175-きらいの反対

「さあ、飲んでるか~」
 そう言いながらやってきたのは同年の高橋だ。
 お調子者でトラブルメーカーではあったけれど、後輩には面白い先輩として慕われている。
 この飲み会はサークルの追い出しコンパで、後輩が主催をしたものだ。
 サークルはただの旅行サークル。でもそこまで大きな旅行はできないので大抵はキャンプだったりする。
 規約も緩く、入るのも辞めるのも自由で、気づいたら大学サークルで一番大きなグループになっていた。
 こういう飲み会を企画すると五十人以上が参加することもあり、大ホールを借りて企画をしなければならないほどだ。
 そしてこの追い出しコンパは百人以上が参加。パーティー会場は二つあり、あちこちに人が集まり、廊下すらも人で混雑する有様である。
 そんな中で幸村は、高橋に絡まれて面倒だなと思っていた。
 いつもトラブルになると幸村が後始末をする羽目になっていたからである。
「もうおまえの面倒はみないから、寄って来んな」
「そう言わずに~」
 高橋がそう言って幸村に絡んでいると、目の前にいた久岡がボソリと言う。
「都ちゃんに言ってやろう。高橋がまた幸村に絡んでるって」
 そう久岡が言うと、高橋は慌てて幸村から離れた。
「うそうそ、ごめんごめん。じゃ、楽しんで~」
 高橋はそう言うと去って行った。
 都ちゃんというのは高橋の姉で、一つ年上の同じサークルの先輩でもある。そのせいで高橋が何かすると都がいつも後始末をしていたのだが、卒業するときに高橋のお守り役を託されたのが幸村だった。
 もちろん、何かあったら呼んでくれていいとは言われていたが、幸村はそんな都のことを好きだったのもあり、無理を承知で迷惑をかけたくないと思って頑張った。
 が、結局大きな出来事で処理しきれず、悩んでいる幸村を久岡が助ける形になった。
その都を呼んでくれ、結局都が家族として処理をした。
 幸村はそれから久岡に余計なことをしてほしくないと言っているのだが、久岡はことあるごとに高橋を脅しにかかる。都の名前を出し、直通の電話番号すら手に入れて、高橋が何かしでかすごとに都に連絡を入れていた。
 だから、幸村は都からお守り役を解雇されてしまい、迷惑をかけてごめんねと謝られてしまい、期待には添えなかったことに幸村はショックを受けた。
 そのせいで久岡とは邪険になり、幸村はことあるごとに口を挟んでくる久岡にはどうしても反発してしまうようになった。
「余計なことをしなくていいのに」
 幸村がそう言うと、久岡はそれにチッと舌打ちをして少し離れたところにいった。
「あいつ、何だかんだでおまえのこと助けてはいるんだよな」
 そう言うのは他の同期だ。
 それは分かっている。
 けれど、それで怒っている自分が何だか小さい人間のような気がして、それで余計に悔しさが増してくる。
「分かってるけど……」
「まあ、何でも先回りされちゃ腹立つのも分からなくはないけど、そろそろ素直になっておけよ」
「……うーん」
 そう言われても素直になれないのが幸村の性格だ。
 自分で一生懸命やっているのに、それを軽々と超えて自分以上に完璧に何かをされてしまうことでプライドが傷付くのは周りの人も分かってくれる。
 けれどどうして久岡がそうしてくるのかだけは分からないらしいが、友人は、幸村の一生懸命さを駄目にしていく高橋に対しての苛立ちの方が強いため、久岡のお節介はラッキーな出来事らしい。
「まあ、やっと高橋と縁も切れるわけだし、もう久岡のお節介もなくなるだろう。卒業式も終わったし、俺ら就職するし、働く場所も別だからいいじゃん」
 そんなことを言われても、幸村はブスッとする。
「久岡とは同じ会社だ……」
「あーだったっけ? まあ、そこは久岡の親の会社だったわけだ。あーそれじゃ、久岡の方が早くに出世して上司になったりするわけだ?」
