calling

「よいしょっと！」
　寧野が足を振り上げ、体重差は三十キロはありそうな大男を一本背負いで投げて、転がったところから一気に起き上がった。
　周りには男たちが二十人ほど倒れている。
　場所は、本社の目の前だが、人通りはなかった。
　誰かが道路の工事中の札をさげ、地面を掘って音を立てていたから、人通りは迂回していて、本社から出てきたところで寧野たちが襲われたわけだ。
　このところの寧野への襲撃が続き、寧野の周りは武術などの最強集団がボディガードについているのだが、それでも寧野の手を借りないといけないほどの強敵が用意されていた。
　中でも寧野が一番強く、俊敏であるため、一人で三人ほどをあっという間に倒してしまい、最後の一人を投げ飛ばしてしまうと、寧野を守ってきた人間は「やっぱりそうなるよね」という顔をして呆れた。
　襲ってきたのはイタリア人だったので、ピエトロ・リアルディの部下たちだろう。
　寧野を捕獲するのが目的なので、当然襲撃に武器は素手だ。そうなると武闘派である白鬼（なきり）の人間の方が能力的には上である。
「寧野さん、なんで前に出てるんですかねえ」
　犹塚智明（いづか　ともあき）が寧野の側にやってきて、寧野の体に傷一つないことを確認している。
　寧野はそういう犹塚に笑って答える。
「だって武器は持ってなかったし、強そうな人がいなかったから」
　そう言って本社から出てきた人間を手配して、二十人をまとめて社内に運び、地下からバンを使って運び出した。
　さすがに少し乱闘したせいで、見かけた通行人に通報されたようで、警察が本社ビル前に集合したのだが、その時にはすべて片付けてしまっていた。
　警察も現場を見て、誰もいないことを確認し、周りの会社などに乱闘を見かけなかったかと聞いて回っていた。だが乱闘をしていたのはたった数分。しかも襲った側が現場を誰も通れないようにしていたせいで、イタリア人が通行止めをしていたという情報しか警察は入手できなかった。
　だがそのイタリア人も消え、いつの間にか工事をしていた人間も消えてしまっては、一般的な警察官は上司に報告することもせずに、何もないと報告書を仕上げるだけだった。
　襲ってきたイタリア人は耀が直接尋問し、聞き出したいことを聞き出した上で、織部寧野に二度と手を出すなと警告を与えてから空港に放置してきたという。
「最後の一人の襲撃もあっさり撃破。これで懲りてくれるとありがたいけど」
　寧野がそう言っていると、志智達也が久山鉄男を連れて寧野がいる家にやってきた。
　寧野たちの家は、本家の敷地内に別に建てた一軒家に住んでいる。昔は倉庫があったところで広い土地を普通の一軒家にしているから、本家ほどの大所帯ではない。ただ本家から一軒家までは通路がつけられて移動しやすいようにしてあるので、いわゆる離れという感覚であろう。
　老院だった志智（しち）と久山は、今回の後始末の報告をしてくれにきたようだ。
「ご機嫌よう、寧野様」
　久山がそう言い、先に挨拶をしてきてから志智がにこりと笑う。
「どうぞ」
　座っていたこたつからソファに移動した寧野が出迎えると、二人はソファに腰を下ろしてから話し始めた。
「今日は耀様は」
「朝から本社の方です。一昨日のことで組対がちょっと」
　組対とは警視庁の組織犯罪対策部のことだ。白鬼（なきり）は組織犯罪対策部などから暴力団とは認められてないが、それでも宝生組の元若頭が作った組織ということで一応監視の対象にされているのだ。
　しかも一昨日はイタリア人とやりあっていたらしいという情報が寄せられたとなれば、一応の調査はするわけだ。耀はそんな様子に不安がっている部下たちを引き締めるために出社している。こういう時にボスがいれば、大抵の社員は安堵するわけだ。
