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透耶が昼前に起きだし下へ降りて行くととんでもない事になっていた。
階段の途中で止まってしまう透耶。
やっと息を吹き返して、そこに居た宝田に聞いた。
「ど、どうしたんですか、これ!」
透耶が見たのは、玄関ホールに置かれた山程の箱。
しかも、それはまだ運び込まれている。
宝田はそれを指示するのに忙しそうだったが、透耶の声に気が付いて顔を上げた。
「おはようございます、透耶様」
宝田がそう言うのと同時に、透耶は宝田の所まで行って箱の山を見つめた。
「一体、何なの?」
この箱山が何なのか検討も付かないという顔の透耶。
だが、宝田の言葉はもっと衝撃的だった。
「これは、全て透耶様宛てでございます」
こう言われて、頭が真っ白にならない人間はいない。
尋常ではない事に気が付いて、透耶は宝田に問う。
「え? 俺? 何でです?」
自分が何か頼んだ覚えはない。
しかも箱の数は50は超えているだろう。
すっかりパニックになってしまった透耶に、搬入が終わって受け取り作業を済ませた宝田が説明した。
「まず、エドワード様から20箱、ハーグリーヴス様から15箱、綾乃様の祖父様から10箱、氷室馨様から10箱、藤生鏡花様から2箱、光琉様から2箱…」
と出てくる名前は全て透耶の知り合いだ。
……皆、一体何を考えてるの?
どうしてこうなったのかを思い出せない透耶。
「どうしてこんなに届くんですか?」
透耶は再度箱の山を見つめて宝田に聞いた。
「透耶様。失礼ですが、今日が御自身のお誕生日だという事をお忘れになってらっしゃいませんか?」
宝田はまさか、本当に自分の誕生日を忘れてるんじゃないかと思いこう言ったのである。
宝田の言葉に透耶は今思い出したという顔をした。
そうか、すっかり忘れてた」
透耶はやっと思い出したように言った。
人のことより他人の事。
一昨日、自分と同じ誕生日である光琉へのプレゼントを買っておきながら、自分の事はさっぱり忘れている。
「え? じゃあ、これって!?」
やっと事の重大さに気が付いた透耶。
箱の山を再度見上げた。
「全てお誕生日プレゼントでございます」
宝田の言葉は透耶の頭を打つ。
呆然として箱の山を見上げたまま思ってしまう。
……これが全部誕生日プレゼント?
……皆、やっぱ変だよ。
有り得ない、有り得ないって!!
「どうしよう……宝田さ~ん、俺、こんなに貰えません~」
透耶はそう言ってしまった。
いくら知人とはいえ、誕生日だからとこんな山程のプレゼントを素直には受け取れないのが透耶である。
今までも散々、色んなモノを貰ってしまっている。
これ以上は駄目だという気持ちがあるのだ。
すると宝田が笑って言った。
「申し訳ございませんが、これを全て送り返すのは大変です。ここは素直にお受け取りになられた方が賢明です」
宝田はそう言うが、透耶は納得せず、更に困った顔をする。
「でも……」
それでも、受け取るのに躊躇している透耶に宝田は閃いた事を言った。
「それでは、こうしてはどうでしょう。このプレゼントをお受け取りになられる変わりに、それぞれの方々のお誕生日に同じようにプレゼントをお送りになられれば宜しいのです」
宝田の機転の効いたアドバイスがきいたのか、透耶はうーんと考え込んでしまった。
そうかもしれないとでも思っているのだろうと宝田は思った。
事実そうだった。
……そうだよな、これ送り返すにしてもお金かかるし、送り返しても返品きかないものだったらもっと迷惑かけちゃうかもしれないな。
……誕生日プレゼントを変わりに送った方が一番手間がかからないかもしれない。
こんな事を考えていたのである。
そこへ鬼柳がやってきた。
ちょうど中庭を突っ切って、ホールにきたのだ。
騒がしかったのが気になったのだろうが、さすがの鬼柳もこの箱の山には驚いたらしく、透耶と同じように箱を見上げている。
そして。
「何だ、これ?」
と言った。
やはり最初に出る言葉は同じである。
透耶も鬼柳と同じようにして箱の山を見上げたままで答えた。
「俺の誕生日プレゼントだって」
透耶がそう言うと、鬼柳は眉を顰める。
「は? あいつら馬鹿か?」
大量過ぎる贈り物に鬼柳は呆れ返っている。
「馬鹿かどうかは別にして、皆変なんだよ」
透耶はそう言った。
