051-リアル

1

 内原は、最近寝ることが不安だった。
 はっきりとした現象が起き始めたのは、一ヶ月前のことだろうか。
 寝ている時に見る夢。それが問題だった。
 起きた時は特に何でもないことなのだが、その夢は、とても酷かった。
 夢は覚えていないことの方が多く、気にしたこともなかった。
 けれど、今回の夢は、何があったのか隅々まで覚えているということだ。

 眠りに入ると、すぐに夢だと分かる場面になる。
 周りは黒の箱のような場所。右も左も上も下も真っ黒。何処まで行っても壁はないから、明確には無限空間かもしれない。
 実際、何度か走ったことはあるが、壁などに到達する前に力尽きた。
 とにかく同じところにいるのは嫌で毎回逃げていたが、最近はそれも無駄だと覚えた。
 この空間は、どこまでも繋がっているのだ。
 ハッとすると、遠くから人がやってくる。それも十人はいる。
 全員がマッチョで一糸まとわぬ姿をしている。
 それが内原を追ってくるのだ。
 どんなに逃げても内原はすぐに追いつかれ、彼らに床とも言えない場所に押し倒される。
「いやだっ! もういやだっ!」
 夢なのだから、何をされてもダメージはリアルではない。
 そんなことは分かっているが、精神的なダメージは段々と溜まっていく。
 なぜこんな夢を見ているのかも解らず、寝ている時は寝る位置を変えたりもした。寝ないでいればいいなどと考えたこともあった。
 けれど、いつの間にか寝ている。
 友人の家に避難をしたこともあったが、それでも夢は追ってきた。
 もしかして自分はこんなことを望んでいるのかと、一瞬でも自分を疑ったが、冗談ではなかった。こんなこと許されるはずもなかったし、リスクが高すぎる。
 なんで、こんな顔すら真っ黒で、誰かも分からない男達に、よってたかって犯されなければならないのか。
「も……いやだ……やめてくれ……」
 内原は逃げようとして、後ろに下がると、いつの間にか後ろに人が立っている。
「あ……や……だっ!」
 後ろに立っていた男が内原の躰を捕まえ、立ったままで内原の乳首を片方の手で捏ね始め、片方の手でペニスを扱き始めた。
「あー……っ、あは……あっ……あっ……あう……」
 もう既に覚えた快楽は、乳首を捻り上げられただけで、背筋をゾッとした感覚が走るほどだ。
 他の男達が近寄ってきて、内原の躰に手を伸ばしてくる。
「やだ、や……っいや……ぁううっ、く、あぁっ……!」
 もう片方の乳首を誰かが摘まみ、舌を這わせてくる。両足が上げられて、後ろからアナルに指が入り込んだり、舌が襞を舐めてくる。他の手が太ももや躰を撫で回し、足の先まで舌が這って回っている感覚がする。
「うああぁ……っ!ああっ、ひ……ゃあ……あっ、あっ、あ……っ!」
 全身を舌で舐められ、それが気持ちがよくなってしまい、内原は段々と抵抗する意志を奪っていく。
 扱かれていたペニスを誰かが咥えてきた。腰が抜けそうな感覚が一気に内原を襲い、内原は嬌声を上げた。
「やだっ、あぁ……っ、ちが、そんな……っ、だめぇ……!やだ、ぁ、あ、ああっ」
 乳首を両方舐められ、脇や腕、指先や足先まで男達に舌で舐められているのに、ペニスやアナルにまで舌が這い回っている。
内原の中での理性は、もうこの段階で壊れてしまうようになっていた。
「ふぁあっ! あぁんっ乳首っ、ちくびさわってぇっ、んぅっ、いっぱいこりこりってして、舐めて吸ってぇあああんっ……おちんぽっきもちぃいっ!」
嬌声を上げて卑猥な言葉を口にするのは、楽になるためだ。
 こうやって卑猥な言葉を言っていると、駄目なことをしている自分の羞恥心が何故か消えていくようになった。どうせここには自分をセックスしてくる男しかいない。
