142-鈍色の夜明け



 ポケットを探ってみると、入っているはずの携帯電話がなくなっていた。
「あれ、ポケットに入れたんだけど……」
 胸や腰にあるポケットを探っても見つからなかった。
「落とした? マズイ」
 慌ててさっきまでいた部屋に戻ると、暗闇の中で何かが光っているのが見えた。
 電気を付けてみるとそこにはスタッフの一人である村石がいた。
「あ、それ俺の……」
 携帯電話を村石が持っているのが見えた。
 何か操作しているようで、中身を見ていたらしい。
「ああ、由良さんのだったんだ? 誰のか分からなくて、電話番号から持ち主を探そうと思って」
 そう言われて携帯を返して貰った。
 村石は普段は無口で、大道具を黙々と作って作業をしている。小道具担当の由良とはセットの関係で話し合ったりもするのだが、村石は由良以外とはあまり会話をしないことで有名だった。
 本人はそんな気はないらしいが、由良の誘導する話し方が合っているのだと言っていた。
「中、見た?」
「はい」
 携帯を受け取ってみると、開いているのは写真のフォルダだった。
「なんで?」
「誰が写っているかで誰が撮ったのか分かるかと」
 村石のやり方は少し乱暴であるが、それでも持ち主が困っているだろうと思ってやったことであるのは分かる。
 それでも由良は少し焦って聞き返した。
「それで持ち主を探そうとした? 見たのはこのフォルダだけ?」
「……はい」
 由良の質問に村石はすぐに答えた。
 いつもこうだった。村石は由良の犬のようにハキハキと答えてしまう。
 周りからは村石が由良に気があるのだとか、妙なことを言うのだが由良はそれを笑い飛ばしている。村石もそんな戯れ言には耳を貸さずにいるため、酷い噂にはなってはいなかった。
「えっと、じゃ、急いでるから」
「はい、お疲れ様です」
 とにかく妙な噂になりたくなくて由良は急いで倉庫を出た。
 撮影所を出たのは午後十一時だったが、なんとか最終電車に間に合った。
 電車に乗ってからほぼ人がいない席に座り、携帯を操作する。
「あいつどこまで見たんだ……」
 不安になってフォルダを漁る。幾層にも深い場所にあるフォルダは分かっている自分ですらも辿り着くのは面倒な流れだ。
 それでもそうしなければならないのは、見られたくない写真があるからだった。
 若かりし日の過ち。
 幾人とも異常な興奮の元、無駄に過ごした時間の記録だ。
 もちろん携帯も二度ほど買い換えたし、何度も記録を消そうとした。
 だがそれをしなかったのは、消したことでなかったことにして楽になることだ。そしてまた同じ間違いを繰り返して後悔することになる。
 友人の佐多が同じ目に遭った。
 忘れるためになかったことにしていたらしいが、ある日いきなりその過去がバレた。友人たちにそのファイルをバラまかれ、全員に嫌われ縁が切れた。
 その時にその佐多が言ったのだ。
 忘れたところでその悪夢は追ってくる。誰かがどこかで自分たちが幸せになることを許さないのだと。身近にいる誰かが自分たちを見張っていて、幸せになるタイミングで不幸にたたき落としていることを知った。
 そして由良のところにも同じメールが届いたのだ。
 散々男たちに嬲られている自分の写真と動画。クスリで頭がおかしくなって、酒を浴びるように飲まされ、前後左右すら分からずに十二時間以上に渡って犯された記録だ。
 外部メモリの三分の一を食い尽くすような量の動画と写真に気がおかしくなりそうなほど落ち込んだ。
 しかしそこから由良にはその人たちとの接触はなかった。
 どういうつもりであの動画や写真が送られてきたのか分からないが、誰かがそれを持っていて由良のメールアドレスを知れるようなところにいることだけは明らかだった。
幸せになってはいけない。
 そう言われているのか、そう操られているのか。
 正直、あの時に寝た相手が誰なのかさえ、本当に分からないのだ。
 写っている男たちは皆覆面をしていた。
 誰一人として顔は写っていない。分かるのは体格くらいだ。
訴えようにも最初こそいやがってはいるが、最後の方は自分から喜んで男に跨がっている姿など見せたら、絶対に説得力はない。
 諦めて、そして忘れないように幸せになる道を閉ざして、一人生きていくしかない。
 いつか、この事に飽きてくれるか、発信者が誰なのか分かるようなシステムが構築されれば、脅迫で訴えられるかもしれない。その時がくるまで我慢しなければならない。
「……さすがにこれは見てないよな」
 一枚だけ表示してからすぐにフォルダを遡って表示を消した。
 思い出しても馬鹿なことをしたと思う。
 発端は、ただの飲み会。
 友人の友人の友人というもはや赤の他人の大きな自宅に呼ばれて、佐多と参加した。そしてそこで騙された三人が同じようにまわされた。
参加した人数は五十人ほどだっただろうか。
 最初は二十人ほどだったはずが、入れ替わり立ち替わりで五十人はいたらしい。ほぼ記憶はないのだが、メールの送り主がそう書いて寄越した。
「五十人もの男を咥え込んで腰を振っていた淫売が!」というのがメールに毎回書かれている言葉だった。
 メールも保存しているが、それは自宅のパソコンの中だ。厳重にパスワードをかけてしまい込んでいる。もし未来に訴えることができるなら、その証拠にと思って他の動画や写真と一緒にしまっている。
携帯に入れているのは、一週間前に来たメールに添付されていたものだ。
 どうやら携帯から消すこと自体、許されないことらしい。
