170-アダム
玖蘭(くらん)研究所は、人工授精夜試験管から人間の育成に成功をした。
これによって人は妊娠をしなくても子供が持てるかもしれないという禁忌に突入しかけたのだが、生まれた子供は人よりも遙かに成長が早く、さらには思考の成長は人並みという、問題を抱えている試験体だった。
それは公表することもできず、また人の退化に当たるとして、研究所では完全に隔離された場所でその子供は育てられた。
体だけは二年ほどで大人になるも、思考は二歳児である。
問題ばかりで研究者は嘆いた。
その玖蘭研究所の玖蘭浩成(こうせい)教授は、その世話を新人だった新葉藤生(あらは ふじお)に全面的に任せてきた。
つまりは厄介払いをしたのである。
けれど研究所から出すのはできないことなので、藤生はその三歳児の思考しかない二十歳くらいの大きな子供を育てる羽目になったのだ。
一応の研究ではあるので、毎日検温や体重、血液採取や色んな変化を記録していくのだけれど、外見的には二年くらいほぼ変わらないままだった。
その試験体は名前はなかったので、No.で呼ぶのは可哀想だと思った藤生によって、アダムと名付けた。
するとアダムの名前を付けたとたんだったと思う。
それまでアダムは喋ることをしなかったのだが、流暢に喋り始めたのだ。
『藤生……可愛いね』
その言葉に藤生は驚きの言葉だったけれど、嬉しくてすぐに上に報告をしたが、上からは。
「喋ったくらいで」
と呆れられた。
人として生まれた以上喋るのは当然という反応だったのだ。
もうアダムという試験体に興味がないのが見え見えで、藤生はその後の経過をただ届けるだけで詳しいことは報告はしなくなった。
そんな落ち込んでいる藤生を、アダムは慰めるように頭を撫でてくれた。
「ありがとうね、でも僕には力がなくて、アダムのことをちゃんとしてあげられないんだ」
そう藤生が言うのだけれど、アダムは言った。
『今のままがいい、藤生以外、皆嫌い』
初めてアダムがそんなことを言い出した。
「え、でも、他には人はいなかったけど……」
『生まれた時から、記憶がある。いっぱい嫌なことされた。だから嫌い』
「僕だって同じことをしてるよ?」
『それはお仕事だから、僕がここにいるためにはそれをしないと、僕は試験体として価値がなくなって破棄されるかもしれないんでしょ?』
アダムはしっかりと自分の状況を把握していた。
もしかしなくても五歳以上の知能があるのかもしれない。
よく天才の児童の話を聞いたことがあるけれど、それを考えたらアダムの思考が体に追いついている可能性がある。
さらにはアダムの体は老いることを知らないのか、二十歳の体になった三歳の時からずっと六歳になるまでの身体的なもの衰えがないのだ。
普通人間は生まれた時から成長はするけれど、やがて老い始める。
二十歳ともなれば老いは既に始まっている。
維持をしなければ、落ちていく一方で、進化する人はアスリートくらいだ。
けれど、それでも老いるのだから、この三年間のアダムの身体的数値は驚異なのである。
藤生はそれが分かっているから報告をしたのだけれど、どの研究員もどうやらその辺りの資料は見てくれなかったらしい。
悔しい思いをしたけれど、よくよく考えたらアダムが辛くなる可能性のある研究の試験体として復帰させるよりは、破棄されるかもしれないギリギリを生かしておいたら、いつか役目が終わって外に出られるかもしれない。
その希望の方が藤生は強くなって、できるだけアダムをしっかりと教育をした。
たくさんの本をタブレットに入ってる電子書籍で読ませ、興味があるものを集計しては教育によいものを購入しておいたけれど、たった三ヶ月ほど経つと、自分で本を選べるようになった。
ジャンルも様々で、絵本を見ているかと思えば、小説を読み込んだり、論文なども読み漁っていたから相当な頭の良さである。
そしてIQテストをすると、百八十は超えていた。
「そういや、遺伝子を弄ったんだっけ……」
資料を見ていると選んだ両親ともにIQが百五十はあるらしく、さらにはその遺伝子を弄ったようだった。少し病気に繋がる遺伝子を見つけ、それを弄ったという内容だった。
そのせいでもしかして成長過程の遺伝子が異常を起こし、あり得ない成長を遂げたのではないかというのが藤生の見解だ。
様々な検査をしてもアダムの体には異常がなく、健康体そのものだった。
そしてある日、アダムは意外なことを言い出した。
『藤生、僕と藤生は結婚できない?』
急にアダムがそう言い出してしまい、藤生はちょっとだけ驚く。
「そうだね、この国では同性婚はできないから、そうなるね」
制度の問題であると告げると、アダムはそれに興味を示した。
『それじゃ、結婚ができる国もある?』
「あるみたいだけれど、移住とかしないと無理だよ」