 しかもこれは夢だ。
 現実ではない。
 なら、羽目を外したとしても誰も迷惑を被らない。
 自分だって現実では何の被害も受けない。ただの夢なのだ。
それなら、楽しんだ方が利口だという考えにいつも至ってしまうのだ。
「ああああぁんっ! ひぃあぁっ、らめえっええぇ、もうやらぁっちゅうちゅうしないれぇえああんっ!!」
 躰中を舐められ、内原は絶頂を迎えた。
 全身を震わせて絶頂すると、内原は男の一人にアナルにペニスを挿入される。
「ひあぁああっ、ああぁっ、だめえっ、いってぅの、おれっいってぅからぁっ、もっ、おちんぽでっゴリゴリってしちゃだめっあああぁっ」
 そのまま男と一緒に床に寝転がり仰向けにされたままにされる。
 すると、男たちの大きなペニスがすーっと目の前にたくさん現れ、そのペニスで乳首を捏ねられ、脇にペニスを挟んで扱かれ、手や膝なども内側にペニスを挟まれて、全身をペニスで触れる。
 そのうちの一人が、内原の口にペニスを突っ込み、腰を振り始める。
「んっ、ふっぅ、んぅ……ん"っんっんんんっ!!」
 男達のペニスは、内原の口の中では二十回ほど扱くと、すぐに精液を吐き出してくる。
「ぅんっ! ふぁんっ、ぷはっんっ、んぅっ、ん"んんーっ!」
しかし、次から次へと口の中にペニスを突っ込み扱いては射精をしていく。
「んふぅっ、うっ、くふ、う、うう……っ」
 アナルに入ったペニスには、五十回ほど扱くと大量の精液を吐き出して出て行くが、すぐに次のペニスはまた同じことを繰り返す。
「あああっ、やらぁっ、なんでっ、あっ、ひぁんっ」
 ペニスでアナルを突かれると、どうしようもなく気持ちが良かった。すぐさま内原は絶頂をするが、すぐに躰がビクビクと跳ねながら、また勃起をしてしまう。
「あああぁっ、やらっ、おれ、いってぅ、いってぅよおっ、あんっ、そこ、ぐりぐりってぇっ!」
内原のペニスには何個もローターが付けられ、何かで固定される。それが同時に起動して、内原は絶頂をすぐに迎えたあと、放尿をする。
「ひああああっ!? あぁっ、あんっ、ひぃあっ!」
 絶頂しながらも男達のペニスは止まらず動き回り、乱暴に内原の躰を突き上げてくる。
「ああぁんっ、あんっ、んはっ、はふぅっ、いいっ、いいのぉっ、おちんぽぉっ、いいのっもっとぉっおちんぽっちょうだいっ、んあああぁっ!」
 自分で躰を揺すり、男のペニスを咥えた腰を上げ下げして、自らそれを受け入れる。
「やあああぁっ! やぁっらめ、ちくびぃっ、あぁんっ、ふぁああっ」
躰を激しく揺すっているのに、器用に誰かが乳首を吸ってくる。夢だからか、男の口だけが乳首に張り付いているとしか思えない現象である。
「っんは……あぁっ!やっ、だめ、それだめ……っ、やあぁっああぁあっ!」
 ペニスにはローター数個、それが振動しながら、内原は絶頂を迎え、精液を撒き散らすように吐きだし、それでもなお腰を振った。
 ペニスは断続的に精液を吐き出している。
 頭の中は真っ白で、もう条件反射で腰を振っているだけになっている。
「ひああっそこっあひっ……おかしくなるっあっい゛っあっあっあんっあんっあんっあぁんっ!」
アナルに入っているペニスが二本になった。
 広がらないと思っているアナルが広げられて、二本目のペニスを受け入れると、そのペニスが奥まで突き上げてくる。
 もう腰を振るなんて余裕はなく、男達に躰を揺すられて、何度も絶頂を迎える。
 男達も精液を吐き出すと、次のペニスが容赦なく奥を突き上げてきて、内原の躰を貪っている。
「ああああっ! ああんっ、おちんぽっすきっ! いいっいいよぉっああっ……ちくびぃっあああんっ……おっきいおちんぽがぁ、おれのなか、んぁっああんっ!」

