205-共犯の約束を

 江藤時人の兄、正人に恋人ができた。
 両親のいない江藤家にとって、それは喜ばしいことだったが、問題は正人の恋人が男だったということだ。
「ごめんな、時人。俺、自分には正直に生きていこうと思っているんだ」
 そう正人に言われた。
 正人はとても見目が良く、美形だったので女性には沢山モテた。
 それはバレンタインや誕生日になると必ず沢山のプレゼントも貰っていたことでも分かる。
 そんな選り取り見取りだと言われるくらいに女性にモテる正人が選んだのが男なのである。
 最初は時人も納得できなかったのだが、そんな時人の前に挨拶にきたのが古家雫だった。
 古家雫はとても美人の綺麗な人で、動作もとても上品な人だった。
 元々遡れば華族だと言われる家系らしく、かなり良い家の出らしいが、親の代でとうとう事業に失敗して家は失って一家離散したのだそうだ。
 そんな人をずっと同級生として見てきた兄、正人はそれでも強く生きる雫に惚れてしまい、二人は相思相愛で恋人になったのだそうだ。
 そこで二人は一緒に住むことにしたのだけれど、そこには時人の問題があった。
 時人は今は正人と暮らしていて、正人の出してくれるお金で大学へと通っている。
 なので元々両親が買ったこの実家で暮らしているままである。
 大学から近いのもあり、引っ越す意味がない。
 でも正人と雫はこれからのことを考えると、離れて暮らすのは意味がない。
「頼む、雫をここに住まわせてもいいか……? 部屋は一階の父さん達の部屋をリフォームして暮らすから二階のお前の部屋には迷惑は掛けないつもりだ」
 そう言われてしまって、正人に頭を下げられてしまったら、嫌だと思っていても時人は断れない。
 散々世話になっている兄の頼み事を無碍にできるほど非情ではなかった。
「それならいいよ、好きにしたらいい。俺は働き始めたら、出て行くか考えるし、お互い負担の掛からないように暮らそう」
 そう時人が正人に言うと、正人も喜び、そして時人は雫と家であった。
 とても美人の雫は大人しくて、ニッコリと笑って全てを包み込んでくれるような人に見えた。
「よろしくお願いします、時人くん」
 そう呼ばれた時、時人の心の中に恋心が生まれた。
 それもただの恋心ではなかった。
 この人を組み敷いて、犯して啼いているところを見てみたいという人には到底相談もできない酷いことを思ったのだった。

 それから家のリフォームはあっという間に終わり、一階の奥の部屋は正人と雫の部屋になった。
 一階のリビングも正人達のものになったが、水回りだけは共有になってしまった。
 台所と風呂は分けることはできなかったし、トイレは一階と二階で分けることになったけれど、お互い緊急時には使わせて貰えるという形にした。
 干渉を避けるために、時人の二階には冷蔵庫を買い込んで持ち込んだし、小さな洗面所を台所の水回りの代わりにして極力、邪魔をしないように勤めた。
 そうして一ヶ月くらいが過ぎるとお互いに生活ペースが違っているため、同じ家の中にいても会おうとしない限り会うことはなかった。
 風呂も玄関先に入浴時間を決めておいていたが、自然と時人がバイトに入ったことで、遅くに時人が入る形に落ち着いた。
 そしてある日のこと、時人のバイトがバイト先の店長が入院してしまい、店が一時休みになってしまったことで歯車が狂い始めた。
 時人が早く帰ってきた日、雫はすでに家にいたけれど、玄関先の予定表には正人が緊急の出張になっていて三日間いない日だった。
 時人が玄関で靴を閉まっていると、トイレから雫が出てきた。
 少し顔を赤らめているけれど、玄関に時人がいることに気付いてハッとして顔を手で覆った。
「ああ、時人くん、帰っていたんだね。早かったね」
「ああ、バイト先の店長が入院して、一週間くらいバイトは休みになっちまった」
 時人がそう言うと、それには雫も驚いたようで。
「大変だね。あ、そうだ。それじゃ夕飯はないんじゃない? 実は正人さんが急に出張になっちゃって、作ったご飯が余っちゃってるんだ。良かったら食べてくれない?」