　寧野は昨日の今日ではさすがに出歩くのは危険だと言われ、本家に引きこもって書類を仕上げていた。
「組対も杉浦警視が余計なことを考えないでくれるとありがたいのだが」
「たぶん、考えても俺のこととなれば、手の出しようがないと思いますよ」
　寧野がそう笑って言うと、志智も笑ってしまう。
「確かに、ありもしない噂程度の超能力の話を真に受けて警察が動いたとなれば、それこそ警察の信用問題になる」
「そういうことです」
　寧野も笑って言うと、久山が言った。
「そのイタリアのことですが、昨日、デル・グロッソ家のボスであったヴァレリオ・トニが暗殺されました」
「え？」
　笑っていた寧野も笑いを納めて真剣な顔をして身を乗り出した。
　ヴァレリオ・トニは昨日、スイスにあるイタリア領土にあるカジノにて、ホテルを出たところを射殺された。狙撃による暗殺で、現地警察も調べているが犯人は見つからなかった。
　最近のデル・グロッソ家は呪われているとさえ言われるほどの不幸。しかし裏の世界では真栄城俐皇率いるクトータとの戦争にデル・グロッソが負けたのだと広まっているという。
「……俐皇が……」
「クトータにとってもデル・グロッソが元々持っていた背景にあるものがほしい。狙っているものがある以上、潰すのがクトータのやり方。だがほぼ潰れたと言っても過言ではないデル・グロッソを徹底的に潰すつもりなら、俐皇にとってどれほどの恨みがあるかという問題になります」
　そう久山が言うので寧野も頷く。俐皇は自分の両親を殺しはした。だが、その前にデル・グロッソ家に殺されそうになっていた。その事実は消えない。現実社会では、デル・グロッソ家の長男アレッシオと長女ダニエラが手を組んで、次男ジョルジオ夫婦を殺す計画があり、その実行をしたとされている。
　俐皇が殺したという明確な情報や証拠はなく、一緒に生き残った事情を知るメイドのサーラは、助けてくれた俐皇に付いていってそのまま消息不明だ。　
　ただ寧野たちはそうした俐皇が殺したという明確になる証言を得ていて、その情報を必死に俐皇が潰そうとした事実から、俐皇が両親を殺したと結論をつけている。それに対して俐皇は反論はしていない。
　だが警察に俐皇を捕まえさせるのには無理があることくらい、寧野も耀も重々承知である。だから俐皇はイタリア当局から追われてはいない。
「俐皇の心次第ってことか……」
「そうなりますかね」
　デル・グロッソ家のヴァレリオ・トニが死んだということは、金糸雀（ジンスーチュエ）問題が一応はクリアされたと考えていいのだろう。命令がなければ部下は動かないし、この三連続の失敗でさすがに懲りたと思われる。
　真紅（マリーノヴィ・ツヴェート）は壊滅し、赤い雪（クラースヌィ・スニイェク）は新たな真紅を結成させ、日本との取り引き再開に向けて復旧中だ。
「ロシアのマトカも、あれから動きはありません。トーリャの顔も割れましたし、そうそう寧野様の周りをうろつくこともできませんでしょうし、アリョーシャはさすがに父親のグリーシャに失敗した事実すら知らせることはないかと思います。トーリャは諦めないかもしれないが、アリョーシャは懲りたかもしれませんな」
　トーリャの失敗は既にアリョーシャの知るところであるという。トーリャから寧野には金糸雀（ジンスーチュエ）の力がない事実がそろそろ伝わっているはずだ。あれだけ寧野の側で動いていたトーリャが、寧野を調べないわけがない。調べても寧野の力のお陰で白鬼（なきり）が動いていると見えるほど、トーリャが愚かだとは思えないのだ。
　もちろん、アリョーシャもそこまで本気だったわけでもない。親族だから受けたものであり、そこまで重要視することでもないと思っているだろう。実際に本気で狙っていたとすれば、トーリャに任せることはしなかっただろう。