「だから余計にお先が暗いんです」
 何十社も受けて通ったのがその会社だけという散々な就職活動で、その途中の高橋のやらかしのせいで後半の会社に至っては書類審査で落とされ続けたのだ。
 幸い就職した会社の人は、幸村が高橋の騒動に巻き込まれ、いつも尻ぬぐいをしていただけであることを久岡が言ってくれたお陰で誤解は解けたけれど、コネのない会社ではその真実が伝わるのも遅かったせいで、書類審査で落とされてしまったわけだ。
「まあ、そのお陰で全滅は免れたわけだし、当面は我慢で、それでも嫌なら転職とか……」
 そう友人が言ったと同時に友人の後ろに久岡が立っている。
「おい」
「ひああああっ!」
 さすがに驚いた友人が叫ぶと、久岡が言った。
「真美さんたちがお前のこと探してたぞ? 用事あるんじゃね?」
 そう久岡が言うので友人は和やかにその場を去って行く。
「あ、……」
「邪魔してやるなよ、あいつ真美さんに告白してその返事がもらえるんだから」
 友人に付いていこうとした幸村に久岡がそう言う。
 なるほどと思い直してから幸村はその場に通りかかったウェイターから酒を二つ取って一気に飲み干した。
「おい、飲み過ぎだ」
 久岡がそう言って幸村のことを止めようとするも、幸村は飲み干してしまった。
「おい、それ……強い酒だぞ」
 久岡にそう言われて、幸村は久岡を睨み付ける。
「もう俺のことは放っておいてくれ」
 はっきりとそう告げるのだが久岡は言う。
「だったら、もっとしっかりして周りに迷惑をかけないようにしろよ」
 久岡の言葉に幸村は苛立ちを浮かべる。
「俺がいつ誰に迷惑をかけたんだよ」
 自分ではちゃんとやっているつもりで、高橋の面倒すら見たと思っている幸村であるが、久岡はそれに対してはっきりと告げてくる。
「お前は自分のキャパシティオーバーなことばかり受けてる。高橋のことだって、手に負えなくなっているのにいつまでも都さんには救援を頼まなかったし、結局潰れかけているのに、周りから心配されてるのにそれにも気付かず、呆れられていた」
 はっきりとそう言われてしまい、幸村は目を見開いた。
 まさか周りからそう思われているとは思わず、挙げ句その人たちの心配する様子に大丈夫だと言って助けを求めなかったことで、周りとは距離ができていたらしい。
「うそ……」
「嘘じゃない。だから俺が都さんに連絡をして高橋をおとなしくさせたから、やっと周りは安心したんだ。お前ができると言って意地を張っていたせいで周りがもっと迷惑していたんだ」
「……あ……そんな」
 自分の頑張りを認めず、手っ取り早く高橋を押さえてほしいのに肝心の幸村は使えないとなれば、それに横やりを入れた久岡のことを周りがかばって認めるのは当然のことだったのだ。
 ずっと幸村は自分だけが大変だと思っていたし、それなりに仕事をしていたと思っていたが、それは自分の思い上がりで自分勝手に盛り上がっていただけだったのだ。
 それでも友人知人が去っていなかったのは、久岡が間に入って幸村の先回りをして手配をしてくれたお陰で、苛立った幸村が周りに当たり散らさなくなったお陰でもある。
 よくよく考えたら思い当たることばかりが浮かんで、幸村はその記憶に絶望しかける。
「それでも俺はお前がよくやっていたと思っている。ただキャパシティを超えるととたんに使えなくなるから、そこはさすがにサポートするしかないって思って……」
 久岡は好意でそれを見抜き、ずっと幸村を助けてくれていたわけだ。
 それに気付いて幸村は、自分が本当に小さな人間であったことに絶望をした。
「お、俺だって……一生懸命で……」
 そう言いかけたら涙が出てきた。
 どうやら酔ったら泣き上戸になるのか、そのときの気分が最悪だったので幸村は大きな声で泣き始めた。
「……俺が……俺が……邪魔だったなんて……」