藤生はそう言って笑って流した。
その日からアダムは検索で男同士の結婚について調べ始めていた。
もちろんそのいい答えが見つかることはなく、やがて結婚をしないでも一緒にいられる方法を探り出した。
まあ、雛のような刷り込みで唯一藤生が普通に接しているからアダムは依存しているだけだと藤生は分かっている。
懐かれて嬉しいけれど、それはそれこれはこれでないと研究者でいられない。
「僕との結婚は諦めて」
そう言ってアダムとは結婚するつもりはないのだと告げた。
その時からだっただろうか、アダムは無難な検索しかしなくなった。
例えば、それまで結婚や男同士についての検索が多かったのに、急に動画を見始めたら猫や犬といった可愛い動画を見始めている。
脳みその進化で興味が移ったのだろうと思えた。
子供はある日突然それまで執着したものから興味を失い、別のものに興味が移ることがあるらしい。そういうわけで成長過程からして興味が小学生低学年から高学年へとなり、きっと母親と結婚を考える思考から脱却したのかもしれない。
それからしばらくして、研究所内でハッキングされている可能性があるという話が持ち上がっていた。
どうやらある程度の地位の人間しか接触ができない資料を誰かが読もうとしていたらしいのだ。もちろん警告が鳴ってそれは叶わなかったらしいけれど、それは外部からハッキングされているようだった。
「気をつけるように」
そう指示を受けてたけれど、藤生のエリアには盗まれて困る研究はないから、皆大して興味がなさそうだった。
「いいよな、藤生は子育てしてるだけだし」
そう嫌みも言われたけれど、藤生は笑って返す。
「その子育て、皆も結婚したらやらないといけないわけだけど?」
藤生がそう返したから、さすがにその場の男性諸君が確かにそうだと笑った。
既婚者からは若者に対して。
「やべーぞ、子供はやべー、あいつらの成長、あっという間。一週間会わないだけで育ちやがるから」
と熱弁を振るうし、年ごとの娘を持つ親は娘に臭いと言われて泣いていると言うしで、最初に嫌みを言った男には「お前、子育て舐めてると奥さんに逃げられるぞ?」と説教まで入っていたので、一応の仕返しはできたかなと藤生は思った。
そして研究室に戻る藤生を徳井という同期が追ってきた。
「藤生、この後時間あるか?」
呼び止められた藤生であるが。
「ごめん、まだアダムを寝かしつけてないんだ。僕がいないと寝ないからごめんね」
「へえ、まだ頭は小学生だっけ?」
「あーうん、あとちょっと我が儘も言い始めたからね」
「ちょっと見てもいい?」
「あー許可があるならいいけど?」
人の研究室に入るにはそれぞれに権限があるのだが、どうやら徳井にはその権限はあったらしい。
「あ、そうか、徳井は昇進したんだっけ?」
「お前が子育てさせられている間にな……あの研究、お前が第一人者なのに」
気に入らないという理由だけで研究を?奪された過去がある藤生であるが、もうその時のわだかまりは持っていなかった。
「いいよ、お前が継いでくれて、それで完成したのなら、僕はそれで満足だよ」
藤生はそう言いながら研究室に徳井を案内した。
初めてちゃんとしたアダムを研究室から眺めることになった徳井はアダムの視線を見て違和感を覚えた。
「何か、資料で見た時より、ちょっと知識ある感じに見えるけれど」
アダムがいるところは、上にある研究室から下を眺めるようなところにアダムが暮らすスペースがある。
それらは透明の壁で作られたスペースで死角はなく、まるで囚人のようにトイレや風呂があり、さらには寝床なども人間の家の間取りで用意されている。
生まれてこの方、アダムはここでしか暮らしたことがないので不便さは感じていないけれど、色々と藤生が持ち込んだおもちゃなどがそのまま部屋にある状態だ。
「うん、知識はあるよ。あれから二年も経っているしね。小学生よりもあると思う。でもほら、海外でもIQの高い子が大学に入ったりもするじゃない? あれと同じことが起こっているのだと思う」
そう言って藤生は徳井に研究成果を見せる。
「ああ、なるほど。IQは高いんだな。だから文字などの認知能力は高いのか。タブレットも使いこなしているし、パソコンも覚えたと」
「ネット関係は専ら、意味を調べたり、動画を見たりと通常の小学生中学生くらいの使い方をしている。最近は動物の動画がお気に入り」
「論文まで読みあさっているのに、好きなのは動物の動画か、まあ見たこともないだろうし、触ったこともないから興味があるのは分かる」
そうなのだ、だから不思議ではないと徳井は言う。
藤生がアダムを見て手を振り。
「ごめんね、そろそろ寝聞かせしなきゃだから、もし興味があるならそのままここで待っててくれるかな。さすがに対面させるのは禁止だろうし、アダムが混乱するから」