　半信半疑だったからこそ、自分では動かなかった。
　そして依頼を持ってきた、高嶺会の真栄城安里しても、寧野のことは消えて欲しいのだろうが、寧野一人を動かしたせいで大きな騒動に発展するのをみれば、手を出すべきではないと判断しただろう。
「安里に関しては依然魂胆はそんなものでしょうし、鵺（イエ）に対しての不信感からの行動でしょう。本気で寧野様を排除しようと考えていたなら、今回は失敗したという事実のみが伝わっているでしょう。それに安里本人が動くことはないということが分かっている以上、警戒するのは別組織となりますし」
　つまり今まで通りに周りに気をつけて、外国人は特にということらしい。
「鵺（イエ）といえば、情報が入ってきました。胡高黒（ホゥ　ガオヘイ）が殺されたそうです」
　そう志智が言った。
「……高黒（ガオヘイ）が？」
　高黒（ガオヘイ）に会ったのは、貉（ハオ）を壊滅させた時だけだ。それから鵺（イエ）に連れて行かれ、彼の消息は寧野も知らない。彼が何を知っていて何を知らないのか、それは鵺（イエ）にすべて任せた。
　もう復讐は終えていたから。
「ええ、隔離されていた場所が俐皇に漏れたと考えた方がよろしいということでした」
「やっぱり……俐皇なのか……あいつ何してんだ？」
「金糸雀（ジンスーチュエ）に一つでも繋がりがあるものを殺しているのでしょう。彼の内情は分かりかねますが、金糸雀が脅威である事実は俐皇にも分かっているのでしょう。幸い、俐皇にとって寧野様が大事である今は寧野様が殺されることはなさそうですが、寧野様を殺してなり得る金糸雀一族はすべて殺してしまうでしょうね」
　志智の言葉に寧野が目を見開く。
「まさか……」　
　寧野を殺させないために、金糸雀候補になりそうな者達を殺して回っている？とは口に出して言えなかった。
「俐皇め、余計なことを」
　寧野が困って固まってしまっていたところに耀が帰ってきた。
「……耀……」
　不安そうに耀を見上げた寧野に、耀は額にキスをしてから言った。
「あいつが勝手にあいつの事情でやってるだけだ。お前が頼んだわけでもないし、望んでもいない。その事実だけ受け止めておけ」
　耀がそう言うと、寧野はやっと不安な顔をやめた。そうなのだ、寧野はそんなことで延命をされても嬉しいとは感じない。たしかに金糸雀（ジンスーチュエ）一族が生きていれば自分が殺されてしまうかもしれないのは事実である。それでも寧野は簡単に殺されるつもりもなかった。
　俐皇がやってることは俐皇の事情があるからだ。
「お前の命を、あいつが右へ左へできるなんてことはあってはならないことだ」
　耀がそう言って、寧野も頷く。生きるも死ぬもその時の運次第のことだ。そう思って寧野は生きてきた。その足場が俐皇のお陰であると思いたくはなかった。
「それで、俐皇の方は？」
　耀はそう言いながら椅子に座った。
　それを見てから寧野はコーヒーを入れて皆に出した。
「ドイツで見かけたという話がありましたが、最近のクトータの動きを見ていると、本腰を入れ始めたと思って構わないかと」
「ふん、潜伏した九十九の動きも分からないままか？」
「さすがに潜伏のプロとなりますと、また誰かになりすましてのことでしょうから、難しいことです。あれは表に出てくるまで手の出しようがありません」
　そう言われて耀は舌打ちをしてしまった。
　俐皇に後れを取ることはなくなったつもりであるが、それを育て、父の代わりだった叔父、宝生楸すら、手玉に取るような九十九朱明の行方が分からない方が耀にとっては不安だ。
「とりあえずは……金糸雀（ジンスーチュエ）伝説の証明がしようがなくなったってことだよね……」
　寧野がそう言い、耀は頷く。
