055-嵐が来る
1
「動いて……っ、あぁっ、もっと、動いてください……っ」
囁くような声が聞こえた。
高口は、トイレに篭もって三十分。下痢だった。
今日は休日で、映画に行こうとしていた。電車に乗り、目的地まで移動する途中で、急に腹の具合が悪くなった。映画館まで我慢できず、結局目的地ではない駅で降り、トイレに駆け込んだ。
そのトイレでやっと下ったお腹が治まり、ホッとして持っていた水を飲んだところだった。
二、三度流しておいたトイレであるから、いざ流そうとした瞬間にそんな声が聞こえてきたのだ。
トイレの隣に入ってきたのは、さっきである。人が全然来ないトイレでラッキーだったと思ったのだが、どうやら理由があったようである。
「どうやら隣はドアが閉まってるだけで、誰もいないようだな」
男がホッとしたように言っている。
高口は今更、入ってますとは言えず息を殺した。
(こんなところで……って、まさか)
物音を立てないようにして座っていると、隣に入っている二人が何をしているのか分かってきた。
(セックスしてんじゃねーよ!)
「月本くん、中、とっろっとろ。跨がって自分で腰振ってるだけじゃ、物足りなくなったのかな?」
男がゲスな声でそう言っている。
それにしても相手の名前を言ってしまうのは、ちょっとうっかりではないだろうかと高口は思う。
ふっと隣を見ると、隣の壁の中央に何か紙が貼ってある。なんだこれはと高口は座ったままそれを剥がした。
すると、そこにはのぞき穴があるではないか。
(マジで? 男の個室にのぞき穴を作るんだ?)
女子トイレなら痴漢が開けた穴があると納得できるが、男の個室ではあまり意味がないと思えてならない。
(というか、今、月本くんって、くんって……男?)
男同士が隣でセックスしてるのかと、高口は溜息が出そうだった。
世の中、自分が知らないことが多いモノだが、男が男とやっているところをネットの動画以外で見たことも聞いたこともなかった。
しかし隣のトイレの個室でそれが行われているというのである。
「もっと動いて、もっとおちんぽっでっ突いて……っ!掻きまわしてえぇ……!あぁっ、もっ、おかしくなるぅ……!」
パンパンと腰を打ち付ける音が響いて、月本の嬌声が更に大きくなる。
ここのトイレは入り組んでいて、見付けづらいところにある。正直、急いでないなら、駅の出口近くにあるトイレに行く方がいいとさえ言われていて、高口もいつもはそこを使っていた。
今日は出口まで間に合いそうにないために、ここを使っているが、噂で使う必要がないならやめておけと言われた話を思い出した。
「きもちいいっ……あぁあっ……いい、おちんぽっいいっ……あはっきもちいいからぁ……!」
どうやらトイレでセックスをしている人が多いので、ここのトイレを使うとそっちの趣味があると思われるのであろう。
たまたま高口は誰もいない時間に入り込んだので、大丈夫だったが、もしかしたら誰かに勘違いされていたかもしれないかった。
(やべえ、早く出たいのに、出るに出られねぇ……)
隣の個室がガタガタと音を立ててセックスを楽しんでいる。
(しかし……セックスしてる子、気持ちよさそうに喘ぐなぁ……可愛い声だし)
高口は声が好みである男同士のセックスで言うと、ネコの子のことが気になって仕方なくなってきた。
まだ便器に座って、パンツを下ろしているので、その自分のペニスが若干、ネコの子である月本の声に反応しているのが悔しいかなというところだ。
(俺も節操ないなぁ……あ、でも月本くん、見てみたいな。もしかしたら、好みから外れてたら、これも一瞬で萎えるだろうし)
高口は様々な言い訳を思いながら、のぞき穴を覗いていた。
見えたのは、月本という男の顔と胸辺りまでであった。ちょっとだけ向を変えて覗き込むと月本の腰辺りが見えて、男が腰を打ち付けているのが見えた。
(うわー……好みだ。月本くん。アイドルみたいな顔して、売春かあ。でもエッチ好きそうでいいな。いろんな男に突っ込まれて、アンアン言ってるんだろうなあ)
