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17
傷の舐め合い
石江祥明(よしあき)は急に恋人に呼び出され、会いに行くと別れて欲しいと言われた。
「なんで?」
「他に、好きな人ができた」
そう言う恋人はこれ以上嘘は吐けないと言った。
確かにこれ以上嘘を重ねてもきっと良いことはないのだろう。
仕方ないのであっさりと別れると、恋人はあからさまに喜んで去って行った。
「こんなもんか……」
そう思っていると、隣の席で同じような別れ話が始まった。
「どうして?」
聞いているのは振られる方。そしてお決まりの台詞だった。
「他に好きな人ができた、だからお前とこれ以上付き合っていくことは嘘を吐くことで、それは俺にはできない」
同じようなことがあるもんだなと思っていると、振られた方は何も言わなくなった。
「もともと、俺らって身体の相性がいいだけの関係だったじゃん……。俺はもっと私生活に踏み込んでお前と愛し合っていけると思っていたけど、そうじゃなかった」
どうやら秘密主義の恋人に飽きてしまったというのが現状らしい。
もちろんそれでジエンドであることは誰にでも分かることだ。
同じ事をしていると思っていると、別れを告げた方が言った。
「これで俺たちは終わり。いいね」
「分かった……それでいいけど、今すぐ家を出て行ってね」
振られた方がそう言うと、別れを切り出した方が少し動揺した。
「え……?」
「だから今すぐ出て行って。別れた後に同じ部屋に戻るわけ? ないわ。それはない。最初からその日に出て行くために他の物件を用意しておくもんでしょ? まさか別れた相手の家にまだ居候しようっていうわけ?」
その言葉に別れを切り出した男は視線をあちこちに飛ばしている。
まさか急に出て行けと言われるとは思わなかったらしい。
石江はそういえばと自分たちのことを思い出した。
すぐに元恋人に連絡を入れた。
相手は別れてすぐに連絡をしてくるなんてどういうつもりかと言ったけれど、それに石江は言い返した。
「あのさ、お前今日中に家を出てくれる? 別れたなら普通に出て行ってくれるよね?」
石江の言葉に元恋人はまさかそう言われるとは思わなかったらしいような動揺した声を出してきた。
待ってだの、まだ引っ越し先は決まってないだの言っていたけれど、それでも石江は言った。
「そこの家、俺名義じゃん。出て行くのはお前の方。何、別れてもまだ俺と暮らすつもりだった? 何それ利用してんじゃねーよ」
きっぱりと石江が言うと、隣の別れをしている人たちが同じ状況になっていることに驚いている。
そして振られた方が言った。
「そうだよ、あの家は俺の名義で、お前は居候じゃん。それに家の更新日明日だし、明日で二人契約から一人契約に結び直す」
そう振られた方が言い、すぐに大家に連絡を入れた。
「はい別れたので、出て行ってしまうんで。はい、引っ越しがまだですが、本人はもう出て行くので更新は、はい、一人契約でお願いします」
そう言って振られた方が先回りをしていく。
「お、おい、そんなことされたら……どこに俺、住めば良いんだ?」
別れを切り出した方がそう言うので、振られた方が言った。
「知らないよ、別れたんだし俺が考えることじゃないじゃん。さっさと出ていって。明日からお前の家じゃないんだし」
強気に出られたらよほど立場が違ったのか、別れを切り出した方が動揺している。
それを見ていると、電話の向こうで動揺している石江の元恋人が言った。
『あの家、僕名義にできないかな。ほら、家賃も安いし……その』
そう言い出したので石江は言った。
「ああ、それ? 安いのは俺の親戚の持ち物だから親戚価格なだけ。だから俺が出て行くなら、そうだな相場は十五万だけど、払えるの?」
と、思いっきり石江は元恋人を煽った。
実は恋人は未だにちゃんと就職ができず、バイトで食いつないでいる生活だ。生活費の大半は洋服などに消えるので、同棲している今は食費の三万だけしか払ってくれていないのだ。
『え、十五? うそなんでそんなに高いの!?』
「ファミリータイプのマンションだぞ? 相場はそれくらい。まさか俺と別れて俺の親戚から今まで通り五万でいいですよなんて言ってもらえるとか、俺が便宜を図るとかあり得ないから。寧ろ次の契約でお前が追い出されるのは普通だと思うが?」
そう言い合っていると、隣も別れ話の激しくなっている。
「あ、と、友達に頼んで見るけど……」
そう言いながら電話を掛けているが、かからないのかメッセージを送っている。
