121-まあるい月の魔法

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 こんなことをするのはおかしいと分かっている。
 図書館でたまたま通った通路の棚にある、ある本を偶然手に取ってしまった。珍しい文字、アラビア文字か、ミミズが這ったような文字が見えて、それをパラッと開いた。
 中身はちゃんと日本語になっていて、どうやら恋の魔法やら怪しげな占いやらが載っていた。
 女性がこっそりやってしまう魔法というところなのだろうと思って、見たことはなかったからちょっとだけ読んでしまった。
 というのも、井岡はその魔法にも縋りたいほどの恋煩いを起こしていた。
 違う会社ではあるが取引先の担当である、山平という男性に恋をしてしまった。
 もともと男性の方が好きで、セックスは攻める役より受ける方が好み。ゲイの経験はあるが、カミングアウトはしていないので恋人もいない。
 最近は仕事の忙しさにかまけていたので、女性の恋人さえもいなかった。そんなところで山平に出会ってしまい、心は完全に持っていかれてしまった。
といっても山平がノーマルであることは分かっていたし、恋人に振られたばかりという情報はキャッチしたが、山平はかなりモテるようで傷心から戻ってくれば普通に女性の恋人ができるような好青年だった。
 だからなのだが、どうにかして彼に興味でも持ってもらえないかと井岡は思った。一度でも体の関係に持ち込めれば、絶対にこの世のものとは思えないような世界を見せてあげられるのにと、セックスだけは自信があった。
 山平に恋してからは、恋人探しはやめたが、体の関係だけは続けている人がいる。その人たちは本当に井岡の体だけが目当てで心は興味はない人だった。お互いに都合がいい関係は続いているが、山平が恋人になってくれればそれも終わる。
 いろんなことが重なって、井岡は自分で自分を追い詰めていた。
 だから普段なら絶対に手に取らない、魔法の本なんてものに興味を引かれたのだ。
「まあ、面白いし、読んでみるか」
 恋のまじない百選という項目が読み切れずに、とうとう図書館で借りた。
 まだ誰も借りた様子のないカードを出して、貸出しをする。司書がさっと作業をしてくれて、本貸出しはすぐに終わった。
 図書館を出ると、ちょうど満月が上っている。
「あ、そういや満月に関した魔法って載ってたなあ」
 この際だから、乗っている気分のまま試してみようと思った。
 途中のコンビニで夕食を買い込み、ビールも六本入りのケースを買う。その駅前の花屋でバラを三本ほど買い込み帰宅した。
 自宅に帰り着くと、テーブルにそれを並べて、食事をしながら本を捲った。
「何々、恋の魔法を成就させるには、満月の夜が最適ですと……で、まずはコップを用意します、真っ赤なバラの花びらを三枚用意して、コップに浮かせますと……満月の光の下に魔方陣を描き、中央にコップを置きますと……」
 図面付きで書かれていてわかりやすい。
 しかし素面でできるほどのものではなかったので、井岡はビールを三本一気に飲み干して酔いに任せることにした。
 いい感じに酔い始めてから、井岡は読んだ通りに準備をした。
 カーテンを開けて月の光を入れ、そこに紙に書いた魔方陣を用意して、バラの花びらが入ったコップを置いた。
「で、呪文を唱えますっと」
 井岡は咳払いをしてからその魔法を唱えた。
「アクシオ・オーキデウス・サージト」
 それを唱えながら塩を魔方陣の四方に撒く。
 それからじっと一分ほど待つのだが、当然何も起こらない。
「だよなー、こんなので魔法が使えたら、今頃魔法であふれてるっつーの」
 急に冷静になった井岡は、本をその場に置いた。