高口は淫乱な子が好きである。積極的に性に開放的な方が、エッチも重いモノにならないからだ。だからなのか女性とのセックスには消極的で、彼女もまだいない。
「はぁんっ! あんっあんっいいよぉ……おっぁあうっおちんぽっ凄……あーっあぁあーっ!」
そう言って月本が舌なめずりをしている。
ゆっくりと躰がドアに押しつけられ、男の腰が段々と打ち付ける速度を上げていく。
(すげっ、アナルにペニスが刺さってる……ああ、腰振っててエロいな月本くん)
見ているだけで、既に高口のペニスは完全に勃起していて、擦る手も速くなっている。先走りが手に付いて、それが滑りを良くしてしまい、さらには突き上げられる月本に自分が挿入しているかのように錯覚を覚えて、高口はペニスを扱いた。
「お尻いい……っ、いいっ……あぁっ……おちんぽっ気持ちよすぎて、おちんぽでっ気持ちよすぎて、いっちゃううぅっ……!!」
月本がそう叫んで絶頂をすると、男が呻いた。それに合わせたように高口も射精をしてしまい、ペニスから精液がドアまで飛んだ。
そこで高口はのぞき穴から目を離した。
「よかったぜ、月本くん……」
「……そう、おじさんもよかったよ。じゃ、五万ね?」
「月本くん、高くない?」
「青姦とか、こういう公衆トイレとか、リスクが高いんだよね。文句あるなら、ホテル代だして、三万で俺を買ってね? まあこういうことしてくれる子が他にいるなら、他の子に三万でお願いしてみれば?」
月本はいきなり値切り始めたおじさんに、値切るというルール違反はそれなりにデメリットがあることを伝える。
「俺がおじさんにレイプされたって、ここからでていって騒いだら、おじさんの方の人生が終わるんだけど、人生が終わっても売春代をチャラにする? それとも五万払う?」
「……え……う」
「まあ、俺のことで不起訴になっても、この辺の情報網は凄いから、おじさんは二度とこの辺では売春の子、買えなくなるし、下手したらヤクザにも目を付けられて大変かもね」
月本がそう言いだし、おじさんはお金を出したらしい。
「毎度あり~。あとさ、おじさん、やった後に値切るのやめておいた方がいいよ。俺だからこうやって忠告してるけど、ヤクザが囲ってる子だったら、おじさん明日には東京湾に浮いているか、破産まで追い詰められるよ?」
「あ……ああ、そうだな……じゃ、じゃあ俺はこれで」
「さよなら、おじさん」
隣のトイレのドアが開いて、おじさんがバタバタと出て行く音が暫く響いていた。
すると、高口の入っているドアが外からノックされた。
「覗きのお兄さん、鍵開けて」
「……はい……」
(バレてたのか……くそう、ヤクザに殺されたくはないぞ……)
高口はペニスを出したままで、ドアを開ける羽目になった。
月本は、ズボンを片手に下半身は露出したままで、トイレに入ってきてドアを閉めた。
月本はそんな高口を見て、ニヤリと微笑んだ。
2
「あ、あの……すみません……」
とりあえず高口は、覗きをしてオナニーをしたことを謝ったのだが、月本は、のぞき穴を見付けてそこから向こうを覗いている。
「へえ、結構見えるもんだね。これ、トイレセックス見るために開けられたやつだね。ネコだけ見えるようにってこと見たいだけど、お兄さん、ちゃんと見えた?」
のぞき穴を覗いていた月本が、高口の方を振り返って尋ねる。
「俺で抜いた?」
「え! あっはいっ!」
月本の問いに、高口は勢いよく答える。
その潔さに月本は笑う。
「ふっ……それはありがとう。じゃあ、ちょっと俺を試してみない?」
月本はそう言って、高口に跨がる。
「え……あっちょっと……おれはっ」
そう言って月本の二の腕を掴んで引きはがそうとするも、高口の萎えたペニスの上で月本が腰を振り、ペニスに刺激を与えてきて、高口は混乱する。
「ほら、ほらっお兄さん……っ」
「ちょっと……待ってっうわっああっ」