プレゼントを貰っておいて、送った相手を馬鹿だの変だの言う人は珍しいだろう。
「どうせ、エドとじじぃのは服だろ。たくっ収納スペース作らないといけねぇじゃねえか。こっちの都合っつーもんも考えろよ」
鬼柳がそう言うと透耶は。
「そういう問題じゃないよ。これ、全部開けるの大変だよ」
と、妙な所を気にしている。
それで鬼柳もハッとした。
「あ! 余計なゴミが大量に出るじゃねえか! やっぱりやつら馬鹿だ!」
「そんな事言っても、そのままじゃ送れないじゃない」
と論点が違う二人。
「とりあえず、これどうにかしないと……」
透耶が呟くのも無理はなかった。
玄関ホールは箱で埋め尽されている。
もはや玄関ではなく物置き状態。
と、ここで箱を見つめていても勝手に開いてくれる訳もなく、箱を開けていこうと話が纏まった時、また宅急便がやってきたのである。
「……まだ、何かあるの?」
透耶は既に宅急便恐怖症である。
宝田が透耶を見て承諾していたので、透耶はそう呟いてしまった。
「はい、また透耶様にでございます」
宝田の言葉に透耶は目眩を覚えたが、辛うじて送り先を聞いた。
「だ、誰ですか?」
すると宝田は苦笑するように鬼柳を見てから透耶を見て答えた。
「恭一様のお父上からでございます」
その言葉に透耶は違う意味で固まってしまう。
今まさに何を言ったの?という所である。
「え?」
聞き間違いじゃないだろうかと思って鬼柳を見ると、鬼柳も驚いていた。
……聞き間違いじゃないんだ。
「ど、どうして?」
鬼柳の父親とは面識はない。
会った事も顔を見た事もない。寧ろ疎まれる存在のはずだ。
それが宅急便を送ってくる。それも透耶の誕生日にだ。
嫌がらせなのだろうかと透耶は瞬時に思った。
そう思った時、鬼柳がいきなり大きな声で叫んだ。
「何だって!? どうしてクソ親父が透耶の事を知ってんだ!!」
鬼柳がそう叫ぶのは日常的。
しかもそれは透耶が一番聞きたい事でもあった。
すると宝田はすぐに答えた。
「お調べにでもなられたのでしょう。この家を買う目的など、多々気になる事がお有りだったですよ」
宝田がそう答えて、透耶はハッとした。
鬼柳の実家はかなりの金持ちだ。その跡取りが何処でどうしているかなど簡単に調べられるはずだ。
「それって……恭のお父さんが俺と恭の関係を知ってるって事ですか?」
透耶は恐る恐る聞いた。
宝田は首を縦に振った。
「はい、御存じでございます」
「えええええええええ!!!!?????」
その関係とは、恋人関係にあるという意味である事は宝田にも伝わっているはずだ。
それが、鬼柳の父親の耳にも入っているのだ。
驚かずにいられるものではない。
どうしよう……。
透耶がパニックを起こしかけているのを感じて、宝田が言葉を付け足した。
「大丈夫でございます。こうして贈り物をしてらっしゃるという事は、透耶様の事をお気に召しているからでございます」
長年、鬼柳家で執事をしてきた宝田には、鬼柳父が何を考えて行動するかなど解り切っている。
だが、透耶はまだ信じてはいない。
「そ、そうなの?」
不安げに鬼柳を見上げて聞いた。
その鬼柳は不機嫌そのもので答えた。
「ああ、クソ親父が気に入ってなきゃ、とっくに透耶に嫌がらせをしてる」
鬼柳はそう言う。
鬼柳がそう言うなら、それは確かな事なのだろう。
……嫌がらせって何だろう?
気になってしまって透耶は鬼柳に聞いた。
「ちなみに、嫌がらせってどんなの?」
透耶がそう聞いてきたが、鬼柳はニヤリとしてとぼけた。
「さあ、どんなのだろうなあ」
その言葉だけで、透耶には恐ろしいモノになってしまった。
……そんなに恐ろしい嫌がせなの?
……それともユニークなの?
……笑えるの? それとも泣いてしまう程?
と、いくら考えても解る訳がない。
透耶がこんな事を考え込んでいる時、鬼柳が言った。
「そのうち、親父にも会わせてやるからな」
鬼柳の意外な言葉に透耶は驚いてしまう。
「え? いいの?」
「いいのって?」
「だって俺、男だよ」
男を連れて、こいつと付き合ってるんだ、と紹介するのはかなり難しいのではないかと透耶は思ってしまう。
透耶の言葉に鬼柳は微笑む。
「そんなの解ってるよ。大切な人だからちゃんとしておきたいんだ。透耶はちゃんと身内の光琉に会わせてくれただろ?」
鬼柳はそう言うが透耶は。
……規模が違う、規模が違うよ!!