 わーわーと大きな声で泣き始める幸村であるが、周りは何だと思いながらも遠巻きにそれを見ている。けれど久岡が側にいたので全員が大して気にした様子はしなかった。
「……こっちにこい」
 泣いている幸村を連れて久岡は会場を出た。
 するとその騒ぎを見ていた高橋が近寄ってきた。
「おいおい、泣かせてどうすんだよ。ほら、幸村、こっちにおいで」
 ニヤニヤとした高橋がそう言うので、その高橋を久岡は睨み付けてから怒鳴った。
「誰のせいでこいつが泣いていると思っているんだ。全部あんたの勝手のせいだろうが! これ以上、こいつに近づかないでください。次に何かあったら、あんたのこと都さんどころか父親の方に報告してやる!」
 高橋のニヤニヤした顔に久岡が苛立ちを見せてからそう脅すと、高橋は一目散に逃げていった。
 どうやら都の名前を出されるよりも父親に報告されることの方が堪えるらしい。
 そんな高橋を見て、幸村は唖然とする。
 いつもは都の名前を出してもニヤニヤして無茶ばかりする人だったけれど、実は脅しに弱く、どうしようもない人だったらしい。親に怒鳴られるのを怖がるなんて小学生レベルである。
「いいか、幸村。お前はこれから高橋に絡まれたら、俺に久岡に全部話すと言え。それであいつはああやって逃げるようになるから、もう面倒もなくなる」
 久岡が言い切ってくれたけれど、幸村は悔しくてまた泣いた。
「もうやだ、お前、何で俺の先回りばっかあ……俺が何もできないみたいじゃん……」
 実際には何もできていないようなものなので、久岡も言い淀む。
「頑張りどころが違うんだよ。お前は仕事はちゃんとできる。むしろ事務の方がちゃんとしてる……会計もお前がいなきゃ横領だってあり得たんだ」
 幸村は幹事には向かないけれど、それを補佐する会計や事務は完璧に熟していた。
 だから適材適所があるわけで、それを久岡は言っているのだ。
「でも、俺……お前の親の会社しか受からなかった……っそんなところまでお前に助けて貰わないと駄目な人間なんだっ」
 そう幸村は言って更に泣き叫ぶ。
 けれど久岡は幸村の手を引いてどんどん歩いて行き、エレベーターに乗った。
 久岡が押した回数は十七階。最上階だ。
 そしてそれがあっという間に十七階について廊下に出て、久岡は一つの部屋に幸村を連れて入った。
 部屋に入ってオートロックでドアが閉まると、久岡は泣いている幸村の涙を拭いた。
「や、やめろ……うう」
 幸村はそうしてくる久岡に抵抗をしていたが、タオルを持った久岡は幸村の涙で濡れた顔を拭き、出ていた鼻水も拭いてくれた。
「何で、そんなに俺に構うんだよ……」
 ここまでして貰う仲ではなかったし、そもそも幸村が久岡を嫌っていることくらい久岡は分かっているはずだ。それなのに泣いていたらちゃんとあの場から連れ出してくれて、こうやって慰めてくれる。
 それに対してどうしてだと思うのは普通だった。
「ここまでやっても俺の好意は分かんないか?」
「分からないから聞いてるんだけど……」
 そう幸村が返すと、久岡は少しだけチッと舌打ちをした後に、幸村の唇にキスをした。
 チュッとして離れるキスで、幸村は何が起こったのか理解できずにキョトンとして久岡を見ると、久岡は真っ赤な顔をしている。
 けれどしっかりと久岡は幸村を見つめてから言うのだ。
「そんなの、俺がお前のことを好きだからに決まっているだろ」
 ボソリとそう言われてしまい、幸村はその感情が理解できずに目を見開いた。
「お前が俺を好き?」
「そうだ、好きなんだよ」
「何で、俺、そんないいところないし」
 不思議に思いそう幸村が言うと、久岡は言った。
