」

 どうやら、これで正解らしい。
 どんどん出てくるのに、またアニメが変わるから、俺は勝っているそうだ。

 すると、向こうの方で店員と客が揉めていた。
 何だ?と思い見ていると、男が暴れて店員を殴り逃げ出した。

 こっちへ来るので、どうしようかと迷ったが、とりあえずラリアートしてみた。
 男が倒れて、床でも頭をぶつけたのか、失神して動かなくなった。

「お客さま! ありがとうございます!」

 店員に礼を言われてしまった。
 何人かやってきて、男を連れていってしまう。

「で、何だった訳?」
 俺はさっぱり解らず、お礼にと景品を持ってきた店員に聞いた。

「はあ、あれは、詐欺なんですよ。機械で台を操作して玉が出るようにするんです。こっちも商売ですから、毎日出る台と出ない台は変えてますから、こういう事をされると、損害になる訳です」

 とか言われても意味が解らない。
「つまり、これやるのに反則技で、儲けようとしたって事か?」

 俺がそう聞くと、店員が頷いた。

 なるほど、これで生活出来るくらいだから、働かずに詐欺でもやって儲ければ楽って事か。

「阿呆だな」
 俺が呟いたら、ヘンリーと店員が笑った。


 結局、そこで夕飯間近までやってたが、ヘンリーは負け越し、俺は10箱くらい溜まった。

「才能、あるんじゃない?」
 玉を数えて何か紙を貰うと、ヘンリーがそう言った。

「遊びでやるなら、まあ、悪くはないが、マジではやりたくないな」

 下手にブラブラしているよりは、暇つぶしになるのは解った。
 収穫としては悪くない。

「何か景品と交換する? それとも現金に替える?」

 言われて、とりあえず景品交換の所で商品を見ていた。

 うーん、透耶は何が欲しいんだろう?

 ゲームはやらないし、家電は家に揃ってるし…。 
 お菓子は、食べないしなあ。

 お、果物まである。
 透耶は果物好きだしな、洋梨でいいか。

 それで、洋梨を一箱交換したが、まだ残金があるので、それは換金した。

「それって、透耶にでしょ?」
 ヘンリーが言ったので当然だと頷いたら、笑われた。

 別に笑う所じゃないと思うのだが。
 ま、これで透耶が喜んで食べてくれれば、それでいいんだけどな。

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