と言いたくなってしまう。
「嬉しくない?」
鬼柳に顔を覗き込まれて聞かれ、透耶はハッと我に返る。
「あ、うん、嬉しいけど」
「心配はいらない。俺に任せとけ」
鬼柳がそういうなら透耶も安心できる。
二人は見つめ合った。
「恭……」
「透耶」
抱き合ってラブラブモードに突入の二人。
そんな二人にゴホンと咳を一つして宝田がラブラブモードを止めた。
「申し訳ありませんが、宅急便の方々が埴輪になっておりますゆえ……」
止めた理由を宝田はそう述べた。
二人が振り返ると、荷物を運んでいた若いお兄さん達が荷物を持ったまま玄関入り口で固まっている。
荷物を落とさなかったのはさすがというべきなのだろうか?
埴輪だったお兄さん達が息を吹き返し復活して荷物を運びおえると、玄関ホールには箱の山がもう一つ出来ていた。
鬼柳父が送ってきたモノは、今まであった箱の山に匹敵する量だったのである。
「……うーわー、これ全部?」
……開けるの大変そう。
はっきり言って見なかった事にしてしまいたい事態である。
その隣で鬼柳が腕まくりをして言った。
「さっさと片付けようぜ」
まさにその通り。
片付けなければ一生このままである。
「そうだね。早く終わるといいんだけど。夜までかかりそう」
透耶はそう呟いた。
すると
「さっさと終わらせるぞ! バースデイセックスしてぇんだ!」
妙な言葉を吐いた鬼柳を透耶が眉を顰めて見つめる。
……何だそりゃ?
はっきり言って意味不明。
「馬鹿な事言わないの」
透耶はそれを無視する事にした。
だが鬼柳は、それについて作業をしながら説明をした。何故それにこだわるのかという事までもだ。
「馬鹿じゃねえよ。俺の時もそうだったんだから。透耶の生まれた時間に抱き合ってたいの」
最後は殆ど子供の我侭な感じの口調。
元からそう決めていたらしい。
「え? そうだったの?」
鬼柳が生まれた時間を知らないので、透耶は聞き返してしまう。
「そう。俺の生まれた時間は透耶を抱いてた」
むうっとして答えられて透耶は呆れてしまう。
……そんなのにこだわってるのか……。
誕生日を一緒に過ごすだけでもいいという透耶とは考えが違う。
……俺は、誕生日に一緒にいれるだけでも嬉しいのになぁ。 そう思ってしまう。
「ほら、透耶、包装紙開けていけよ。仕分けていくから」
絶対にパーティーをする夜までに終わらせるという勢いの鬼柳に透耶は苦笑して箱を開けて片付けていく。
だが、数は膨大。
三人でやって、午後三時に全ての箱を開け終えた。
しかし、まだ開け終えただけである。
8割が服、2割は本やノート、ペンなどの透耶が仕事で使いそうな筆記用具であった。
「当分、文具は買わなくてもいいみたい……」
服の方はもう考えない事にして、筆記用具の方の感想を洩らしている。
服の方は、似合っているとかの問題ではない。
鬼柳は鬼柳で。
「ちっ、ちょっとでも透耶のイメージじゃなきゃ捨ててやろうと思ったのに……」
などと変な悔しがり方をしている。
ただ単に、透耶の服は自分が買ってやりたかっただけなのだ。
その楽しみを奪われたので、いらついていたが、服は文句の付けようがないセンスの良さだったので余計に悔しいのである。
皆、透耶のイメージを良く掴んでいる。
「透耶、古服捨てないと、全部入らないぞ」
鬼柳がそう言った。
透耶は今でも十分なほど服を持っている。
ただ、光琉から貰ったというだけで溜めて置いてあるのもあるのだ。
「あ、そうだね。でも、どれも勿体無い」
鬼柳はやはり透耶がこう言うだろうと思った。
何でも取っておく性格の透耶。
「解った。透耶は宝田と箱をゴミに出す準備をしてろ」
「え?」
「服は俺がやる」
鬼柳はそう言い切った。
透耶にやらせると、勿体無いと言って、もう着ない服でも、もしかしたら着るかもしれないと言って、取って置いてしまう可能性が100%である。
鬼柳の凄い迫力に透耶は素直に頷いた。
「はい……任せました……」
……最近、俺の意見なんて通らないよな。
透耶はそう思って諦めた。
元々、光琉に服を選んで貰っていた時点で、透耶には服を選ぶ権利は当の昔からなかったのである。
いらない箱を潰して、ゴミを全部片付けた。
殆ど体力勝負な程の箱を片付けると透耶は、貰った筆記用具などを書斎へと片付けた。
それが一段落した時、ノックをして宝田が部屋に入ってきた。
「透耶様、少し宜しいでしょうか?」
宝田は頭を下げてそう言った。
「はい」
透耶は、何か真剣な顔をしている宝田が気になった。
普段、笑顔の宝田が妙に神妙になっているのだ。
透耶は、とりあえず宝田をソファに座らせた。
「初めに、お誕生日おめでとうございます。僭越ながら、これは私からのプレゼントでございます」
宝田はそう言って、小さな箱をテーブルに置いた。
