shortshort 28

君に似た声

 告白をして振られた。
「友人だと思っていた……だからショックだ」
 それが告白した友人に言われた言葉だった。
 そして友情はそこで終わった。
 富澤にとって友人は恋愛感情を持つ者であり、友人のままではいられないのだ。
 富澤から距離を取り、それに伴って友人である柴田勇介も大学進学を理由にして距離を取ってきた。
 あれだけ仲が良くても大学で離れてしまったら友情なんて消えるんだなと他の友人達が話しているのを聞いた。
 実際、富澤は大学が忙しいという理由を作って同窓会にも出なかった。地元に戻る理由がなかったのもある。
 富澤が大学生になった時に親が離婚をした。
 富澤が大学へ入ることが条件で二人は何とか家族の形を取っていたけれど、それも役目を終えたと言ってさっさと別れてしまったのだ。
 もちろん実家は売りに出され、富澤に残されたのは祖父母の家だけだった。
 その家は今、大学へ通うようになった富澤が住んでいる家だった。その家をくれるというので富澤はちょうどいいとその近くの大学を選んだのだ。
 友人の勇介ともこじれてしまったし、どんな噂が地元で流れているのかさえ分からないから、もうあの街には戻らないつもりでいた。
 そして一年かかり勇介のことも忘れ、他の男の子とも付き合ってみた。
 元々富澤はそっちの人間だったようで、男相手でないと気分が盛り上がらない。何も勇介だけが特別だったわけではなく、富澤が変わっていたわけだ。
 けれどどんな男の子を抱いても、恋心を抱くことはなかった。
「どうしてんだか、本当」
 セックスの技術だけは上がっていき、行きずりでも富澤と寝たがるネコがバーに行けば沢山いる状態になり、二年間で抱いたネコは百人を越えていたかもしれない。
 それでもその中の誰かに特別は生まれなかった。
 二度、三度寝ている人もいたが、それは割り切っていて、ただ気持ちがいいからという理由に過ぎなかった。
「ほんと、誰か一人にしなよ。そのうち刺されるよ?」
 一番古くからセフレとして付き合ってくれているバイト先の先輩がそう言うけれど、富澤はそういう気分になれなかった。
「何か、振られてからそれを引き摺ってましてね~、恋愛して面倒ごとになるのも嫌なんですよ。心がないのに絆されて、付き合ってみたら何か違ったじゃ相手に失礼でしょ?」
 至極真っ当なことを言う富澤に先輩は確かにと頷く。
「まあ、そういうのはトラウマっていうのかな。相当仲がいい人に思い切ったってところかな」
「そうですよ。大親友だったんです。なので俺がしくじったんですよ」
 あのまま友人として過ごしていれば、こんな辛い思いよりはマシな時間は過ごせたはずだった。
 そして二年が過ぎた。
 富澤は居酒屋のバイトの中で古株になり、先輩も卒業をしてしまった中、新しいバイトが入ってきた。
 その中に富澤が驚くような人が混ざっていた。
「あの、富澤先輩ですよね。兄が、勇介が友達だった。弟の大介です」
 あの勇介にそっくりな顔と声が側にあった。
「あ、そうなんだ?」
「はい、先輩の話はよく聞いていたんですよ。でも大学が違うところだったから会えなくなったって兄が言ってて……僕はこっちの大学に来たので、兄がよろしくと言ってました」
 ニコニコと笑ってそういう大介は、勇介に瓜二つどころか声までそっくりそのままだった。あの告白をした時の勇介と同じ姿が目に蘇って、それが目の前の大介に重なっていく。
「ああ、そうなんだ……もうすっかり忘れていたよ」
 富澤がそう言うと大介はあっと何かを察したようだった。
「すみません、僕が懐かしいと思って気軽に話しかけてしまって……」
 富澤と勇介が会わなくなった理由を少し察したようだった大介に、富澤はニコリと笑って言った。
「お前が気にすることじゃないさ。俺らは上手くやろうな?」
 富澤はそう言った。