「最初は外見が好きだった。だから近付いてみたら、お前が一生懸命だけど、要領が悪いことが分かって、もうちょっとこう手助けをしてやれないかと思った……だからお前が辛いときに口だししてたから、お前には鬱陶しかっただろうけど、それでもお前が困って周りから孤立しかかっているのが許せなかった。だってそれ全部高橋のせいだろう? お前が苛立っているのも、俺の手助けを素直に受けられないのも、あの高橋の姉弟のせいじゃん」
 言われてみれば確かにそうである。
久岡の簡潔な近付いた理由と手助けをしてきた理由にはちゃんとした根拠がある。
 一目惚れをしたので近付いた。その人が困っていたから助けた。孤立しそうだったのでそうならないように手助けをした。
 どれもこれも全部幸村のためにしたことで、久岡には一応下心があるがそれは最後まで見せなかった。
 嫌われているのも分かっているのに、それでも助け続けてくれたのだ。
 そりゃ、他の友人は皆久岡の味方に付くわけだ。
「何だ、俺、ずっと空回りしてたんだ……」
「そうとも言う。けれどそれは全部高橋のせいだ。お前が他の就職先を蹴られたのも、高橋が余計なことをしていたからだ」
 そう言われてしまい、幸村がキョトンとする。
「え、それは俺が高橋と連んでいると思われてたからじゃないの?」
 高橋の悪行が広まったせいで、面接を書類審査で落とされているのだと思っていたけれど、実はそうではないらしい。
「高橋がお前の就職先全部回って、お前のあり得ない噂を面接官に教えていたんだ。自分が就職活動を有利にするために……」
 そう言われてしまい、幸村はその場に座り込んだ。
「何で、俺、高橋のために色んなことしてきたのに、恨まれてたの?」
 彼がしたことの後始末をちゃんとしてきたと思っていたのに、当の高橋は幸村を恨んでいたとしか思えない行動をしていたのだ。
「恨むとかじゃない。利用したんだ。幸村が受かりそうなところに自分が受かりたいから変な噂を流して書類審査で落とさせる。そうすれば面接へのうちの大学からの空きができる。そこにねじ込もうとしたわけだけど、それは問屋が卸さなかったな。さすがに高橋の悪行は各会社の知るところになっているから、高橋も書類で落とされてるオチなんだけどな」
 久岡がどうして高橋をそこまで嫌いだったのか、やっと幸村は理解をした。
 これなら高橋を庇ってきた一年間、本当に無駄だったのだと思い知らされる。むしろそのまま放置して勝手に自爆して貰った方がよかったのではないかとさえ思えた。
 挙げ句、さっきも心配する振りをしてニヤニヤしていたけれど、きっと高橋について行ったら碌なことになっていなかっただろう。
「……なんだったんだそれ……俺、無駄だったんじゃん……」
 後輩からも高橋をどうにもできない無能だと思われ、同年からも役に立たないと判断され、久岡に助けて貰っていなければ、一生この時期のことを恨んで生きていく羽目になっていたはずだ。
「何で都さん、俺に高橋を任せたんだ? 確かに俺が都さんにいい顔したくて、立候補したけれど……無能なことは分かってたはずじゃん、あの人なら」
 幸村は自分の無能さをここまで久岡が感じていたのなら、もっと有能だった高橋の姉、都はもっと分かっていたはずだと言った。
「押しつけただけだよ。あの人は。父親から高橋の後始末を頼まれていたけれど、面倒になって幸村に押しつけただけ。結局高橋姉弟に利用されただけだ」
 それに久岡は気付いて都に伝をつけて、それでも都が応じなかったので父親の方に直談判に行ったというから驚きだ。
「幸い、狭い業界だから俺の親父と知り合いだった。だからそこから伝を使って、お前のところの姉弟が碌でもないからいい加減にしろって言ってきた。さすがに都も高橋の大学でのことを隠蔽していたせいで、親は知らなかったらしくて、やっと雷が落ちたけど、就職活動でのお前の名誉回復には至らなかった」
 既に鵜呑みにするわけではないがと言いながら、面倒な新人は要らないと書類で落としてしまった会社は多いという。その中で幸村の事務と会計の素晴らしい計画性のことを知った久岡の父親だけは、そこを買ってくれ、ちゃんと面接をして幸村の人となりを見た上で採用をしてくれたのだという。
