ROLLIN'
ROLLIN'
12
「も……もう……」
響は掠れた声で訴えた。
「なんだ?」
楸はとぼけた顔をして、指を動かし続ける。
意地悪……っ!
響は顔を真っ赤にして楸を睨んだ。
「どうして欲しい?」
中に入った指の動きを止めて、響の顔を覗き込んだ。
「ん……もう……やめて……」
響は楸の腕を押さえてそれ以上動けないようにする。
楸はニヤリとした顔をして、少し指を折り曲げ内部を擦ってやる。すると響の身体が反り返った。
やめてと頼んでも楸はやめるつもりはなかった。
久しぶりに味わう響は極上の味がした。
我慢していた甲斐があったのだろうか、自分も高められてしまい、実際は焦っていた。
それでも念入りに響の中を掻き回す。
そうしないと、響が痛い思いをしてしまうからだ。
怪我をさせたくはない。
その思いがあったから優しく、響の身体を開いていくしかない。それを念入りに繰り返していた。
楸の指が前立腺に触れると、響の身体は反り返り、甘い喘ぎ声が口から漏れた。
必死に我慢して口を閉じようとしても、上手く行かない。
嫌なのに、楸に触れられるとそうなってしまうのだ。
どうして……。
その答えは解っている。
自分が少しでも楸を思っているからだと。
本気で嫌なら、逃げ出したっていいはずだ。
そうすれば、楸も追っては来ないと響は思っていた。
だが、それは間違っている。
今や楸には響は必要不可欠な存在になっていた。
逃げたりしたら、卑怯な手を使ってでも響を取り戻そうとするだろう。
それくらいに溺れている。
その溺れ具合を響は知らない。知らないふりをしている。
そうしていないといけない気がして。
「あっ!んん……っ!」
変だ、とても変。
楸にされる事を許している。
許したく無い事のはずなのに、何故自分は身体を開いているのだろうか?
そうした葛藤はあっても、快楽に弱い身体では抵抗は出来なかった。
「お願いされたら最高にいい事してやるのに」
楸が響の耳元でそんな事をいい、耳を舐めた。
「ふ……ん……やだ……っ!」
「何故、そんなに嫌がる。身体はこんなに素直になのに」
「あっ!」
ずるりと指が抜ける感覚があって響は声を上げてしまう。
ゾクゾクとした快感が急に抜けて穴は収縮し、次にくるだろう衝撃を待ち構えていた。
「仕方ないな……」
楸はそう答えて、響の足を広げるとその中に身体を滑り込ませた。
そして己を響の中へと導く。
キツイのは最初だけ。後は中に入ると響の内部が導いてくれる。
「んん……」
「そのまま、力を抜いて」
「あっ……はん……っ」
「上手くなったな」
全部が響の中に収まると、楸はふうっと息を吐いた。
響の中は熱く、己を包み込んで熱くして鼓動を打っている。
「響……」
熱っぽい声で呼ばれて、響は瞑っていた目を開けた。目の前には楸の顔がある。ゆっくりと顔が近付いてきてキスになる。
「んっ……」
濃厚なキスを繰り返し、舌は絡まり合って、響は抵抗をみせようとはしない。それどころか、自分でも舌を絡ませてくる。
最近になって響はこうした行動にでる事が多くなった。
楸が教えた通りに反応し、答えてくれる。
拒むのは言葉だけで、身体は開いてくれる。
「はぁはぁ……」
「動くぞ」
響にそう伝えてから楸は腰を動かした。
何度も出入りを繰り返し、響が感じる場所を擦ってやる。
深く押し入って、内部を犯す。
その行為が続いてくると、響も自分で腰を動かすようになる。楸の動きを追うように。
それに満足する楸はなおも一層強く響の中へと押し入る。
そうして熱を持った二つの身体は、ただ快楽を追い求めるだけの獣と化してしまうのである。
「んっ!」
「っ!」
そして二人は同時に絶頂を迎えるのである。
「重い……」
掠れた声で響がそう言った。
今絶頂を迎えた楸が上に被さるようにしているからだ。
「楸……重いって」
響はもぞもぞ動いて、楸の下から逃れようとする。
楸はそんな響を押さえ込んで顔中にキスしてから退いてやった。
