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19
底なしの沼
松藤はその日、部下の新実が何だか調子が悪いのが分かった。
少し赤い顔をしているから熱があるのかと思い、松藤は新実に話しかけた。
「お前、具合が悪いんじゃないか?」
「あ、え、いえ、ちょっと暑いだけです……」
しかし新実は松藤の問い掛けには暑いだけだと言った。
熱があるわけではないけれど、確かに今日は気温が高いので暑がりなだけかと思う。 だがその後も新実は何だか体調が悪そうだった。
昼には新実も外へと出て行ったけれど、戻ってきた時も赤い顔をしていた。
とにかく松藤の方が上司だったので新実の体調の変化には気をつけていた。
五時になって仕事が一段落をすると、周りはさっさと残業をせずに仕事を終えていく。 最近は残業もしてはいけない社風になったから、大体は区切りのいいところまでやってから皆帰って行く。
さすがに五時に速攻で帰る人はいないけれど、六時を過ぎれば自然と人も減る。
そしてその日はとうとう松藤と新実だけが残った。
少しだけ新実がトイレに行ったようだったが、なかなか戻ってこなかったので松藤は具合が本当に悪いのだろうと思ったので、倒れているのかもしれないと心配になった。
すぐにトイレに向かうと、トイレのすぐ近くまで来ると妙な声が聞こえた。
「ひぁっ、あっあっ、やっ、待っ、ああああんっ」
その声が聞こえて松藤はトイレの入り口で立ち止まってしまった。
「はあっ――あああんっ!」
「おら、これが欲しかったんだろうが」
「あぁあんっ! やぁっ、おま○このなかっなか、出てるぅ……!」
「もっと出してやるよ、アナルにバイブ入れられて一日中過ごしたご褒美だ!」
「あぁあっ、ひゃあっ、らめ、ああん、やあん――!」
新実と誰かがセックスをしている声だった。
少し新実が嫌がっているけれど、逆らえないのか新実はそのまま嬌声を上げている。
その声が松藤の股間に直撃する。
新実の甘い嬌声は松藤の好みの声をしていた。
松藤は別にゲイではなかったし、男と寝たこともない。
なのでどうして新実の声に反応しているのかは分からない。
「やっ! あっ、ああんっな、はあんっ」
「もっとだ、たまらねえ」
「あは……ああっ、あはぁ……っ、あん、ああぁ、んあぁ」
「新実、好きなやつに感じてるところを見られて興奮したんだろうが……牝ま○こが蕩けてんだよ!」
「あ! いやだ、言わないで、ああん、……あっ、あぁん……っああっ! あふ、ぅ……っ」
「おお、出る出るっ!」
「んあぅ……! ああっ……! あぁあんっ!」
とうとう二人が絶頂に達したのか、喘ぎ声が止まった。
松藤は興奮のあまり、自分のペニスを取り出して扱き、そして一緒に絶頂をしていた。
壁に精液を吐き出して、そしてホッと息を吐いて慌てた。
トイレの中でセックスをしていた二人が出てくる雰囲気がしたのだ。
松藤はペニスを仕舞いながらトイレから離れ、席に戻るのは難しいので給湯室に飛び込んだ。
トイレから先に出てきたのは新実の相手だった。
給湯室にいる松藤には気付いてないように通り過ぎていったけれど、小窓から誰なのか見えた。
その人は別部署の部長だった。
パワハラの酷い人でいくら苦情を上に上げても専務の親類らしくなかなか首にならない人だ。けれど最近別の社員にセクハラを行って問題行動がとうとう社長の耳に入り、社長も怒り心頭で確か謹慎処分になっていたはずだった。
「何で、出社してんだ、あの人」
よく分からないまま松藤はコーヒーを入れ部署に戻った。
すると新実が戻ってきていて、松藤がコーヒーを持って入ってきたことに少し驚いていた。