「じゃあ……俺、ちゃんと実力で?」
「そうだよ。まあ、会計とか事務力とかは、俺が口添えしたし書類とか見せたけど……それでも面接を受けてちゃんと通ったのは、お前の実力だから、俺がしたことは面接をちゃんと受けさせる段階までだと思う」
 久岡の言葉にやっと幸村はどうしようもないところまで自分は高橋に填められていて、一生を無駄にするところだったのかが分かった。
「久岡、ごめん。俺、何にも知らないでお前のこと恨んで……俺、お前に一生頭が上がらないくらい、たくさん助けて貰っているのに……ごめん」
 どう謝っても許して貰えないくらいに影で助けられていたなんて、もっと早くに知っていたらもっとたくさん久岡に感謝できただろう。けれどもう土下座をしても足りないほどの迷惑をかけていたし、助けて貰っているのだ。
 床に頭を擦りつけて謝っている幸村に、久岡は舌打ちをした。
「だからそういうことをして貰いたくて、教えたわけじゃない……ただ、俺はお前のことが好きで、どうしようもなく助けたかっただけなんだ。土下座させるために、したんじゃない……っ」
 久岡はそう言い、幸村が泣いているのを立たせてくる。
 そしてベッドに運んで座らせてから、床に膝をついて幸村を見上げてから、幸村の唇にまたキスをした。
「こういう時にキスをして、お前がいろいろなことでショックを受けて抵抗できないのは分かっている。でも俺は今お前にキスをしたいし、お前に触れたい。お前を抱きたい」
 何年も近くにいながら、触れることさえ許されなかった。
 幸村は久岡にとって聖域だった。
 けれど今は立場や境遇によって、久岡が有利である。
 それを利用すれば、幸村は抵抗できないことは分かっている。それがよいことではないことも分かっている。けれども久岡はそれを利用してでも幸村に触れたくて仕方がなかった。
 しかしその久岡の葛藤とは別に幸村はそこまでして幸村を欲しがる久岡にやっと興味が湧いてきていた。
 久岡が幸村に触れたいというのは、もちろん抱くことで、それはセックスのことだ。
 男同士がセックスできることは知っているし、きっと幸村が受ける側であることも瞬時に理解した。
 だが、不思議と嫌悪感は湧かなかったのだ。
 どうしてだと不思議に思ってみたが、それはすぐに解決した。
 ここまで必死に卑怯だと自覚をしながらでも、幸村を欲しがってくれる人は今まで一人としていなかった。だから純粋に嬉しかったのだ。
 久岡の人の良さは、よくよく考えた相当深く、好きな人に対しての謙信さはどこまでも懐が深いと言えた。
話も辻褄が合っていたし、嘘を言っているわけでもないことは、今目の前にしている久岡の耳まで赤い顔を見れば分かる。
「……本気でそう言ってるのは分かるし……別に触られても気持ち悪くもない……」
 そうしっかりとした口調で幸村が言うと、久岡はハッとして幸村を見てくる。
「いいのか?」
「その……俺の方が……手のひら返しみたいで、酷くないかって思えてきて。真実を知ってコロって、お前のこと恨んでたのに、はい大丈夫ですって急に言い出したら、俺、何かお前に対して酷くない?」
幸村がそう言うと、久岡も幸村が何を気にしているのかすぐに理解をした。
 こういう時の久岡の理解度はすごく高い。
「いや、寧ろ転んでくれた方が俺にとっては都合がいいから、そのまま転んでくれると有り難い」
久岡は自分に転がってきてくれるなら、何でもいいとばかりに言う。
 そこまでして幸村に惚れているのだと言ってくれるので、幸村はそれでもいいかと思えてきた。
 もし本当に騙されたとしても、それで久岡の幸村に対する恨みとかがあったとして、晴らされる可能性もある。
 それだけのことをしたのだと幸村は思った。