 そう和やかに言う雫につられて、断ることもないかと時人は言った。
「貰えるなら、貰うけれど」
「そう良かった。台所にきて、もう用意しちゃってて」
 そう雫が言うので、時人は荷物を階段の上に置いてから台所に入った。
 確かにテーブルには食事を用意している。雫が作ったのか、焼き魚と卵焼き、それに野菜に味噌汁、カボチャの煮物があった。
「どれも兄貴の好きなものだな」
 そう時人が言うと、雫はニコリと笑った。
「そうなんだよね。今日に限ってなんだよね。魚も正人さんの好きなの売ってたのに、カボチャもいいのが入っていたし、味噌汁の具も好きなのを揃えた最強の夕飯だったのにねえ」
 そう言われて時人は正人がとても愛されていることに嫉妬した。
 自分には正人しかそういう愛情をくれる人はいなかった。
 女性は信用できなかったから、恋人は作らなかったし、告白してきた女は最初にセックスをしたらやり捨ててきた。
 だって恋人なんて信用ならないし、平気で人の兄貴に乗り替えようとしてくる女ばかりだった。
 だから時人は女性が嫌いだった。
 正人に近付くものは特に大嫌いだった。
 そして、この恋人の雫もまた兄を奪うものだった。
 でもそこには女性に向けられてきた憎悪はなかった。
 ただそこに芽生えたのは、加害的な感情だけ。
 時人はそれと戦いながら、雫が正人のために用意した食事を食べた。
 美味しかったし、合間に大学のことを聞かれたけれど、詮索ではなく世間話程度だったので応じて話しているうちに、時人は楽しくなってしまった。
 雫はとても良い人だ。
 正人にとっても似合いの人だった。
 正人をとても愛してくれていて、裏切ることはなさそうだった。
 でもそれでも時人は、自分の仲に芽生えた性欲を押さえることはできなかった。
「食事の片付けは手伝うよ」
 そう言って雫と一緒に台所に立って、洗い物をしてしまうと、その水で冷えた手で雫の首筋を触った。
「ひやっ!! な、なに、時人くん……やだ、悪戯しないで」
 そう言った雫の少し恥ずかしそうな視線がとてもそそってしまい、時人はとうとう雫をその場で押し倒していた。
 ガタンと大きな音が鳴って、倒れ込むと雫は少し床に頭をぶつけたのか、すぐには反応をしなかった。
「う……ん……」
 そうなった雫を床に寝転ばせて、時人は雫の唇にキスをした、
 貪るようなキスで、気を失っているみたいに動かない雫は抵抗はしなかった。
 そこから首筋に唇を這わせていくと、首筋からとてもいい匂いがしてきた。
「良い匂い……」
「あ……っ、はぅ……」
 首筋を舐めた後は、服をたぐり寄せて上着のワイシャツを引き裂いて下着を捲り上げた。
「ピンクの乳首なのに、やっぱりいやらしいことをしていた」
 そう言って見た雫の乳首にはニップルクリップが付いていた。
 恐らく正人が帰ってきたらすぐにセックスができるように準備をしていたのだろう。
「あっ……はあっ……、あ……」
 そのニップルクリップを引っ張ってやると雫は喘ぎに似た声を上げてくる。
「気を失っていても、反応はするんだ……じゃあやっちまおう」
 時人はそう言うとすぐさま雫の乳首を撫で回した後は、パンツを脱がせた。
 すると下着は履いておらず、しかも革ベルトで固定されたものが腰と内股についていた。
 それが固定しているものは、アナルに突き刺さっているバイブだった。
「ああっ……!!」
 バイブは無線で繋がっているのか、動いてはいなかったけど手元にあるスイッチで操作ができたのでオンにスイッチを変えた。
「ぁあ……!はあ……っ!」
 ブブッと奥でバイブが振動を開始し、それに雫の腰が跳ねる。
「んうっ……あ……」
 甘い声を上げて腰が揺らぎ、淫らな雫が目の前で乱れている。
「たまんねえわ……こりゃ男でも惚れる」
 それに時人はホッとした。
 最初に見たときから気に入っていて一目惚れのようでありながら、酷いことをしたいと思ってしまった相手はその通りにしても問題がなさそうなくらい、正人が仕込んでいた。
「あっ……ぁはあっ……!ああぅ……」
 バイブを掴んで出し入れをしてやると、更に雫は腰を振った。