ベッドに腰をかけて座り、煙草を一服する。
楸が退いてくれたお陰で響はやっと普通に深呼吸が出来た。
呼吸を整えてからベッドを降りる。
シャワーをもう一度浴びる為である。
のそのそと動いて、バスローブを拾うとそれを羽織った。
風呂から上がってからそれしか身に付けてなかったのである。
着替えを用意してなかった為、途中で楸に見つかって拉致られた状態だったのだ。
部屋に戻って、パジャマと下着を出して風呂に向かう。
ペタペタと静かな部屋に音が響く。
耀の部屋を覗くとちゃんと寝ている。
それから風呂に入る。
シャワーを出して暖かくなるまで待ってボディーシャンプーをつける。
身体を洗いながら、はあっと溜息が出てしまう。
身体中に付けられたキスマーク。
背広からはみ出ないように注意しながら付けたらしいが、その痕がくっきりと残っている。
「身体中かよ……」
思わず呟きが漏れてしまった。
そこまで楸がするとは思わなかったので響は眉を顰める。
ここ数日、楸は響を抱いていた。
それも響が疲れていても、文句を言ってもやめてくれない。
あの事件以来、毎日のように楸は響を抱いている。
「もう……何なんだ?」
そう考えても解らない。
楸が何を考えているのかなんて、響には解らない。
身体は抱かれるたびに楽になっていく。
「ちくしょー」
ガシガシと身体を洗って頭も洗う。
そしてシャワーで流して上がった。
パジャマを着込んで楸の部屋に戻る。
楸は、ベッドのシーツを変え終わって、バスローブ姿でベッドに腰を掛け、何かの書類を見ていた。
「風呂、開いたけど」
響はそう言って部屋に入る。
「ちょっとこっちこい」
楸が顔を上げ、書類をサイドテーブルに戻すと、響を呼んだ。
響は不思議な顔をしながらも楸に近付く。
ぐっと手を取られて楸の上に倒れてしまう。
「お、おい……!」
どういうつもりだ!
そう叫ぼうとしたが、ヒョイッと抱えられて楸の膝の上に座らされてしまった。
なんだ?
キョトンと響がしていると、頭に掛けていたタオルを取られて、頭をゴシゴシと拭かれてしまったのである。
そうしたいなら最初から言え!
そう言いたくなってしまったが、意外や意外。こうやって頭を拭いて貰うと何故かリラックス出来た。
気持ちイイー。
ホッと息を吐いて、楸がするように任せた。
緊張していた響の身体の力が抜けたのを感じた楸はクスリと笑ってしまう。
「気持ちいいか?」
「うん……他人にやってもらうのって意外に気持ちいいんだな」
響は正直に答えた。
髪を拭き終えると、楸は響に寝るように言う。
「明日、早いから食事はいらない」
「ん……解った」
響はベッドに潜り込んで、フッと息を吐いて目を瞑った。
楸は暫く響の寝顔を見ていたが、欠伸を一つして立ち上がると風呂へ向かった。
楸の気配がなくなると、響はすうっと寝入ってしまう。
楸が戻ってくると、響は完全に夢の中である。
そんな響を抱き締めて楸は眠りに入った。
響が次に目覚めた時、楸はもういなかった。
欠伸を何度かして響も起き上がる。
今日は日曜、仕事は休みである。
だが、いつも通りの時間に目が覚めてしまった。
時計を見ると、6時半を少し回った頃。
まだ眠いので、さっさと二度寝を決め込む響。
だが。
「響ー起きた?」
部屋をノックされて耀が入ってきた。
「響、寝てる?」
「うん……寝てる」
「起きてるじゃん」
「起きなきゃ駄目かな?」
「今日、買い出し行くっていってたじゃん」
「解った起きなきゃな」
響は起き上がって大きな欠伸を一つした。
「響眠いの」
「あ……ああ、昨日ちょっと遅かったし」
「でもパパも遅かったのに早く出掛けたよ」
「う……」
それを言われると弱い響である。
あの絶倫魔人……疲れを知らないのか……。
そんな事を思ってしまう。
だが、それによって楸がリラックスしているのは事実なのである。
着替えを済ませて朝食の準備をする。
部屋にいるのは、耀と耀のボディーガードである九猪と億伎だけである。