 それに大介は少し顔を赤くして笑い返してくれた。
 そんな大介を見ていると富澤の中で枯れていたはずの思いがわき上がってくるのを感じた。


 バイト先の仕事を覚えさせるために古株の富澤は大介に新人バイトを纏める役目を与えた。なので大介はバイトの仕事の他、他のバイトを管理するバイトリーダーの役割もしなければならず、それを受け継ぐためにその仕事も居残りでやることになった。
 居酒屋は店員の料理人二人と店長代理の富澤とバイト六人で回っている。
 オーナーは店を開けるときと閉めるときに資金の計算にやってくる程度で、それ以外は富澤が好きにシフトを決めて良かった。
 だから大介のバイト時間は自由に操れて、富澤は居残りをさせてまで覚えさせた。
 その甲斐があり、大介はしっかりとバイトリーダーの役割を覚えてくれた。
「どうして僕がバイトリーダーなんですか?」
「お前が一番人当たりがいいからな。覚えも早いし。俺は来年はいないわけだから覚えのいいのに引き継ぎたいわけよ」
 富澤が真っ当な理由を言うと、大介は少し拍子抜けしたような顔をした。
「何だ……僕はてっきり」
 少し悄気(しょげ)ている大介を見て、富澤はニヤリと笑っていた。
「どうした、お前、まさか俺が好きだとは言わないよな?」
 ニヤニヤして富澤が言うと、大介はハッとして顔を上げたけれどその顔は真っ赤になっていて、耳まで赤くなっていた。
「……そ、それは……すみません」
 そう言い、下を向いてしまったのを見てから富澤は心の中でほくそ笑んだ。
 これこそ富澤が狙っていたことだった。
 二度目の失敗はしない。そのつもりで自分からアプローチはしなかった。
 その代わり相手がこっちに気があるのを見つけて、そこを助長させる行動はした。
 優しい先輩を演じたし、頼りになるバイト仲間も演じた。
 気軽に何でも話せる間柄になって、勇介と大介は違う部分を見つけた。
 勇介はずっと友情しかなかったけれど、大介の中には富澤に対して憧れや好意が見えたのだ。
 そこを更に強くさせるためにスキンシップを取った。
 体に触れて唇が触れそうな距離で話しかけたりと、セクハラギリギリのところを仕掛け続けて三ヶ月だ。
 完全に大介が富澤への好意を隠せないくらいに気持ちを助長させることが出来た。
 そして大介から告白をさせてしまえば、あとは富澤の言いように出来るわけだ。
 富澤は大介に対して、勇介に出来なかったことを全部するつもりだった。
「お前が俺を好きならば、ここで裸になれるよな? 言っておくけど俺はタチだからお前がネコでないと話は終わるんだけどな」
 しっかりと大介を見て言うと、真剣な顔の富澤からの意味が伝わったのだろう。大介はゆっくりと下半身の服を脱ぎ始めていた。
 そうしてでも大介は富澤に抱かれたいと思っているということだった。
 そんな大介に触れながら、富澤は言っていた。
「俺に抱かれたいなら、俺のルールを守って貰うよ? これでも相手には困ってないんだから、お前が抵抗をしたらそこで終わり。嫌がる相手をやる気はない」
「……はい」
「よしじゃあ一回やってみようか?」
「……はい、お願いします」
 大介は真っ赤な顔をして下半身を丸出しにしていたのでその姿の写真を撮った。
 これで大介は富澤から逃げられなくなった。


 大介がして欲しそうだったのでキスを沢山してやり、体中を撫で回しながら富澤はこれが勇介だったらどれだけ良かったかと思った。
 大介は勇介に全てがそっくりだったけれど、それは姿と声のみだ。
 勇介は決して富澤に触れさせることはなかった。
 だから悔しかったから、大介に酷いことをした。
 ペニスを弄り回し、二度も射精をさせ、座敷に上げてそこでアナルを拡張した。
 道具は持ってきていたからそれを持ち出し、大介のアナルには様々な道具が出たり入ったりしてどんどんアナルを拡張していく。