「まだいたんですね」
少し赤い顔をした新実に松藤は言った。
「お前さ、隣の部長になんか弱みでも握られているのか?」
単刀直入にそう松藤が意を決してそう言うと、新実は一瞬で真っ青な顔に変わった。
「あ、あの、さっきの」
「うん、トイレでやってただろ? 丸聞こえするくらいに騒いでたな。通りかかったのが俺だったからいいけど、他のヤツだったら問題が社内に一気に広がったところだぞ?」
松藤がそう言うと更に新実は顔を青くした。
「あ、あ……」
「脅されているのか?」
新実がバレた恐怖で震えているのを見て松藤はそう尋ねていた。
「え……?」
「相手はセクハラやパワハラで謹慎食らっている別部署の部長だっただろ? わざわざ社に謹慎中に入ってきてやるなんて絶対に頭がおかしいぞ? 脅されているなら、俺が忠告してやろうか?」
幸いなことに松藤は新実の上司でその部長に対して抗議する権限がある。だから新実が恐れている部長を懲らしめることができるチャンスが今はあるのだ。
謹慎を食らっていた部長が社にいたこと事態が、社長から謹慎を言い渡されていることに従わなかったという証拠にもなる。今、大人しくして謹慎で済んでいるはずであるが、その謹慎中にやらかしていたらさすがに擁護のしようもないはずである。
庇っている専務の親類とやらもこれ以上かばい立てもできないできごとだった。
そう松藤が新実に相談を持ちかけると、新実は少しだけ考え込んでいる。
ここで言っても大丈夫なのだろうかという不安もあるだろうし、最悪部長をどうにもできなかった場合、新実にはもっと辛いことが待っているかもしれないのだ。
そのリスクを考えているのだろうと思った。
けれど新実が悩んでいたのはそこではなかったことに松藤は気付いていなかった。
「……いえ、大丈夫です。僕はこのままで……いいです」
そう新実が言い出して松藤は言ってしまった。
「このまま脅されてあんなことまでされているのに、それでいい? そんなわけないだろう?」
「大丈夫です……きっとどうにもならないです」
「俺が信用できないのか?」
「……はい、できません。松藤さんには解決できないです」
新実は覚悟を決めたように言った。
松藤はショックだった。新実にはそこまで信用もされていなかった上に出来もしないことを言っていると思われているのだ。
「そんなに信用がないのか……」
「僕に松藤さんを信用させたいのなら、今から屋上にいきましょう。そこなら誰も聞いてないですし」
急に新実は積極的に動き始め、荷物を持つと松藤にもそうさせて二人は屋上への階段を上った。
エレベーターはあるけれど、階段を使った方が早くに屋上に出られる階数だった。
たった三階登った先にある屋上まできたが、既に鍵は閉まっているはずだ。それなのに新実は鍵を取り出してそれで屋上へのドアを開けて言った。
「ここまできたら引き返せないですよ?」
新実の言葉に松藤は何も言えなかった。
新実はとてもさっきまでの慌てた青年ではなく、色っぽい顔をした欲情に塗れた表情をしていた。
そこで松藤はやっと気付いた。
新実は決して部長に脅されているわけではないことをだ。
これは新実が望んでされていたことで、部長の方が巻き込まれていたのかもしれないということまで一瞬で理解ができた。
「引き返すチャンスは一回ですよ?」
そう言われても松藤は引き下がることができなかった。
「ついてきたってことは、僕を抱いてくれるってことですよね。部長の代わりに僕を沢山可愛がってくれるんですよね、松藤さん」
新実はそう言うと、スーツを脱ぎ始め、それを一枚ずつ脱いで屋上のエントランスに置いていく。
