102-ワタツミ

 楽しい旅行になると辻岡は信じて疑っていなかった。
 恋人の庄田とは、大学時代からの恋仲だった。ホモであることを認識していた二人は、カミングアウトをしたわけでもなかったがお互いがそうであることを感じて、飲み会を機に知り合った。
 辻岡はネコで、庄田はタチだった。その立場が明白になった時、二人は寝る仲になった。世の中、こういう関係はまだまだオープンにはできず、隠れ隠れしながらも二人は大学を卒業した。付き合って三年目だった。
 やがて就職をし、働き始めて更に四年が過ぎた。
 そろそろ周りが結婚や彼女ができ始め、話題が段々と増えてくると、辻岡はカミングアウトするかどうか迷った。
 しかし、庄田はそういうことを言ったら終わりだと思っている人間で、絶対にその関係を親友にすら打ち明けることはしなかった。
 そんな日が続いていると、庄田の仕事が忙しくなり、合う時間も減っていく。
 友達の噂では庄田は社長令嬢の猛アタックを受けていて、結婚も間近ではないかと言われていた。このことを聞き返すと、庄田はそんなことがあるわけないだろうと笑って流してしまっていた。
 それから更に一年すると、庄田が旅行に行こうと誘ってきた。
 珍しいことで、この三年ほどそういう機会は訪れなかったから辻岡は嬉しくてはしゃいだ。
 二人っきりのことを気にしなくていいように、人がいない海が見える別荘を借りてくれた。そこで、二人は付き合ってちょうど八年になると祝いをした。
 質素だったがそれでも庄田がケータリングを用意してくれていて、それなりに幸せな祝いだった。
 そして朝になって別荘の近くの崖に朝日を見に行った。
「綺麗だね……」
 上ってくる太陽は、燦々と輝き、希望に満ちているように見えた。
 崖の端で柵に注意して朝日を眺めていると、急に庄田が辻岡の背中を押した。
「……え?」
 あっという間の出来事だった。
 辻岡は庄田に押されてそのまま柵を乗り越え、崖の向こうへと転がり堕ちた。
 その途中の草を掴んで真っ逆さまは免れたが、何が起きたのか辻岡は理解できなかった。
「……くそ、落ちろよ辻岡……お前がいると俺の出世がなくなるんだよ……」
 庄田がまだ落ちていない辻岡に気付いて、石を投げてくる。
「なんでっなんでだよっ庄田!」
 そう叫ぶ辻岡に庄田は言った。
「お前と関係を持ってるのがバレたら、逆玉に支障がでるんだよ。お前絶対喋るだろ! お前が生きていると俺の身が危ないんだ、だから死ね! ここから落ちたら遺体は上がらないって有名なんだよっ」
 そう庄田が見たこともないような目で辻岡を見ている。それは憎くて仕方ないというように本当に邪魔で死んで欲しいと望んでいる顔だった。
 さっきまで優しく微笑んで、サプライズのお祝いまでしてくれたのに、その顔が消えて今は死ねと憎々しげに言ってくる男になっている。
「……噂……本当だったんだ……だったらそう言ってくれたら……別れたのに」
 覚悟はしていた。ホモと言っても世間体ばかり気にする庄田が将来を誓ってくれることはなかったから、いつか別れもあると思っていた。
 庄田が出世のために自分を捨てるなら、愛していても別れた。もう辻岡を好きじゃないという庄田を愛していても愛し返されることがないと分かっているなら、別れたのに。
「嘘吐くんじゃねえ。お前は俺の人生を潰しにくる。前だってカミングアウトしようとして俺の人生メチャクチャにしようとしたじゃないか!」
 庄田が言っているのは付き合っていることを親友たちに話そうと持ちかけた話だ。
 どうやらそのことをずっと根に持っていたらしい。
「違うっ! ずっと一緒にいられるなら、親友たちにも言った方がいいと思っただけだ! 庄田だってそのつもりで俺と付き合っていると思ったから……」
「いや違わない。お前はいつでも俺を脅してきた。お前と関係しているってバレたら、それこそ人生が終わりだ。お前なんかに人生を潰されたたまるか! 死ね!」
 そう言って庄田は大きな石を辻岡に向かって投げてきた。それが辻岡の頭に当たり、辻岡は掴んでいた草から手を離してしまった。
「……あっ……」
 あっという間だった。