「ひゃっああぁっ?! あぁあああ! もっ、あぁっ、あっはぁ、ああんっ……!」
アナルには既にバイブまで挿入り込んでいて、大介は覚えがよかった。
 居酒屋は明日は休みの日で、戸締まりは既にしてある。開店閉店を任されている富澤だけは鍵を持っていて、自由に店に出入りが出来たから、店は今、真夜中で誰もいない状態だ。
 居酒屋なので裏通りにあり、ランタン一つならば明かりがあっても怪しまれない。
「ああ、あああ! やあぁあっ……! や、だっ……あ、んんぅう!」
「いや? じゃあやめる? まだ俺のペニスは挿れてないけど、それでもいい?」
 散々おもちゃにして色んな道具を使っている。
 乳首にはニップルクリップを付けているし、腕は逃げないように後ろ手に拘束してある。もちろん嫌だと言ってくれれば外すと言っているが、一回犯すまでは絶対に解かないつもりだった。
「あぁあっ、はぅん……っ、いやじゃないですっあ、あ、あっひぁあああっ! ぁう……っ、ああぁ、あうん……っ」
バイブを出し挿れされながら奥を犯されている大介であるが、逃げようという素振りはしなかったし、ただ少し嫌がる程度で富澤を否定はしなかった。
 そこが富澤には心地よかった。
「あぁっ……、あ、ぁんっ、あっ……あつ、い……っん……っ、んは……っんは……っ、ぁ、……は、はぁ……ああ……はぁ……っ」
「大介は覚えが早いね……さすが、そろそろ俺のも挿入るかもな」
「ひんっあゃ、ん……あああん……ああぁ……っあぁん……っあふ、……ぁ、あ、ああ……っ」
「もっと気持ち良くなりたいか? 俺のペニスが欲しいか?」
「あっ……、きもちよくなりたいっですっ、あぁ、先輩のおちんぽ欲しいですっああ……あっあぁ……っ、あぁん、あぁっ、ああ……っ」
大介がペニスをおちんぽと言うのは、富澤が教え込んだことだ。
 アナルのことはおま○こと教えたし、嫌らしい言葉はいくらでも言えと言ってある。そして喘ぎ声を殺すことは絶対に許さないと告げているからか、大介はその全てを守っている。
しかし少しの抵抗はやはりあり、時々嫌だと言うことがあるが、やめるかと聞くと絶対にやめるとは言わないのだ。
 それだけ大介は富澤を求めているのが分かる。それが分かるだけ、富澤は大介に酷いことをしたくなった。
すぐにバイブを抜き去ると、富澤は大介のアナルに勃起した自分のペニスを突き挿入ていた。
「やぁあっ?! あぁっ、あぁん……っんはっ、あぁっ、あああっ! やぁ、らめぇ……っおま○こに先輩のおちんぽっがっああっ、あああぁ……っ!」
大介はそれを待っていたとばかりに歓喜の声を上げた。
 その中に挿入り込んだ富澤だったが、大介の中は想像以上に蕩けていて、今までのセックスの相手の中でダントツにフィット感が違った。
 恐ろしく富澤のサイズに合っていたのだ。
「あぁあっ! あついっおちんぽっ大きすぎるっ……ああっあ、あ……っやぁあっ! あ、あっひぁあ……っあっ、あっ……あぁっ! ふぁ……ぁ、ん……んぅうう!」
「はっ……お前、なんだこの中、……たまらねえな……やべえま○こしてやがる」
「あぁあ! あぁひ……っ、あああ……ああっ、あっ、やっ、ああ……っ! あついっああっ先輩のおちんぽっすごいっああっ、あぅっ!」
「お前のおま○こ、ヤバいな……本当にエグい吸い付きをしてくる!」
「ひぁああああっ!! あっあっあっあっ……! 先輩、好きっすきっんひゃぁぅ……っ! やっ! あぁっ! あっ、あぁあっ!」
 大介をそう叫んでしっかりと富澤に抱きつこうとした。
 しかし手が拘束されているのでそれが叶わなかったけれど、それを富澤は解いた。もう大介が逃げないという確証もあったし、ここまでやって逃げるような子ではない。
 だから大介はしっかりと富澤に抱き付いてきたので、富澤は更に奥まで突き上げてやった。
「あっ、あぁっそこやだぁあ……っ! あっあっ、せんぱいっそこダメ、ダメ、そ、そこだめ……っやめ、あぁっ!」