 親切を仇で返していたツケは自分が身をもって受けるしかないということだ。
 だから幸村は久岡の手を取って言った。
「もう何だか分からない。だから今だけは久岡の好きにしてくれて構わない。俺がそういう気持ちになっているのに付け込んでもいいし、そうじゃないならそれでもいい。とにかくお前の好きにしていい。さ、触れるのは嫌じゃなかったし、キスも嫌じゃなかったから、その先も好きにしてくれていい」
 とにかく全身を使ってその意思を示すと、久岡はすぐに立ち上がり、幸村をベッドに押し倒した。
 そしてそんな幸村の上にのし掛かり、久岡が言った。
「その言葉通りに受け取る。お前は俺にこれから抱かれてセックスをする。痛くはしないし、大事に抱く。でもそれは俺がそうしたいからするのであって、お前の意思は今は無視する。嫌だって泣いても、辞めないことだけは頭に入れておいてくれ」
 久岡はそう真剣に言うと、幸村はその真剣さに驚きながらも頷いた。
 これが人を騙そうとしているような態度には到底見えなかったからだ。



そろそろ追い出し会の会場も解散になっているだろう時間。
 午後十一時になって、二人はキスをして服を?ぎ取るようにして脱ぎ、裸になった。
 風呂に入りたいと言う、幸村に付き添って久岡も入り、二人で体を洗い合った。
「あ、は……あぅ、あうぅ……」
わざと乳首をこね回したり、股間をまさぐり合って、お互いに体を刺激した。
 案の定、幸村は久岡に触られても全然怖くなくて、気持ち悪くもなかった。
 幸村が抵抗するどころか、一緒になって久岡の体を触るから、久岡も幸村がその気になってくれているうちにと素早く体を弄ってくる。
「んんっ……は、あー……っひ、んっ……あぁっ……うあ……」
アナルも指で押して一本挿れてしまい、中を指で開いていく。
「くぅ、あぁああっ、あっ、あっ……く、ふう、ううぅん……っ」
「力抜いて……そう、いい子だ……」
「はあっ……だめ……あぁ、あんっ……っああぁ……っ、んあっ、はぁ、はぁうっ……」
アナルの中に感じる指の圧迫感に耐えながらも、息を逃がしてそれを受け入れる幸村に、何度も久岡は首筋にキスをして宥めた。
 それがとても優しかったから、幸村は久岡の手を止めなかった。
 このまま最後までしてくれたら、きっと久岡のことをちゃんと見られる気がしたのだ。
 きっと心の奥底では久岡を恨んでいたのは、あまりにも気になる存在だったからだろう。そうとしか思えないくらいに、幸村は久岡に体を預けられた。
「は……っ、はふぅ……っ、んんうぅう……っ、はぁ……あっ、あぁん……っ」
アナルに指を入れ、それが二本になって中を抉ると同時に久岡は幸村の乳首を口で吸った。
「やっあんっあんっ吸っちゃやらっあんっらめっなのっんああっ」
強く吸われたり舌で嬲ったりされると、異様に感じてしまい、幸村は喘いだ。
「ひああぁっ、乳首吸っちゃっ……あっあっあ゛っあ゛っあぁあっ」
ジュルジュルと音を立てて乳首を攻め立てられ、さらにはアナルの中の指が高速に動かされてどこもかしこも幸村は感じた。
「あっあっあぁっ……ちくびっいいっ……お尻……ああんっいいっあひっあっあぁんっ」
 幸村は久岡に乳首を吸われながらアナルを弄られて、そのまま絶頂まで持って行かれた。
「ああぁっ、それっらめぇっ、お尻、おかしくなる……あっひあっ、おかしくなるっ……あっあんっあんあんあんあんっ!」
「お尻じゃなくて、おま○こって言ってみな、それっぽくなるから」
「あっ……おま○こ……きもちいい……なんで、あっあっあああーっあひっ……ふあぁっ、あんっ、あんっ、あんっ、あひぃっあ゛あああぁああっ……あひっ、あ゛っ、らめぇっちくびもっきもちいいっあっあぁんっ」
嬌声を上げる幸村をどんどん攻略していく久岡は、そこでやっと風呂から幸村を連れ出してベッドに押し倒した。