 覗き込んでいる庄田の顔がすっと遠くなり、辻岡が次に感じたのは海の冷たさだった。 一気に空気が消え、水圧が辻岡を襲ってくる。海の流れは海岸の岩場に当たった後、猛烈な勢いで海底に吸い込まれていく。
 辻岡は右も左も上も下も分からない状態になり、海底に一気に引きずり込まれた。
 崖の上では、庄田は自分のしたことを思い出し、半狂乱になって崖から去って行った。死んで欲しかったけれど、死ぬところを見たせいで人殺しをしたと自覚してしまったのだ。
 さすがにそこでホッとして笑えるほどの精神は持ってなかったらしい。
 辻岡はすさまじい勢いで海底に引きずり込まれ、水圧で身体がおかしくなりそうだった。息も続くわけもなく、一気にゴボリと吐き出され、海水が辻岡の中に入り込む。
 そうなっても辻岡は自分のせいで、庄田が人殺しになってしまうと慌てた。とにかく明るい方へと身体を動かしていたところ、急に海面に出たかのように波打ち際のようなところに打ち上げられた。
「……くっごほっ……うっごほっ」
 さっきまで海水が入り込んでいた肺が水を吐き、辻岡に空気を齎す。海岸にでも流れ着いたのかと思い、辻岡は目を開けた。
 苦しさが段々取れてきて、息をハッと吐いたら、コポリとそれが水面に消えた。
「……え?」
 辻岡はてっきり海岸に流れ着いたのだと思っていたが、そうではなかった。
 明るい場所は海底の岩場で、そこには何かがいた。はっきりと何かがいると分かるのに、何がいるのか分からない。正体が光を放っていて、姿が見えない。
 海水が消えたと思っていたが、周りは海水がある。
 ただそれでも辻岡は息ができたし、身体も水に馴染んでいる。
 さっきまで溺れていた重さはなく、まるで魚にでもなったかのようだった。
「……これは……もう俺、死んだのかな?」
 不思議なことが起こっているのは、もう自分が死んでしまっていて、天国へ行くのに何かが迎えに来たところだったのかもしれないと思えてきた。
 死ぬのがあっという間だったのは、個人的によかった。あのまま息ができず、苦しいまま更に深い海底に引きずり込まれて水圧で死ぬなんて、恐ろしくて今更身体が震えてきた。
 あまりに可哀想だから神様がそのあたりを省いてくれたのかもしれないと思えてきた。
「……よかった、あまり庄田を恨まないで死ねたみたいで、よかった……」
 思わずホッとした。
 庄田に殺されたのに、辻岡は庄田の心配をしていた。
 すると庄田にぶつけられた岩で打った頭がズキリと痛んだ。
 これはきっと庄田がずっと脅されていると感じて傷ついた分だと辻岡は思った。
 殺さないと辻岡が庄田の将来を潰すと思われていたなんて、正直ショックではあるが、それくらいに何気ない一言で庄田を追い詰めていたのは辻岡だったのかもしれないと、辻岡は考えた。
「……遺体、上がらない方がいいよね……これじゃ殺されたのバレちゃうし……」
 辻岡はふっと自分の行いを振り返った。
 毎日付けている日記を家に置いてきた。庄田とのことも書いてあり、庄田が逆玉で結婚をしようとしている噂があることも日記に書いてしまっている。
 だから遺体があがったら、捜索されて日記も見られてしまう。
 そうすれば庄田が捕まってしまうだろう。日記には今日の予定まで書いてしまっていたからだ。
 遺体がこの近くから上がってしまえば、庄田の行動と照らし合わせて、殺したことが状況証拠で揃ってしまう。
 辻岡と庄田が付き合っていることは、親友たちの誰かが気づいていると辻岡は思っている。それとなく探りを入れられたこともあるし、それでもいいと言った人もいる。庄田は知られるとこの世の終わりみたいな顔をするから、庄田には聞けないけどと言われた。
 だから辻岡が死んで得をするのは庄田だとその人なら気づいてしまう。
「……馬鹿だな。周りはわりと気づいていたのに、秘密にしたってバレてたと思うんだけどな」
 庄田の小心者の部分が何故か今はおかしかった。
 思わず笑ってしまったところで頭の中に声がした。
「殺されそうになったというのに、殺人者の心配をして笑うのか?」
