Switch101 58

風切羽

 透耶が逃げないように。

 そう思って俺はあらゆる手を尽くして、部屋中の鍵閉めた。
 ここがそういう別荘で良かったと思った。

 部屋中の鍵があるような別荘で、各部屋の鍵が外から閉められる事だ。始め鍵を預かった時は何に使うんだとは思ったが今は役に立っている。

 透耶が一度部屋に閉じこもった時にあけるのに使った。

 透耶は驚いていたが、それからは閉じこもれないように全部に鍵をかけた。

 透耶はそれで閉じこもる作戦を諦めたらしい。

 この別荘は部屋も多くて困っていたが、なるほど使わない部屋に鍵かけるのが金持ちの常識なのかと思ってしまった。今は透耶監禁に役立ってるしな。

 鍵かけた時は透耶は逃げようとして、鍵が開かない事に気が付いて呆然としていた。俺がそこまでやるとは思ってなかったみたいだから。

 当然のように、俺は透耶を脅していた。

 逃げても監視カメラがあるから、逃げ出した事はすぐに解ると。

 透耶は怯えたのか、諦めたのか解らないけど、逃げようとする行動は辞めてしまった。

 俺が出かけている間は、大人しくさせてるから逃げれないんだけど、今では外へ出る事もしなくなった。

 庭だって俺と付き添いでしか出ない。

 怯えて諦めたのかと思っていたけど、時々笑ってくれるし、怒鳴ったりとかもするし、表情は豊かになってきてる。

 何かが透耶の中で変わったのか解らないけど、行動を制限しても透耶にはあまり苦痛ではないようだ。

 それでも透耶の要望は聞くようにしている。

 書斎を開けて、透耶が持ってきていた筆記用具は渡してある。

 それさえあれば、透耶は本当に嬉しいらしく、書斎に篭って出て来なくなる事もあるくらいに熱中している。

 小説を書いているんだと言ってた。本当にその作業が楽しいんだろうなと思えた。


 美しい鳥の風切羽を切ってしまったと思ったけれど、透耶はめげなくて、尚も美しく立っている。

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