207-毒を孕む口づけ
加藤秀昭は、高校から遠くの進学校に入り、大学もあちらで過ごした。
両親は教師だったのもあり、厳しい人たちであったため、娯楽を覚えたのは高校の寮に入ってからだった。
秀昭にとって、実家は牢獄と言ってよかった。
帰ってくることもなく、大学時代はバイトに明け暮れて、とうとう帰省しないで四年間を過ごした。
それもあってあちらで会社に就職した。
両親は教師になって欲しがっていたけれど、昨今の教員などやる気はしない。
両親が教師だから教師にならないといけないわけではないと気付いたのは大学で教育学部に入ってからだった。
もちろん、その教員資格や研修などで実家に戻らずに高校の紹介で向こうの高校に実習に行ったのでこちらには帰ってこなかった。
それでも帰ってきたのは、両親が倒れたからだ。
父親は二年前から病院に入院していたらしく、その関係で母親が面倒を見ていたが、その母親も介助疲れで倒れてしまったのだ。
そして入院していた父親の容体が悪化して、秀昭が戻ってきた時には亡くなってしまったのである。
そして葬式を葬儀場でして、母親は父親が亡くなったことで落胆してしまい、入院生活から抜け出すことはできない体になってしまった。
その面倒を見るために一人っ子である秀昭は帰ってくるしかなかったのである。
できれば戻ることなく、母親をあちらの病院に呼びたかったのだけど、母親が懐かしいこの街を離れたくはないとごねたため、結局秀昭が妥協するしかなかった。
「この街に帰ってきたくはなかったんだけどな」
そう呟いたのは葬儀も終わり、家を片付けている間だった。
家の中は父親のモノが結構堪っていて、収集癖だった父親の遺品をあちこちの業者に引き取って貰うのにも時間がかかった。
そのせいで秀昭は仕事も年初めだった会社側に事情を話し、退職してから再就職する会社には来年に採用して貰う事になった。
なので今年の一年は実家を片付けて母親の面倒をみる時間に充てることになった。
幸い、父親の保険金と遺産が母親が遺産を放棄して秀昭に残してくれたので、それで母親の面倒も自分の身の回りのことでもお金に困ることはなさそうだった。
それにホッとしたのもあり、忙しかった三日間が終わって一息吐いている時だった。
その時に玄関のチャイムが鳴った。
もうご近所の人も手伝いをしてくれたけど、皆帰った後だったので秀昭は何かあったのかと庭から玄関に回った。
加藤家は街の端っこの方にある団地と呼ばれる中にあるが、その中でも良い立地に立っている。
ただ歩いて移動するには高いところにあるせいで、昔は自転車ですら苦行と言える車がないと暮らせない街だった。
そんなところにやってくるのは近所の人以外はいないのは分かっていたので愛想良く庭から玄関を見た。
するとそこに立っているのは若い青年。
年は二十歳くらいか、それくらいに見えて、さらには黒の喪服を着ている。
「何か?」
そう口に出して言うと、その青年はハッとして秀昭の方を振り返った。
その顔は夕日で逆光になっていたのではっきり見えずに思わず眉を顰めてしまい、相手からはよく見えていたのか青年が声を弾ませて言った。
「秀兄……っ」
そう言った若い青年の声に秀昭は少し驚いたけれど、その呼び名をするのはこの街では一人くらいしか思い当たる人がいなかった。
「……知浩か……」
そう言うと相手はすぐに秀昭の側にやってきた。
やっと日が陰り始めたので青年の顔が見えた。
その顔は確かに面影は残っている、三つ下の幼なじみの竹部知浩の顔だった。
「秀兄……っ さすがに帰ってきていると思って……そのおじさんは残念だったね」
そう喜んだのも束の間、知浩はそう言ってお悔やみを言ってきた。
知浩は近所に住んではいたけれど、葬式には来なかったのでさすがにばつが悪いか、時間が合わなかったのかと思っていたが、そうではなさそうだった。
というのも、竹部家の人は誰も弔問には来ていなかったのを思い出した。
忙しくて気にしてられなかったけど、誰も竹部家のことは言わなかったのでわざとこなかった訳ではないのだけは分かった。
「ああ、お悔やみありがとうな」
「うん、お線香上げていいかな? うちは誰も弔問はできないから」
そう言われたので驚いて秀昭が聞き返した。
「そういや、どうしたんだ? 確かに誰も来てなかったけど……」
そう言いながら玄関から知浩を誘導すると、知浩は言った。
「うち、引っ越したんだよね。秀兄が高校で引っ越した後だけど。それでもう数年も離れているし、うちには連絡が来なくて、やっと近所に住んでた同級生が知らせてくれたから俺だけ来たんだ。おじさんたちには世話になっていたから」