 急に声が聞こえたので、辻岡は驚いたのだが、ふと自分は死んだのだから閻魔様か何かの尋問かなと思い直して答えた。
「……やっぱり情が抜けないんですかね……殺人をするならもっと慎重にしないと駄目じゃんって思ってしまって……これじゃ俺の遺体が上がったら、庄田が犯人だって状況証拠が揃ってるから、それをちょっと間抜けだなと笑ってしまって」
「その状況証拠の日記を処分すれば、少しは疑いは反れるのではないか?」
「あーはい、そうですね。でも俺、日記を毎日書いているんですけど、その旅行中の日記は携帯でWebのサーバーにアップロードして、あとでダウンロードして書き直そうと思ってたので、その辺はパソコン関係とか携帯の履歴とか調べられると一発かな~と。携帯、ここに持ってますし」
 そう言って辻岡は光に向かって携帯を出した。
 水でもちろんアウトであるが、その送信記録はしっかり残っている。それもGPSの記録付きである。
「なるほど、証拠はあちこちから出てくるというわけか。確かに詰めが甘いな。こうやって気まぐれでお前は生きているからな」
 そう光が笑って言う。
「……え? 俺、まだ死んでないんですか?」
「生きている。まだ死んではいない。たまたま私の目に入ったから思わず助けてしまったが、普段なら見殺しにしているところだが、何やら面白そうに思えたのでな」
 そう言って人間の生死に関与する気はなかった姿勢を見せてくる。
 たまたま偶然、この光の前に辻岡が現れたので、思わず助けてしまったらしい。
「……偶然ですか……それで俺はどうなりますか?」
 このまままた放置されて死ぬのか、それとも気まぐれが続いて生かされるのか。
「ふむ、どうしようか。このまま何もせずに返すというのは私の主義に反する。何かの等価値がいるのだが、さて何も持たないお前から何が得られるか……」
 光が何か困っている。
 確かに何も持っていない、今まさに殺されようとしている人から何が貰えるのか。あまつ、死んでも遺体が上がらない方がいいと思っている相手に対してだ。
「俺には、この身体一つしかないんですけど……命だったら、まあ、それも仕方ないかな……」
 きっと神に殺されたなら、遺体は上がらないだろうと考えてのことだったが、光の神はそれを嫌った。
「自ら助けた命をまた取るのは、私の主義に反することだ。さて、その身体一つというなら、その身体、しばし私に預けてみてくれぬか?」
 神がそう言い出した。
「……預ける?」
 一体何をしようというのか。訳が分からず問い返すと、見えている光の中から誰かがやってくる。それが影になり、光の中で人の形に近いものになって光の前に立った。
 神々しい光を纏った、人ではあるが、明らかに人ではない姿。例えば、顔形は人の美しい造形をしているのに、足先や指先に水かきがある。髪の毛は水に舞い上がり、黄金の光を放っているが、その額には黄金の冠をして、片方の手には三つ叉の槍を持っている。
 身長は二メートルほどあるだろうか、それが水に浮かんだままで閉じていた瞳がカッと開くと、その瞳には海があった。うねった波が瞳に映り、それが人ではないと一番感じたことだった。
「人の姿は久しぶりだが、まあこの形でも大丈夫だろう」
 人の姿を普段していないので、変身が上手くできなかったらしいが、それでも美しい造形のあちこちに鱗が見えるので、辻岡はやっと彼が何者なのか理解した。
「海の、神様? 海神様?」
 思わずそう言うと、神は口端をあげて笑った。
「人はワタツミと言う。その海神とやらのことらしい」
 そう言われて、一体何百年前の人が言ったんですかねと辻岡は心の中で突っ込んだ。
 今ならギリシャ神話あたりのポセイドンあたりがメジャーだから、日本人でもワタツミよりはポセイドンあたりを思い浮かべるだろう。
 今の日本人の若者でワタツミを海神とイコールできる人がどれほどいるか疑問だ。
「神様とセックスするの?」
 余りに信じられないことで、辻岡はそう尋ねていた。
 単刀直入の方が問題がこじれないと思ったのでそうした。
「分かりやすくいえばそういうことだ。抵抗はなさそうだが?」
「う、まあ、その、やることは人と変わらないってことですよね……」