高口は月本のお尻でペニスを扱かれて、他人にされたことがなかったが、さっきまで腰を振っていた月本の色っぽい腰使いに、すっかりペニスが復活してしまう。
「あっ、はあっ、はあっ、お兄さんのおちんぽっ起ってる……あはっおしりっきもちいい……っきもちぃ……」
「うえっあっ……くそっ」
月本の尻で擦られるペニスが、すっかり勃起しきり、それが更に月本の尻にしっかりと挟まるようになってしまい、高口はとうとう開き直って、月本の躰を支えた。
「お兄さん、乗り気になったね……はっいいおちんぽしてるっあっああっ、あっあっ、あぁっ、あぁあっ!」
「くっそっ」
「最近、おじさんおちんぽばっかりで……っああっんっお兄さんくらいの人って久々なんだ……っはふっ……はっ……ぁ、あひぃ……っ、ひ、ん」
高口はすっかり乗せられ、月本の腰を掴んで自分からペニスを月本の尻の割れ目に擦りつけた。
「あはっお兄さん、いい動きっあっ、はあっ、はあっ、お兄さん、俺の乳首も吸ってみない? さっきのおじさんは触ってもくれなかったんだっ……ああっいいきもち……っきもちぃ……っ!」
目の前で上に来ていた服を捲り上げ、勃起した乳首を見せられ、高口は素直にその乳首に唇を近付け吸い付いた。
「あーっいいっあっあんっちくびっいいっ……あひっんっおにいさんの舌っいいっあんっあんっ吸ってっああぁーっ!」
ちゅーちゅーっと吸いながら、舌で乳首を舐めながらも、腰を擦りつけるのが止まらない高口。胸を突き出して感じるままに揺らめく月本。
その月本は、何度も繰り返した。
「はぁっ、いいっもっと強く吸ってっ噛んでっ……あっあぁああんっ!」
気持ち良くなってきた月本は、更に高口に言う。
「お兄さんのっおちんぽっ俺の中に……ちょうだいっおちんぽっ食べてみたいっああっ」
「え……本当に? でもお金ないから……っ」
高口はそう言ったが、月本は言う。
「俺がお兄さんに払うから、このおちんぽっ入れてっ……ああっんっ!」
「……じゃあ、自分で……腰下ろして入れて?」
高口はやり方が少し分からないので、月本がしたいようにすればいいと言った。
月本は目を輝かせ、すぐに立ち上がり、高口の先走りまみれのペニスを掴んで、アナルに導く。
「あはっ……ぁ、あつくて、硬いの、んぁっ……いいっはいってく……おっきいおちんぽっはいって……きもちぃ……あっ、あぁんっ!」
「くっふっ……ああっ……なか……すごいきもちいぃっ」
月本は高口のペニスをアナルに入れ、そのまま高口の膝に座った。
そしてそのまま、高口のペニスをアナルで咥えたままで、腰を揺すっていく。
「あぁんっあっあんっあんあんあんあんあんっ……お兄さんのおちんぽっおおきすぎって……ああっいいっ」
「……あなたの中、すごく気持ちいいです……っ 動かして、いいですか?」
高口は緩く揺すられるだけでは満足できず、月本も腰を掴んで、思いっきり中に入り込みたい気分になった。
「いいよっお兄さんのっおちんぽでっ俺を好きにっ犯してっひぃぁあああ――――――っ!」
月本が言い終わると同時に、高口は月本の腰を掴んで思いっきり、ペニスを突き上げた。
「あ゛ああっ……あひっ、いっあっあんっぁうっ、あっあっああっ」
想像外に強い腰つきに、月本は嬌声を上げた。
「あーっ、あぁっあっあっあんっ……ごりごりしてるっ……はぁっ、お兄さんのおちぽっ凄いっあああっん……いぃあんっ」
パンパンパンと肌がぶつかる音が響いて、月本の嬌声もトイレの外まで聞こえているのではないかと思えるほど大きく聞こえた。
けれど二人は気にした様子などなく、セックスに興じた。
「ひあぁっ、イきたいっ、お兄さんのおちんぽからっ精液っちょうだいっ……あっあっひああぁんっ」
月本がまだ少し余裕がある顔をして、煽ってくるので高口は目の前にある月本の乳首に吸い付き、舌を這わせて吸った。
「あああぁっ……ちくびっらめぇっ、あんっ出てるっ、ちくびっひぃあっあひっあ゛あぁあっ」