 冷めたのでそのまま井岡は風呂に入り、さっと酔いも飛ばした。いくら血迷っていたとはいえ、少女まがいのことをしてしまった自己嫌悪が襲ってくる。
「あー俺も末期だな」
 とにかくさっきの魔方陣を片付けて、コップもどけておかないといけないと思って、風呂を出て居間に戻る。
 そのときだった。
 放置していた魔方陣から急に煙があがり、シュルシュルと広がったのだ。
「え……うそ、火事!?」
 こんなところから煙が上がるわけもないのだが、井岡は急いで風呂に戻り、湯船からバケツにお湯を汲み上げて戻り、魔方陣があったあたりの煙を消すためにお湯を一気に振りまいた。
 ザーッとお湯が流れて煙が消えた。のだが、その煙は消えたが、そこには火事の痕跡ではなく、肌が褐色の怪しい男が立っているのだ。
「ふええええ!?」
 何でだと降って沸いた不審人物に、井岡はバケツを投げつけると、バケツはその男に当たる前に不自然に部屋の端に吹き飛んでいった。
「えええ!?」
 井岡が気味が悪いと逃げようとすると、男の腕が動いて指を鳴らした。
 すると急に体が動かなくなり、井岡は逃げることすらできなくなった。
 何が起こってこうなっているのか理解できず、混乱している井岡の目の前で褐色の男がゆっくりと体を動かした。
「よもや、降霊をされ呼び出された挙げ句、出現中に中断をされるとは思わなかったぞ」
 そう男は言いながら白い歯を覗かせて笑っている。
「戻るよりはこちら側に来るしか方法がなかったが……帰る方法も道も消えてしまったぞ? どうする主?」
 そう言われ、井岡はまさかと思う。
 さっきの魔方陣でやった魔法。あれは願いを叶える魔法であるのだが、それはこうした魔神のようなものを呼び出して叶えてもらうものだったのかもしれない。
 それが中途半端に成功して、こうやって出てきてしまった。
 そこで井岡はハッとする。
 こういう魔方陣で何かがでてくるパターンは、対価が必要な契約をしないと帰ってはくれない上に、碌な契約ではないのは、散々漫画や小説で読んだから知っている。
 この魔法がそこまで一般化していない理由は、呼び出した人間が生きていないから伝わっていないというのがもっとも簡単に導き出せる結論だ。
 それに井岡が震え、どうしたらいいのか分からないと恐怖を覚えた。
「……なるほど、恋のまじないだと思った訳か。残念だが、私は恋を成就させるようなものではない。そう、通常は女を相手にする淫魔だ」
 そう呼び出されたものが言った。
「……淫魔……って……え?」
 呼び出したものがまさかの管轄違いで井岡が驚くと、体の自由は利かないが、声だけは出せた。
「まあ、男でもやれることはやれるから構わないが……どうやらお前はその方が望みのようだな」
 褐色の男はにやりとして、指をパチンと鳴らした。
 すると、井岡の体が浮き上がり男の方に引き寄せられる。
 こんな不思議な力を自在に操るのは普通の男なわけもなく、明らかに呼び出した魔であることは間違いない。だからできれば帰ってもらいたいのだが、さっきの本はそこに転がしたままで魔法の終わり方まで読んではいなかった。
 つまり本を読まない限り、この魔は去ってはくれないのだ。
「……うわああああ!」
 壁にぶち当たりそうなくらいの勢いで放り投げられたようになったが、次の瞬間、また褐色の男が指を鳴らすと、あるわけもない空間が隣の部屋の辺りに広がって大きなベッドルームになった。
 そこにはラブホテルのような大きな円形のベッドが中央にあり、周りがガラス張りの部屋になっている。
 ベッドに投げ出された井岡はベッドに寝転がったと同時に、着ていた服さえ飛び散るように破れて消えた。
「ひいっ!」
 服が脱げた瞬間に、体中を蛇が這い回るように滑ったものが絡みついてきた。
「ひあああっなにこれ……やだ……ああっやめ……なんだよこれ!」