 だからフォルダを深く作って、隠してある。
 もちろん、携帯の本体にもパスはかけていたがどうやら使っている途中で落としたらしくロックがかかる前に中を見られていたらしい。
「本当に……気をつけないと」
 また落としてしまったら、誰かがパスワードを突破してこのファイルを見たとしたら、本当に友人の佐多のように世界が終わる。
 佐多は、全てを知られ、人に去られた時に自死を選んだ。しかし死にきれないまま精神を病んで未だ入院している。
 見舞いにはいったが、完全に狂っていてもうまともに話せる状態ではなかった。
 彼の親はそれをいいことに病院に彼を閉じ込めてしまった。
 そうなった理由を知っていたし、これ以上苦しむくらいなら狂ったままでいた方が本人のためだと泣いていた。
 だから由良にも忘れてくれと懇願された。
 あれが自分の行く末なのかと思うと恐怖であったし未来はないと思えた。
 由良は自宅に戻って携帯のパスワードを変えた。
 写真以外の動画も一枚の写真を残して全部パソコンに移し替えた。
 これで大丈夫だと思っていた。

その二日後、自宅に泥棒が入った。
 部屋は荒らされてはいたが、盗まれたものは何もなかった。
 警察を呼んで調べて貰ったが、盗まれたものがない以上、不法侵入くらいの罪にしかならないらしい。
 預金通帳は貸金庫に入れてあったし、盗まれて困るものはパソコンくらいだった。
 そのパソコンには一切目もくれず、何かを探し回った後だけが残っていた。
「気味が悪い……」
 そう由良が言うと警察が親切に言ってくれた。
「引っ越しされた方がいいかと思います。もうちょっとセキュリティーのあるマンションとか」
 安アパートであるから泥棒が入ろうと思えば入れるところではあった。
 マンションを買えるほどの貯金もあるのだが、下手に居着いて逃げられなくなった時の方が怖かったのだ。
 いつかこの生活が終わっても、どこかに逃げられるようにしておかないと不安で生きていけなかった。
 小道具の仕事も何もかも、いつでもどこでも仕事ができるようにと商社に就職が決まっていたのを蹴ってまで選んだ道だ。そうすれば裏方として目立つことはない。
 目立たないがそれなりにいい給料はもらえる地位で五年以上働いている。
贅沢は一切しなかったし、恋人も作らないままきた。
 だから、このまま何も起こらないでほしかった。




 泥棒に入られた後、引っ越しをした。
 警察に言われた通りにはしなかったが、仕事の知り合いの伝でいい立地条件のマンションが安く借りられた。元々の事故物件で噂が消えてくれないせいで誰も借りてくれないのだという。
 相場の半額であるから狙っている人はいたのかもしれないが、近所の目が怖かったらしい。
 しかし夜中に帰り、朝も出勤時間がずれているお陰か、近所の人たちとは顔を合わさずに済んだ。
 そのお陰で平穏を取り戻せたつもりだった。
 事の起こりは深夜まで仕事場に残り、次の日に備えた日。
小道具の仕事はセットを準備して撮りが終われば片付けて終わる。大道具とは違って細かなものを簡単にセットごとに仕舞うだけだ。
 荷物を全て片付けてから歩いていると、村石とばったり行き会った。
「あ……」
「由良さん……お久しぶりです」
「あ、ああ、そうだっけ?」
 急に話しかけられて由良は驚く。とっくに大道具の人たちは帰っていて、残っていたのは小道具を一人で片付けていた自分だけだったのだ。
 そして、あの携帯を拾って貰った後、村石のことを由良は避けていた。
「じゃ、もう遅いから」
 さっと側を抜けようとしたところ、村石がそんな由良の後ろをついてくる。
「なんでついてくる……」
「帰る方向が一緒なのです」
 そう言いながら村石が付いてくる。
 なんとか早歩きで玄関口まで出て駅に向かっていると村石が言った。
「電車、終わってますよ」
 由良は慌てて時計を見ると、最終電車が発車した時間だった。
「……くっ」
 慌てて大通りまで出てタクシーを拾おうとするもどれも満車になっていた。
「忘年会シーズンだからですね」
 村石がそう言うので由良はさらに腹が立った。
 ここまであからさまに避けているのにわざわざ煽るようなことを言う村石が気に入らなかった。
 するとその確信に村石から触れ始めた。
「俺が携帯拾って中を見てから、露骨に俺を避けてますよね?」
「だから何?」
 立ち止まって振り返ると、村石が携帯を掲げている。
 由良に携帯画面を見せて、そこで動画を再生させている。
『やああっ……くぅっ、ぐっ、ん゛っそこだめえっ……あっあっはああぁっ』
何度も見た、由良の痴態がそこにある。
『あ゛ああっいくっいぐっぅん゛っあっあっああああ~っ』
男に跨がり、腰を振り、さらには男たちに群がられてよがっている由良の姿だ。
『あっ……ん゛あっ、うっ、ん゛っ、ひぃっ変になるっ……んっああっ、あ゛ぅっ、ひっあ゛あああっ』
由良はゾクリとした。
 それは恐れの寒気ではなく、とうとう誰かに知られたという恥ずかしさからくるなんとも言えない怖さだ。
 音は小さかったけれど、それでも側を誰かが通れば、当然それは聞こえただろう。
 淫らな嬌声はAVのもの以上にだらしない。
 村石は由良が身動きができないくらいに映像を流した後にボタンを押して動画を止めた。
「…………いつの間に……」
 由良がそう言うと、村石が答えた。
「動画は見たけれど、それを盗んだものじゃない」
「え?」
 村石の言葉に由良は驚く。