「特殊なことをすることはない。さすがに神との交わりで人と違うことをすれば人の身は持たないだろう」
「……ですよね」
 聞かなくても分かるほど、神との交わりを普通に受けたら死ぬらしい。そんな当たり前のことを言いながらも神は近づいてくる。
「怖がることはない。人の身体は久しぶりだが、我が人を抱くのは二千年ぶりだ。大事に抱いてやるぞ」
 神にお墨付きを貰っても、怖いのは変わらない。
 神が近づいてくるが、その大きさに辻岡は神を見上げることになった。
 神は普通のことをすると言ったのが、もう既に普通の状態ではない。背中から触手のようなモノが生えてきて、それが手に変わっている。
「……あの……もう既に人ではない感じなのですが……」
「手が足りぬのでな……そのうちに気にならなくなる」
 そう言ったと同時に、その手が乳首を両方掴み引っ張り上げてくる。
「ひああっ……あっあっ……あん……ん、はぁはぁ」
 乳首を引っ張られるのは好きだからか、すぐに身体に火が付いた。
「あぅっ……ぁ……ああぁーっ……! ひっあ゛っ、あ゛ぁっ……」
 神の触手が様々な場所を犯してくる。あり得ないほどの多くの手が体中を撫で回し、まるで幾人にも人に犯されているかのような錯覚さえする。
「ひっあぁ……、あ゛っ、あっ……あ゛ひっあっらめっ……あっやっあっあっあぁっ」
 アナルには細い触手が貼り込み、中で段々と大きくなってそれがズリズリとうごめき始める。よく分からない液体がアナルの中の触手の滑りをよくして、何本も弄るようにしてアナルに入り込む。
 乳首にも細い糸のような触手が巻き付き、乳首をどんどん締め上げながら先端には吸盤が付いたようなものが張り付いて吸い上げてくる。
「あぁっあひっ……あっあんっあんっ」
 ペニスにも触手が絡まりつき、それが扱きあげるように動きながら、先端はバキューム様なものが吸い付いて、スッポリとペニスを口で扱いているかのように覆い被さってきて、リズム良く吸い上げる。
「ひああっあんっあっそこっ……あっあんっはあぁっ」
 自然と辻岡の身体が浮いていて、神はそれを眺めて様々な触手を用いて辻岡の身体を開いてくる。
「随分と気持ちよさそうだが、なかなかの一品のようだ」
「だって、あっあんっあんっあはぁっきもちっいいっ! ああぁんっ! んっあっあ゛ひっあっ……あっあんっ」
 浮いた身体は神に向かって仰向けで足を広げている状態で、それを神がまじまじと見ているので正直恥ずかしいところだ。二千年ぶりという人間だったら、きっと昔の人間とはきっと今の自分は相当違っているはずだ。
「あぁんっいくっ、いっちゃうっ……あっあぁっあんっきもちいいっんっふっああっ」
 三箇所も同時に攻められたらどうあがいてもすぐに達してしまうのは仕方ないことだ。
「あ゛あぁっもっらめっ……あっあひっあ゛んっ」
 あっさりと辻岡は射精を伴う絶頂をさせられた。
 しかし、神の触手の手は止まらず、更に辻岡を追い上げてくる。
「んんっ……! あぁっあんっらめっ……イったばっかりなのにっ……あぁっあっんっ」
 アナルの触手が段々と大きくなってきて、それが人のペニスの二本分になっている。それでも辻岡の身体は悲鳴を上げず、口からは嬌声を上げている。
「あぁっあっひっあぁんっんっあっいいっ、あぁん」
 神が弄ったという身体の関係だろうか、多少の無理は利きそうな感じで、辻岡は触手で追い上げられる。
「あぁっ あぁんっあっひっそこっあっああんっ」
「人の身体も変わったモノだ。弄ったとはいえ、ここまで持つのは久しぶりかもしれない。私の本体でも耐えられそうなほどだの」
「あっやっ乳首っへんっ……あっいあっあっぁんっ」
 乳首を弄っている触手が乳首に何かを刺した。痛みはなかったが、それが原因で辻岡の身体に異変が起きている。
「あぁあんっ! あっあひっらめっあんあんっ! ちくびっくりくり、あぁっイイっきもちいっあっあぁーっ!」
 乳首が気持ちよくて嬌声をあげると、その乳首から白い液体がビューッと吹き出た。
「んっふあぁっんっちくびっ……あっああっんっいいっ……あっあっ!」
