shortshort 03

言えない言わない

 夜が更けてきても恋人は今夜は来ない。
 仕事が残業になったとさっき連絡があったばかりだ。
 寂しいが仕方ない。
 だから猪岡優哉は荷物を持って部屋を出た。
 向かうのは近くの駅にあるマンション。
 大きな駅前マンションは高層の億マンションだ。
 誰でも住めるところではないし、誰でも入れるところでもない。入り口からセキュリティーがしっかりしている場所だ。
 もちろんそこに優哉が入ることはできない。
 けれど入り口で電話を一本、それだけで優哉は中に入ることができる。
 受付のような場所を通り、そこで名前を記載。誰を訪ねるところなのかまで管理されている場所であるが、それは防犯上の問題だけだ。
 名前を書くのはもう百回を超えていると思う。何度も来る優哉の顔も覚えられていて怪しまれることは一切ない。問題さえ起こさなければそれで警戒心は解かれる。
 優哉はすぐにエレベーターに乗る。
 エレベーターの五階ほどから外が見える硝子張りのエレベーターで景色もよかったけれど、それも十回目には飽きてしまった。
 住人もその景色には飽きていて、初めて来た人が盛り上がっているのを見ると、そういうものなのだなと思い出すという。
 そんな状態でも優哉も住んでいるわけではないのに同じ気持ちになった。
 気になるのは明日の天気くらいで、ちょうど大雨注意報やら豪雨がという天気だった気がする。
 だから恋人の仕事もその緊急性に備えての宿直に変わったので、それはそれでよかったなと思う。
 危険がないようにと避難するように言われていたので、友達の家に行っているといった。
 もちろんその友達はこのマンションに住んでいる男で、恋人もその人は知っていて、信頼もしている。
 その部屋に到着をして鍵を開けてもらった。
 すると男が出てくる。
 長身で百八十五センチを超える大きな男で、モデル体型だったのを優男みたいで嫌だといい、鍛えて筋肉を付けいい体に変化をした。
 そのお陰でモデルとしては更に人気が出て、かなり騒がれているけれど、生活は几帳面でチリ一つ落ちているのが許せないと言う男だから、女性とは髪の毛が落ちているなどで揉めてしまうので別れることが多い。
 そんな男も結婚は早々に諦め、男と寝ることに目覚めた。
 男と寝たのは優哉と酔った上でのことだった。
 優哉は恋人もずっと男で、親から勘当されているほどであるが、幼なじみの男、上瀧(うえたき)はずっと友達として付き合ってくれた。
 けれど酔ったときに冗談で誘われ、優哉はこの関係も終わるんだなと思いながら相手をしたところ、上瀧は今まで抱いた誰よりも優哉とのセックスの相性がよかったらしい。
 嫌だと言うけれど、恋人がいるのに酔っていたとはいえ、幼なじみの男と寝た事実は消せず、弱みを握られた優哉は上瀧と寝るようになった。
「よう、今日も可愛いな優哉」
「戯れ言はいい。それより飯」
「ほんと、お前は飯ばっかだな」
「お前から集れるものなんてこれくらいだ」
 そういいながら玄関を入ると、その優哉の体をいやらしい手つきで上瀧がなぞってくる。
「俺は、お前の体ならいつでも食いたいんだけどな」
「飯食ってからだ。腹減ったんだよ」
「わーかった、ステーキを焼いておいた、ちょうどいい具合だ」
「分かってんじゃん」
 まるで恋人関係でもあるようなやりとりで上瀧の家に入ったけれど、優哉の気持ちはここにはなかった。
 何よりも恋人を愛していたし、付き合っていくならば恋人が一番相性がいいと思っている。それでも体の相性だけは最悪なことに上瀧との方が上だった。
 それに上瀧も優哉と体の関係は続けたいけれど、恋人同士になって一緒に住むなんてことは望んでいない。
 生活をかき乱されるのは嫌なくせに、セックスだけは別で優哉を引きずり込んでくる。
 そのセックスにおける汚れることに関しては、上瀧は別であると思っているらしい。
 例外が増えたのは、どういう心境だったのか知りたくもないけれど、優哉のために妥協している部分があるらしい。
 用意されたステーキをすぐに平らげると、窓の外は大雨になっていた。
 ニュース番組が映っているけれど、そこには優哉の恋人である今安アナウンサーが映っている。