「寧野がどうこういう問題ではなくなった。世界の誰かが金糸雀（ジンスーチュエ）伝説を忌み嫌っていて殺し回っていると噂が広まっているくらいだ。今回のデル・グロッソの話も広まり始めるだろうな。真紅（マリーノヴィ・ツヴェート）の一時解散も噂になっているくらいだ」
　耀の言葉に寧野は何それと首を傾げた。
「最近出回っている噂の一つで、金糸雀（ジンスーチュエ）伝説の噂自体を消したがっている誰かが、金糸雀一族を殺し回っているという話がでてきた。さすがに世界中の誰にでもそれが分かるくらいの派手な殺しだからな。調べてみたら金糸雀一族だったなんてことが数度続けば、いい加減気づくレベルだ。いらない恨みは買いたくないってツァーリのボスが気をつけろと言っていた」
　耀はその話をツァーリのボスであるキーマことアキーム・ロベルトヴィッチ・バクシンだ。今でも耀とは親友と言って付き合いがある。彼はロシアの西側をマトカからどんどん奪い、以前の二倍ほどの力を誇っている。赤い雪（クラースヌィ・スニイェク）とは現在共同戦線を張っており、お互いの縄張りは犯さない契約で行動しているらしい。
「最近は金糸雀（ジンスーチュエ）に触れると、組織が崩壊するっていう至極真っ当な噂も出回っているおりますが」
　志智（しち）が笑いながらそう言った。
　久山も笑っている。
　寧野はそう言われて、ふと考えた。
　寧野に危害を加えそうになった組織、例えば和青同（ワオチントン）辺りも消えてしまったし、煌和会（ファンフォフゥイ）は鵺（イエ）との抗争に敗れ、香港から撤退する羽目になっているし、今回は真紅（マリーノヴィ・ツヴェート）が一旦解散された。
　残っている俐皇は個人であったけれど、本拠地にしていた島は和青同（ワオチントン）に爆破され、損害を受けている。
　今回は元々の依頼をしたデル・グロッソ家もまたもやボスを失うという愚行を犯した。
　寧野が何かやったわけではないが、動けば撃たれるとばかりに抗争に巻き込まれている。
　まだ被害を受けていないのは、間接的に請け負ったマトカと高嶺会（たかみねかい）であるが、その事実を知るものは少ない。
「このまま寧野に触れると金糸雀（ジンスーチュエ）の呪いにかかるみたいな噂が広まってくれれば、寧野に手を出すのはいなくなるかもしれないな」
　たまたまそうなっただけの偶然が重なったことではあるが、実際は寧野が巻き込まれているのは事実である。だから寧野を動かせば、どこかに損害が出ると認識してくれれば平和な人生が送れそうではある。
「何でもいいから、平和でいたいな」
　寧野がそんな感想を漏らしたので、話が終わった志智と久山が下がっていく。その中で久山が志智に文句を言った。
「わざわざ寧野さんの不安を煽らないでもよかっただろう」
「そういうな。俐皇のことは、寧野様にとってトラウマから解放され、懐柔まではいかないにしろ、いい感情を少しでも持たれては困るんだ。だから心が何処にあるのか我々が知っておかなければならない」
「そうは言ってもな」
「分かっているか。もはや寧野様は一人の問題ではない。耀様の問題でもない。我ら白鬼（なきり）の問題なのだ。寧野様が今更抜けると言うことはもう許されないくらいに白鬼（なきり）の中に入り込んでいる。だからこそ、土台一つが揺らぐことで白鬼（なきり）が消えることもあることをしっかりと認識してもらわねばならんのだ。甘いことを言うのはお前や阿門（あもん）に任せているからな」
　そう志智が言うので、久山も仕方ないというように頷く。
　久山が寧野に甘いのは、絶対に裏社会から抜けられない寧野を可哀想だと思っているからだ。組長をやっていた久山でさえ、抜けることができるのに、何も持っていない寧野が裏社会から抜けることができない血筋であるという理由だけで、絶対に一般人になれない未来があまりにも可哀想だと思えて甘くなる。