「んっ……、んふ……あぁ……っ!」
 気持ちが良いのか悶えていて、とても綺麗だった。
 そしてそれを引き抜いてから、雫の足を大きく開いてアナルを見た。
 十分に開いているアナルに時人は勃起したペニスをゆっくりと突き挿れていった。
「あぅっ……あぁ……!あ、あ……ああっ……あぁー……!」
「中がうねって凄い……気持ちいい……」
「んはぁあ……!」
 奥まで突き挿れてやると、まだ開いていない場所があった。
 そこを重点的に突きながら、時人は腰を振った。
「ああっ! んああぁっ……ああっ……!」
 そうするとさすがに圧迫感におかしいと思ったのか、それまで気を失っているようだった雫が目を覚ました。
「ひ……っ、くふ……うっ、あ、あうぅ……はあっ、ああ……っ、な、にこれ……っ」
 直ぐさま伸し掛かってきているのが最愛の正人ではないと気付いた雫は、大きな悲鳴を上げた。
「いや、あふうっ……いやあああっ……っ」
 そう叫んでも腰を振っている時人は止まってくれないし、更に強く肩を床に押しつけてきて、力の差で雫は起き上がることも、逃げることもできなかった。
「あう……っく、あふはっ……っ、ああぅ……ああんっ……っ、ああ……っく、あああ……っ」
 それまでに蓄積された快楽を感じている雫は、口から喘ぎ声を出してしまい、それに自分で驚いている。
「ああ……いやあ、時人くん、やめて……あああは、あぁ……っんっ、んっ、は……」
 そう言っても時人は夢中で腰を振り、そのせいで雫は快楽に陥れられる。
「あ……っ、だめ、時人くん……はぁっ、んん……っ、あ、助けて、正人さん……あああ」
 そう正人に助けを求めるけれど、正人は家に三日も帰ってこないことは聞いたばかりで、すでに北海道の地に立っている正人が家に戻ってくる可能性はゼロである。
 ここから電話をしてももう飛行機が最終便が出た後で、戻ってはこられない。
 助けてくれる知り合いはいないし、時人を止められる人は何処にもいない。
「あぁっ……あっ、あっ、あ……あっ、あー……っ」
 激しく時人に腰を振られて、それで雫は感じてしまい、嬌声を上げることになってしまった。
「はう、ううぅ……っ、もう……っあふぅ……っ!」
 抵抗してもどうしても、これで気持ち良くなっている自分がいることを雫は初めて知り、そして絶望をした。
「兄貴じゃなくても、十分感じているみたいだし、俺でもいいだろ?」
 そう時人に言われてしまい、その通りだったため、悔しくて激しく抵抗をしたら、うつ伏せにされて後ろから激しく腰を掴まれて挿入をされた。
「あっ、ぁん……!ああっ……ああ……もう……っ、んんんあぁ……! んぁあっ……ふぁ、あぁ……っ!」
「気持ち良く良がりやがって、やっぱり兄貴でなくてもいいんじゃないかこの淫乱がっ!!」
 そう言われて結腸まで突き挿れられて、正人すら入っていないところを開かれて雫は嬌声を上げた。
「あひぁああっ、ああぅあぁっ、ぁ、ぁ、あっ――」
「中出ししてやるよ、精液たっぷり出してやる、孕めよ淫乱」
「ああああんっ……らめっ、あああぁっ……それはぁっ、だめぇ……っ!」
 だめと言っても時人は遠慮なく結腸の中で精液を吐き出し、それを受けて雫は絶頂をしてしまった。
「んんっ……はぁっ、あっあぁっ……」
 熱いモノが奥で吐き出されて、それを感じて絶頂をしてしまい、ビューッと激しく潮を吹いてしまった。
「ん……っ! っあ、やっ、ん……ひあっ、ぁあっ」
 気持ち良すぎて正人の時に感じたことのない圧迫感と気持ちよさに、それはペニスの大きさが違うことを知った。
 正人では届かないところに時人のペニスは届き、そして太さも太いから広げられてそれが気持ち良くなってしまったのだ。
「はぁっ、ん、んっ、ぁん……んっ、ぁ、ん、はぁ、ん……」
「まだまだ、三日はある。兄貴が帰ってくるまでに俺の肉便器に育ててやるよ」
 時人はそう言うとまたペニスを勃起させて、雫の中で暴れ始めた。
「ん、はぁ、ぁっはぁっ、ぁんっ、あっ、ん……」
 雫はそれを受けてもう逃げることはできなかった。
「あひ……ひ、あああっだめっんっあ……ぁ……ん……っ」