 ドロドロとした液体をまとった触手のようなものがあっという間に井岡の体中を締め上げ、滑った液体を体中に塗り込んでくる。
 ニュルニュルとした感覚が体中を這い回り、井岡は恐怖を感じて震えたが、だんだんとその擦られる箇所が熱を持って感じるようになっていった。
「あっ……なに……あつい……ああっ……たすけて……ああっ」
 誰に助けを求めたらいいのか分からないままでも、井岡は涙目になって褐色の男に助けを求めた。
 手を伸ばしたところそれを褐色の男が手を掴み、その手に舌を這わせてきて、井岡の指先から根元まで長い舌で舐めてくる。
「やっ……ああっだめっ……それ……ああっんっ」
 舐められたところから気持ちがいい。そう感じてしまい、井岡は驚愕したが、男の舌が普通の舌ではないことにも気付いた。
 舌は人間の舌とは違い、細長く蛇のように先端が細い、それが器用に絡みついてきて指先に巻き付いてくるのだ。そして舌は一個だけではなかった。明らかに三本はある。 ここまでの状況もすでに異形のもののはずだったが、指先を舐めてくる舌の動きが優しいものだったので、混乱して強ばっていた井岡だったが、体の力が抜けた。
 その間も体中に巻き付いた触手が細い管を張り巡らせて、井岡の乳首に巻き付き、ペニスやアナルにも入り込んでいる。それが滑った液体を吐き続け、体中をドロドロにしていく。
「あぁっ……そ、そんなこと、あんっあっ、あっ、はぁんっ……ひゃっ、あぁっ」
褐色の男は井岡の指を舐め終わると、ゆっくりと井岡のペニスを口に含んだ。
「ああっ……あひぃっ! あっあんっ……ぁんっ、はぁっ……ああんっ」
 三本の長い舌がペニスに巻き付いて、それぞれがペニスを舐めあげてきている。
「はぁっ……、あっ……あぁん……、やらぁ……は、ぁ……ああんぁ……」
 こんな感覚は初めてで、井岡は快楽に身を任せてしまった。抵抗しても逃げられる状況ではないが、快楽には弱かったために早々に降参したのだ。
 もう何を願ったのか忘れてしまったほどに、淫魔とのセックスが想像を絶する快楽を見せてくれる。
「あぁっあぁっ、やぁああんっ!」
 井岡は射精を早々にしてしまう。
 未知の快楽に体中が歓喜してそれを受け入れている。
 井岡はただ嬌声を上げるだけになっていく。
「思ったままに感じるがいい。私の手管で狂うがいい……それが報酬だ」
「あっあっあんっあぁんっ!はぁっ……ひぁあんっ……ちくびぃ……らめぇっ……ぁんっ、あぁあああん……」
「もっと淫乱な言葉で、気分を盛り上げたらいい。言いたいように……」
 触手の感覚が滑りから今度は人間の舌のざらつきに変わる。
「やらぁっ……はぁんっ……あっあっあひぃっ! あっあぁっ、あひぃっ……、らめっ、あーっ……」
 乳首やペニス、アナルに至るまで、体中を人間の舌が這い回っている感覚に、井岡は射精を断続的にしてしまう。その精液はすべて褐色の男が飲んでしまう。
「もっ、やらぁっ……ああっ……、あぁっ、こんなっ、はぁっ、はぁっ……こんなとこでこんなっことっ……あっぁんっ」
 ザラリとした感触は、一層井岡を興奮させる。舌で舐められているようにペニスを扱かれ、先端を舐められ、乳首も勃起したところをねぶり倒すような動きで舌の感触がしている。それが快楽を更に深く呼び起こし、井岡は今まで感じたこともない快楽に全身を痙攣させて感じた。
「あーっ……はっあぁっ、あっああぁっあひぃっ! あんっ……あっあっあああぁぅっ」
 井岡には恐怖はすでにない。ただ感じるだけ感じて嬌声を上げるだけになった。



「あっやっ! あぁーっ……らめぇっ、んっはぁっぁああっ」
 どうしよう。気持ちがいい気持ちがいいと井岡の頭の中はセックスの前戯だけでよがり狂いそうだった。
「そろそろ、準備はよさそうだな……人の男は食ったことはないが、なかなか素質があって楽しめそうだ」