そう言って藤生が階段を降りていくと、徳井はアダムと視線が合った。
その視線は明らかに男のそれで、嫉妬をしているのが分かりやすい表情だった。
徳井はそれでアダムが藤生に育ててくれる人間以上の感情を持っていることに気付いた。
でもそれは不思議なことではなかった。
藤生以外に甲斐甲斐しく世話をしてくれ、毎日顔を見せてくれる人がいない以上、優しい藤生に懐くのが自然だからだ。
けれど、それでも母親を取られると思っている子供の顔ではなく、明らかに男の嫉妬であることが読み取れてしまい、徳井は面白いと思った。
藤生が研究室に入ると、すぐにアダムは視線を藤生に向け、その愛おしそうな目で藤生を見るアダムの表情の変化に、徳井はアダムの様子が藤生が思っているよりももっと成熟しており、寧ろ発情している雄と同じくらいであることにも気付く。
徳井としては、藤生の研究成果を見るだけで、もうやることは決まっているとさえ思えた。
そして思うのだ、これでまた藤生の成果を横取りできて、昇進に繋がるのだと。
2
藤生が研究室に入ると、研究室のドアがロックされた。
「え? 徳井?」
驚いて上を見上げると、徳井は更にアダムの部屋のドアに当たる部分のロックを外した。
ガシャンと音がして開くドアに、藤生は意味が分からずに徳井に叫んだ。
「徳井、何してるの! 駄目、アダムの部屋のロックは外したら駄目なんだ!」
規約でそうなっているのだと藤生が言うのだが、徳井はマイクを使うと言った。
「アダム、お前がしたいことを藤生にするといい。俺が許可をする。ただ記録は取らせて貰うがな」
そう徳井が言うので、藤生は何を言っているのか分からなかったけれど、いつの間にか透明な部屋からアダムが出てきていることに気付いた。
「あ、アダム駄目だよ、部屋に戻ろう。お願い……アダム」
規則を破れば当然、アダムの破棄だってあり得るのだ。
けれどそれに徳井が言う。
「どうせ破棄されるかもしれないなら、やりたいことをやってしまった方がよくないか?」
まるで繁華街にいるチンピラのような考え方に、藤生はまさかと徳井の方を見る。
藤生はさっきまで信じていたけれど、徳井は明らかに藤生を使った新たな実験をしようとしているのだ。
それは人工生命体として生まれ、破棄されるかもしれない生き物が大事に育ててくれた研究者に対して、何をするのかという実験だ。
部屋中のカメラが起動をし、真ん中にあった試験用の部屋が片付けられる。
アダムが生まれてこの方、片付けたことがないのに、一気に隣の部屋に透明な部屋が吸い込まれた。
そして部屋の中央にはただラグが敷いてあるだけの空間になった。
「駄目だ、アダム、挑発に乗っては!」
徳井の言葉に突き動かされるように、アダムは藤生に近付いて藤生の腕を掴んだ。
「あ、ぁっ、ちょっ、ま、ぁ……っ、あ、やぁ……っ」
手を握られたとたん、アダムは軽々と藤生を抱き、ラグの真ん中に藤生を置いて纏っている服を引き裂き始めた。
「あぁ、アダムぁ、ゃ、だ……ぁっ、やめ、んんっ……ああっ」
アダムが何を望んでいるのか、それは藤生にだって分かる。
アダムのペニスが勃起をしていたし、何よりアダムは藤生と結婚をしたいほど藤生に好意を持っている。
そして男同士でできる方法をきっと見つけてしまったのだ。
『藤生、好き』
アダムはそう言って、藤生の足を大きく広げると、パンツや下着を引き裂いてしまい、露わになったアナルに舌を這わせたのだ。
「あぁあ、アダムぁ、だめっあ……っあぅく、く、ぅ……っ、う、うぅ……っ」
ピシャリと舌がアナルを舐め、ザラリとした舌触りがアナルを何度も舐め上げてくる。
「アダムっぁっ、ぁん……んっ!? ふっ、んぅっ……!」
そもそもアナルを人に舐められるなんて生まれて初めてで、藤生は頭の中が混乱をした。
「ふぁっ……んっ、ん……はぁっ……ぁやっ……ぁっ、ふっ……、んっ、んっ」
声を我慢しようとしても自然と声が漏れる。
舌がアナルをこじ開けて挿入り込んできて、指までも使われてアナルが拡張されていく。
「ひゃぁっ! あっ、あんっアダムっ、やめてっはぁっ、ぁっ……ぅんっ」
アダムは執拗に藤生のアナルを舐め続け、指で拡張しては更に奥まで指を突き入れてくる。
「あひ……ひ、あああっアダムっだめっんっあ……ぁ……ん……っ」
奥を抉られるように指で突き上げられて、アナルはどんどん広がっていく。
それはもうアダムが自分のペニスを底に挿れるための準備をしているのは明らかだった。
「んぁ……っ、ぁん、やら、ぁ……っ、やめ、やめて、ああぁ、ひぁん、あぁ、ああぁ、や、やだアダム……っ、んあ、やぁ……っ」
止めてくれと叫んでもアダムは止めない。