まさか宝田からもらえるとは思ってもみなかったので透耶は驚いてしまうが、同時に嬉しかった。
「ありがとうございます! 開けていいですか!?」
透耶がそう言うと宝田は頷く。
「大したモノではございませんが、どうぞお納め下さいませ」
そう言われている間にも、透耶はワクワクしながら包装を開き、箱を開けた。
宝田からのプレゼントは、水色のガラスの置き物。
サバンナの動物達が沢山いるミニチュアの箱庭のようなモノだった。
「綺麗……ありがとうございます! 大切にします!」
透耶は感激していた。
本当に嬉しかったのだ。
透耶が気に入ってくれて宝田はホッとした。
そして本題に入った。
「それから、こちらを……」
宝田が言って出したのは、もう一つの箱。
それもかなり小さな箱だった。
「これは?」
どういう事なのだろうと透耶は箱を見つめた。
箱自体がかなり古いモノだったからだ。
透耶は恐る恐るその箱を手に取り、開けてみる。
すると、今度はケースが入っていた。それを取り出しながら透耶は思った。
これってまさか……。
透耶が予想した通り、そこにはリングが入っていた。
大きなアメジストの宝石がついたリング。
どうみても年代を感じる造りで、宝石の大きさも半端ではない。
「宝田さん、これって?」
どうして宝田がこんなモノを透耶に見せるのか。
そして今でなければならないのか。
何故これは古さを感じてしまうのか。
そういう意味が込められていた。
「これは、恭一様の母上であられる、グレース様から、透耶様にお渡しするようにと、私宛てに送られてきたものでございます」
宝田の言葉に透耶は目を見開いた。
……恭のお母さん?
どうして!?
鬼柳から聞いた話では、母親が今でも生きているのか、それさえも解らないという状態だった。
だから、その本人と宝田が繋がっているのが不思議でならない。
「恭のお母さん? 生きているかどうかも解らないって恭が言ってたよ」
透耶がそう言うと、宝田は頷いた。
「恭一様は、御自分の出生をお知りになられた時に、母という存在を否定なさってしまいましたから、生きているかどうかまではお調べになられなかったのです」
宝田がそう言うと、透耶はああそうだと思った。
出生を知った鬼柳は、自暴自棄にになり、母親を探すどころか憎みさえしていた。
だが母親は今でも生きている。
そして、透耶にリングを送ってきた。
これは何を意味するのか、透耶には解らない。
「でも、何故、俺の所にこれが?」
透耶がそう言うと宝田は答える。
「いくら条件付きで恭一様をお産みになられたとはいえ、唯一の子供を可愛く思わない母親はいません」
つまり、鬼柳の母親は今でも鬼柳の事を気にかけている事になる。
唯一の子供という所が引っ掛かった。
鬼柳を産んだ時は、確かに母親は鬼柳父と結婚はせずに、鬼柳父が鬼柳家に実子として迎えている。
なら、条件を呑んで産んだなら、それはそれで割り切っているのではないか? だが母親が今も鬼柳のことを唯一の子供と言うのはどういうことなのだろうか?
「あの、恭のお母さんは、今でも一人なのですか?」
透耶は思わずそう聞いてしまう。
「はい。今も独身でらっしゃいます」
「どうして?」
鬼柳の父親を拒む理由。それは他に誰か思う人がいたからこそ、拒んだのではないだろうか?と透耶は思っていた。
だから、その思う人と一緒になったか、もしくはなれなかったとしても、もう別の人と結婚でもしているのかと思っていた。だがそれは違うらしい。
透耶には、微妙に話がずれている気がしてならない。
だが、これは自分が首を挟む話ではないと首を振った。
「すみません。これは俺が聞く事ではないです。それぞれの事情ですよね。ましてや、本人がいないところで聞くなんて……駄 目です」
透耶はそう言って、質問を打ち切った。
そうした心遣いに宝田は感嘆してしまう。
「グレース様が今もお一人なのは、恭一様の事とは関係ありません。私が思うには、グレース様は一生独身を通 すだろうという事でございます」
宝田は何か確信めいた事を言う。
まるで本人から聞いたかのように。
……まさか。
「会った事があるんですか?」
鬼柳ですら会ってない母親に宝田が会っている。
「一度だけ、会う機会がございました。恭一様に似てらっしゃいましたよ」
会った感想をそう言う宝田。
深い部分は話さなかった。
何か、宝田からは言えない理由があったのだろう。
だが、鬼柳の母親の事が聞けて嬉しそうな透耶がいた。
「恭はお母さん似なんだあ。じゃあ、凄く綺麗な人なんだろうねえ」
壮絶な美女を思い浮かべてしまう。
無茶苦茶モテるだろう。
……そうだよな。長男は母親に似るって言うし。
……きっと凄い美人なんだよ!
うわ~~~写真でもいいから見てみたい~~~!!