　だが志智はそうならそうとして受け入れて、強く生きてもらいたいと言っている。耀の側にいるならしっかりと立ってもらわないと困るのだ。隣に立つものが揺らいでいては耀の命にも関わる。
「分かってるさ。寧野様も」
「分かっているのと実行できるかの違いを言っているんだ」
　志智がそう言ったので、久山は笑って言った。
「なに、問題はないさ。耀様が側にいるんだから」
　久山がそう言うので志智（しち）は言葉を失う。
「お前は基本的に楽観的なんだよな」
「なんとかなるものさ」


　志智や久山が去った後、寧野はいつもと変わらず食事の用意をし始めた。本家でもらってきた食事がほとんどであるので、寧野がするのは並べるだけである。栄養関係がしっかりしている本家の食事なので、寧野は忙しいのも手伝って最近は料理をしなくなっていた。
　それでも耀は文句を言わないし、抜ける手は抜いていいと耀に言われた。その方が本家の料理人のやる気にも繋がるらしい。
　時計は十八時を周り、テレビからは今日のニュースが流れている。
　そのニュースではロシアのテロ爆破事件がまだトップニュースである。
「たぶん、そのテロ。俐皇と関係があると思う」
　寧野が静かにそう言うと、耀は黙って先を促す。
「爆破されたホテルの部屋が、その……泊まったところだったから」
　真っ先に爆破された部屋がそうだったと告げると、耀にもすぐに伝わった。
「ロシア当局にでも目をつけられたか何かだろうな。マトカはまだロシア当局と繋がりがある方だから、マトカの周りをうろつく俐皇を逮捕して、こっそり獄中で死んでもらう予定だったかもしれない。だが、俐皇はテロリストと手を組んで、けむに巻いたと」
　そう耀が言い出して、寧野はびっくりする。
「お前がニュース見て顔色を変えたから、気になって調べてみた。どうやらロシア当局が俐皇の潜伏場所に侵入した瞬間に爆破されたらしい。で、俐皇をテロリストにして世界で指名手配しようとしたら、他も爆破され、テロリストが犯行声明を出して俐皇の名前を消した。実際爆弾を仕掛けたのはテロリストだから、俐皇は巻き込まれた形を立証できる。おまけに当局はそんなことをやっている暇がない。テロリストを捕まえる方に動かないと、国民に批難される。俐皇一人に構ってられないときた。やり方が九十九にそっくりだ」
　忌々しそうに耀が言ったので、寧野も肩の荷が下りたように息を吐いた。
「言おうとしたけど、確証がなかったから」
「分かってる。そう思ったから調べた」
　耀の答えに寧野は笑って言った。
「もう、耀には叶わないなぁ」
　そんな笑顔を見て、耀はふっと笑う。
「明日からまた本社で仕事をしてもらう。お前は取り引きとかに駆り出すよりは、本社で仕事を回してる方が使えるからな」
　そう耀が言って寧野の仕事の方向性を見極めた。
「やっぱデスクワークの方が向いてたかぁ」
　寧野はこの一年、色んな仕事を回してもらってある一定期間はやってみたが、やはりやり慣れたデスクワークの方が楽だったことを白状した。
「ちゃんと寧野に合っているところで俺のことを助けてくれればいい」
「うん、任せて」
　耀の言葉に頷いて寧野は微笑み返した。
　その笑顔は、耀の頬を少し赤く染めるような綺麗な笑顔だった。

　ずっと側にいるために選んだ道で、やっと落ち着ける場所が分かった。
　世界はいろいろ回るけれど、生きるべき道は見つけた。
　この世界が酷い世界でも、耀がいれば生きていける。
　織部寧野が選んだ道は険しいけれど、それでも宝生耀と共に生きていくと決めた。
　どこにいていいのか分からなかった時から、時間はかかったけれど寧野はやっと耀の隣に立っていると実感したのだった。