 母乳が出たのだ。普通なら相当何かしないかぎり出ないものだったが、さっき刺した何かが作用したのか、乳が出てしまった。


「ふむ、これは珍しい」
 神にもそれは面白かったらしく、乳首を異様に攻められて乳が何度も出た。
 そのたびにアナルの中にも何かを吐き出され、それが吸収されていく。まるでそれらがすべて乳首から出てくる液体に変わっているかのようである。
「ひああっらめっ、おま○こっあひっ……おかしくなるっあっい゛っあっあっあんっあんっあんっあぁんっ!」
 液体を吐き出されるたびに内壁が広がって、そこを埋めるかのように触手が入り込んできてしまう。もう明らかにアナルの大きさは普通ではない。それなのに、快楽を感じてしまい、どうしようもない。
「あひっああっいくっやぁっ……あ゛っひっああぁんっ!」
 こんなセックスを知ったら、二度と普通のセックスができるわけもない。
 けれど、神とのセックスでしかこういう体験はできない。それが分かっているから辻岡は必死にそれを受け止めた。それが今の辻岡にできることだからだ。
 この身体は神に捧げてしまったものだ。
「あぁあんっイって、イってっあひっ好きっ……、俺、おま○こで、イってるっ……あっあんっあんっああぁんっ」
 絶頂をしているのに、射精をしているのに更にアナルも乳首も犯されて、辻岡は更に射精をして達する。
「あひぃっあっあっまた中で出てるっ……ああっん、ふぁあっ気持ちいいっんふっああんっはぁっ……ん……」
 中で液体が出されて、射精をするたびに液体を足すために出しているとしか思えない。失われる体中の体液がもう既に神の出した液体に変わっているのではないだろうか。そうとしか思えないほど、辻岡は射精を強いられた。
「はぁっ、はぁっ……ん、ふっ……あぁん……っ、はぁ、んんっ」
 さすがに追い上げられて気を失いかけると、神はその手を休めた。それでは面白くないと言わんばかりの行動に、意外に神も楽しんでいるのだろうかと辻岡は思った。
 やっと触手が乳首意外から離れ、手になって体中を撫で回し始めた。
 そして開いたアナルにはとうとう神のペニスが入り込んできた。
「ああぁっ!? ひぃっ、あっやああぁっ! あんっ、はっ……ひぃっ……なにっ、これ、あっ、あっ」
 ただのペニスではない。抉るような凶器である上に、長く大きく人の形ではない。
 ペニスには瘤が沢山付いていて、それが内壁を擦りあげてくるのだ。
「あんっ、んっ、いっちゃうっ、神様のおちんぽ、挿れられただけでいっちゃうっ……っ、はぁっ、あぁんっ!」
 辻岡はそれだけで絶頂をした。もう耐えられたものではなかった。触手のペニスもよかったのだけれど、神のペニスはそれを超えた快楽を与えてくれた。
 天国にいるんじゃないかと思うほどの幸福感にも包まれて、さっきまで恋人に殺されそうになって悲しかったことなど、あっという間に吹き飛んでどうでもよくなってしまった。
 今は神のペニスのことしか頭にない。それくらいに神の存在を感じた。
「やぁっんっ、ぁんっ、はぁあっ……はぁっ、うぅ……」
 絶頂をしているのに、神は遠慮なく辻岡の身体を犯した。
「あああぁっ! やぁっ、イッてるっんっ、あんっやらっだめっイッてるっ!」
 ガクガクする身体を神は平然と押さえつけている。中に入っているペニスは蛇のように自在に蠢き中で何度も射精をしている。
「あんっ、あっあっ、やだぁっ……神様のっおちんぽで犯されているの、ああっだめっ気持ち良すぎるっんああっはあんっ!」
 辻岡が素直に嬌声を上げると、神も満更でもないようで、口の端に笑みを浮かべた。
「随分と可愛いことを言う、我のモノがいいと……いくらでもくれてやろう」
「ひあぁっ! やっ、あぁんっ……だめっこれ以上は……あっ、きもちいいっあんっおま○こ、だめっああんっらめなのっああんっ」
 あり得ないところまで神のペニスで犯される。普通なら腸が裂けているかもしれないほどの深いところまで神のペニスがは挿入されている。それが気持ちいいのだから人との間では絶対に味わえないセックスだ。
「やっ、あっあっ、きもちいいっあんっ、おま○こいったのにぃっ……、はぁ、はぁんっああっんっちくびっお乳でちゃうっああんっ!」