屋上の外は雨が降っていて濡れるのを嫌がったのもあるだろうが、新実は全裸になると今度は松藤のスーツを脱がしていく。松藤はそれにされるがままで全てを脱いでしまった。
こうなったらもう誰にも言い訳はできないし、見つけられたら一蓮托生で部長までも一緒に首が飛ぶだろう。
「大丈夫、屋上には監視カメラはないんだ。それだけは警備室に入って確認しておいたんだ」
そう言うと着ていた服を側にある掃除道具入れにしまい込んで新実は松藤を屋上へと連れ出した。
外に出てしまったら雨に濡れ、あっという間に体が冷えていくけれど、夏の暑い時期だったから雨は心地よかった。
「ほら、早くその大きなおちんぽをここに挿れて……いっぱい突いていっぱい精液出してね?」
新実は慣れたようにアナルを見えるように広げた。
そこにはストッパーのようなものが入っていたけれど、それをアナルの動きだけで新実は捻り出してきた。そしてポカリと空いたアナルから、恐らくさっき部長が出したであろう精液が溢れて出てきて床に垂れて落ちた。
それを見た瞬間、松藤の中の性欲が一気に膨れ上がってしまった。
松藤のペニスが完全に大きく勃起して反り上がり、どうしてもそれを新実の中に突き入れたくて仕方なくなった。
「松藤さんのおちんぽ、ぼくのいやらしいおま○こにっ、はぁっ、挿れてっ。挿れて、いっぱい、なかこすって、ぐりぐりってしてぇっぁっあああああぁっ」
更に誘ってきた新実の中に松藤は我慢が出来ずにペニスを突き挿入ていた。
「あぁんっ、あっあふっ……っ、おちんぽ、きもちいぃ……っ!」
新実は一気に突き挿入れられたのに、歓喜で体を震わせている。
そんな新実に松藤は本当に新実がこんなに淫乱だとは思わなかったと心で失望をしながらも勃起をしたペニスで新実を犯し尽くしてやろうと考えてしまった。
それが既に新実の罠だと思いもせずにだ。
「ひぁあああんっ! ああ、強過ぎ……っひぁっ、あっあっ、やっ、待っ、ああああんっ」
「新実がこんなのだと思わなかったよ!」
「はあっ――あああんっ! あぁあんっ! やぁっ、おま○このなかっなか、出てるぅ……!」
突き挿れてからいきなり松藤は射精をし、中出しで精液を吐き出していた。
それでもペニスは勃起が治まらずに反り上がったままで松藤は腰を強く振って新実を犯し始めた。
「あぁあっ、ひゃあっ、らめ、ああん、あぁっ、ああ、ひぁ、ひぃっ……! あぁ、あんっあんっ!」
新実はその力強い強引な松藤の動きを気に入ったのか、嬌声を上げている。
「ああっ! あっああ、あ、だ、だめっんああ……っあ、すごい、松藤さんっあああ、あ……っ」
堪らないと体を反らして松藤を更に誘ってくる新実に、松藤は煽られて乱暴に新実を突き上げていた。
「んぁ、ぁふっ、は、はぁっ、はぁんっあぁっ! ぁひっ、ひぃん……っ! らめっああんっ!」
「新実がこんな淫乱だとは思いもしなかった……部長もこうやって誘惑したんだな……っ!」
「ひぁっ、あっあっ、そうだよっこうやって部長も僕にハマってくれたんだよ……あああっすごいっおま○こっこわ、れ、……っ ああっ、あっあっ、あああ、ああ、あっあっ――!」
新実は嬌声を上げて喜び、自らも腰を振って松藤を煽ってくる。
それに煽られて松藤は新実をじっくりと味わった。
「ああん……っ! や、おま○こが、あぁああっ!! あんっああん……おちんぽ……気持ちいいっ……っあぅ……ああ……あ、あぁっ……! おちんぽいい……あぁんっあっあっああっ」
「新実、素晴らしい……っ! これからは部長ではなく、俺が面倒を見てやるからな!」
「あぁあっ……はぁっうれしいっあぁっ……あっぁんっあっあぁっ……んんっああっあっあんっあぁああーっ……! あひっ……あ゛っあぁあっ……はぁっいいぁっ……ああっ……」