 あの動画を持っている人など何人もいるだろうが、わざわざ五年前の動画を残している人は未だにいるかどうかも分からない。けれどそれを人にばらまく人はそうそういない
はずだ。
「似ているとは思ってた。でも同一人物だとは信じられなかった。携帯を拾って、なんとなく開いてみたら、新しいメールが届いたところだった。てっきり落としたことに気付いて落とした場所を知りたがっているのかと思ったからメールを開いた。それに添付ファイルがついていた」
 そう言われて由良はゆっくりと目を閉じてしまった。
 定期的に来るあのメールだ。削除させないために送られてくる。あの忌々しい動画が届いたところだったのだ。
「メールの内容が脅す内容だったから、何かあったのかと動画を開いた。そしたら、俺が持っている動画と同じものだった。気になったから、フォルダの中を探したら不自然なフォルダがあったからそれを見た。俺が持っているのとも、違う同じような場所の動画だった」
村石の淀みない説明に由良は目眩がさらに強くなって片手で顔を覆った。
 悍ましいことにあの動画を持っている人間が目の前にいた。身近で知っている顔で、それなりに親しいと思っていた人がそれを知っていた。
 それがどういう意味を持つのか、由良は知っている。
 これが自然に噂になって広がるなら、自分はもうここにはいられないということだ。
 そしてこの世界からも追放される。
 そうじゃなければ、あとの展開は知っている。
「それで……お前はどうしたいんだ?」
 そう由良が問うと、村石が違うことを尋ねてきた。
「大学時代の友人、佐多って人……動画をバラまかれて精神病んだ人、いましたでしょ?」
 急に村石が昔のことを言い出して由良は驚く。
「……そこまで調べたのか?」
その佐多に行き着くと言うことは、そういうことだろう。
 なにもかも知っていると言うことだ。
「調べたわけじゃない……どこから話したらいいのか……」
 村石が意味深げなことを言い出した。
 バス停には最終が終わっているからバスは来ないので、そこに座って話をした。
 村石はまずはその経緯を話していく。
「このパーティー、俺もそこにいた」
「…………え? お前が? なんで?」
 あの時は大学の三回生の終わりだった。四歳年下の村石がこのパーティーに参加できたとは思えなかった。
「俺の兄が参加できなくて、俺を代わりにと兄の友人に連れられていった。まさかあんなパーティーだとは思わなくて……」
「でもお前も俺を犯したんだろう?」
「そうしないと帰ることができなかった。全員共犯、それがあそこを出るための条件だ。もちろん、あれ自体を楽しんでいるやつも多かったし、俺は……由良さんとの行為を楽しんだのも事実」
 村石がそう言うので、由良はだんだんと苛立ちも消えた。
 もう過去のことで、あの時のことをあれこれ言ってもすでに後の祭りだった。
 村石は高校生で、たぶん大学の受験などにも関係があっただろう。両親にだって知られる訳にもいかなかったし、話したところで誰が信じてくれるだろう。
「一時の悪夢だと、そう思うことにした。その後も彼らは同じことを繰り返していたらしいけど、同じ標的は使わない主義だと聞いた。主犯は毎年変わっているし、去年だったか、サークルの強姦事件になって逮捕者が出たのを知ってる? あれが元々のグループだったみたい」
 そう言われてやっと事件の内容を思い出した。
 どの被害者も男性ばかりで被害届が出ないことを狙っての犯行だったが、泣き寝入りをしなかった人がいたために発覚した。
 過去の事件を遡っているらしいが、幸いなのかOBたちの付き合いは完全に切れているようで、由良たちの事件までは到達しなかったようだ。
「それで……?」
「あなたの友人だった佐多って人、バレて入院した後、由良さんは会ってないでしょ?」
「ああ、彼の親に来るなと言われたからな」
「彼はあなたも強姦グループの一人だと思い込んでいて、今でもあなたを恨んでいます」
そう村石に言われて由良は驚く。
「……な、なんで? 佐多が? え? 何でお前がそれを……?」
 友人が自分を恨んでいると聞いて驚いたし、それを村石が知っているのにも驚いた。何がどうなってこうなっているのかさえ分からない。
「あの事件の時、由良さんの方は俺には気付いてなかったけど、俺は由良さんしか犯してなかった。それを佐多さんは俺の顔を見ていたんだ」
顔を隠してはいたが、それでも分かる人もいた。なんとなくこいつだという特徴が一致する人。それが佐多にとって村石だったのだろう。
 もちろん村石も悪いことをしたという罪悪感を持っていただろうし、その弱さを佐多に見抜かれたのだ。
その後はおきまりのコース。
 佐多はその人たちを訴えたくて動いていたらしいが、そのことを由良に相談したところ由良はそれを断ったのだ。
「ああ、俺は断った。商社に就職が決まっていたし、訴えて相手が捕まっても俺たちはきっと晒し者のままで終わる。いいことなんて何一つもないって分かってたから」
 そう由良が言い切ると村石も頷いた。
「被害者ビジネスでもしてないと、被害者は社会的にその存在を認識されて、一般で暮らすなんてできなくなる。加害者だって確かにそうなるだろうけど、被害者の方を皆覚えている。テレビに出て被害を訴える被害者ばかり写って記憶に残って、犯人の加害者はテレビでたった数十秒名前が載って顔写真が載る程度だ。後は皆忘れてしまう」
村石だって世間がどうなっているかなんて知っている。
 だからこそ、佐多を宥めたという。