 そう言うと乳首からまた乳が吹き出てしまい、それが止まらない。
「あっ、あぁんっ……も、ちくびっはなしてっ、はぁっ……ふっ、またでちゃうからぁ……お乳でちゃうのっ……ああんっ」
 その乳首を神の口が吸い上げてきて、その舌が蛇のように巻き付いて乳首を引っ張ってくる。舌先の細いものが乳首の先端を何度も舐めあげてきて、辻岡は身体全体で感じた。
「ああーーっ! やぁっ、ちくびすっちゃ、らめぇっ、あっ、あっ、あぁあんっ……」
 駄目だというと神は余計に乳首を吸い上げた。
「いっ、やだぁっ、いくっ、あんっ、ちくびでいっちゃうっ……! あぁっ、あっあっあああんっ!!」
 乳首とアナルを突き上げてくるペニスで絶頂して射精してイクのだが、快楽はそれで終わらない。神の挿入は長かった。
「ああぁ……ふぁっ、あん……んっ……あふっ、んんっやぁあああっ! あっ、あぁっ、だめっ……、そこ、あんっ」
「なかなか、どうして人の中では馴染んでいる方か……ふむ、この程度では気絶もしないとは」
「はぁっ、あふぅっ……、あっあっ、いあぁっ! あぁんっ……ちくび、もっやだぁっ……あっ、あっ」
 神は喋っているのだが、口はしっかりと辻岡の乳首を咥えている。どこから声がしているのか分からないが、神なのでどうにでもなるのだろうと辻岡は思った。
「ひあぁっ、またっ……い、いっちゃうっ、んっ、あぁんっ」
 また辻岡は乳首で絶頂して射精をする。
「ああ゛ぁーっ……やっ、はぁっ、ひぃっ……あんっやあああっ! ひぅっ、あんっ、あんっ、うぅっ、やっ……、おちんぽ、気持ちいいっんっ、あぁっ!」
 今度は乳首を吸われながら、腰を動かされて挿入が激しくなる。神の腰使いは疲れを知らず、どんどん速くなっては緩く奥まで犯してきて、テクニシャンだった。
「あんっ! だめっ、だめっ……おち○ぽしながらちくびっコリコリはっらめっんっ、はぁんっ、んっ、あんっ」
 体中を触手が撫で回し、耳や臍や足先までも舌で舐めているかのように擦りあげてきている。
「ああぅっ、おちんぽだめっだめっ……もう、おま○こっついたらぁっあっ、はああぁんっ……」
 それでも神のペニスだけは格別だった。想像以上の快楽に完全に辻岡は溺れた。
「あぁんっ……いぃっ、あっ、らめっ、あっ、あっあっあっ……ふぁっ、ひぅっ、あんっ」
 もう地上に帰れなくてもいいとさえ思った。このまま神と溶けてしまったらきっと幸せすぎて地獄すら生ぬるいほどだろう。
 こんな幸福を対価としていいのだろうかと思うほどだ。
 神にとっては人の身体は二千年ぶりのことで夢中になっているようだった。
「あっあっああぁっ、やだぁっまた、いっちゃうっ……、いっちゃうっはぁっ、あうぅ……んっんっふあぁっ」
 全部を攻められて辻岡はまた絶頂した。
「あああーっ、いくっ、いくっ……あっあんっあんっあんっああああぁんっ!!」
 乳首もアナルもどこもかしこも気持ちが良い。
 絶頂をしても一向に萎えず、辻岡のペニスは元気に勃起して射精を繰り返している。
「やっああぁっ、らめっ、おま○こはらめっ、あぅっ、あっ、おかしく、なっちゃうからぁっ……あっやあああぁっ」
 神がアナルの中で射精をした。それはあの液体ではなく、別のものだった。
 辻岡はそれが神の精液であることを感じ取った。それが内壁に触れた瞬間、乳首から乳が吹き出して、またペニスが射精をした。
「あっひぁっ、らめっ……あっやぁっあぁんっひゃっあぁんっ! あひっあっあんっあぁっ」
 体中が歓喜に沸いている。その精液を受けたことを幸せだと感じて、体中が作り替えられている。神のものになったのだと辻岡は思った。神の所有物の証に、神は辻岡の中で射精をしたのだ。
「あっあんっ、んっやっ、やらっあんっ……ひっあぁんっ! やっあぁっうれしい、かみさまのせいえき、中出しうれしいっいいっああんっ」
 何故か涙が出るほど嬉しかった。体中が嬉しがっていて、辻岡は幸せで堪らなかった。
「あぁああんっ……やらぁっ、あっぁんっ、あんっひっあっあんっ、またいくっ……はぁっ、せいえきだけでいっちゃうっ……、いっちゃう……かみさま、また中出ししてっんはあんっぁんっあんっ」