そんな事を考えて悶えてしまう。
そうしている透耶を見て、宝田は笑ってしまう。
考えている事が手に取るように解ってしまうからだ。
その宝田の笑いに透耶はハッと我に返る。
「あの、これはどうすればいいんでしょうか?」
いきなりの贈り物を簡単には受け取れない透耶。
「グレース様は、透耶様に受け取って欲しいと手紙に認めていました。恭一様がこの世で一番大切な人に出会って、幸せを得られた時に、これを相手に渡そうと決めてらっしゃったようでございます」
宝田に宛てられた手紙には、そう書かれてあった。
鬼柳の状況は、今でも鬼柳家からグレースに伝えられている。だからこそ、今これを送ってきたのだ。
「でも、俺、男なんだけど」
透耶がそれを気にしているが、宝田は。
「私は、恭一様の大切な方にお渡しするようにしか仰せつかっておりませんので」
そう言われてしまった。
「うーん」
透耶は考え込んでしまう。
これは、使うモノではなく、受け継いで欲しいと思い渡されたモノなのは解る。
しかし、透耶が受け継いだ後、十数年後には他の誰かの手に渡ってしまうのだ。
そう、呪いがある限り。
「あの、これ、俺が受け取った後に、いつか他の誰かに渡してしまっても構わないのでしょうか?」
透耶はそう宝田に質問をした。
知らない誰かに渡すのは失礼な気がする。
なら、受け取った後に自分が信頼する誰かに渡すという方法もある。
「はい。それは透耶様の御自由になさって構いません」
宝田はそう答えた。
すると透耶はホッとした顔をした。
「よかった~。それなら、これは大切に保管します。俺が使う訳にはいかないから、いつか俺が生きている間にちゃんとこれが残って行くようにしたかったんです」
透耶がリングを残すというのは、このままの形で、そして誰から受け継いだものなのかをハッキリとさせたモノにしていきたかったのだ。
「あ、この事、恭に話してもいいですか?」
透耶は一番重要な人物を忘れていた。
なんと言っても、鬼柳の母親から貰ったモノを、その息子に内緒にしておくわけにはいかないだろう。
「このリングに関しては、全て透耶様のお好きなようになさって宜しいのですよ」
宝田はそう言った。
それを聞いて透耶は安堵する。
「頃を見計らって恭には俺から説明します」
鬼柳の母親から貰ったモノを、勝手に誰かに譲る訳にはいかないからだ。
もちろん、鬼柳の承諾がなければ、透耶は自分が渡したいと思っても渡さないつもりだった。
とはいえ、透耶が決めた事に鬼柳が反対するとは思えない。
透耶は受け取ったリングの入った箱を書斎にある机の鍵がかかる所へ入れた。
鬼柳は母親の事をあまり話してなかった。
何故、未だに独身なのかも解らない。
父親と祖父の話は出たが、母親の話が出たのは一度きり。
しかも「ばばぁ」呼ばわりをしていた。
話しにくい何かがあるのだろうと思うが、鬼柳自身が触れたくなさそうな話に感じて透耶は聞きそびれていた。
……まぁ、恭が話したくないなら、無理に聞くのはよくないなあ。
透耶はそう考えて、鬼柳の母親の事は考えるのを止めにした。
いくら考えた所で、鬼柳家の、それもアメリカでの事など解るはずもない。
「さてと、恭の方は終わったかな?」
透耶は独り言を言いながら、書斎を出て二階へ向かった。
寝室のクローゼットのドアが大きく開かれ、周りには無数の袋が並んでいる。
透耶はそれを避けてクローゼットを覗き込む。
すると、すっかり片付いたクローゼットの中で鬼柳が古服を袋に詰めている所だった。
「もう済んじゃった?」
透耶がそう声をかけると鬼柳が振り返る。
「ああ、終わったぞ。あ、そうだ、透耶。夜にはこれに着替えろよ」
そう言って鬼柳が服を取り出して、それを透耶に渡した。
「え? どうして?」
何故着替えなければならないのか解らず鬼柳に問い返すと、鬼柳の顔が次第に不機嫌になる。
「夜に、エドとじじぃと光琉が来るってよ。まあ、光琉はいいとして、綾乃だけだと思ってたのにヤツラまでくるとは」
鬼柳は、エドワードとジョージが来る事になってしまってそれで機嫌が悪いのだ。
「何で?」
どうしてエドワードとジョージが家に来るのか、さっぱり解らない透耶。
「パーティーするんだろ?だと」
……ははーん、長居されるかもしれないから嫌なんだ。
透耶はそう思ってしまう。
「ふーん、それはいいけど、他に何かあるんじゃない?」
家に来るだけじゃすみそうにない。
「俺の料理目当てだ。透耶の誕生日だから、特別に何か作るってバレてる」
鬼柳はそう言って忌ま忌ましいと呟く。
……行動パターン読まれちゃってるね。
透耶はそう思ったが口には出さなかった。
「特別って、恭の料理はいつも美味しいよ。俺にはいつも特別だよ」
透耶が笑って言うと、鬼柳がギュッと透耶を抱き締めた。
……なんだあ?