「協力はしないし、やるなら由良さんを巻き込むなって言った」
 そう村石が言うので由良が怪訝な顔をする。
「……なんで?」
「俺は、あの時の由良さんに惚れたんだ。好きになったから調べた。そしたら佐多に見つかったっていう……そういう流れです」
 なるほどと由良が思っていると、村石は話を進めた。
「由良さんも俺も頼りにはならないけれど、真実が明らかになったらきっと俺らも味方になるはずだと佐多さんは思っていたみたい」
 それからすぐに佐多の痴態が出回った。
 それも佐多から腰を振って男に甘えているものばかりが選ばれた動画だ。
 大学ではこぞって男子学生が見ていたし、面白がってメールやメッセンジャーで転送されまくり、最後はネット上の動画サイトにまで載った。
 それらは一気に世界中に広まってしまい、消すことすら叶わなくなった。
 佐多の顔はしっかりと写っていて、ペニスを口に咥えて喜んでいる様子ばかりが使われていたからか、佐多は一気に淫売として学生たちにからかわれ、本人は口にはしてなかったが、それを見た男たちに何処かに連れ込まれてレイプもされたらしい。
 しかし大学側はそれを隠す工作をして、佐多を見捨て、佐多は狂ってそのまま入院したが、それは強姦ではなくセックスであり同意だったことになってしまった。
 入院中に何度も佐多をレイプした男たちが見舞いに来ては、隔離された部屋に佐多を連れ込んで何度もレイプを繰り返し、病院もそれを隠匿したのだという。
 佐多は誰も彼も信じられず、見舞いにきた由良までにも当たり散らした。
それが幸せになれないという話だった。
 佐多は狂ってしまい、精神を病んで閉鎖病棟に入院したという。
「その佐多さん、最近病院を出てきたんだ。で、俺のこと調べたと言って近づいてきた。それで協力する振りをして聞き出したよ」
 村石がそう言うので、何の話かと思っていると衝撃的な事を言われた。
「その由良さんを脅迫するメールを送っているの、佐多さんだよ」
「……え? 佐多が? なんで……? 動画を持ってる?」
 そう由良が驚いて聞き返すと村石が言った。
「佐多さん、犯人の一味に近付けたんだ。執念ってすごいね。そこで相手の部屋に泥棒に入って自分の情報なんか消してきたらしい。その時に由良さんの動画も見つけた」
 なるほどと由良が思っていると意外な展開になった。
「由良さんが普通に暮らして、安定した生活をしているのは佐多さんも知ってた。だから、それがどうしても許せなかった。由良さんだけ何の被害も苦痛も受けた様子もなく、普通に暮らしている。それが佐多さんのやってきたことが間違いだったという証明になってしまったから余計にね」
 佐多が相手を訴えると言った時に、真っ先に反対したのが同じ被害者の由良だった。そして由良が、晒し者になったら将来が終わると言った通りに、佐多の人生は終わったも同然だった。
 両親は佐多に帰ってくるなといい、地元には帰れない上に東京にもいられなくなった。友人知人はとっくに就職もして安定した生活をしているから、誰も証言なんてしないし、佐多の行動を組織に密告して佐多に対してまた同じように縛ってきていた。
「佐多さんは自分だけが不幸になっている、それだけは許さないって由良さんのことを逆恨みして、手が付けられなくなってた」
 村石がそういうので由良も困ってしまった。
「そんな過去のことに縛られても、どうしようもないのに……」
 それこそ由良が望まない結果にしかならない。
由良にはどうしたって佐多に協力するメリットがない。
 挙げ句、逆恨みで脅迫してくる相手に協力するなんてするはずもなかった。
 幸いなのは、まだ佐多が正気なのかあの動画をそこかしこにばらまいていないことだけだ。
「静かに暮らしたいだけなのに……なんで今更……」
 そう由良が苦痛の顔を浮かべると村石がにこりとして言った。
「だから、佐多さんが余計なことをする前に、死んで貰った」
「……は?」
 衝撃的な言葉に由良が言葉を失っていると、村石は続けて話をしている。
「佐多さんの持ち物の中を調べて、由良さんに繋がるものは全部消した後、佐多さんをベランダから突き落とした。幸いいつも酔ってて死にたいと叫んでいたから、誰にも疑われなかったよ。昨日、ニュースになったの知らなかった?」
 村石の言葉に頭の中がついていかないので由良はまだ驚いたまま固まっていた。



「どういう……こと? 殺したって……こと? なんで……そんな」
 由良がそう言うと、さほど恐怖を感じていない様子の由良に村石ははっきりと告げた。
「由良さんの動画を動画サイトに投稿しようとしてた。それを止めたかった。由良さんは確かに被害者だけど、ちゃんと自分の迂闊さもあったって反省してたし、訴えても相手が巨大すぎて無理だって分かってたから、それ一回で終わったならと流してなんとか生活をしていた。他の被害者だって同じだ。それを掘り返して全員にセカンドレイプしているのは佐多さんだ。それを見逃すわけにはいかなかった」
「それだけ?」
 本当に由良だけのためなら、村石がそこまでする必要はなかったはずだ。
 そう尋ねると村石は言った。
「俺もそうだけど、兄が加害者だから。親が心臓が悪くて入院している。兄は今は反省して真面目に働いて結婚して、子供もいる。それも壊したくなかった。佐多さんがやろうとしていること一つで、こういう関係ない人までが不幸になる。泣き寝入りが正解ってことはないけれど、もう今更なんだよ」
村石がそう言った。
 あれから五年経っている。