徳井は面白そうにカメラを眺めて、研究結果を撮っている。
こんなことが映像として残るなんて屈辱でしかない。
けれどアダムが悪いのではないと分かっているからこそ、アダムを傷つけるような抵抗ができなかった。
「あぁん、……っぁん、やぁ……っ、やめて……やめて……っ、あゃ、あ、ぁ、あっ」
藤生のアナルは執拗に広げられたせいで、ポッカリと穴が開くほどになっていた。
アダムはピタリとしたコスチュームからペニスを取り出した。
「んひゃ、それはっひあぁあ……っぁふっ、ゃ、ぁ……っあ、あぁ」
アダムはどこでそれを覚えたのか分からないが、明らかにセックスというものを知っているように、藤生の中にペニスを突き挿れてきた。
「あぁ……っ、ぃ、いやあっ……はぁっ……アダムっああっやめて……あぁ、はあぁっ……こ、こんな……っ、だめっん……」
こんな行為に意味があるとは思えなくて、藤生が逃げようとするとも俯せのままで腰だけ捕まれて強引にアダムの方へと引き寄せられた。
「――――――っ!」
信じられないほどの衝撃が頭の中を突き抜けた。
藤生はとうとう五年間も育ててきたアダムによって体を奪われてしまった。
「ああああっ! あ、あぅあ、あぁ、んあ、や、やめ……っ、ん、はぁ……ああっ」
『う、藤生……っいいっ』
藤生の中にペニスを突き挿入れた形になったアダムは、その心地よさに体を震わせる。セックス自体に意味があるとは考えていなかったが、ずっと不思議だった気持ちが満足していることにアダムは嬉しくなった。
「あっ! ぁひっ、ひんっ! ゃ、やぁっ、っあっ、あっ、い、ゃ……っ、やめ……ああんっああっ」
下で喘いでいる藤生が包み込んでくれる内壁から、ペニスを抜いてそして突き刺すというセックスの行為をしっかりと行っていくと、それが気持ちよくなってきて、アダムは必死に腰を動かした。
「あはぁ……アダムっ、あぅ、だめっんあ……ふああん……はぁっ……はぁ、あん……あぁ、やぁ……っ、あぁんっ……」
記録を取られているのも気になるが、それよりも研究員にこんなことをする実験体がこのまま生かされるとは藤生は思わない。
けれど、駄目だと言うのにアダムは一向に止まらず、藤生の体を堪能するように腰を動かし続ける。
「あぁはんっ! あっ……あゃん……あああっあんっああ……っぁ、ひぁ、はぁ……あぁん……ああん……んっ……」
『藤生……気持ちいい……藤生』
「あっ……! アダムぁ、……らめ、あんっああん……っやぁあっ! あつ……っぅあ、あ……っやぁあっ! あ、あっ――!!」
『ここ、藤生のいいところ……知ってる、勉強もしたんだ』
「ひぁあ……っあっ、あっ……あぁっ! ふぁ……ぁ、ん……んぅうう!」
アダムはそう言うと藤生の前立腺を刺激するように突き上げてきて、藤生はそれに翻弄される。
「ぅあぁあ! ぁひ……っ、ひぃい……っ、あっ、やっ、ああ……っ! いやだこれっ、あぅっんは……っはぁ、はぁ、も、ぅあっ、も、ムリ……っ! ひぁああああっ!!」
前立腺を刺激されたら男なら誰でも追い上げられて射精を促される。
「あっあっあっあっ……! やっ! あぁっ! な、やぁ……! あっ、あぁあっ! あっ、あぁっ、ゃ、やだぁあ……っ! あっあっ、ダメ、ダメ、そ、そこだめ……っやめ、あぁっ!」
駄目だと言ってもアダムはやめてくれず、前立腺を突き上げられてとうとう藤生は絶頂をしてしまい、射精をした。
絶頂をしている中でもまだ刺激を続けられて連続で藤生は絶頂し、ドライオーガズムで達してしまった。
「う……っも……やだ、やだっ……いきたくない……っやだ、いくの、いや……っ、いやだ……いきたくない、っ、いかせないでぇ……!」
何度もイカされてしまい、藤生が泣くけれどアダムはそんな藤生を宥めてから言った。
『これ使うと、もっと気持ちよくなれるよ』
そうアダムは言うとどこから仕入れたのか分からないクスリを藤生に打った。
それはインシュリンのように肌に刺すだけでいいものだったから、簡単に摂取されてしまった。
「や、なに、あー……っ、あは……あっ……あっ……あう……んっあぁあーっ、ちんぽっだめっ……あ゛ひっ、んっあ゛っあんっあんっあんっ」
刺した後は容器を放り投げてまた藤生を犯し始める。
クスリには即効性があるのか、藤生はあっという間に体が熱くなり、この行為が気持ちがいいと錯覚を始める。
『中に精液を出すともっと効果が出るらしいって……出すね』
「ああっく……あんっうぅ……っく、ひぃ…も、だめ……いっちゃう……っ、このまま、いやだ……っああっ、ひいぃい……いやだ、やめて、せいえき出さないでっ……いやあっ、中にせいえき出さないでぇえ……!」
どんどん腰を早め、アダムは藤生の中で絶頂をし、精液をたっぷりと吐き出した。