透耶には訳が解らない。
「可愛いこと言うなあ」
鬼柳はそう呟いてスリスリしてくる。
……何処がだ?
可愛いと言われて、何処が可愛いのか解らない。
「いつも通りでいいのに」
透耶がそう呟くと、鬼柳は首を振る。
「いーや、ケーキも作ったし、二人でディナーしようと思って準備もした」
仏頂面であろう鬼柳がそう言い返した。
……本格的な事をやろうとしていたんだ。
そりゃ、不本意だろうな……。
「で、結局断われなかったんだ」
透耶が苦笑すると、鬼柳は更に膨れっ面になる。
「来るなって言ったのに、どいつもこいつも勝手に用件だけ言って電話きりやがった」
鬼柳は悔しそうに言う。
はっはー隙すら与えて貰えなかったんだね。
透耶は苦笑してしまう。
エドワードにジョージでは、鬼柳以上に我が道をいくタイプなので、相手をするのは難しいだろう。
「じゃあ、準備大変だね。俺手伝うよ」
透耶がそう言うや否や。
「透耶はしなくていい」
そう言われてしまう。
「何でー?」
透耶が不満そうに言うと。
「主役が手伝ってどうする。出来るまで仕事でもしててくれ」
こう返ってきてしまった。
まあ、確かに主役がやるのはどうかとは思うけど。
しかし、透耶は鬼柳を見上げたままで考えてしまう。
かといって、恭だって自分の時は自分でするだろうし……俺がやったらやらせてくれなさそうなんだけど……。
だが、透耶が手伝うと余計にややこしくなってしまうのも事実である。
……この間、コップ割っちゃったのがいけなかったのかなぁ。
と透耶は反省してしまう。
「透耶、本当にプレゼントいらないのか?」
透耶が手伝うのを諦めてクローゼットを出て行こうとした時、鬼柳が透耶の後ろから抱きついてきた。
どうしてもプレゼントをしたいという鬼柳に透耶は「何もいらない。欲しいモノはもう貰ったから」と言うだけなのである。
しかもこっそり買いに行くのもなし。
「だって、これ貰ったし」
透耶はそう言って、左腕を上げた。
そこには、鬼柳が送ったブレスレットがある。
「あのな。これは結婚する時にするリングの意味なんだよ」
鬼柳はそう言った。
リングだと邪魔だし、無くしてしまうかもしれないという透耶に、リング代わりに送ったモノだ。
「でも、嬉しかったし」
透耶は本当に嬉しそうに言う。
確かに透耶はそれを大切にしている。
時々見つめては、微笑んだり、無意識にだろうが触ったりもしている。
透耶の中では、今まで貰った何物よりも嬉しいモノだったのだ。
それに透耶は鬼柳と一緒に居られるだけで良かった。
それ以上望むのは駄目だと思っていたし、望む必要もなかった。
だが、鬼柳がまだプレゼントは?と言い続けているので、とうとう透耶も音を挙げてある提案をした。
「うーん、じゃあ、京都行きを旅行にしよう」
透耶がいきなりそう言ったので、鬼柳はキョトンとしてしまう。
「は?」
訳が解らない顔をしている鬼柳に透耶は説明をした。
「京都に居た時って、あまり観光地とかいかなかったしさ。それを色々回って美味しいものを食べるの。うん、それでいいよ」
透耶は笑ってそう言った。
これ以上、透耶にプレゼントをしたいと言っても、これ以上のモノは出てきそうにないので鬼柳もそれで妥協する事にした。
「そうだな。いいホテルとって、いや旅館だな。で、浴衣着て、露天入って」
そう言い出した鬼柳を見ていた透耶はだんだんと不審な様子に変わって来た。
そろそろ出てきそう……。
「浴衣でセックスもいいなあ。露天貸し切ってやるのも」
ほら、出たーーーーーーーーー!!
絶対言うだろうと思ったけど思ったけどーー!!
透耶はもう慣れていたはずだが、呆れてしまう。
なんで、Hの事だけ考えてるんだよ……。
普通に観光しようよ。
それって、他の旅行先では必ずやりそうな事なのか?