そう言われて、秀昭は納得した。
恐らく結構遠くに引っ越したのだろう。しかも七年も前に引っ越した後である。
元地元の知り合いが亡くなったと言っても弔問にわざわざ来られるようなフットワークはなかなか難しいものである。
知浩もわざわざ来ることはないのだが、それでも知浩はわざわざ来てくれた。
早速帰ってきたばかりのお骨が置いてあるところで線香を上げて貰ったところで秀昭はお茶を出した。
「ありがとうな、父さんも喜んでいるだろう」
そう言うと知浩は少し困ったように笑った。
「それはどうかな……俺、おじさんには嫌われてたからなあ」
そう意外なことを知浩は言った。
「嫌われていた?」
驚き聞き返した秀昭に知浩は言った。
「俺のうちが引っ越したの……おじさんが俺たちのことを近所の人達と一緒になって追い出したからなんだよね……」
そう言われてしまい、秀昭はあの時のことを父親が知っていたことを今知った。
「……それは、あの時のことか?」
そう秀昭が問うと、知浩はニコリと笑って言った。
「そうだよ。秀兄が俺にキスして体を触ったから……それでおじさん、俺たちのこと変態だっていって街から追い出したんだよ」
そうはっきりと知浩は言った。
父親はそれを知り、秀昭がこの家を出たがっているのを利用して寮生の学校に入学を許して秀昭を出したのだ。そして、秀昭が戻ってきた時のことを考えて、知浩の家族を街から追い出したのである。
「……済まない……」
昔のこととはいえ、確かに知浩に誘惑されて手を出しかけてしまった。
でもあの時は未遂で終わり、結局それ以上のことは起こってなかった。
そして秀昭もこれではいけないと思って、寮生の学校へ進学を許して貰ったのを使って街から逃げたのである。
逃げてなかったことにしたけれど、それだけでは許されなかったのだ。
「うん、俺は性癖がバレて、親はそれで離婚したよ。俺はどっちも引き取りたがらなくて、祖父母の家に置いて二人とも出て行った……。理解してくれたのは祖母ちゃんだけで、何とか生きてこられたよ」
そう知浩は言った。
知浩は当時中学生に上がったばかりで、性癖も何も男が好きであることに疑問を持つこともなく、純粋に秀昭のことを好きだと思っていた。
そして秀昭もまたそんな知浩に惹かれていた。
だから誘惑された時に手を出しかけてしまったのだ。
「秀兄は、俺の事好きだったもんね。俺の事舐め回すように見てきて、触れて、それでキスしたがってた」
そう言うと知浩は秀昭の側にやってきて、秀昭の手に手を乗せてきた。
「……っ」
「言わなくてもいいよ。秀兄のことだから、きっと女の子も試したんだよね? でもここは……」
ここと言われて撫でられたのは股間だった。
そこを撫でながら知浩が言った。
「起たなかったんだよね?」
そう言われてしまい、秀昭は何も言い返せなかった。
その通りだったからだ。
女を試せば気の迷いだと思い込めると信じて、そして試しては駄目で、そのせいで勃起しないままきてしまった。
それなのに、オナニーをするときは起つので女性に対して性的なことでは起たないことが分かってしまった。
秀昭は男にしか性欲を感じない。根っからの同性愛者だったのである。
それを両親に知られるわけにもいかなかったし、地元に戻るということは将来女性と結婚をすることを求められると思い、結局戻ってこられないままだったのである。
なのに……戻ってきたとたん、知浩に誘惑されている。
「秀兄、我慢しなくていいんだよ。もう、おじさんはいないし、おばさんだって何もできない。秀兄は自由になったんだよ」
そう言われてジッパーを開けられてペニスを取り出されてしまった。
そしてそのペニスはすでに勃起をしている。
「大きいね、秀兄のペニス……美味しそう」
そう言うと迷いもなく知浩が秀昭のペニスに舌を這わせたのである。
「くっ……はっ」
「……んん……秀兄のペニス、美味しいよ……大きくて、ガチガチに勃起してる。先走りも出てるし……ううんんっ……んん」
知浩は舌で舐めた後は口に咥え込んで秀昭のペニスを扱き始める。
「くはっ……」
舌がペニスを絡め取ってジュルジュルと扱いてくる。それが秀昭にはとても気持ちよかった。
起たないことで女性に舐めて貰ったこともあるが、そんなものとは比べものにならないくらいに気持ち良くて、すぐに射精をしたくなるくらいだった。
「んんっ」
「ああ……知浩……出るっ」
「んんっんんっっ!!」
出るので離してくれと言っても知浩は離さなかったので、結局知浩の口の中に精液を吐き出してしまったのである。
「ああ!!」
初めて他人の口の中で果てるのは、とても気持ち良くて秀昭は恍惚とした表情を浮かべていた。