 そしてすぐに久岡は幸村の乳首を執拗に攻め立てて、幸村のアナルに指をまた挿れて中を抉り続けた。
「あっ、あっひあっ乳首クリクリしちゃらめっ……あっあぁんっむりっ……あっあっあぁんっあぁあっいくっいくっでちゃうっ……あっあぁあんっ」
それでまた幸村が絶頂をすると、久岡はすぐに用意していたらしいコンドームを完全に勃起している自分のペニスに装着した。
「やぁあ……まって……おちんちんはいっちゃうっあぁっ、あっあっはぁっはぁっ……んっ……あっやぁっやっ……まってあっあっあ゛ああぁっ……あひっあ゛っ……ああっんっひあっ……ああっあっあんっあんっやぁっ……あ゛っあっ」
 ゆっくりと幸村のアナルに挿入を開始する久岡であるが、幸村のペニスを指で扱いてはゆっくりと中へ挿入っていく。挿入ったらそこで何度か浅く揺すり、更に奥に突き挿れてくるのだ。
「あんっあぅっあっひっああんっあぁんっらめっ……あっあひっあんあんっひあっ……んっ、やめ、ぁっあっあぁっん……やっ……! ひっあっあぁんっ」
苦しいけれど息を吐くタイミングでペニスを扱かれるので、力が抜けるとアナルに久岡のペニスがもっと挿入ってきて、あり得ない場所が圧迫感でいっぱいになる。
「あうっあっあっあんっふっ……あっあああっあああぁぁっ……おちんぽ、はいってっあうっ、んっやあっあんっあ゛ああっ……!」
「は、……やっと全部挿入った。幸村……中、ヤバいな……うねって絡みついてくる」
はっと息を吐き、久岡が少し感極まったみたいに感想を漏らす。
「ああっ……挿入って、おま○こにおちんぽ挿入ってる……ああんっ」
「おおい……ちょっと腰勝手に動いてるぞ……」
「あっあんっだって、うごいちゃう……あ゛あっああぁあぁぁっおま○こっああんああっ! あ゛ああっ……あひっ、おま○こいっぱいなの……いっあっあんっぁうっ、あっあっああっ」
勝手に幸村の腰が動き、久岡は一切動いていないのに挿入が繰り返されている。
「あ゛ひっ、あっ、おま○こっ、そこっだめなとこ、おちんぽでごりごりされてぅっ…あ゛ーっあ゛ああーっ…」
「お前が自分で当ててるんだってば……くそ、出るっ」
 さすがに久岡も好きな奴の中で耐えられるほど経験は豊富でなかったのか、とうとうそのまま中出しをしてしまったのだ。
 中で精液を感じた幸村はそれに嬌声を上げた。
「あ゛ひっ、あ゛っらめっせいえききたっらめっおま○こでイってるからあっあっあっあぁっ…あ゛んっあんっあああああんっ」
「もうお前、可愛すぎだろ……自分でイクとか、本当に処女だったのかよ……もう俺も好きにするぞ!」
そう言うと久岡のペニスがまた勃起をして幸村の中を擦り始めた。
それを感じて幸村は体を反らせた。
「あひっ、あんっあんっあんっあぁんっおま○こがっあ゛ーっあっ、あああっ」
「たまんねえ……幸村……ペース上げるぞ……」
「ああぁぁあ……ん゛あっ、あっあっあんっ、おち〇ぽっ……しゅごい、おっきぃおちんぽでおま○こされてるっ!ああんっ!」
「そうだ、これからは俺におま○こされて喜ぶんだぞ……幸村」
「あ゛あぁっ、あっんあっ、またいきそうっ久岡のおま〇こになっちゃった穴で……ん゛ああぁっあっ、あ゛あぁぁあっ」
「そうだ、俺のおま○こなんだ……お前は俺のものだ」
「ん゛あああぁっ……おかしくなぅっ……おち〇ぽ、もっと激しく、おま○こ突いてぇっ……あ゛っ、んあっ、あぁあっ、っあぁあぁぁ」
「もっと突いてやるよ、ずっと犯してやるからな、幸村もっと声を……もっと欲しがってくれ」
「あっ…あっんあぁっ……だめ、あっ、あっん゛ああっ……ふあああっ……んっあっ、あんっ……俺のおま〇こで、おちんぽ、気持ちよくなって……ああっあっあんっあぁあんっああ……ああっんっああんっんあっあああんっああっ……きもちいいっああんっああっいいっああんっ」
「くっ可愛いことを言う……」