そう考えて、透耶は絶対実家や本家に泊まるのはやめようと心に誓った。
何処でも欲情されてはたまらないし、それを身内に見られる羞恥くらい持ち合わせている。
見られても、自分の身内にはそういう関係だと説明するからいいかもしれないが、透耶自身が許せなくなってしまう。
見られたらと考えると、ゾッとする。
透耶がそう考えていると、鬼柳が額にキスをしてきた。
「解った。プレゼントは京都旅行な。日程は透耶が決めろよ。仕事片付いたら、速攻行こうな」
鬼柳はもうやる気行く気満々の笑顔。
「う、うん」
何だかその笑顔が怖い気がした。
……京都行くのやめようかなぁ。
などと無駄な考えをしてしまった。
透耶は言われた通りに書斎で仕事をしていた。
居間やダイニング、キッチンでは、鬼柳と宝田がパーティーの準備に向けて忙しく動き回っている。
で、透耶は、時間まで入るなと言われてしまっていた。
丁度午後5時に差し掛かった時、光琉がやってきた。
「透耶、光琉が来たぞ」
鬼柳が透耶の仕事を中断させて、光琉が来た事を報せた。
「あ、光琉」
仕事に集中していた透耶は、鬼柳の声でしか中断出来ない。
鬼柳は光琉を書斎に案内すると、すぐにキッチンに戻ってしまった。
「透耶、プレゼントありがとうな」
光琉はそう言って、自分の耳を指差した。
そこには透耶が一昨日光琉のプレゼントにと送ったシルバーのピアスがしてあった。
「あ、してくれたんだ」
透耶は嬉しくなって立ち上がる。
「これ、気に入ってたの知ってただろ?」
光琉は笑ってそう言う。
「うん、でももう持ってたらどうしようかって迷ったんだ」
そのプレゼントを買う時に、透耶はそれで悩んでいた。
だが、もし光琉がそれを買っていたら、歌番組などで既に付けているはずだが、まだ一度も見てなかったので、思い切って買って送ったのである。
「買いに行く間がなかったから、滅茶嬉しい」
光琉は言って透耶を抱擁する。
「服、ありがとうね」
透耶も光琉からのプレゼントのお礼を言う。
すると抱擁が済んだ光琉が離れるとこう言った。
「いつもの事だけど、今回は別のモノにすればよかったな」
苦笑して言われ、透耶はキョトンとする。
「え?」
「さっき鬼柳さんに聞いたよ」
光琉が鬼柳からそう言われていた。
実は、透耶には厄介な金持ち連中がパトロンみたいにいて、そいつらが阿呆程服を送って寄越して、クローゼットが大変だと言われたのだが正しい。
別に光琉に服を送るなと言っているのではなく、もっと別のモノので、透耶が日常に使うモノの方がいいのではないだろうか?という提案でもあった。
まあ、そのパトロンみたいな連中は今日二人来るので、光琉は一応顔と身元を確かめようとは思っていた。
「あーあれねえ……」
透耶は、あの服の量を思い出して苦笑してしまう。
「でも、光琉から貰ったのは普段着だから着るよ」
透耶がそう答えると光琉が首を傾げる。
「他に貰ったのは普段着じゃないのか?」
「うーん。まあ、ちょっとね……」
透耶は言い淀んでしまう。
まさか普段着にブランド品を着ろってーの?
と言いたくなってしまうが、いずれはきっと普段着で着なきゃいけない宿命なのである。
「家の中見せて貰ってもいいか?」
どうやら鬼柳が言うパーティーまでは時間がかなりあるらしいと判断した光琉がそう言った。
「うん、いいよ」
透耶は頷いて家の中を案内して歩く。
まず、まだ準備が出来てないと言っていた居間の方を光琉に見せる事にした。
それには鬼柳の承諾があってやっと入れた。
居間に入ると、光琉は入り口で立ち止まってしまった。
そう、透耶にとって二度と関わり合いになりたくないと言っていたピアノが置かれていたからである。
「弾いているのか?」
呟くように光琉が聞いた。
「うん、ときどきね」
透耶は笑って答えた。
光琉は透耶がピアノを辞めた理由をよく知っている。それ以来、ピアノ関係に関わらないように避けていた。
その透耶が、ピアノを弾いている事が、光琉には信じられない。
「あの人の為?」
光琉はそう聞いた。
あの人とは、鬼柳の事。
「きっかけはそうだよ。でも、やっぱり恭の為にしか弾かないとは思ってる。あの世界に戻るつもりはないよ」
透耶はやはり笑ってそう言う。
「聞きたいって言われたから?」
透耶の事を調べたなら、ピアノの事はすぐに解ったはずだと光琉は思ったのである。
だが透耶は首を横に振った。
「ううん、俺が聴いて欲しいって思ったんだ。誰かの為に弾きたいって思ったのは初めてだったよ。今は、すごく楽しいよ。柚梨さんが言ってた言葉の意味が今は良く解るよ」
透耶は生き生きとしてそう答えた。
柚梨とは、透耶の母親の事である。
母親は常に自分の好きな人にピアノを聴いてもらう為にだけしか弾いていなかった。
どんなに絶賛されようが、その好きな人に気に入って貰えるかどうかだけを気にしていた。
「ああ、彼方さんが聴いて喜んでくれるからって理由で弾いてたってやつか」
透耶に言われて、光琉は自分の母親の言葉を思い出した。
何をやるにしても、好きな事をやりなさい。
そして、好きな人の為になる事もやりなさい。
そう母親は言っていた。
事実、母柚梨は、生涯夫である彼方の為にしかピアノを弾いていなかった。
他のピアニストからすれば、馬鹿げた理由かもしれないが、栄光よりも何よりも、それが一番大切なのではないだろうか?