「その駄目は気持ち良くて駄目ってやつだから、続けるぞ」
「ああぁあ……っ! ああぁ、あぁっ、ああぁっ! らめぇえ……ああ……っ、あっ、あっ、ひぅっ! あああああ……っ!」
結腸まで突き挿れてやり、そこに亀頭を突き挿れると大介はそれだけで絶頂をしていた。
「あぁっあっあっやっ、やぁ……っ、ぁん、ぁ、ふぅ……っん……っ、はふ……っは、ぁあん……っあぁ、あぁ、あぁ、はっ、はぁっ……きもち、ぃ……っ」
「ドライでイクようになったか……お前こっちの素質は十分あるな……いいぞ、そのまま気持ち良くなっていろ」
「ひぁ……っ! あんっ! あっ、あぁああぅっ、ぁっあっあっあっ、せんぱいのおちんぽ……っ、おちんぽきもちいいっ……っ!」
大介は完全に蕩けた顔をしていた。
 セックスの快楽に溺れ、決して勇介が見せることがない表情を同じ顔同じ声でしてくるから錯覚してしまう。それでもこれが大介であり勇介ではないことは否という程分かっていることだった。
「あっ! あぁん……っ! っあ、あぁああっ! あああっ! はぁっ、はぁっ、は、ぁあん……っ、せんぱいっおま○こがきもちいいっ! あっあ、はふっ……ん、はぁあんん! んあ……っ、ああ……っら、めぇ……っ!」
その様子に富澤の心にも変化が生まれる。
このまま大介をもっと可愛がりたい気持ちが湧いてきたのだ。
 だから奥を突き上げながら必死に抱いてやった。
「中出しするぞ……しっかり受け止めろ。俺の精液を覚えるんだ、いいな大介」
「あっんあっああっああっ……先輩のおちんぽ精液……奥にくるの……? ああうっ、ああ…嬉しい……先輩の精液がくる…ああっ……ああ……っ、うれしい…ああっ! んっ……先輩大好きっすきっすきっあ、ああ……っああ……!」
「しっかりと味わえよっ大介」
そう言いながら富澤は大介の中で精液を中出ししていた。
「ああっ、いくっ……っ、も……いくっ、あっんああ!あっ……ああー……っあああ……っ、あああっあぁ……っ! 奥に先輩の精液がきたっ……ああっ!あ!ぁあ―――ああ……っ、ああぁ……っあ……っ、んんっいっぱい出して貰えた……うれしいっせんぱいっ大好き……んふっ」
 大介はドライで二度も飛ぶほどに、精液を貰えて嬉しかったのか絶頂をしていた。
 その姿を見て決して勇介が見せることもない、似た姿と似た声だったけれど、富澤はそこで気持ちを切り替えることにした。
 これは勇介ではない。
 富澤のことが大好きな大介という男の子だ。
 そう思うと、あの失恋が遠く彼方の出来事になっていることに気付いた。
 それからすぐに座敷を片付けて、室内の空気を抜くために換気扇を回しエアコンをかけた。
 夜中だから誰も不審には思わないだろうし、実際色々な仕込みなどで時々富澤が残っていることがある。偶々明日が休みなので料理人も残っていないが、それは周りからすれば些細なことだろう。
 タオルで大介の体を綺麗にして、掃除などをし、道具も洗って綺麗にしてから仕舞ってしまうと、大介が言った。
「僕は、合格ですか?」
 そう言われて上目遣いに見つめてくる大介の目は、余計に富澤に惚れたという視線をしていた。
 これにはさすがに叶わないなと富澤は降参することにした。
「合格だ。恋人にしてやるよ。このあとはホテルでもいくか?」
 そう富澤が言うと大介は真っ赤な顔をして言った。
「いきます! ラブホテルにしましょう! 行ったことないので行ってみたいです!」
 元気よく応える大介の声に、もう勇介の似た声だとは思わなくなっていた。
 勇介の恋しい姿が消えて、同じなのに同じではない大介という人間の姿が目の前に鮮やかに浮かんでいる。
 富澤はやっとこの大介によって過去の失恋から救われたのだった。

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