石江の方はさすがに元恋人が黙っている。
「荷物は取りあえず最小持って、ホテルにでも行ってくれる? それから合い鍵は一応返してね。まあ、そうしなくても鍵はすぐに付け替えるし、今のうちに自分の荷物だけ持ち出してくれる? ああ、家財一切俺のお金で買ってるから一個でも持ち出したら弁護士立てて代金請求するからよろしく」
石江がそう言ってから電話を切ると、元恋人は何も言わなかった。
まさか石江がこういう行動に出るとは思っていなかったらしい。
まあそれだけ甘くしたし、優しくしていたから、別れても変わらないと思ったのだろうが、そこは違う。恋人だったから優しくしたし、甘くしていただけだ。
恋人ですらないなら、赤の他人である。
それに振られた立場の人間が優しくしてくれるわけもないのだ。
すると隣を見ると隣でももめ事が起こっている。
「え、うそ、追い出されて行くところがない……? 俺も追い出されて……お前のところに……え、お前の名義じゃないから……って、え、だってそっちに住む予定だったじゃん……え、権利がないから無理って何言って……」
どうやら好きな相手とは既に一緒に住むような間柄になっているらしく、二股状態だったらしい。
そうして電話して焦っている別れを切り出した男をちらっと見てから、石江は振られた方を見て言った。
「お互い大変だけど、頑張って。俺も元恋人を追い出してくるから」
「ありがとう、頑張るからそっちも負けないで」
とお礼を言われて励まされた。
何だか戦友ができた気がして二人で誓い合ってから、石江は店を出た。
自宅に戻ってみると元恋人がまだいたので石江はすぐに部屋の鍵を付け替えるために業者を呼び、恋人の荷物をさっさと貰ってきた段ボール箱に投げ込むように詰め込んだ。
「保証人無しで、敷金礼金なしの即入居可能な物件を仕方ないから借りてやったから、そこに越してね」
にっこりとして元恋人に言い、呼んだ業者に荷物をそこに運んで貰った。
狭い六畳の部屋とキッチンが廊下にあるようなところであるが、バイト暮らしの元恋人が払えるのはこんなところしかない。
「居座られるの嫌だから、引っ越し代金は払ってあげる。じゃあさようなら」
そう言って石江がさっくりと恋人を追い出した。
あれこれやっていたら夜になっていてお腹がぐーっと鳴った。
「もう午後七時か、道理でお腹が空いたはずだ」
朝の散歩中に恋人にいつもの朝食を食べているレストランに呼ばれて別れ話をされたわけだが、同じく朝早くに同じ別れ話をしていた人がいた。あの人がはっきりと言ってくれたお陰で自分も恋人と別れるのをすっと受け入れられた。
危うく別れてからも利用されるところだったらしいので、そこら辺りは同じく振られた人に感謝している。
そう思いながら石江は同じレストランに向かった。
すると、同じ席に朝いた人が座っているのが見えた。
石江は同じ席に座っているあの人の隣席に座って声を掛けた。
「今朝はどうも」
そう石江が声を掛けるとその人は驚いた顔をしていたが、石江の顔を見るとホッとしたように言った。
「ああ、今朝の人。あの後大丈夫でしたか?」
「お陰様で、有無を言わさずにマンションから追い出して、こっちで用意したアパートに引っ越しさせました」
「ああ、なるほど。そうすれば行き先がないからってのは潰せるってわけですね……そっか。こっちはそれで暫く揉めてしまったんですけど、どうやら浮気相手に行き先が決まったらしくて、大人しくそこへ引っ越していきました」
「そうでしたか、よかったですね。お互い大変寝耳に水で驚きましたけど、何とかなったみたいですね」
「そうですね。あ、何なら席をこちらにどうぞ。ちょっと話しましょうよ~」
どうやら相手はお酒を少し飲んでいるようだったので、気持ちも愚痴りたい気持ちになっているようだった。石江は悪い気はしなかったのでそのまま隣の席に移り、一緒に恋人だった男に文句を言う愚痴りを繰り返した。
相手は霧島新一という人で、仕事はデザイナーをしているという。石江は広告代理店に務めていたので霧島の名前は知っていた。
「霧島さん、知ってますよ、お名前は。うちは広告代理店なので」
「そうですか! これも何かお導きかもですね!」
相手の素性が分かったら余計に二人で飲んで盛り上がって、気付いたら石江の家に二人で酒を更に買い込んで泊まり込みで盛り上がってしまっていた。
「何がいけなかったんだろう、セックスも相性よかったと思うのに」
という石江の発言から。
「じゃあ、試してみます? 俺攻めですし、あなた受けでしょ?」