 そう言うと褐色の男のペニスが股間から出てくる。それはペニスが二本あり、長さも馬並みだった。
 その一本が遠慮なく井岡の中に入り込み、もう一本は井岡のペニスと一緒に触手に巻かれて扱かれた。
「あんっ! んっあぅっ……やっあぁっあぁっ、らめっ、んんっ、ひぁんっ……!」
長く入り込んでくる淫魔のペニスに、井岡は脳天を突き抜ける快楽を得た。
こんな経験はきっと二度とできない異形とのセックスなのだ。それを井岡は好きになり、もっとしてほしいと強請った。
 経験できるだけでも儲けものだと開き直ったのだ。
「あっ……あぁっあっ……お、おちんぽっでっ、おま○こぐりぐりって、やっ、あああんっはぁんっ!」
「おちんぽとおま○こか……なかなか言い得て妙だな……だがお前のアナルはおま○こで十分のようだ。女のように孕みはしないが、しっかりとおま○こに仕上げてやるよ」
 入り込んだ淫魔のペニスは次第に形を変え、人のペニスの型に変わる。
「あぁっ……おちんぽいいっ……あっ、あぁんっ、あんあんあぁんっ!」
 褐色の男は腰を動かさずにペニスだけが自動に動き、井岡の中を犯し始めた。
 その高速の動きと的確に狙う快楽スイッチを押してくる動きに、井岡はあっという間に射精をした。
「あっ、はあぁっ……んっ、あっふぅっいいっ……、おま○こがぁ、いいっんっ、はぁっん!」
 涎を口から垂れ流し、淫魔のペニスによがり狂うのを褐色の男はじっくりと井岡の顔を覗き込んでいる。冷静に井岡を観察し、品定めでもしているかのようではあるが、時折眉を顰めていることから、淫魔でも快楽は感じているようだった。
「あぁんっ! あっ……はぁっ、はぁっ……もっと、ちょうだい……もっとおま○こに、あなたのおちんぽっをっあぁぅっ! ああ、あんっあんっあぁんっ」
ぐりっと抉るように一段階奥までペニスが挿入り込んできた。それはS字の奥までで、人間だと絶対に届かないところだ。
「あぁあっ、あっふぅっ、あっあっ……ああーっ! ああああぁっ! あぁっ……んぁっ……あぁっん……!」
 井岡は自らも腰を振り、足を広げ、しっかり淫魔のペニスを締め付けて強請り、淫魔は遠慮なく井岡の中を深く深く犯してくる。普通なら腸が避けると思うような動きであるが、そこは失敗をしないのが魔なのか、何かからくりがあるのか、そこまで挿入り込んで激しく動いても井岡の体は平然とそれを受け入れられた。
「はぁっはぁっ……あっぁあっ、んっひゃぁっ……おちんぽ、くちからでちゃう……ああんっああっ!」
 そう思うほどに淫魔のペニスはS字を抜けてさらに奥まで挿入り込んでいる。
「あぁあっ……ぁっ、おっきいっおちんぽがぁっ……おま○こ、奥までごりごり擦ってっはあぁっ……んっあぅっ、きもちっ、いいっ……!」
不快感は一切なかった。
 全てが快楽で井岡はそれに悶えた。感じれば感じるほどにさらに深い快楽を与えられて、井岡がそれに慣れてもさらに快楽を与えられた。
「あぁあんっ! おま○こっ……またっいっちゃうっ……んんっ、やあぁっ!」
 お腹がうねっているのが見えるほどの大きさのペニスで犯されているが、それすらも気持ちよくて、井岡は悶えて腰を振った。
「あああーっ! いくっ、いっちゃうぅっ! はぁあんっ、あっあんっああぁー!」
 最高の絶頂がやってくる。
「いくぅっ! またイクッぁあああぁんっ!」
井岡は全身をのけぞらして絶頂をして、射精をした後に尿を漏らした。
「ぁあん……はぁっ、はぁっん……ぁ、んっ……はぁっ……、う……」
「なかなか、いい体をしているな……淫魔のセックスについてくるか……面白そうだ」
褐色の男はにやりと笑った。
「淫魔の精液を受けて、どこまで正気を保ってられるか見物だ」
「あっああぁっ……おま○こは、らめぇ……んっ、精液中出ししちゃぁっ……あっあっいぃっ、んっあんっひああああんっ!」