 それまでの被害者も苦しんでいるだろうが、あの一回で終わったことをいつまでも引きずってはいない。
 皆やっと掴んだ平穏を壊す佐多をレイプ犯よりも恨む人が多いだろう。
 一回で終わった悪夢を永遠に世間に晒す悪魔のような存在だと憎むだろう。
 そういうことなのだ。
「佐多さんは、もう戻れないくらいに壊れてた。病院を出られたのは両親が見放したからで、よくなったわけじゃなかったらしい。通院もしてなかったから被害妄想も酷くなっていて、俺の携帯にも一日に百件近く通話がかかってきてた。正直、面倒だった」
 村石の心ない言い方ではあるが、長年由良を苦しめていたのは佐多であり、あのレイプ犯ではないことが何よりも由良を安堵させた。
 そしてその佐多は死んだ。村石によって殺されたのだが、それでも由良は安堵の方が勝ってしまった。
殺人犯である村石を前にしても村石に恐怖は感じない。
 思わずこの話が本当なのかと昨夜のニュースを探ると、男性が飛び降り自殺をしたというニュースがあった。遺書もあったようで近所の人も常におかしな人だったと証言している。
 争った後もなく、自宅には鍵がかかっており、遺書もあることから自殺の線で調べた結果、両親からの絶縁の後、振り込まれていた財産の遺留分を使い果たしての自殺だったことが解り、事件性はなしになった。
 両親が引取りを拒否したので、村石が友人代表して部屋を片付けて始末した。
 由良に繋がるものは警察が入る前に全部始末したけれど、念のために全てを焼却するために、ゴミ収集所まで行き、遺品が燃えてしまうのを見たいといい、しっかりと燃えるのまで見てきた。
 村石の語るように何一つとして由良に繋がるものはなかった。
 由良さえ喋ったりしなければ――――――。
 話はそこで終わったように村石は言った。
「由良さんが、これで安全になればいいと思う」
 そう言った村石を見た由良は口を開いた。
「見返りは何がいい?」
 由良はそう言っていた。
 村石がそれだけのために殺人を行ったとは思えなかった。目的や手段を選ばないところを見ると、もっと根深い欲望があると由良には分かってしまった。
 それが分かっていると視線を向けると、村石は素直に答えた。
「もっとあなたの痴態が見たい。あなたをまた抱きたい」
 村石が率直に告げると由良は頷いた。
「あなたが好きで好きで、ずっと好きでした。そのためにあなたが苦しむことは絶対に許さない……でも俺はあなたをまた抱きたい」
村石の真剣な言葉に由良は少しだけ笑った。
「そんなことのために、お前は人を葬ったのか?」
「そんなことじゃない、俺には大事なことで、一番望んでいることです」
 村石の真剣さは、もう証明されている。
 佐多が死んだことできっとあの写真も動画も送られてくることはないだろうし、犯人たちとも二度と接触はないだろう。
 由良が佐多と同じことを繰り返さない限り、犯人側とは一生繋がらない。
 それだけの安堵を、村石が持ってきてくれた。
「望みはそれだけ?」
由良は薄らと笑った。
 ただ、由良の痴態が見たいというだけで人を殺してきたことを告白する。
 そんな危険な人を、野に放つわけにはいかなかった。
 手元に置いて、ずっと見張っていないといけない。
 由良はそう思ったので、さらなる望みを尋ねた。
「……由良さんの恋人になりたい……ずっと由良さんを抱いていたい」
 村石は恥ずかしそうにそう答え、顔を赤らめた。
 本当に由良のためにそうしてきたのだと、由良にもはっきりと分かった。
「いいよ、分かった……お前の望むように……」
 そう由良はいい、ちょうど通りかかったタクシーを捕まえた。

 由良の住んでいるマンションは、今は同じ階には人は居ない。
 住んでみて静かだと思っていたら、幽霊マンションの住人たちは早々に出ていってしまって、空き部屋が目立つ状態だ。
 由良はあまり部屋にいないせいなのか、その辺は被害に遭っていないので引っ越しにまで至ってはいないままだ。
「ここって、幽霊マンションで有名なところですよね?」
 付いて早々に村石が言うので、由良は笑って言った。
「怖い?」
 人を殺した人間でも幽霊が怖いのかという意味だと気付いた村石は、すぐに首を横に振った。
「いえ、生きている人間の方が怖いのを知っています」
 そう答えた。
 由良はその返答に満足したように、エレベータに村石を誘った。
 村石はエレベータに乗るや否や、噛みつくように由良にキスをした。
 その強引さに由良は苦笑しながらも村石のキスを受けた。
 舐め回すように舌で由良の口内を弄り、村石は深くキスを繰り返した。
「ふ……あっ……も、まだ、部屋にいってから……」
 そう由良がなんとか村石を押さえると、村石はすっかり勃起しているペニスを隠そうともしなかった。
「はっ……っ、ああぅ……」
 服の上から村石が由良の乳首を弄り始め、爪で引っ掻いた。
「んっ……っ、う……っく、あ……っ」
 甘い痛みが乳首から伝わり、由良は身悶えた。
 セックスはあの事件以来してはいなかったが、それでもあの時の悪夢は、由良の身体に変化をもたらしていた。
 オナニーはすっかり道具を使わないと達しなかったし、アナルを弄る癖が付いてしまった。
 だから今は、この村石のペニスがあの時のように激しく自分を犯してくるのだと思うと、あの時の罪悪感は一気に消えていく気がした。
「ああ……は、あぁ……っ」
 甘い声を上げながらも、エレベーターが階に付いたので二人は下りた。