霧島は石江に確認をした。ここで両方同じだったらどっちが受けるのかで揉めそうだったからだ。
「あーそうですよ。あー、なるほど。お互い振られた同士だから、別にフリーだし、誰も咎めないし?」
石江は自分が受けであると言い、霧島の発言に乗り気だった。
「そうそう、お互い持てあました性欲をここらで解消しましょう……」
そう言いながら霧島と寝るのは悪い気は一切しなかったので、石江は霧島を押し倒していた。
「あ、久しぶりでちょっと緊張するなあ……」
霧島がそう言うけれど、それが何だか可愛くて石江は霧島にキスをしていた。
「ん……ふ」
霧島も待ちきれないのか、手がしっかりと石江の股間を弄っている。
気持ちはもうセックスに向かっていた。
既に酒でできあがっている二人はセックスに突入したことも自然な流れのように思えた。
早急に二人は体を弄りあって、お互いに体を高め合った。
そして大きく勃起している霧島のペニスが石江の中に挿入ってくる。
「あぁーーっ!ああっ、いい、ああ……きたっ! おちんぽっきたっ!」
霧島は石江のアナルにペニスを突き挿れて、その感触を味わった。
「ああ……石江さん、すごい……ヤバいこれ」
「ふあ……あ、いいっ霧島さんのおちんぽっああんっあっあっあっあああ……!」
「気に入っていただけて幸いです、めちゃ頑張って犯しますので!」
「はぁんっ!あぁ……きもちいいっ!あーーいいっんはあんっ……あんっ」
二人はお互いの求める性欲が満たされていくのを感じた。
これ以上の相手はいないとかつての元恋人に思っていたのを、あっさりと覆す相性の良さがペニスを突き挿れただけで分かってしまったのだ。
「あぁっ!そこだめ……っ、い……っあ!いくっ……い、くぅ……っああぁーーーっ!」
「あうぅ……っ、でるっ……! あああぁぁっ!!」
「すごく、おま○こいい……からっ、あぁ! 初めて会った人のおちんぽでいくっ、すご……いいぃ……っ!」
二人はあっという間に絶頂をしてしまった。
いつも以上に早い性を吐き出したけれど、霧島の全く萎えないペニスを見て、石江はまるでセックスを知ったばかりの高校生のように盛っている自分に気付いた。
相性がいいということはこういうことなのだと納得したほどだ。
「あぁ……あっ、石江さんっ……あっ、はぁっ……素晴らしいじゃないですか……っ」
霧島がそう石江を褒めると石江も霧島を褒めた。
「いい、いい……! 霧島さんのおちんぽ最高です……俺、おま○こ気持ちよすぎておかしくなるっ……ああんああっ!」
「俺も最高に気持ちがいいです、だからもっとしたいですっ!」
霧島がそう言うと、石江も乗り気で霧島に絡みついた。
「きもちいい……あぁぁっああんっ……いい、おちんぽっいいっきもちいいからぁ……!あぁっ、はやく、もっとはやくぅ……おちんぽいいっおま○こきもちがいいっあはんっ」
そう言われたとたん霧島は石江を激しく攻め立てた。
その強引さと快楽に弱いせいで何度も絶頂をしてもセックスは止められなかった。
「あっ、うんっ、んっ……あぁぁ……もっと、もっとっおちんぽっ、もっと、もっと激しく、おちんぽでっおま○こぐりぐりして……ひああんっ」
「ああ、石江さん……出る、出る!!」
「いくっ、いく……! おちんぽでっおま○こされてっ精液中出しでいくっあ――っ!やっ、あっ、あぁああんんっいっ、ひぃっ……ひぁああ……あーきもちいいっ……」
二人はその夜、一晩中セックスを続けた。
朝起きても性欲は止まらずに、休みなのをいいことに二人はセックスに溺れた。
そしてそのまま二人は付き合うことにした。
「ここまで相性が良い人と付き合う以外はないと思うんです」
そう霧島が言うと石江もそれに頷いてうっとりしながら言った。
「俺もそう思うんです……よかった。これからずっとあの激しさで求められるんですね……嬉しい、ああ石江さん……好きです」
「俺も、セックスで一目惚れみたいな感じですが……よろしくです!」
「こちらこそ、よろしくです!」
二人は恋人に振られて三日目で、振られた同士でくっついた。
岩江と霧島の仲は思いのほか上手くいった。
趣味で仕事にもしているデザインの話になると二人は止まらないほど喋れたし、家事などもお互いに代わる代わるやって負担は減ったと言えた。
その後、元恋人たちが元サヤを狙ってきたりもしたが、もうそれに靡くわけもなく二人は恋人同士として末永く一緒に暮らしたのだった。
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