 褐色の男がペニスを抜きながら精液を吐き出し、奥から順番に精液で埋められていくのを感じて、井岡はよがり狂った。
 淫魔の精液を腸で受ければ、淫剤を何十倍も飲むのと変わらない。塗りたくられた液体の何倍もある快楽要素を与えられたら、人間ならもう廃人になるしか道がない。
「はあぁ……ひ、はぁ、あっ、ああんっ!」
 井岡はそれを受け、頭の中で火花が散るような感覚に陥って、狂いそうになるのを精神力だけで耐えて体を痙攣させた。
「やああぁっ! あっあぁんっ……おちんぽっもっとちょうらいっ、あっあっあっ……おま○こにおちんぽないと、らめなの……」
 びゅーっと吐き出される淫魔の精液がアナルからあふれ出ている。それは水たまりになるほど吐き出されているが、その半分は井岡に吸収されたはずだった。
それなのに、井岡はまだ正気を保っている。それに褐色の男は驚いていた。
「これは、よもやの適合者か? 淫魔のセックスに耐える人間など貴重だぞ? 妙なところに呼び出されて帰れもしないので困ったが、これは拾い物だ……これなら魔界に帰れなくてもこの世を十分楽しめそうだ」
 褐色の男はそう言うと、自らのペニスを二本くっつけて扱いた。するとペニスが一本になり太さは馬と同じくらいになっている。
それを完全に広がったままの井岡のアナルに器用に突き入れた。
「あひっ……あっあんっあっ……あぁおちんぽきたっ……あぁあっ……!」
 さっきよりも大きく圧迫感はあるが、井岡のアナルはそれをすんなりと受け入れた。
「ひああぁっ……あぅっ、ひぁん、あっあっあんっおま○こ、こわれる……ああっん」
「壊れやしない、こうやって、私の淫紋をつけてやれば、私専用のおま○このできあがりだ。これでお前は最終的に私のペニスではないと満足はできない体になる」
「あぁんっ! やああっ、はひぃっ、あっあっ、あーっ……専用おま○こ……ああんっなる……ああんっおま○こになるっ!」
 そういう井岡の腹に褐色の男が手を当てて呪文を唱えた。それは不思議な声で、三重に声が重なって詠唱され、凝縮された魔術が褐色の男の指によって井岡の肌に埋め込まれる。
「それでいい……これでお前は私の物だ」
「あぁーっ……ふあっ、んっんっ、やぁっあっはぁあっ」
 淫紋を刻まれる時にも快楽は感じていたが、それよりも安心感が圧倒的に生まれた。
 そして褐色の男が微笑んで初めて井岡にキスをした。
 井岡の頭の彼方にあった山平への気持ちが一瞬にして消し去られた。
それまでの山平への気持ちが、褐色の男への気持ちに変わり錯覚をする。ずっとこの男を待っていたのだと井岡は思ってしまった。
「あひぃっ……なっ、なめてぇ……おっぱいっ、んんっ……おっぱいちゅうちゅうして、ぁんっ、おち○ぽぐりぐりして、精液をおま○こに出してっあっあっあぁあんっ」
井岡は腰を振って強請り、褐色の男のペニスを締め上げた。
「よかろう……くれてやる」
 そう言うと褐色の男は自らの腰を使って動き出した。
「ひああぁっいい……っあっあっいい、きもちいっ……! あぁんっあっあっあんっあんっああーっ!」
パチュパチュといやらしい音が部屋中に響き、井岡はその音でも耳から犯されている気分になった。
「あっあっ……もう、あぁあっ……いっちゃ、いっちゃうっ……あっあぁっ」
井岡はあっさりと絶頂してしまうが、褐色の男は腰を振るのを止めずに、そのまま腰を振りながら射精をしている。
「やあああぁっ! ぁっあっいってるぅ……! んっあっあっあっ精液おま○こにでてるっあぁあんっ!」
 痙攣する井岡の体を押しつけて褐色の男は腰を振り続け、井岡はその快楽に身もだえした。
ここまで性欲の強い相手を見たことはなかった。絶倫である井岡に付いてこられるのは同じ絶倫だけであるが、さすが淫魔はそれ以上で井岡を翻弄した。