 最上階のいい角部屋を借りている由良は、隣近所には人がいないことが快適なのが気に入っていた。有名な幽霊マンションでも幽霊よりも怖いものがいることを知っている由良には効果がない。
もちろん、殺人犯になってしまった村石にも幽霊なんてものは怖くすらない。
「んっ、んっ、は……」
 二人はもつれるように部屋に上がり込むと玄関先でキスをした。
「あ……っ、はぁっ、んん……っ、あ、も、せめて部屋に……」
 そう言い、服を脱ぎながらリビングに辿り着いた。
 部屋はかなり広く、リビングだけも二十畳以上はあった。
 由良は途中の部屋は荷物置き場に使い、リビングにはかんたんにソファは置いてあったが、テーブルは小さなモノをソファ側においてあるだけで、ラグは寝転がれるようにしてあった。
 そこにもつれるように二人で倒れ込んで、お互いに身体を弄り合った。
「あぁっ……あっ、あっ、あ……!」
 村石は由良を組み敷いて、由良の乳首をすぐに吸った。
「う……あっ、あー……っはう、ああ……っ も、お前は……早く、ペニスを見せて……」
そう由良が強請ると、村石と由良はシックスナインになり、お互いに勃起したペニスを扱いたり口に含んだりして確かめ合った。
由良は村石の大きなペニスを口に咥えて喉まで飲み込んで扱いた。
「ああ、おおきい……んうぅ……っ! んぐ、うっ、うっ、ぐぅっ」
「あ、由良さん……ああっきもちがいいっ……ああ」
このやり方はあの時のレイプで教え込まれたことであるが、今はそんなことはどうでもよかった。
 これで村石が喜ぶなら由良はどんな技もあの時のまま繰り返すだけだ。
「ううっ、んぅっ、ん……っ、ふぅっ」
ぺちゃぺちゃと舐めて先走りを吸って、尿道まで舐める。筋やカリも綺麗に形をなぞるように舐めて咥えて扱く。
 その間に村石は、由良のペニスを咥えて扱きながら由良のアナルを弄り始める。
 由良はそんな村石に、テーブルに置いてあった容器を投げて寄越した。ローションの入った小さな小瓶を受け取った村石はそれを使って、由良のアナルに指を挿入てアナルの拡張をした。
「んっ、んうっ、うぶっ、ぐ、ふうぅ……!」
その手管にすっかり由良は翻弄された。
 あの時の村石が男性経験がないまま由良を抱いたせいで、男に目覚めたのだとしたら、その後どういう経緯で誰かを抱いたとしても、すべて由良を思ってきたと語る村石の様子から、その手管はすべて由良を再度抱くための修行だったことになってしまう。
 それはそれで由良は興奮してしまった。
 すぐに射精まで追い込まれたが、村石は寸前でやめてからペニスをアナルに突き挿入てきた。
「あああんっ!! あっ、ひぁっ、んぁっはぁんっ!!」
 凶悪なペニスがアナルに挿入り込み、それが今まで道具でしか広げてこなかった由良の内部を満たしていく。
 それは由良にとってあれ以来の誰かの本物のペニスだ。
 そしてその熱さに気付き、由良は妙に納得してしまった。
「ああああーっ! らめっ、はっふぅっ……あっ、ああぁっ」
 あのレイプを訴えないで泣き寝入りをしたのは、少なからずセックスが嫌だったからというわけでもなかったという事実だ。
 あの時、確かに騙されたことは間違いないが、多少の人数で済んでいたとしたら、由良はきっとまた参加していたと思うのだ。
 セックスは嫌ではない。それは村石にペニスを突き挿入れられてはっきりとした。
 性に罪悪感はない。ただ同じく苦しんでいる佐多がいたから、そうでなければならないと思い込んでいたのだ。
 由良は佐多ほど傷ついてはいなかったし、騒ぐことでもなかった。
 痛みは過ぎればきっと何でもなくなることも知っていた。だから人に知られることだけが恐怖だったのだ。
 今の生活ができなくなることだけ、それさえ大丈夫なら、セックスなんてただ気持ちよくなるだけの行為に過ぎない。
「あぁっ……いい、おちんぽぉっ……あっ、あぁんっ!」
 あの時の淫乱として教え込まれた卑猥な言葉を口にし始める由良に、村石はさらに興奮をした。
 まさに待ち望んでいた由良がそこにいる。
 淫らに男を銜え込み、腰を振り、美しく乱れる人。それが村石が恋い焦がれていた由良の姿だ。
 すると村石のペニスがガチガチと硬くなり、激しく奥まで由良を犯し始める。



「ひぃっああああぁー! やっあぁっ、あんっ、ふぁっ、ん……はあんっ!」
「ああ、由良さん、あの時みたいに淫乱で、可愛くて、ああっすごいっ」
腰を強く振り由良を押さえつけて犯すように乱暴に扱うと、由良は興奮したのか、身体を震わせて腰を使い始める。
「ひあああっ、おっぱいは吸って……ああんぁっいいっ……あんぁっ、ああっ、はあああぁっ!」
望み通りに乳首を噛んで舌で嬲ってやると由良は身体を仰け反らせて悶えた。
「やああああぁ! いっちゃうっ、いっちゃうのぉっひぃあっ、あんっ、ぁんっ、あぁっあああああっ!!」
 由良はあっという間に達してしまい、射精をしてしまうのだが、それを構わず村石が犯し続ける。痙攣している由良の身体を押さえつけて腰を振ってペニスを奥まで突き挿入ている。
「はぁぁ……あぁ、あぁんっ! あっぁっ、いい、おっぱいはぁっあぁっ……おっ……おちんぽぉっ……おれの、おま○こにはいってぇっ奥までいっぱいっ、あんっあああああっ!!」
「くっ……すごい……由良さんっ」
「あぁっ、はいって、るっおっきいおちんぽがぁ、おれのおま○こにっ、あっああんっああああぁんっ! ああぁっ、あんっあんっ、ふぁっひっあああぁっ、やっ、あっあっぁんっ!」
「で、でるっあああっ」