「相変わらず人気のキャスターやってんな、今安も。恋人が幼なじみと浮気しているとは知らないで仕事で大忙しとは」
 そう言いながらワインを飲み、ニヤリと笑う上瀧。
 その言葉に何も思わないわけもない。
 一言恋人に打ち明ければ、この上瀧との関係は終わるのに、言えないままもう三年が過ぎてしまった。
 余計に言えない状況が続き、関係を続けていれば上瀧は誰かに関係を喋る気はないのは明らかだった。
 決して危ない匂わせはしないし、今安の前ではそれらしいことをしない。幼なじみのいいやつを演じつつ、裏切っているとさえ分からないようにしている。
 幼なじみとしての距離をしっかりと取りながらも優哉が恋人との時間を大事にするお陰で、微塵も疑われていない関係だ。
 すぐに食事が終わったら風呂に入ってしまう優哉であるが、そこで既にセックスの時間は始まっている。
「あぁんっひぁあっ ……んっ、ひぅっ、あんっあぁん……だめ、まだ……んっ……」
「何言ってんだよ、部屋に来てからもう一時間も経ってんだ、ほらお前だって待ちわびていたんだろう?」
 優哉は上瀧に乳首を摘ままれて引っ張られ、それで感じて甘い声を上げた。
「はぁぁ……やぁ、あぁんっ! やっぁっ、おっぱいっ……ふ、ぅんっ」
「完全勃起乳首しやがって、すっかり育ってんな。今安は怪しんでないか?」
「はっ もうやらっちくびっ……やっあっ、あやしんでない……だって今安もするから……あんっあんっあぁーっ……」
 乳首が少し大きくなったのは上瀧と寝るようになってからであるが、恋人ともちゃんと寝ているのでおかしいとは思ってない。
 むしろ自分で育てたと思っていて、乳首で感じることを喜んでいる。
「あ゛ひっあへぇっああ゛っあっあ゛っあんっあっあぁんっあ゛っあぁっあっ、あんっあんっああああっん゛ぁっあ゛っ、ちくびぃっ、い゛ぃっ、あっあああっ」
 乳首で喜んでいると、すぐに優哉のアナルに上瀧が勃起しきったペニスを突き挿れてきた。
「ふあぁっ……きもちぃ……おま〇このなかっ、ああぁんっああぁあ……あぁっ……あっあっあああっあっああああっ…いい、気持ちぃ……っ、んっ乳首っ…あぁあっ……」
乳首を引っ張りながらも奥に突き入れるように腰を振ってきて、優哉はそれにすぐに感じた。
 セックスを強く求められることは好きだったし、上瀧のことは恋人として好きではないけれど、セックスフレンドとしては好きな方だった。
 やましいことをしているけれど、もしこれがバレて恋人と別れたとしても仕方ないと思うし、開き直って一人で生きていくと決めている。
 だからこそ疚しさはもっと増してしまっている。
 恋人は心で繋がっていると思えたけれど、体で繋がっているのは上瀧の方だった。
「はぁあ……おちんぽっぁっ、あっ、あっんふぅっ……ぁん、あんっ……んぁあっ」
「お前はこのペニスが好きなんだよな……これが欲しくて今安を裏切っているんだもんな」
「ああっんっあああんっおちんぽっんっいいっ! そこぉっそこ、あ! あ! あっぁあ! あぁんっ、ぁんっあんっ!」
上瀧の言う通りでこのペニスが欲しいから離れられない。
 後で冷静になれば、どうしてこれを我慢できないのかと思うけれど、それをいざアナルに突き挿れられてしまうと、どうしようもなく淫らに感じてしまうのだ。
 これだけはどうしても止められず、ここに通ってきてしまう。
「ぁんっあっあぁあーっあ! あんあんあん! おちんぽっ、しゅご……っそこぉお! んふぁ……あ! ぃあっ……そこ、そこおま○こいいっあああんっ!」
「よしよし、可愛がってやるからな……雨は一晩中続くし、翌日は荒れてそれどころじゃないだろう。あいつも忙しいだろうし、家に帰っている暇もないんだろうな」
「あ゛ああっ……だめっ、おま○こにおち○ぽきもちよすぎるっ、んひっ、い゛っ……あっ、あああっあ゛っ、おち○ぽ、ああ……あっあ゛っ、ん゛っあああっ」
どんどん追い立てられて優哉は淫らに乱れ始める。
 こうなるともう上瀧の独壇場だった。
「あ゛ひっ……んっあっあ゛っ、あはぁっ……んんあぁあっ…ひっ、あへっ…あっ、おま○こにおち○ぽきもちいいっ……あああんああっ」
「そうそう素直になれって。お前は俺の手で乱れているのがいいんだ……」