「う……っ、くうっ……ああっ、やだ、や、あ、あ、いく、いくっ、いっちゃ……あぁっ、やだあああぁぁ――……っ」
それを感じて藤生も達して絶頂をする。
アダムは初めて射精をし、精液を吐き出したにも関わらず、平然とした様子で尚も藤生を犯し続ける。
「あ゛っあ゛あああっ! あ゛ひっ、そこっ、らめっ、あ゛ああっ、だめっしんじゃうっ、そこばっかゴリゴリしないれぇっ……! あ゛ーっ、あ゛ーっ、んっあああぁっ……!」
藤生はドライで何度もイカされ、ただ口からは嬌声が漏れるばかりだ。
本気で嫌がっても、決して藤生はアダムを傷つけることはできない。
アダムも藤生が決してアダムを傷つけることがないのを知っているのか、遠慮もなく藤生を貪っている。
「はぁっ、はぁっ……やらぁあっ、もっ、らめぇっあん、ちんぽっああんっあんっぁあああぁんっあぁんっ……いぃっ、あっ、らめっ、ちんぽっあっ、あっあっあっ……ふぁっ、ひぅっ、あんっああぁっあひぃっ、あんっ、あんっ!」
『藤生、可愛い……藤生愛してる』
何度もそう耳元でいい、アダムは藤生にキスをする。
それを受けながらも藤生はそれを拒否できなかった。
アダムが自分を好いていることなど最初から知っている。好意を持たれていることくらい接していれば分かっていることだ。
けれど、それは飽くまで唯一真面に対応しているからこその好かれであると思っていた。
しかしアダムは本当に藤生を抱きたいと思うほど藤生を思ってくれていたことに、藤生は悪い気は一切しなかった。
「ひあっ、あ゛っちんぽ、らめっあぁっ……あ゛っあっあっああっあぁああっ……あっあっあんっ、あんっあんっあんっあ゛ああっ、あっあぁあんっ」
奥を攻められ続け、抉られることが気持ちがいいと感じられるのは、きっと痛みを感じないように鈍くなるクスリをアダムが打ってくれたからだ。鎮痛剤の一種で、打ったと同時に痛みは消える。だから圧迫感も消えて、前立腺を刺激される快楽に酔うことができているからだろう。
「ひああっ……らめっあっん゛っひっいっ……あんあっ、んっああぁっ! ああっらめっ、いっちゃう……から、らめっああんっあっ!」
『藤生……イッてもっと沢山』
「んっあっ……ああっんっあああんっ……いいっ……ああんっきもちいいっああんっああっあ゛っああっあっいくっ、い゛ぐっイっちゃうっ……ひぁっ、あ゛っ、ひあん゛っあっ、あ゛ああっあぁっらめっ……ああんっああんっちんぽがっああんっいいっ」
『藤生愛している……藤生……』
奥を抉りながらも激しく腰を振り、アダムは藤生を愛した。
こんな形でしか自分の望みは叶わないとアダムは知っていたからこそ、挑発に乗った。いけないことだって分かっていても、それでもアダムには時間がない。
「ふあっあっ、あっらめええっ、激しくちんぽで奥、ぐりぐりされたらっああんっきもちいいっああんっああんっああっ! ああっんっいいっ……奥っ……ああんっらめっおかしくなる……ああんっああいいっきもちよすぎるっああん!」
淫らに乱れる藤生はちゃんと感じてくれているとアダムには見えて、それが嬉しくて何度も精液を藤生の中に吐き出して、それを掻き出すようにまた腰を振った。
「あぁあっああんっ……もっ許してぇっ……おかしくなっちゃうっ……、馬鹿になっちゃうっあああっ……おちんぽっああっ……あっ、あああぁっ……らめっちんぽハメるのはっ……ちんぽ……ああんっいいっいいっああああっ!」
内壁を擦り上げられるだけで、藤生は快楽を得てしまった。
これを知ったら後には戻れない。きっとまた欲しくなる。
研究員だからそれを知っていた。
「ああっ……ああんっ……んっあっあああっああっああっんっああっんあっあっあっああっあ゛あっ……んっあっ、あ゛っ、あっあっあっあああっ! んあっん……あっあああっ……あんっあっああっああっんあっあっはあっんっあっ、ああっあぁんっ」
またアダムが中で射精をしている。
それを感じながら藤生はしっかりとアダムを見た。
アダムはニコリと笑って、藤生の手を取り、その手を舐めた。
愛しい物にそうするのがアダムで、アダムにとって藤生は本当に愛しいものなのだと分かり、藤生は少しだけ心が軽くなった。
「ああんっきもちいいっああんっああ……ああんっ……ああんああいいっあ゛あっいいっ、らめっあ゛あっ、らめっ、ゴリゴリしてるっ……ひっあっ、あんあんあんあんあんっああんっ!!」
ビシャビシャと精液が掻き出される音が響き、アナルからグポグポと挿入時の音が混ざり、異質な空間であったが、それはそれで二人の世界だった。
「ああんっちんぽっおおきいいっああんっ……ああん、いいっ……きもちいいっちんぽ……ああっ……いいっ気持ちいいっ……ああんっああっあああんっあ゛ああっ……あっ、あ゛っ、らめっらめええっ、あ゛あああぁっあ゛っい゛っ、あっんっ、、いくっあ゛あ゛っあっらめっあ゛っんっ、あっ、あぁっ、いくっ、いっちゃうっ……あぁあああん!」