激しく腰を振っていた村石が身体を強ばらせて、由良の奥深くにペニスを突き挿入れた状態で射精をした。
「んあっ……、ん、んう、んっんんっ! ふぁっ……ぁっ……せいえき、ひぁんっ! あぁっせいえき、おれのっおま○こにぃっああぁっいくっ、せいえきで、いっちゃうっ! んんっ、あんっあんっぁあんっあああああぁっ!!」
その精液を受けただけで由良はあっという間にまた絶頂をした。
 あの時もまた、精液を受け続けて絶頂をしていた。
 快楽は人を狂わせるというなら、由良はあの時からずっと狂ったままなのだろう。
 だから村石のペニスで腰を振り、精液を受けて絶頂をするのだ。
「はあっはぁっ……ぁ、あぁ……っひぁっ!? んっ、や、ああぁんっ! ああっ、らめぇっあん、あんっぁあああぁんっ」
 すぐに村石のペニスは勃起状態に復活し、村石はすぐに腰を振り始める。
「この程度じゃ足りないでしょ……中が締め付けてきてる。メスのおま○こになりたいんでしょ……由良さん」
 急に村石がそう言い出して、由良は心を読まれている気がしてそれを否定した。
「ちがぁっ……やあああぁっ! やぁっらめ、ちくびぃっ、あぁんっ、ふぁああっ」
 違うと由良が言うと、村石はそんな由良の乳首を乱暴に指で捻り上げた。
「乳首も大好きでしたよね……あの時はクスリでおかしくなっていたと思うけど、でも後半は切れてたはず……だから由良さんの素の反応だったんでしょ?」
 村石は由良の乳首を指で捏ね回しながら、片方を舌で嬲って先端を舌で押して乳輪まで噛んでくる。
「あぁんっ、んっ、ふぅっんんんっあぁっあっひっあぁんっんっあっいいっ、あぁん」
そうなのだ。最初こそクスリを使われたけれど、後半は酒に酔っていた程度でクスリは切れていた。
 腰が抜けそうなほど気持ちがよくなってきて由良は嬌声を上げ続ける。
「気持ちいいんでしょ? 由良さん?」
「あぁあんっ! あっあひっらめっあんあんっ! ちくびっくりくり、あぁっいいのっきもちいっ……おま○こも、おおきいおちんぽもいいっあっあぁーっ!」
 セックスは大好きだという認識が村石によってよみがえってくる。
 こうされたかったというずっとオナニーで自分の動画を使っていたことさえも、こうなることを望んでいたからだと納得できてしまった。
 こうやってだらしなくなる身体を誰かが抱いてくれないと、本当にどうしようもなくなっていたのだ。
「やっと認めてくれた……由良さんあの時から、セックスに抵抗もなかったでしょ? 知ってますよ。おま○こにペニス挿入したたら、中が締め付けてきて、離さないように絡みつけてくるのが一緒です」
村石はあの時のことは昨日のように覚えている。
 感覚や匂いまで再現できるほど、動画を何度も見直したのもあるが、それ以上の衝撃的なあのレイプを忘れられないのだ。
 由良を犯すのが本当に気持ちがいい。
 由良を犯すためなら、佐多も利用した。
「ふあぁっんっおま○こっ……あっああっんっきもちいいっ……あっあっおま○こ……おちんぽで……っきもちいいっきもちいいっひああっらめっ、おま○こっあひっ……おかしくなるっあっい゛っあっあっあんっあんっあんっあぁんっ!」
由良が完全に堕ちてくると、村石は内心でほくそ笑んだ。
 ずっと待っていて願っていて、夢にまで見た由良の痴態。
 それが自分の手によって再現されている。
「あひっああっいくっいくっやぁっ……んあ゛っひっああぁんっ!」
「どんどんイッていいですよ、ずっと犯してあげるから」
由良が全身を震わせて絶頂すると、ドライオーガズムで達してしまっていた。
「あああぁっ、やらっ、いってぅ、いってぅよおっ、あんっ、おま○こぐりぐりってぇっ!」
 由良はドライで絶頂する感覚すらも取り戻した。
 あの時のレイプされる自分を再現しているかのように、身体はすっかり感覚を取り戻している。
 これが好きだった、だから怖かった。
 こうなったらきっと終わりだと思ったから、佐多に同情した。
 ああいう風に落ち込んでさえいれば、ここまで堕ちなくて済むと思ったから。
「うぁんっ……んっ、ふぁ、おちんぽぉっああああーっ! ひあっ、あんっ、ああっ、あああんっ」
 けれど、認めてしまえば、なんてことはない。
 気持ちが良いだけのことだ。
 あの時のことなんて、もう誰も覚えてない。
 自分と村石と死んだ佐多だけが気にしてもがいていただけなのだ。
「ひああああっ、ああぁっ、らめえっ、いってぅの、いってぅからぁっ、もっ、おちんぽでゴリゴリってしちゃやらあああぁっ」
ガンガンと村石のペニスで奥を突かれながらも、由良は絶頂がドライオーガズムのせいで長く続いてしまい、狂いそうなほどの快楽が脳天を何度も突き抜けてくる。
「ああぁんっ、あんっ、んっ、はふぅっ、いいっ、いいのぉっ、おちんぽぉっ、もうらめっ、あああっ」
「由良さん、すごく淫乱で可愛い……ずっとずっとこのときを待っていたんだ」
「ふぁっ、ああっ……おちんぽっいいっ、ちくびぃっあああんっ」
「全部してあげますよ……ずっとこうやっておま○こにおちんぽ突っ込んで、何度でもイカせてあげますっ」
「あああんっああああっ! ああんっ、おちんぽっすきっ! 乳首もきもちいいのっああんっああっ」
「知ってます……全部好きなんですよね……由良さんは……」
「あぁんっひぁあっ ……んっ、ひぅっ、あんっあぁんっひあんっ! あっ、乳首っああっっふぁあっ! あぁんっいいっ乳首っ、もっとちくびさわってぇっ、んぅっ、いっぱいこりこりってして、舐めて吸ってぇはあああんっ」