そして知浩は秀昭の精液を喉の奥で受け止めて、全てを飲んでしまった。
「……うん、秀兄の精液……美味しい……。もっと頂戴……秀兄……、ここに沢山注いで頂戴」
そう知浩は言うと、喪服を脱いでしまって、下半身を剥き出しにした。
上はワイシャツを羽織っただけの姿になっていて、それはとても美しいと秀昭は思った。
淫らに体を揺らしてくる知浩を見ていると、秀昭はもう我慢をしなくてもいいことに気付いた。
さっき非情にも知浩が言った通り、父は死んで骨になっているし、母親はもう病院からは出られない。もう自分を縛ってくる両親はいないも同然だ。
この淫らな幼なじみに触れることを止める人はもう存在すらしないのだと思うと、秀昭はその誘惑に今度こそ乗ったのだった。
直ぐさまペニスがまた勃起してしまい、それに知浩が跨がってくる。
「あは……秀兄と一つになれる日がやっときた……あああんっ大きいよ……秀兄のおちんぽっ」
そう言いながら知浩は秀昭のペニスをアナルに突き挿れて深く飲み込んでいく。その様子を見ながら秀昭は気持ち良さに目を細めた。
こんな気持ちが良いことをずっとできなかったのかと思うと、本当に遠回りをしたものだと思った。
「ああぁんっ……すごいっ、秀兄のおちんぽに俺のおま○こっ、犯されてるっ……! 秀兄とせっくすしてるっ……あぁっあ゛っあーっ……」
知浩は嬉しそうに微笑んだ蕩けた顔をしていた。その淫らな表情はとても秀昭には魅力的で、秀昭は我慢できずに知浩を押し倒していた。
「こんなの……我慢できないっ!!」
「あ゛あーっ……あひっ、んっあ゛っああっおま○こいいっ、きもちいっ……うぁっんっあっあぅっ」
上から押しつけるようにして知浩のアナルにペニスを突き挿入れた秀昭は、激しく腰を振ってきた。これまでセックスをすることができなかった反動からか、腰の動きは止まることはなかった。
「ふあぁっあ゛っあんっ秀兄っすきっすきっ……! ああっい゛いっ……おちんぽきもちいっ、んっあ゛っああっ」
「ああ、ああ、知浩っ堪らない!!」
「あぁんっ秀兄のおちんぽいいっ……あひっ、いっあ゛っあーっ、あーっ……」
あっという間に秀昭は二度目の絶頂を迎えて精液を吐き出していたが、それでも吐き出しながら腰を振り続けるので中がとんでもないことになっていた。
でも誰も二人を止める人はいなかったので、二人はセックスに溺れた。
「あぁあんっ、おま○こ気持ちがいいっ、らめっ、きもちいっ……おちんぽいいのっあ゛ーっ、あ゛あぁんっあ゛うっ、おちんぽ、はげしっ……いっあ゛っあんっふあぁっ」
「知浩……トモ……ずっとお前にこうしたかった……っ!!」
「ああぁんっ、嬉しい、またトモって呼んでっ……秀兄、俺の中でイって、このおま○こでイってっ……っ ふあっあ゛っあんっあんっああーっ」
激しく突き上げられて知浩も絶頂をしてしまうけれど、やっと結ばれた二人がこの行為を止めることはなかった。
「ひあ゛っああっいいっおちんぽはげしすぎっあ゛っひっあんっあんっあんっ……あぁっあ゛っうあああっ」
誰もいないことを良いことに二人は居間で盛った後は、寝室に入ってベッドの上で夜通しセックスを続けた。
「はぁっ……はぁっあぁーっ……ふあっ、すごいっ……あぁっ、あ゛、あーっ……はあぁっ……んっ、あっ、あっ……」
「気持ち良すぎる……トモ、これからもずっと一緒だぞ」
「ああぁっ、うんうん、一緒だよ……秀兄……ああいい、きもちい……っ、はぁあああ……!」
「もちろんだ、これからはずっと一緒だっ!!」
「ふあああ……嬉しいっんっ、ん……んんん……っは……はぁ、あ……っん、んんっあっ……あっ、ああっ……うあ、あっ、ああ……っはぁん!」
激しく求め合う二人はその後もずっと二人の関係を続けていく約束をした。
「あああっ、そこ、そこっ……いい、ああっ……んあああっんはぁっ、あああ、あふ、んんっいい……いいっ、ああ、あぁっ……」
「もっともっと……トモをくれっ」
「ああぁんっ! ああああああぁ!! あっ……ぁあーーっ! あああぁああ! あ……っ、あぁんっあ、ぁ……おま○こ気持ちがいい……っ」
「俺も気持ちが良いっトモ……」
「あっあ……あ、あっ……あぁあっ! あっ、あ……き、きもちい……っ」
二人はその日、二度目のキスをした。
あの日に終わってしまったと思っていた関係は、ここでまた始まった。
今度こそ終わることのない日々が始まる。
手を取り合った二人は、二度と手を離さないと誓ったのだった。
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