「やああああぁ! れちゃうっ、またれちゃうのぉっひぃあっ、あんっ、ぁんっ、あぁっいくぅっいくっあああああっ!!」
内原の絶頂に合わせて男達も一斉に精を吐き出す。
 それが内原の躰中に精液を浴びさせて、内原はそれを受けながら、また絶頂をした。
「ぁっ……はぁん、んっ、んっ……」
 そして目を開ける瞬間、やってくる唯一顔が分かる男が来る。


2

「内原」
 そう言ったのは、同じ大学の高浪(たかなみ)という男。
 大学ではゼミなど一緒であったが、そこまで面識があるわけではない。高浪は大学までアメフトをやっていたが、最近肩を痛めたのでやめたという。躰はアメフトのために鍛えていたくせで、未だに筋肉隆々としている。
 大学でも図書館通いで、運動なんてモノとは無縁だった内原とは圧倒的に躰の厚みが違う。
 どうして夢の中に、その高浪が出てくるのか、内原には理解ができないままである。
 その高浪がやってくると、散々内原を犯していた男達がフッと消え、高浪が内原の前に座る。
「内原、どうして欲しい?」
 高浪はいつもそう聞く。ただ優しく笑って、内原が答えるまで待っている。
 最初の時から変わっていない。ずっと高浪は同じ質問をしてくるだけだ。
 内原は、いつも違う答えを用意していた。
 高浪を汚すような気がして、言いたいことは飲み込んできた。
 でも一ヶ月間もあの男達に夢の中とはいえ、犯されまくったことで、思考回路はショートして、とうとう一週間前から望んできた言葉をその日は吐いた。
「……あ……ん……ぉれ……をっ……犯してっ!」
「犯せばいいの? このおちんぽで?」
 そう言った高浪は、いつの間にか裸になっている。
 大きなペニスを内原に見せつけるようにしてくる。
「はっあっ……おおきい……すごい……ああっそのおちんぽでっおれをっ犯してくださいっ」
そうはっきりと言うと、高浪がクスリと笑って、ペニスをアナルに宛がい、一気に内原の中に入り込んできた。
「ひっあっぁあっぁひぃっあっ……もっやぁっあっひぁあっ」
 散々、男達を受け入れた後なのに、高浪のペニスはギチギチとキツく内原の中に入り、奥まで広げてくる。
「やぁあっ……やっ! あっあっあぁうっひぁっぁあん!」
 一気に奥まで入った高浪は、内原の全身を揺らして腰を使い穿ち始めた。
「ひぃっああああぁー! やっあぁっ、おちんぽっあんっ、ふぁっ、ん……おちんぽっすごいっはあんっ!」
 高浪のペニスをすっかり気に入った内原は、薄ら目を開けて、高浪がじっくりと内原を見ているのに気付いた。
「あぁんっ……やぁっ、見ないれぇっ、んっふ、ぁんっあっあっんっああっ!」
「すごいよ……内原……君がこんなに淫乱だったなんて……んんっああ、素晴らしいよ……君をずっと見ていたんだ、俺のところまで堕ちてくるのを……」
 そういう高浪が酷くリアルで、内原はハッと目を醒ます。 すると夢の中の真っ暗な空間は一気に消え、自宅の中の見慣れた空間の暗闇に変わる。暗闇とはいえ、月明かりなどが反射して、自分の家だと分かる明るさだったから、そう思ったのだ。
 夢の続き――――――。
 あの夢に続きがあったのだと、内原は初めて知った。一ヶ月経ってやっと夢が進んだのだ。
「ああああーっ! やらぁっ、らめっ、はっふぅっ……あっ、ああぁっ」
 はあはあと内原の息遣いと高浪の息遣いが交ざり、とても五月蠅く聞こえる。その上に自分の喘ぎ声が、さらに五月蠅いほどだった。
「ひぁっ……おっ……おちんぽぉっ……おれの、ケツま○んにっ入ってぇっ奥までいっぱい突いてっるっ、おちんぽっすきっいいっんっあああああっ!!」
「内原……ああいってしまいそうだ……内原っ」
「中でっあぁっ……おれの……なかでっあっひっあぁんっんっあっいってっ、あぁんあぁあっ!」
「なかでっいくっ内原っんんっ!!」
 高浪が内原の中で達した。
 その中に打ち付ける精液を感じて、内原は絶頂を迎えた。
「あーっ来る、来るっ来る来るぅうう! ひぁっ……出ちゃ、あーっ! あっあっあっぁああああああぁ――っ!!」
 高浪から与えられる快楽が、酷くリアルで、内原は達した後に、ハッとした。
「……え? ……あれ?」
 そんな戸惑いを見せる内原を余所に、倒れ込むように高浪が内原に抱きついた。