高口は乳首に噛みついたままで、腰を強く振っていたが、それでは足りなくなってきた。
「ああぁっ……ひあっ……あっ、乳首おかしくなっちゃったからぁっ……あっあぁんっ」
月本は首を振って、いやだというように逃げようとするのだが、それを高口はしっかりと抱きかかえてから、立ち上がった。
「ああぁんっ! いぃっ……うぁっあっ、あぁーっ!」
高口は月本の太ももと広げて持ち、ドアに押しつけてから挿入を更に速めた。
「ああっ、んっ、あっ、あっ、ふあっ、あんっ……はぁっ、んっああぁっだめっそれっあああっああああっ!」
力強く擦られて、月本は達してしまう。
しかし高口は止まってはくれない。射精をしながらもまだ硬いペニスで犯してくる。
「あ゛あ゛あんっひっいってるっ、いってからっ……あ゛あっもっだめぇっあっあんあんあ゛ああっ!」
月本は高口の服の上に精液を吐き出しながらも、まだ突かれてしまうため、ペニスから精液がピュッピュッと溢れ出てくる。
「ああぁんっ! んゃあぁっ、あっやあっ、あんっ、あぁっ」
おじさんたちよりも激しい動きと、勃起してガチガチになったペニスで犯されて、月本はそれまで味わったことがない、ペニスの味にすっかり狂っていた。
「あぁっやぁっ、ケツま○こハメハメされてっ、お兄さんのっおちんぽでっずぼずぼされて、頭っ変になっちゃうっあっあっあんっ」
「うっ……ギチギチに締め付けてきて。凄い月本さん、どれだけおちんぽ咥え込みたいんだよ……っ」
高口は今度は、月本を抱えたままで便器に蓋をして、そこに月本を横たえると、上から月本を深く深く犯した。
「あ゛あ゛ひっあ゛っまって、らめっあ゛っあ゛っあっあんあんあんっ」
月本はアナルを若い男に犯されて、完全におかしくなったように嬌声を上げた。
高口はそれにも煽られて、月本を深く犯した。
先に高口が出した精液を掻き出しながら、深々とペニスの挿入を繰り返し、ブジャブジャと水音を立てながら、激しく穿ち続ける。
月本は頭を振りながら叫んだ。
「あひっあ゛っもっいくっいっちゃうっあっあっあっあぁあ――――――っ!」
「うぐっっ!!」
二人は同時に達した。
月本は精液を受け止めて、すっかり意識を飛ばしていたが、高口がほっと息を吐いた時に、ドアがノックされた。
「……ごほん、お客様……申し訳ありませんが、駅員です。片付けたら出てきてもらえますかね?」
どうやら声は外まで漏れていて、駅員に通報されていたらしい。
「は、はい
その後、月本も気付いて、後始末をしてトイレから出ると、駅員に部屋まで連れて行かれ、二人はこっぴどく説教をされた。
あそこでセックスをする人間が後を絶たないため、使用禁止にしていたのだという。しかし、トイレに入った時はそんなものはなかったので、誰かが勝手に片付けたのだろう。
とにかく、警察に通報するほどでもないので、厳重注意で二人は解放された。
「あは、怒られちゃったね」
月本はそう言って、反省の色なく笑っているが、高口の手を引いて言った。
「続き、どっかのホテルにいかない?」
その月本の言葉に高口は言った。
「売春、やめてくれたら付き合いますけど?」
さすがに売春男とこれ以上親しくはなれないと思ったのだが、月本はそんなことかとばかりにあっさりと答えた。
「君に飽きるまでは止めることにするよ」
そう言って、高口の股間をいらやしい手つきで撫でた。
「……覚悟しておいてくださいよ。俺、割としつこいですよ」
「望むところだ」
二人はそう言って意気投合して、その後ホテルに入った。
相性は良かったのか、月本はそれ以降売春は止め、普通に大学に通い、高口とは週末に寝る関係になった。
人はそれを付き合っている関係だと言うが、高口はどうなんだろうかと思い、月本は付き合ってはいないと言う。
けれど週末の恋人状態はいつまでも続き、そのうち二人は同棲を始めたのだった。
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