 止まることない時人は遠慮なく雫を犯し続けた。
「んぁ……っ、ぁん、やら、ぁ……っ、やめ、やめて、ああぁ、ひぁん、あぁ、ああぁ、や、んあ、やぁ……っ」
 雫は嫌がる素振りはしたけれど、外へと逃げることはなかった。
 逃げても逃げる先がない雫は、ここにしか居場所はない。
 それが分かっているので時人は玄関先まで一旦行った雫を玄関先で犯した。
「ひぃ、ん……っあ、ぁぅあぁん、……っぁん、やぁ……っ、やめて……やめて……っ、あゃ、あ、ぁ、あっ」
「逃げても無駄だ、追いかけていって道ばたで皆に見せつけながら犯してやるからな」
「んひゃ、ひあぁあ……っぁふっ、ゃ、ぁ……っあ、あぁ」
 本気で時人がそう言っているのに雫は怯えてしまって、逃げることはなくなった。
 雫は正人にこの事を知られることを恐れていて、それで何度も脅していると静かに従うようになった。
「あぁ……っ、ぃ、いやあっ……はぁっ……もぉ、やめて下さい……あぁ、はあぁっ……こ、こんな……っ、だめっん……」
「まだだ、俺を満足させてないから、もっとだ」
「あぅあ、あぁ、んあ、や、やめ……っ、ん、はぁ……ああっ」
「もっと雫、乱れてみせろ」
「あっ! ぁひっ、ひんっ! ゃ、やぁっ、っあっ、あっ、い、ゃ……っ、やめ……ああんっああっ」
 最後の三日目には雫も騎乗位で腰を振るようになっていて、すっかり時人のペニスに夢中になっていた。
 ペニスさえ立派ならば簡単に雫は堕とせた。
 それに正人のことは感情の問題ではあったが、時人は正人と雫がセックスした部屋のベッドで泣きじゃくる雫を犯し尽くしてやったら、雫はちょっと壊れてしまったようだった。
 三日の出張が終わると正人は急いで帰ってきたけれど、家の変化には気付いてなかった。
 さらには雫の様子がおかしいことにも気付いていなかった。
 その日から珍しく時人が台所に朝から顔を見せるようになったが、それを正人はいいように解釈したようだった。
「まあ、兄貴取られてちょっとショックだったから拗ねてた」
 そう可愛い弟が言って謝ってきたのでそれを信じたのだ。
 でも正人が仕事に行く時に二人が見送ってくれた。
 しかしその二人は正人が見えなくなるとすぐに玄関に飛んで入り、鍵を閉め、内鍵も閉めてしまってから玄関ですぐに盛った。
「あ、あ、あ時人くん、おちんぽ、待ちきれない」
 そう言って雫がパンツを下ろすと、案の定下着はいつものいやらしいバイブを突き挿入ている状態になっている。
 正人もそれを今日も雫にさせたのだという。
 しかしそれは、雫にとっては好都合で、もう時人のペニスを挿れるための準備だと思えていた。
 時人もまた勃起したペニスを取り出してそれを雫に見せつけた。
「兄貴の前で犯してやりたくて、うずうずしていたよ」
 そう言うと、アナルを開いて待っている雫に伸し掛かり、ペニスをアナルに突き挿入れた。
「あはぁ……っ、あぅ、んあ……ふああん……はぁっ……はぁ、あん……あぁ、やぁ……っ、あぁんあぁはんっ! あっ…きもちいいっあああん……っ」
「これからも仲良くやっていこうぜ、雫」
「あんっああ……っもちろんおねがいしますっ、ひぁ、はぁ……あぁん……ああん……んっ……」
 パンパンと激しい音をさせて、二人は朝から盛った。
 それは歪な関係の始まりであり、いつかは壊れてしまうものかもしれない。
 でもそれでもこの今を楽しみたい二人には、どうでもいい些細なことであった。
「あっ……! ぁ、……らめ、あんっああん……っはぁあぅん……っ」
「ああ、奥に出る出るっ!!」
「ん゛ひぃっ、らめっらめっ、イっ、またイって……る……ああっ、ひぁぁっあぁっああああっあ゛あっ……んひぃっ、らめぇっい゛ぐっあっとまんなっ……、あっあんっあんっあんっあんっあんっ」
 雫は奥に時人の精液を受け止めながら、満足した幸せそうな表情を浮かべていた。
 その後も二人の関係は続き、正人はそれに気付くことなく暮らしていくことになったのだった。


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