きっと新実は誰にでも同じことを言っているのだろう。
嫌がっている風に聞こえたトイレで部長がしていたことも喜んでいたのなら、あんな大胆なことをしたのはきっとこうやって松藤にしてもらうためだったのかもしれない。
わざと見つかるようにして松藤に新実を認識させて、こうやって屋上で犯して貰うように誘導するのもきっと計算だったのだ。
部長が謹慎になって地位が不安定になったから、乗り替え先を探していたのだろう。
それに松藤はまんまとハマってしまったのだ。
「あ゛ああぁんっ! あぁっ、あっあんっあんっいいっいいっ! はぁっあんっあぁああんっ……ん――っ! あ゛あああぁっあひっあひぃっ! あっあんっあんっあぁあんっ!!」
「新実……部長がいなくなれば俺が部長候補なんだろう? それで俺に目を付けて誘ってきたんだろう?」
「あひっあっあんっ、そうっそうなのっ乗り替えするのっんっふああっいいっ、あぁんっんっあっあっあっあんっあっいっちゃうっ、あんっあひっあ゛っいっああっあぁっはぁっ、あぁ……」
「いいだろう……それで、お前が俺の物になるなら、それでいいだろう望み通りに犯し尽くしてやるよ」
「ひああっ! うれしいっんっあっはぁっあぁっ、んっ、あ゛ひっあひっあんっあんっあんっふ、ぅ……ん、ん、んっんっ」
新実はきっと社長とも繋がっているのだろう。
人事については既に部長が懲戒解雇される前に自主退社をするのが計画されていて、部長の後任に松藤の名前が上がっていたのだ。そして新実は次の寄生先を松藤に定めてこうして誘惑をしてきたのだ。
松藤はまんまとそれにはまり、新実に手を出してしまった。
つまり新実によってコントロールされていく未来しかないのだろう。
それでも松藤は新実の体を手放す気はさらさらなかった。
解雇される部長とは違い、もっと新実を上手くコントロール仕返して会社自体を乗っ取るつもりになれた。
それからたった三年で、部長だった松藤は社長と繋がっている新実と関係を続け、やがて専務となり、そして社長が病気で引退する羽目になったところで会社の社長に伸し上がった。
まだ若い社長の誕生だったが、そこは実力社会。連行序列など吹き飛ばすほどの松藤の手腕に対抗できる他の専務はいなかったのである。
そして社長に納まった松藤は、今でも新実を抱いていた。
社長の仕事が終わった後は、新実を屋上で犯すのが日課になっているほど松藤は当初よりもずっと新実の体にハマっていた。
「ん゛っんんっ……んっふ、んっんっんん……ふぁっ、はあっ、あっはぁっんあっあぁんっあひっあっらめ、んっああっ」
新実は今や松藤の秘書に収まり、松藤の仕事を手伝っている。
けれどいつまでも新実が大人しくしているかは分からない。いつかあの部長が裏切られた様に、社長が病気になって引退をせざるを得ないほど、新実にセックスで潰されたように、松藤も同じ目に遭うのかもしれない。
それでも松藤は新実を手放すことはできなかった。
「やっあっあっああっあひっあひっやっああぁっもっらめっ……ああっあああんっ! あ゛あ゛ああっ! い゛っ……あっ、ああっいくいくっああああっ!」
「お前はいつまでも俺の手の中で犯されて喘いでいればいいんだ……」
新見に向かってそう松藤は言い聞かせる。
そんな松藤に新実は笑って言うのだ。
「いつまでもこうやって犯してくれればそれでいいんですよ」
それがいつもの新実の言葉だった。
新実はそれ以上を望まない。
ただ新実を支配できる男を捜しているだけだ。
そして松藤はそれに成功している一人として長く新実を抱き続ける権利を得ていたのだった。
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