 辻岡は腰を振って神の精液を強請った。それが浅ましい好意であることは分かっていたが、二度と貰えないものだから、今だけはもっと欲しかった。
 神はその願いを叶えるかのように、また挿入を繰り返した。
「ああぁっいっちゃうっ、やっあっあひっ、あっぁんっあんっあああんっ!」
 そしてまた中で精液を射精する。何度も何度も出し、それが長く尻から溢れるほど吐き出してきた。
「やっあっあんっきたっ……ひぁっんんっ……神様の精液きたっんんっ!」
 何とかそれを飲み込もうとするも、溢れる量が圧倒的でちっとも吸収されていかない。追いつかないのだ。
「あっひぁんっ……また、はんっ……ぁっあっいいっも、おち○ぽ、きもちいいっ……おま○こ、きもちよくてこわれるっぁあっ、あっあっ、んんっ、いいっ……」
 神はまだ挿入を繰り返し、何度も射精をしながら精液を奥まで擦りつけるように腰を動かし続けた。
「やああぁっ、おま○こっあっあんっあんっ……やめっ、やっあっあっひあぁっ」
 乳首もすっかり乳が出るのが当たり前で、吸われるだけでピューピュー吹き出てしまう。神はそれを吸う。
「やっちくびやらぁっ……あっあんっあんあんっ! あっあんっ……あーっ……やっ、いっちゃうっ……ひっあぁっいっちゃう、もっやぁああんっ!」
 絶頂すると中で何度も神が射精をする。そうして溢れ出た神の精液がどんどん溢れ出ていく。
「あっ……あひっん、ん、んぅっ……あーっいくっあっあんっ神様のおちんぽでいっちゃうっ……! あひっんっやっあんっあんっああぁーっ!」
 最後の方は常にペニスで突かれると絶頂を繰り返し、乳首もペニスも液体を吐き出し続けている。
「あぁんっんっ、やっ……あんっあんっあんっんっいって……あっあぁんっまたいっちゃ、いっちゃうっ……神様にイかされるのっああんっ」
 散々イかされても、絶頂を繰り返しても、辻岡の体力が続く限り神は辻岡を犯し続けた。それは一昼夜続くセックスだったのは後で知ることになる。
「あっ、く、いくっ……! あひっあんっあんあんあぁんっんっあぁーっ!」
 この時はただ神の存在に歓喜して、神から与えられる全てを受け止めて、ただ感じていればよい時間だった。
「あーっ……あっあぁっ……んっやぁっあぁんっ……ああぁっ……あんっああっ、また、おま○こでいっちゃっ……」
 辻岡は何度も達しても気絶はしなかった。
 寧ろもっとして欲しくて、神がペニスを抜くと溢れ出た精液の海に溺れながらでも、辻岡はアナルを自分で広げて神に願った。
「おちんぽ、挿入れてください……いっ、挿入れて……おっきいおち○ぽ、ハメて、突いてほしいですっ……おま○こに、おち○ぽ、奥まで挿入れてっめちゃくちゃにしてほしいっ、ん、あぁあっ!」
 そう言われて神はまたペニスを挿入してセックスを続けた。
 これは神が願ったことだったのか、辻岡が願ったことなのか。もはや区別かつかないほどの長い一晩のセックスだった。
「んっあぁっあぅっ、かみさまのおち○ぽでおま○こゴリゴリされるの気持ちいいっ……あっあひっあ゛んっあっあっんっ!」
 神様の上に跨がって自分で腰を振って神を煽り、神に乳首を吸って貰いながら下から突き上げられて何度も達した。
「ひっあっ、あんっかみさまっいいっ、あぁっおま○こっ、おちんぽハメハメされてっあんっきもちいいっひああっんっ!」
 この姿が醜くてもいい、浅ましくてもいい、もう死んでもいいから、隅々まで神様を感じたかった。
「あんっ!ぁあっ、あっ、あひぃっひあぁっあひっ、あ゛っ、おちんぽいいっ……おま○こ壊れるっあぁっあっイくっいくっいくのっあああああっ!!」
 辻岡は明け方くらいにとうとう絶頂で気絶をした。
 最後は神が苦笑するほどの絶頂で、神が言った。
「確かに受け取った。十分な価値ぞ」
 そう言った声が神様の最後の声だった。
 
 次に辻岡が目覚めた時は、病院のベッドの上だった。
「ああ、よかった、意識が戻ったのね」
 看護師がそう言い、医者を呼んできた。すぐに体中を調べられて問題がないことが報告された。