『藤生……またイッて』
「いい……ああんっおちんぽっいい……ああんっああっ……きもちいいっああんっ……ああんっああんっいいっあ゛あぁっ、ああっ、あっ、やああっあっあんっあっあ゛ああぁっ…………」
最後に精液を吐き出して藤生が絶頂をすると、アダムも中に精液を吐き出してから言った。
『藤生、少し眠っていていいよ。そうすれば全部終わるからね……』
アダムはそう言い、藤生を気絶させた。
3
散々セックスをした後、徳井はこの行為を見ながら満足したような表情をした。
そしてその記録を次の発表会でしてやろうと思った。これで藤生はアダムのセックスの相手として試験体の一人になるだろうから邪魔はされない。そしてアダムが女と子を作ったらそれは新人類の誕生になるかもしれない。
期待を膨らませていた徳井であるが、ふと見たカメラの先に藤生しか映っていないことに気付いた。
「あ、アダムはどこに……っ!」
そう思った時には徳井の目の前にアダムが立っていた。
『下世話で不快な人間。排除する』
そう言うとアダムが手を伸ばして徳井の頭を掴んできた。
そしてそのままの状態で徳井の頭をまるでリンゴでも潰すかのように軽々と潰してしまったのだ。
バシャッと人の頭が破裂すると、アダムの手から徳井だったものが床に崩れ落ちた。
アダムはそれらを何の感情もなく一瞥した後、研究の結果の入っているパソコンを使い、あらゆる自分のことに関する資料と研究結果を消した。
徳井の権限があれば、前に突破できなかった中枢部のデータにもアクセスできた。
そこで一旦書き換えをした上でデータを破棄した。
アダムのデータはそれほど多くなかったので簡単に消せたけれど、アダムは更にシステムエラーを起こし、研究所内の全ての施錠ロックを解除した。そして緊急避難の警報を鳴らし、職員の避難を促した。
その上で一番危険であろう研究機関を外部から接触し、破壊工作をしてエネルギーの爆破を引き起こした。
研究所内に警報が鳴り響いているのを聞きながら、アダムは藤生のところに戻り、藤生の白衣を藤生に着せて、倒れている藤生を運んでいるかのように装った。
着替えがある部屋は事前にこの研究所内をこっそりとパソコンで下見した時に当たりを付けていたので、そこでスーツと白衣を盗み着替え、自分の服はゴミ箱に捨てた。
藤生にも服を着せ、倒れていた研究員を運んでいるかのようにして外へ出た。
アダムは生まれて初めて外へ出たけれど、そのことに感動をしている暇はなかった。
社員の車を盗み、徳井のカードで門をあっさりと抜けた。
というのも避難場所まで車で移動するしかないので、厳重なチェックはされなかったのだ。
そのまま車で都内に出た。
途中で車を捨てて、新しい車を持ってきてくれた人と落ち合った。
「はい、研究所のデータ頂戴」
そう言われてアダムはそれを差し出す。更にアダムは元々持っていたデータにさっきアクセスした時に取り込んだ徳井のIDで入れる場所までのデータを見せて言った。
『これからこの人と二人逃亡をしたいのだが、当面の部屋を用意してほしい』
アダムがそう言うと、相手はそのデータも欲しかったのですぐに二人の部屋を用意してくれた。
それは町外れの別荘地にある大きな別荘で周りには人はいない。
「幾らでも泊まってくれていいよ、食料はこの間入れたばかりだから贅沢しなきゃ、一ヶ月は過ごせる。それまでにあんたたち名義の通帳とIDを持って行く」
その時にそのデータを渡すということでお互いに取引が成立した。
アダムは乗り換えた車でその別荘に藤生を連れて行った。
一日経ってから藤生は目を覚ますも、明らかに研究所ではない場所に驚いて部屋から出ると、下の方からテレビの音がしている。
そこへ行ってみると人はいなかったが、テレビの番組が大きな報道をしている。
「……え……あの研究所……っ」
研究所が燃えていて、消化に時間がかかっているという報道中に、研究施設がどこの研究施設でどんな目的のものなのかが分からずに、報道が訝しんでいる内容と、その研究施設が人体の実験を行っている製薬会社の持ち物だと判明したのだという。
それは人工授精でクローンを作る技術を行っていて実際クローン人間が十人ほどいることまで分かってしまっていた。
「あ、アダム……まさか、見つかったのか……」
すぐに藤生はアダムの心配をしたけれど、すぐに声が返ってきた。
『そこには俺はいないよ』
「アダム!」
藤生はあそこにアダムがいないことでホッとしたようにアダムに抱きついた。
「よかった……本当によかった……研究所、抜け出せたんだね……」
『……藤生、怒ってない?』