「ああ、美味しいです……乳首から搾乳できるくらい、育ててあげますね」
「ああああぁんっ! ひぃあぁっ、ちくびっいい、いいっ気持ちいいっああんっ!!」
「乳首だけですか? 本当に?」
 村石の問いに、由良はもう迷わずに答えた。
「ふぁっ……ぁっ……おま○こにせいえき、いっぱいちょうだい……おま○こに……いっぱい、村石のおちんぽせいえきちょうらいっ……ああっああんっ!」
「分かりました……あげますよっ」
 それからはもうただ獣の交わりになっていった。
「あああぁーっ! やぁっあ、あんっあんあぁんっ! いいよっいいっ、いいよぉっはああぁあんっ!」
 欲しいままに由良は村石のペニスを求め、絶頂をし、吐き出すだけ精液を吐き、村石も由良の中に勃起したペニスを突き刺し、腰を振り、中で射精をして好きなだけ由良を犯した。
「ひぁんっ! あぁっ、ちょうらいっ、せいえき、おれのっおま○こにぃっああぁっあっもういくっ、ああっおちんぽ精液きちゃうっ! んんっ、あんっあんっぁあんっあああああぁっ!!」
 由良のアナルはすでに出しに出した村石の精液で真っ白な泡まみれになっている。様々な液体がラグに飛び散っていた。
それでも由良も村石も満足はしておらず、セックスは続く。
「あはあっはぁっ……ぁ、あぁ……んはぁっ、はぁっ……やらぁあっ、もっ、おま○こらめぇっあん、あんっぁあああぁんっ……ああぁっ……あああぁっ! らめ、ちくびぃっ、あぁんっ、あぁああぁんっ、んっ、ふぅっんんんっんっ、はぁっ、ぁん……きもち、い……おちんぽ、いいっあひんああっんっんっ」
「ああ、すごい……きもちがいい……由良さんっどんどんよくなってる……っ」
「ああぁっ、いくっ……いっちゃぅっ、っはぁ、おちんぽせいえき、きちゃうよぉっ……ぁんあんっああああぁん……おちんぽいいっ……あっ、あぁんっ、あんあんあぁんっ!」
 窓ガラスに縋り付いて、乳首は窓に押しつけられて身体を揺すられる度に捏ねるように擦られて、後ろからは村石によってペニスで奥を突かれて、逃げようもない状態にされて、由良は犯され続ける。
「あぁあんっ! ちくびぃっ……またっいっちゃうっ……んんっ、あああーっ! いくっ、いっちゃうぅっ! はぁあんっ、あっあんっああぁー! あぁっ! もうっらめぁあああぁんっ!」
「由良さん由良さんっ……ああっいいっ出しても出しても止まらない!」
「はぁっぁ、あぅんっすご、いっ……ひゃぁっあっはぁっ、あぅんっ! はぁあああっ……ふぅっ、うっ、あぁああぁんっ……やぁああっ! あっいいぃっひぅっ、あひぃっ、あぁんっ!」
 完全に壊れたように村石の腰は機械の様に止まることを知らない正確さで由良のいいところを擦り上げ、由良はドライオーガズムで何度も達して、快楽が続いている中でまた絶頂を繰り返し、もう自分は完全にイキっぱなしであることにすら気付いていない。
「あぅっあっあんっいいっ、んっ、ひああぁっいいよぉっああぁーっ、んっ、いいぃっ、もっ、いっちゃうっ、いくっ! あっあぁあんっ!」
「由良さん、愛している……由良さんっ」
「はぁあぁああん……んっおれも、好きっ……おちんぽすきっああぁあっあひぃっ! あっあんっ、あぁああ……おおきいおちんぽ、きもちがいいっあああぁーっ、おま○こがいいっぁっ、ひっ、ふぁっ、あんっあんっ、ぁんっ! あぁんっ、いぃっはぁっ、あっふぅっあんっ、んーっ」
「おちんぽが好きでもいいよ、これがいいんでしょ、これなしでもう生きていけないよねっ」
 そう言いながら、村石が由良の奥まで凶悪なペニスを突き立てて擦り上げてくる。
「ふっん、あっああっ、また、いっちゃう、でちゃうっんっはぁんっひぁああっ!あーっ、いくっ、いっ、んっあっああああぁんっ! あっひあぁっもっ、らめっぁっ」
 もう由良はこの状態が気に入って、ただひたすら腰を振って全身で感じて絶頂をした。
 そして村石も大量の精液を吐き出して、由良の中で十度目の射精をした。
「ふぁあっ、おま○こっ、せいえきっ、んっぁ、なかにっ、いっぱいらしてぇっあっあんっふぁああんっ! やっ、あっあぁん!」
 精液がたっぷりと奥まで入り込んで、熱いまま内壁に叩き付けられると由良はとうとう立ってられずに床に倒れた。
「あ……う……はあ……」
 村石のペニスが自然に抜け、由良のぽっかりと空いたアナルから精液が噴き出すように吐き出されていった。
 それを見た村石はペニスを扱いて、まだ出る精液を由良の顔にかけた。
「これで、由良さんは俺のモノだ……」
まるでマーキングでもするかのように、まだ出る精液を由良の身体にも掛けた。完全にそれは由良を支配した気分にさせてくれ、村石を満足させた。
 倒れた由良は激しい息をしながら、口に垂れてきた村石の精液を舌で舐め取った。
 そして笑った。
 堕ちるのはなんて簡単で、楽になることなのか。村石の気持ちを利用した形になってしまったが、それでも由良は生まれ変わったようだった。
 ずっと暗く鈍い色の世界だった自分の心が一瞬で夜明けを迎える。
 これでもう怯えて泣いていた日々は終わったのだ。
 自分を脅す人はもうこの世にはいない。そして面倒ごとは村石が片付けてくれていた。
 なにより、彼のペニスはとても素敵ですっかり虜になっていた。
 それをくれるなら、いくらでもセックスをしていい。
 そう思うと、由良は薄らと笑みを浮かべるのだった。

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