「ああぁっ! あっあぁんっ……おちんぽっらめっ、あっあっあっ……あひっ……あっあんっあっ……はっ、はぁ……あぁあっ……」
奥を攻められ、恋人のペニスでは届かない部分まで上瀧は犯してきて、それがどうしても優哉には堪らなくて好きだった。
「あぁっ……だめ、あぁんっ……らめぇっ……はぁっ、おちんぽっいいっおま○こでっいっちゃうっああんっいいっ」
「イケよ、お前はイッてからの方が素直で可愛いよ」
「ひああぁっ……あぅっ、ひぁん、あっあっあんっあぁんっ! やああっいっちゃう……あっあっ、あーあーっ……あああああああああ!!」
 奥を突き上げられて優哉は絶頂した。
 派手に精液を噴き出して絶頂をすると、快楽のスイッチが完全にオンになる。
「ああぅっ、だめっおちんぽだめっだめっ……もう、おま○こっついたらぁっあっ、はああぁんっ……」
まだ中で蠢いている上瀧のペニスを求めて腰が蠢く。
「何て言うんだっけ? 欲しいときは」
 そう言われてキスをされる。
 キスはしないと最初こそ言っていたけれど、そこも許すのにそう時間はかからなかった。
 恋人よりもずっと上瀧の方が優哉の体を隅々まで知っているくらいに上瀧は優哉の中に入り込んでいた。
「あっ、おま○こに、はぁっ、おちんぽハメて、いっぱいおま○こをいやらしく突いてっあ゛っ、あ゛あっあ゛っひっ、いいっ、い゛あぁっ」
結腸まで突き上げるようにされ、そこから先は優哉ももうあまり記憶がないくらいに嬌声を上げて喜んだ。
「あ゛ああんっああっ!! ああああっあっぁっあっ、いいっ、おちんぽっきもちいいよぉっ……はぁんっ……あっあっあひぃっ! あっあぁっ、あひぃっ……、らめっ、あーっ……」
「やっと素直になった。夜も長い、楽しもうぜ」
 そう言いながら風呂場でまた優哉を絶頂させてくる。
 そしてベッドに移動をして何時間も上瀧が満足するくらいに優哉は犯された。
「もっ、やらぁっ……ああっ……、あぁっ、こんなっ、はぁっ、はぁっ……こんなとこでこんなっことっ……あっぁんっあーっ……はっあぁっ、あっああぁっあひぃっ! あんっ……あっあっあああぁぅっあっやっ! あぁーっ……らめぇっ、んっはぁっぁああっ」
「もっとだ。優哉、もっとだ」
「あぁっあっ、あんぅっ……、や、あぁっあーっ……ひっ、ああっ、あぁあんっんっんっ……はぁっぁ、あぅんっすご、いっ……ひゃぁっあっはぁっ、あぅんっ!」
「これだけでも好きになってくれ……」
 そう上瀧は言うけれど、決して告白はしてこない。
 好きだと言われたらきっと堕ちてしまうくらいには相性もいいと思う。
 けれど優哉から好きだと言わないと、決して納得しないのか上瀧は自分から好きだとは言わない。
「あぁあああっ……あああっ、あぁああぁんっ……やぁああっ! あっいいぃっひぅっ、あっ、あぁんっ! あぅっあっあんっいいっ、んっ、ひああぁっいいよぉっ」
セックスの相性はいい。
 幼なじみでお互いに知り尽くしている間柄。
 それでも恋愛に発展しなかったのは、常に上瀧がはっきりしないからだ。
 優哉はそれに痺れを切らして恋人を作り、幸せになりたかった。
 しかし上瀧はそれを許しながらも自分が優れていると優哉に言わせようとする。
 だから、優哉は言わない。
 恋人がいるから言えない。
 言えないから言わない。
 そうずっと意固地になっていくしかなかった。
 朝になると恋人から電話がかかってくる。
 朝近くまで熱く盛り上がっていても、優哉はさっと電話に出た。
「もしもし。うんおはよう。大丈夫、声? ああ、雨と雷すごくて眠れなくて朝まで映画を見てたからなあ……大丈夫だよ、二時間くらい寝たし……うん、すぐ帰るよ。待ってて」
 優哉は恋人とそう電話をすると、服をかき集めてシャワーを素早く浴びて着替えた。
 上瀧はまだ寝ているけれど、それはお互いに知った仲である。
 鍵はオートロックなので優哉はさっと玄関から外へと出た。
 雨はすっかり上がっていて明るい日が眩しい。
 そして襲う後悔を振り払って恋人が待つマンションに帰る。
 上瀧に捕まらないよう、優哉は逃げるようにマンションを後にした。

感想



選択式


メッセージは文字まで、同一IPアドレスからの送信は一日回まで