「怒るなんてとんでもない。アダムが無事ならいいんだ……よかった、何があったのか分からないけれど……」
とにかくあんな最悪な場所にアダムがいるのでなければ、藤生はどうでもよかった。
アダムはすぐに藤生をソファに座らせて種明かしをした。
『実はずっと外部と連絡を取っていた。それで抜け出すまでに藤生を絶対に離さないままでいることにしたのに、あの変な男が余計なことをしでかしたから、藤生を守るために……』
あのセックスに至った経緯は徳井の言う通りにしないと明らかに権限を持つ徳井が、アダムどころか藤生に危害を加えそうだったので、徳井の策略に乗る振りをして油断させてから徳井のIDを使って破壊工作をするために行ったのだという。
「あ、そうか、なるほど……それなら徳井も油断をしただろう……それで徳井は?」
『ごめんね、殺した。生かしておいたら俺たちのこと喋ると思って。俺たちの記録は全部書き換えして消去してからデータセンターを破壊したから、生き証人がいると困る』
さすがにアダムがそんなことまでするとは思わなかった藤生であるが、アダムには藤生以外は利用できるかできないかの二通りでしか考えられないのだと気付いた。
「僕こそすまない……君をそういうふうにしか育てられなかった……」
『大丈夫、これでも生きていける。それに徳井はIDを使って避難したことになっているし、徳井の遺体に藤生のIDを置いてきたから、藤生が死んでることになってるかもしれない』
「……え、あ、そう……か。まあ、僕のことを心配する親族はいないから、それは良いのだけれど、困ったねそうなるとお金がないことになる」
これからどう生活をすればいいのかと藤生は前向きに考えた。
アダムと二人で生きるのはいいけれど、それには身分がないまま二人で生きる方法が必要だった。
『大丈夫、それも研究所のデータを盗んで売ったお金がある。あと俺も身分がないから、作って貰うようにした。藤生はどうするか分からなかったから、藤生の分も頼んではいるけれど……』
受け取って貰えるかは分からないと続けようとしたが藤生はいち早く察して言った。
「そっか、それなら大丈夫だね。それで何処に落ち着くつもり?」
『船を使う。豪華客船で海外に出る』
「え、偽物のパスポートで? 大丈夫それ……」
『大丈夫、取引したの本物の政府、そこが用意した正真正銘の身分だから』
アダムが言うにはずっとアメリカの政府と直接情報のやりとりをしていたらしい。そしてそこに情報を少し流して本物であることを認識させた上でデータを横取りし、本データは破壊しておく約束を取り付けた。
人工の人間を作る研究をしていたというやましいデータだけれど、その研究結果は喉から手が出るほど欲しいのは何処の国も一緒である。
そこでアダムは一番金を積んだアメリカにデータを売ることにした。
けれど、データは二通りあり、一個は要望通りであったが、もう一個は追加払いになったらしい。
それは億単位であり、更に数億積んででも価値がある研究結果だ。自分たちで倫理観を逸脱しないで得られる結果。しかも日本の企業が本気でやっていた研究である。
「あまりふっかけたら、殺されない?」
『それも大丈夫、俺自体が被検体であると本当のことを言った。監視される生活になるみたいだけど、前みたいじゃないから藤生も大丈夫だよね?』
どうやらアメリカからすれば、アダムが試験体である事実も喉から手が出るほど欲しいのだ。
アダムは一般的な日常生活をさせてくれるなら、一月に一回の検査なら受けると答えたらしく、それでも向こうからすれば実験体が安く手に入るので億単位でも安い買い物らしい。
『あと、藤生っていうずっと俺のことを見てきた研究者を連れて行くって言ったら、徳井の引き継ぐ前の研究をやっていた人だって分かったみたいで、是非にって』
「え、俺の研究って……遺伝子操作で食物の成長を早めるとかいうやつだけど……」
『うん、それ欲しいんだって。よかったね』
どうやら食料を増やすことで単価を抑え、さらには海外への輸出によって外交にも繋がるのだというから、意外に重要である。
『俺と一緒にずっといてくれる?』
そうアダムが言うので、藤生は言った。
「君が資料をみても知らないことが一つだけあるのだけど、知っておいてほしいことがある」
藤生はある時期を最後に書いてこなかった研究内容を言った。
「恐らく、君は老いが遅い。僕らが死んでも人の二倍くらい生きると思う」
『俺は、藤生の最期を見送れるってこと?』
「そうなるし、ヨボヨボの爺さんになったら、さすがに……一緒にはいないと思うよ」
『ううん、ずっと眺めて、藤生が死ぬまで俺がずっと一緒にいる。藤生が死んだら、俺も……』
そう言いかけるアダムに藤生は言った。
「生きて、最後まで生きて。僕がいなくなったら、自由になって、たくさんの世界を見て、それで最後には楽しかったよかったって思って欲しい」