「うん、真似じゃないけど。俺もそう」
透耶は照れたように笑って言う。
透耶が再度ピアノを弾くのは、自分の意志だ。
鬼柳に強制されてやっているわけではないのだ。
自然と透耶がピアノを弾くようになっていったのは、鬼柳が側にいたからなのだろうと光琉は思った。
あいつの力って偉大だ……。
「まあ、透耶がそれでいいって言うなら、俺が口を挟む事じゃないけど。しかもそれ、鬼柳さんが聞いたら飛んで喜びそうなセリフだな」
光琉が笑って冗談ぽく言ったが、透耶は笑ったままで表情が固まってしまう。
……無茶苦茶喜ばれましたよー。
よくこのセリフを口にしているが、はっきりいって愛の告白をしているのとなんら変わりないのだと、透耶は今更ながら気が付いてしまった。
うーわー、俺、色んな人に言っちゃってるしー。
本当に今更である。
とりあえず、透耶が幸せそうにしているので、光琉はそれだけで嬉しかった。
家中を案内して、ダイニングとキッチンは省いた。
というか入るなとドアに紙が張ってあったのである。
「鬼柳さんが料理作ってるのか?」
光琉が不思議そうにそう聞いた。
「うん、凄いよ。家事なら何でもできるし天才的」
透耶がその家事力の凄さを説明すると、光琉は。
「その分、透耶は何も出来ないっと」
と付け足した。
透耶はプーッと膨れっ面になると言い返す。
「言うな。俺だって一応一人暮らししてたんだ」
とはいえ、まともな料理はしたことない。
レンジでチンくらいだろうし、ガス焜炉などはお湯を沸かした事しかないかもしれない。
「手伝って覚えるとかは?」
光琉がそう提案したが、透耶はしょんぼりしてしまう。
「さしてくんないんだ。この間、コップ割っちゃって、ちょっと手を切ったんだ。そしたら、余計に触らせてくれなくなっちゃった」
透耶がそう答えると、光琉は天を仰ぐ。
「過保護すぎ……」
その通りである。
「俺もそう思う。だからこっそりやろうとすると、すぐに嗅ぎ付けてきて、悉く横から奪って行くんだ。それで取り返そうとすると、もめて喧嘩になっちゃうんだよ」
透耶はその件については、まだ怒っているんだぞと言わんばかりに文句を言っていた。
「喧嘩?」
鬼柳と喧嘩したら透耶が適わない。
「ああ、口喧嘩だよ。力じゃ適わないの解ってるし、恭もどんなに怒っても暴力だけは振るわないから」
透耶は慌てて説明を付け足した。
力を使えば透耶など一捻り出来る鬼柳が、絶対に暴力を振るわないのは、それだけ透耶を溺愛しているからだ。
どんなに喧嘩しようとも、話し合えば解決出来る事は、随分前に学習している。
「で、勝敗は?」
ニヤニヤして光琉が聞くと。
「今の所、五分五分」
透耶は勝敗についてはそう思っていた。
だが、本当は鬼柳の方が妥協して折れている部分も多いのである。
「怒鳴ったりされたら、俺逆らえないや」
光琉は鬼柳の恐ろしさを感じて身を震わせる。
はっきりいって、あの人だけは敵に回したくないのだ。
だが、透耶はキョトンとしている。
「恭はいつもそうだし」
怒鳴る鬼柳がいつもの鬼柳だと透耶は思っている。
「いつも怒鳴る!?」
光琉が信じられないという顔をした。
「いつも何かあると怒鳴ったりしてるし、俺はもう慣れちゃったのかな? あれが恭だしねえ。怒鳴らない恭の方が気持ち悪いかも」
透耶はすっかり鬼柳の事を掴んでいる。
だからこそこのセリフが言えるのだ。
話が一段落して透耶は光琉を連れて、家の案内をした。
家の広さに関しては、光琉は驚かなかった。
それもそのはず。榎木津の実家はもっと大きいし、玲泉門院の本家も大きいから見慣れているのであった。
一番最後に辿り着いたのは、地下にある鬼柳の仕事部屋である。
勝手に入ってもいいのか?と心配する光琉だが、透耶は「恭だって俺の仕事部屋勝手に入ってるもん」といい「中にあるモノに触らなければいいよ」と言ってドアを開けて入って行く。
鍵はかかっておらず、別に見られて困るモノは置いてないらしいと判断した光琉は、恐る恐る部屋に入った。
そこに入って光琉は驚いた。
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