「あぁあっ……あっぁんっあっあぁっ……んんっ、いいっあっあんっ」
「中出しが好きなのか」
「あっすきっいっあんっあっ、すき、い゛っあああっあっんっんんっ種付けっ中出しっああん」
「普通なら、妊娠するくらいのものだ……ほらイキ狂って見せろ」
「あぁああ、おま○こされて、精液中出しでイカされるっ……ん、はぁ、ひっあっはあん」
 また奥で褐色の男が射精をした。その量は多すぎてアナルからあふれ出るほどだ。
「あ゛ああんっ! いくっいくっあひっあっあああっいくっ……! はぁっ、あん、あっあっ、精液中出しっきたっ、あぁん!」
 あまりの気持ちよさに意識が飛びそうになるも井岡はここは耐えた。
「はぁああぁんっ!! なかにぃ、おま○こに、いっぱい出てるよぉ! ああっぁ、おま○こ、あぁっあぅっ、おま○こぉっ気持ちがいい」
「ここまで耐えるか……いい器だ」
「あぁっやっはぁっはぁあぁああんっ! ひあっらめっあっあんっああんっ!」
「そろそろ気絶するほどのものをくれてやろう」
「やぁっいくっいっちゃっうっあぁあっいくっなんかきちゃうっ……あっああああぁんっ!」
 今度射精は魔の力を込めたもので、さすがの井岡もその衝撃には耐えられず、絶頂と同時に射精しながらも気を失った。
 ブラックアウトしながら井岡はこれでこの世ともお別れかなと思った。でも未練はなかった。


 次に目を覚ました井岡は、自分の部屋のベッドで寝ていることに気付いた。
「は……夢?」
 ゆっくりと起きてみると、部屋の壁にはあの空間はない。
 朝日に照らされた部屋を見ると、昨日やっていた魔術の痕跡が残っている。しかし紙に書いた魔方陣は濡れて乾いたようで、マジックが滲んだように広がっている。コップはひっくり返り、花びらがそこらに散っている。
 そういえば水を撒き散らかしたなと思ったが、絨毯は濡れていなかった。
 やはりそれも夢なのかと思ったが、井岡が投げたバケツが部屋の中に転がっている。
 夢だったらバケツがあるわけない。しかし夢じゃないなら、絨毯が乾いているわけもないのだ。
 ちぐはぐな状況に井岡が混乱していると、玄関のチャイムが鳴った。
「井岡さーん、ちょっといい?」
 その声は大家さんの声だ。
「はーい、今行きます」
 井岡はそう言って玄関に出ると大家が立っている。六十近い女性であるが、元気はつらつだ。その人がわざわざ訪ねてきて何の用だろうかと思っていると大家が言った。
「あのね、お隣さんが引っ越してきたの。でね、外国の人だからね、一言言っておいた方が安心するかなって思って」
 隣の部屋は先月空いて、リフォームが終わったばかりだ。
「あ、そうなんですか。分かりました、大丈夫です」
「お願いね、あ、日本語はばっちりだから話し合えばちゃんと分かるはずよ」
 大家はそれだけ言うと去っていった。
 井岡は今はそれどころではないので、それは頭の片隅においてから、部屋を片付けた。魔方陣の紙を丸めて捨て、コップも洗ってバラの花びらは捨てた。
 結局夢か幻か、幻覚でも見たような感覚で、井岡は酔いすぎたのかと思うことにした。
 
 するとまた部屋がノックされた。
 また大家かと玄関に出てみると、見覚えのある褐色の男が普通の服を着て立っているじゃないか。
「……おまえ……夢じゃないのか!」
 まさかのことに声を荒らげると、男はすっと玄関に入り込んできてから、井岡の腹に手を当てた。
「お前は私のものだと言っただろう? 忘れたのか、ここに印があるというのに」
 そう言われて触れられたところが急に熱を持って熱くなった。
 この熱は、昨日の熱だ。それが思い出せて井岡は男を見る。
「夢じゃないのか?」