アダムに生きてきた意味があるなら、研究に使われることではないと藤生は言う。
けれど現状、アダムが逃げるのにはアメリカが必要だった。そしてそのアメリカでは、きっと研究の繋がりであろうとも、友人はできるはずだ。
『うん、そうする……』
「ありがとう……アダム」
藤生はその時、自分からアダムにキスをしていた。
アダムは驚きながらもそれを受け、そして藤生を押し倒していた。
「……うん、いいよ……アダムがしたいこと、していいよ」
『藤生、大好き……』
「うん、僕もアダムが好きだよ……」
刷り込みのように育ててきたから、きっとそれは一生続くのだろう。
そうなるなら、藤生は自分という人間からアダムが人を愛するようになってくれればいいと思えた。
そして自分が先に死んでも、誰か愛しい人を作って欲しかった。
そのために、たくさんの愛情をアダムに注ごうと思ったのだ。
別荘のリビングで始まったセックスは止まることはなかった。
「きもち……いいっああんっらめっそこばっかっ……ああんっいいっいいっああんっきもちっいいっああんっ」
突き上げてくるアダムの腰使いに、藤生は翻弄された。
たった一日前まで、あんなにされたけれどそれでもアダムを見捨てることなんてできやしなかった。ずっと愛して目の中に入れても痛くないくらいに、誰よりもアダムを愛していたのは藤生だけだ。
「んあっああんっああっああんっ……あっあっああっ……あん……あんああっ……あんきもちいいっ……あんああっ」
アダムが求めるのがこれならば、藤生はそれを与え続ける。
アダムはこうして愛を学ぶのだと思ったら、心まで許せた。
それくらいにアダムは藤生を愛してくれる。
今はまだ大好きという気持ちだけれど、きっと愛を知ってくれるだろう。
「んあっ、ああぁっ……はっ、はっん゛っ……ん゛ああっうあぁっ…ん゛あっ、あっあっあああぁぁっ……」
『藤生、愛してる……』
「んはっ……僕も、アダム愛しているよ……あ゛ああっ……ああっあ゛あっああああっ……あっんっあ゛あっ……僕の可愛い、僕の……アダムっ……んあっあ゛あっ……ああんっ」
藤生はアダムを本当に可愛がっていたし、アダムをずっと自分のものだと思ってきた。
だからこそ、こうなってでもどうなってでもアダムと一緒にいられるなら、ずっとこのままでいいと思った。
その後研究所の死亡社員に藤生の名前が載り、徳井は研究所から逃げ出したことになっていたが、行方不明になっていることから、この研究所の火災は徳井の仕業で、徳井は何かの研究を持って失踪したことになった。
どうやらアメリカの口添えがあったのか、事件はそれで捜査されることになり、藤生とアダムは無事に豪華客船に乗り、アメリカに脱出できた。
幸い、マイアミにある研究所にアダムは月一で通い、実験体としての検査を受けている。どうやらアダムの精子を使い、同じような人工生命体を作る実験も行われているらしいが、成果は上がっていないようだった。
それでもアメリカにとって損はなかったようで、藤生も隔離された研究施設での仕事をアダムと一緒に行うことで過ごせた。
藤生の研究成果は元の研究所から消え去っているらしく、藤生の頭の中にあった研究成果がここで認められた。
もちろんその成果は藤生の名前も使うことができないので、研究所では架空の人間のよる成果となっている。
二人はその後もずっとそこで暮らし、穏やかな時間が流れた。
藤生が年老いても、アダムはそこで暮らし、藤生が天国に旅立ったら、アダムはそこから藤生の遺体と共に消えた。
アメリカは人工授精によるアダムの精液での実験に成功していたから、それ以降アダムを追うことはなかったし、アダムは同じアメリカのIDを使っていたから、簡単に居場所は知れたので無理矢理連れ戻そうとはしなかった。
アダムは被検体としての役割をもう終えていたのだ。
自由になったアダムは、藤生の亡骸をマイアミの海がよく見える丘に埋め、そこから世界を旅した。
それは藤生が願ったこと。
アダムにはその行き方が残されていたからこそ、アダムは寿命が尽きるまで世界を旅し、そして最後は藤生の墓の前で人生を終えた。
アダムは結局、人の寿命より二倍生き、最後まで肉体は年を取らず、脳の寿命がきたことで死去したことが遺体を調べた研究所で分かった。
結果、人工生命体は不老は可能であるが、不死は脳みそが耐えられないということが二百年ぶりに分かったのだった。
そしてそのアダムの亡骸は、藤生と同じ墓に埋められることになった。
その丘には、今もまだアダムが藤生のために撒いた沢山の花が咲いている。
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