その人の分も作って一緒に食事をする。
それが日常だった。
「おはようございます」
玄関でそう言われて、響は首を傾げた。
黒の背広を着たこの男、どこかでみたような気がしたのである。
「先日は御迷惑をおかけしました」
そう言われて響は思い出した。
そうこの男、つい先日、響を拳銃で脅して誘拐し、楸を殺そうとしていた男だったのだ。
「あ!」
「俺、三束(みつか)といいます。以後御見知りおき下さい」
「怪我大丈夫なのか?」
あの時、三束は怪我をしていた。
それも腹に鉄砲弾を食らってである。
「大丈夫です。このようにもう完治してます」
「組に入ったんだ」
「俺が5代目にお願いしたんです。もともと真っ当な人間ではなかったから、他に行くところもなくて。それで拾って貰ったのです」
どうやら楸に食らい付いたらしい。
わざわざヤクザにならなくてもいいのに……。
そう思っている響に三束は意外な事を言い出した。
「これから響さんのボディーガードになりますんで、何でもおっしゃってください」
「ええ!?」
響は驚いた声を上げた。
な、なんでそんな話になってる訳?
「楸、どういう事だ!」
夜遅くに帰ってきた楸を起きて待っていた響はそう叫んでいた。
「なんの事だ?」
楸はスーツを脱ぎながらそう聞いた。
「三束(みつか)の事だよ!」
ベッドから起き上がって響はそう言った。
三束と言われて、楸は少し考え込んだ。
「ああ、あのやんちゃ坊主か」
やっとピンとくるものがあったらしい返事だった。
「そうそれ!ボディーガードって何だよ!」
響は怒鳴っていたが、楸が静かな声で言ったのである。
「仕方ないだろ。お前、二度も誘拐されたじゃねえか。これ以上自由にしておくわけには行かなくなったんだ。それだけだ」
それを言われると弱い響ではあるが、自分の周りが奇妙なもので囲まれて行くのを大人しく見ている訳は無かった。
「三度目はない!」
次があるかもしれないと、最近では注意しているつもりである。
送り迎えも妥協してしてもらっている。だが自分はそこまでしてもらう謂れは無いと思っているのも確かである。
自分はただの借金持ちの家政夫である。
それがいつ誰に変わってもいいのではないかと思っていた。
「二度ある事は三度ある。お前、自分が喧嘩に強いと思って自惚れて無いか? 二度も攫われやがって」
楸は背広をクローゼットにしまうと、響のいるベッドに腰を掛けて響を引き寄せた。
顎に手を当てて、自分の方に向かせると楸は言った。
「俺はお前を手放す気は無い」
はっきりとした口調でそう言われ、響は目を見開いた。
「俺の代わりなんていくらでもいるだろ」
本当にそう思っていたから、口からそう出た。
すると楸の声が低くなった。
「お前の代わりが他にいるだと? 何ふざけた事を言ってやがる。お前、月時(とき)響だろ」
「ああ」
「月時響は、世界中探してもお前しかいない」
「は?」
キョトンとしてしまう響。
何を言われているのだろうと思ったのだ。
「俺は月時響にしか用はない。お前の代わりなどいない。解ってないならはっきり言ってやる。俺はお前を愛してるんだ。だから他には必要ないと言っている」
楸の愛の告白だった。
響はますます目を見開いてしまう。
俺を愛してるだと?
そんな馬鹿な事。
「……なに言って……る」
「解らないのか? 俺はお前を愛してる。手放す気はない」
今度ははっきりとした口調で楸は言った。
それに呆然としてしまう。
「お前の答えを聞こうと思ってるわけじゃないから返事はいらない。だが、覚えておけ。俺が惚れた相手は月時響だ。絶対に手放さない。それだけは覚えておけ」
楸はそういうと、響の唇に軽くキスをした。
響は呆然となっていて、それをさける事が出来なかった。
ただ、俺を愛してる?
手放す気は無い?
そう頭の中で楸の言葉はぐるぐると回っているだけだったのであった。
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