「夢ならよかったな。お前が魔方陣を中途半端に作った上に、水をかけて魔方陣を壊したせいで私の帰り道がなくなったのだ……その責任は取ってもらうぞ?」
 そう言われて井岡は真面目に尋ねた。
「責任ってどういう感じで?」
「お前には私の餌になってもらう。お前の精液を毎回セックスで分けてもらう。私にはそれが食事なのでな」
「人間の飯は食えないと?」
「食えるが栄養にはならんという意味だ。それにお前には淫紋を与えた。私専用のセックスドールであることになっている……よかったなお前ほどの逸材ならとっくに誰かに食い荒らされて死んでいただろうに、私はちゃんと可愛がってやるから安心するといい」
 恐ろしいことを平然と言われて井岡の頭が追いつかないが、触られた腹が熱いのはまさにそのせいであるのは明白で、わざわざ見るまでもないことだ。
「どのくらいの期間で?」
「お前が死ぬまで。それが契約期間になっている。そう契約したのはお前だぞ?」
「あー……マジでか」
 とりあえず部屋に上がってもらって、井岡は魔術の書いている本を男に手渡した。
「これに書いてある通りにしたんで……あんまり意味がわかってないんだ」
 そう言うと男は本を手に取り眺めてから言った。
「これは全部淫魔を呼ぶ方法だ。ただ書いている呪文が多いからどれも成功はしていないのだが、このお前が使ったやつだけ条件次第で呼べるものだ」
「条件?」
「バラの花の種類。お前の備えたバラは合っていた。ただ呪文が適当で引っかかるのは淫魔くらいだ。たまたま私が聞こえたからいいものの、別の淫魔とはいえ下等な下級淫魔だったら人生が終わってたな」
「どういう感じで?」
「腹上死というやつで死ぬまでやられる続けるんだ。上級淫魔だとその辺は知能があるから配分をするが、下級淫魔は人の形はしていない魔物だからな、そもそも魔界の言葉言葉以外は通じない。意思疎通ができないまま腹上死だ。呼び出した主の死を持って、契約が切れるからな。それで淫魔は魔界に戻り、人間は腹上死して終わる。事件にすらならないというわけだ」
 そう言うと男はその本を手のひらの上で燃やした。
「お前、これ借り物なんだぞ……どうしてくれる」
「中身が同じでなくてもかまわないだろう? 誰も借りてないもののようだし、表紙と質感、辺り障りのない部分を適当に並べる、ほら本は元通りだ」
 確かにさっきの燃やした本と同じものを男は手のひらで作り上げてから、井岡にそれを返した。
「あーでも、あれ出版されたものだから、一個燃やしても……」
「出版は三十年前、内容は占い程度。大事に取っておいてもらえる内容ではないところを見ると、たまたま図書館にあっただけと考えるのが妥当。他の図書館は私の管轄ではないから、どうなろうとどうでもいい。ただこの近辺に同じ本で呼び出された淫魔が出るのは少々私にとって都合が悪いから排除したまでだ、お前は気にするな」
 そう言うと男は井岡の腹を優しく撫でてから言った。
「今日の飯をもらおうか?」
 井岡は熱くなる腹に乗せられた手を取ってから、ため息交じりに言った。
「防音ばっちりのマンションに引っ越さないか……ここ壁が薄いから」
「気にするな、私が結界を張ってやる。それで防音どころか姿すら見えなくなる……何なら青姦でもしてみるか」
 そう言われても井岡は返事はできなかった。
 もうすでに淫魔の手によって、気分が高まってきてペニスが勃起したほどだ。
「もうどうでもいい、お前の好きにしろ」
「もちろん、そうさせてもらう」
 井岡は呼び出した褐色の淫魔を追い払う方法がすでにないことを知り、共存して生きていくにはどうしたらいいのかと、若干不安であるが、半分は投げ出した。
 どうにかなるだろう、そんな適当な言葉しか今は浮かばなかったのだった。

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