 どうやら海で海草に包まって、浮かんでいるのを通りがかった漁船が救ってくれたらしい。その海草のお陰で沖に流されずに済んだと漁師が言っていたそうだ。
 どうやら神様はそうして不自然がないように地上に戻してくれたらしい。
 辻岡は警察に事情を聞かれて、崖の上で海を見ていたら足を滑らせて落ちたと言った。これ以上、恋人の庄田のことで煩わしい思いをしたくなかったのでそう言った。
 あれほど好きで、殺されたことも許そうと思うほど思っていた庄田への思いは、微塵も残っていなかった。神様がそれも持って行ってしまったかのようだった。
 身体はどこもおかしくなく、乳首ももちろん捻っても感じはするが乳は出ない。射精も一回すれば賢者タイムになったし、あんなに射精しまくれる身体でもなさそうだった。
 だからあれは特別なことで、まさに神様の仕業だったのだ。
 そう納得して、辻岡は普通に別荘に戻り、置き去りにされたままの自分の旅行鞄などを持って普通に自宅に帰った。
 警察からは気をつけるようにという小言だけ貰い、検査も突破したので病院も退院できて、何の問題もない。
 辻岡はそれまでに溜めていた日記などをすぐに燃やし、Web上に置いていたファイルも消した。
 なんとも思っていない相手の思い出なんていらないのだ。
 そして友人との付き合いも普通にしていると庄田が尋ねてきた。
「なんで、生きてる」
「さあ、起きたら病院だったし、分からないけど、もうどうでもいいよね。庄田のこと、もうどうでもいいし、帰ってくれる?」
 それまでの庄田を好きな態度の辻岡ではなかったからか、庄田が言った。
「きさま、誰だ! 辻岡じゃないな! くそ、俺を脅そうたってそうはいかないぞ! この幽霊が!」
 そう庄田がナイフを取り出して襲ってきた。
 まさかの展開で、辻岡はそのまま庄田に刺されそうになった。
 すると、ガゴンと大きな音が鳴り、逃げ込んだ台所の水道が水を噴き上げている。
 その水が生き物のようにうごめき、蛇になって庄田に襲いかかった。
「我の所有物に、傷を付けようとは、許されるのは一度までぞ」
 その水から声がした。それはあの時の神様の声だった。
 そのまま庄田は水圧で廊下に吐き出され、そこでナイフを握ったまま気を失った。
 ドアが自然と閉まり、鍵がかかると水は収まって水道が止まった。しかし、神の力が強すぎたのか、マンション中の水圧がおかしくなったらしく、人が廊下に出てきて、ナイフを持った庄田を発見して警察に通報した。
 警察が来て、庄田のことを聞かれたので、辻岡は今度は正直に話した。
 別れ話がこじれて殺されそうになったこと。
 そのまま庄田は警察に連れて行かれて、殺人未遂で逮捕された。
 庄田は水が襲ってきたといい、あの辻岡は偽物で幽霊だと何度も叫んでいたそうだが、どう考えても言い訳ですらなく、辻岡と庄田の知り合いたちが二人が付き合っていたことや庄田が最近会社の社長令嬢と結婚する話が出ていたことを証言してくれて、邪魔になった恋人を葬ろうとした殺人未遂事件ということになった。
 さすがに新聞沙汰になってしまったので庄田は何もかもを失ったらしい。
 辻岡もその余波で仕事を失ったが、気を遣った友人たちが辻岡の仕事を探してくれた。
 マンションも水道管が破裂という事態で、直るまでは退所するようにと言われて結局周りの目が気になるのでそれを理由にして引っ越した。

 何もかもが変わってしまったが、辻岡は平気だった。
 だって、神はちゃんと見ていた。ちゃんと所有物だと言ってくれた。
 それだけで、辻岡には生きている意味ができた。
 だから、海の見える場所に引っ越し、仕事も海洋生物を研究する研究機関に就職し直した。そこからは上手く人生が回り始めた。

 辻岡の海の見える家には、たまに海から神様がやってくる。
 その時は海が大荒れで誰も辻岡の自宅には近寄ることができない天候になる。
 そして今日もまた大嵐だ。
「やあ、神様、いらっしゃい。待ってたんだ」
 そう言う辻岡は全裸で波の前に立っている。
 それを波が優しく攫っていくのだった。

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