 そう言うと一層勃起したペニスが精液を吐き出すために膨らんでいるのが幸村にも分かった。
「あっあっあっおま○こ……ああんっいいっおま○こいいっ……ああんっ久岡のおちんぽっすごいっああんっらめっらめっまたきちゃうっああんっ」
「また中に出すぞっ」
「あああっ、おま○こっ……ん、いいっ、おま○こに出してっあっあんっ、おま○こに、精液出していいっ……俺のおま〇こでイってっあっ、もっときもちよくしてっあっあ、ああああっイクいくっああああ!」
「はっ……ああでる、搾り取られるっ……くっまた勃起した、止まんねえこれ」
 久岡はそう言うとまたペニスを勃起させて幸村のアナルをペニスで突き上げた。
中は抜かずに何度も射精されたせいで精液塗れで、それがペニスが抜けるたびに外へと掻き出されて、幸村のアナルの外は白い泡のような液体が溢れて滴っている。
「いい、ああんっおちんぽっズボズボ気持ちいいっ……おま○こ……ああんっ良すぎるっ……ああんっ」
「本当に、俺ら相性良すぎるんだな……いくらでも勃起できる……」
「あぁんっ……あっあっ……おま○こ、おま○こっ久岡のおちんぽでずぼずぼされるの気持ちいいっああんっああん……ああっ! 久岡のおちんぽっおおきいっ……ああんっらめっああんっきもちいいっらめっらめっ……ああんっ!」
「幸村……幸村……」
「あぁあんっ! あっああっいいっあっいいっあぁんっおま○こっいいっああんっいいっきもちっ……いいっあああんっらめっ……ああんっいいっ……あっあっああっあっあっああっんっあっ」
お互いがお互いを求めて、初めてセックスをしたのに性欲に忠実に二人は求め合い続けた。深夜を回った時間だから、眠らずに朝までお互いに腰を振った。
「あんっあんっ、あああぁーーっ! ……ひあっうぁあっ……あっあ゛っあぁああ……っ、おま○こ、すごっあぁっ……ああいいっあんああっ……ああんっああっいいっきもちいいっああん……ああん……いいっあんっ」
「はあっ……たまんね……幸村、ここがいいんだよな」
「きもちいいっああんっらめっそこばっかっ……ああんっいいっいいっああんっきもちっいいっああんっんあっああんっああっああんっ……あっあっああっ……あん……あんああっ……あんきもちいいっ……あんああっ」
前立腺を刺激して何度も絶頂をしているうちに幸村はドライオーガズムまで覚え、快楽が長続きしたまま、ずっと久岡に犯される。
「んあっ、ああぁっ……はっ、はっん゛っ……ん゛ああっうあぁっ…ん゛あっ、あっあっあああぁぁっ……んはっあ゛ああっ……ああっあ゛あっああああっ……あっんっあ゛あっ……んあっあ゛あっ……ああんっ」
「また出る、中出しするぞっ」
「ん゛ああっ、あっあんっあんっらめぇっ……おま○この中にまた中出しっ、すごい、おちんぽから精液出てる……んっあっあっひあっ……ああんっ……らめっ……ああんっいいっ……いいっああっそこっあんっああっいくいくっひあああああああっ!!」
中出しをされて精液を感じて絶頂をし、やっとセックスが終わった。
「……はあ……はあ……つ、つかれた」
「さすがにな……けど、凄いお前、色っぽいな」
 幸村はアナルから精液を吹き出しながらぐったりとしているが、それが久岡には色っぽく映っているのか、また久岡のペニスが勃起しかけている。
「も……だめ……」
「もう一回ね」
 久岡はそう言うと気絶しかけている幸村をまた犯し始めた。
 けれど幸村はそのまま絶頂させられて完全に気絶をした。
 もちろんその後に揉めるのだけれど、結局二人はそのまま付き合うことになった。
 幸村以外は久岡が幸村を好きなことはバレていて、やっと落としたのかと笑っているくらいだった。
 その後二人は一緒に暮らし、いつまでも幸せになった。

感想



選択式


メッセージは文字まで、同一IPアドレスからの送信は一日回まで