「すごいよ、内原……なんてエロいんだ」
「……え? ……え?」
「……どうした、内原?」
 夢が終わらない。
 内原は、ゆっくりと高浪を押しのけて起きた。
 どこからが夢でリアルだったのか分からないが、高浪とセックスをしたのは事実だったらしい。
 それに気付いた内原は高浪に聞いた。
「どこから……?」
 どこからがリアルだったのか、と尋ねたのだが、高浪は違う意味で答えた。
「ほら、昨日ゼミのノートを写させてくれてたじゃん。そしたら、内原が寝たと思ったら、突然俺を誘ってきて……それで……こんなことに」
 どうやら寝ていた間に夢と現実がリンクして、本物の高浪と寝てしまったらしい。
 つまり初めてのリアルのセックスを高浪に捧げたわけだ。夢の続きと同じと思い勘違いをしてだ。
「大丈夫、俺、責任、取るから」
 高浪が混乱している内原を抱きしめて言った。
「責任って……?」
「まずは……内原、俺、ずっとお前のこと好きだったんだ。だから、その、こういうのでも嬉しかった。責任取るつもりでセックスしたから、だから」
 高浪は急にそう言い出した。
「いや、その……別にそういうのは……いい」
 内原は更に混乱した。
 そもそもの問題で、内原は高浪とは寝たが、現実問題として高浪に対して何の感情も持っていないという、最大にして重大な問題がある。
「駄目だよ、俺、絶対に内原のこと諦めないから」
 高浪は内原にそう言うと、内原の肩を押してベッドに押しつけると、内原の足を広げて、またペニスを挿入した。
「えぇっ……ぁんっ、んっ、あぅっんんんっ」
「おちんぽ、大好きな内原は躰だけの関係がいいのかもしれないけど、その条件も満たした上で、心も頂戴っ!」
「ひぃっああああぁー! やっあぁっ、あんっ、ふぁっ、ん……はあんっ!」
 高浪のペニスを受け入れて、内原はまた思考を遮断される。ペニスの感触は、夢の中のものと変わらない。
「やだぁあっ、もっ、やっ……らめぇっあん、あんっぁあああぁんっ」
 高浪が腰を穿ち始めて、内原は嬌声を上げながら、高浪の告白を受け止めなければならなくなった。
「ああああぁんっ! ああぁっ、あんっあんっ、あぁっ、だめえええぇっ」
「このおちんぽから、好きになって……相性はいいんだから、俺で満足してっ!」
「あぁっあんっ! あっあひっらめっあんあんっ! ちくびっくりくり、あぁっいいっ……きもちいぃっ……あっあぁーっ!」
内原は高浪の夢ではない本物のペニスで、現実に翻弄され、中で感じて絶頂を迎えた。
「あひっああっ高浪のおちんぽでっいくっあぁっ……おちんぽっ好きぃいいあ゛っひっああぁんっ!」
 内原が絶頂をしても、高浪はまだ達していない。
「まだっ俺がイッてないからねっ……内原っ」
「あああぁんっ、すごいっ……いいっ! あっ、ぁんっ、ふあぁっ、俺、いってるのぉっ! せいえきでてるのっいいっ……ひぃいっあああぁあっ!!」
絶頂をしているのに、高浪がまだ腰を振っているので、快楽が鋭く突き刺さってくる。
 高浪一人に翻弄され、内原はまた絶頂をした。
 高浪は、アナルからペニスを抜くと、内原の口の中にペニスを突っ込んでから射精をした。
「んんっ! んっ、んっ、んぅっ、んんーっ!」
 高浪のペニスから精液が吐き出され、内原はそれを無意識のうちに飲み干していた。
「んっ、ふっぅ、んぅ……」
「ああ、内原……このエロいケツま○こ……見せてくれ……はぁはぁ」
 高浪は興奮しきって、内原のアナルを指で広げ、中から出てくる自分の精液を見て、また興奮している。
「ずっと、夢で内原を犯してきたけど、やっぱりリアルが一番いい……ああ、内原……素敵だ」
 確かに夢の中のことをリアルのように感じていたが、夢じゃない今の方が絶対に気持ちがいい。夢では射精はしなかったし、されなかった。
 でも今はリアルに高浪のペニスが襲ってくる。
 内原はゴクリと喉を鳴らし、高浪に言った。
「たくさん、犯して……もっともっとおちんぽで……俺を犯して……ああああっ! ああんっ、おちんぽっすきっ!」
 その日から、内原は高浪とセックスをして過ごすようになり、やがて情が沸いて一緒に暮らし、恋人となる。

 あれから、謎の男に犯される夢は見ない――――――。
あれがリアルだったら、どんなに良かったかと思うことはある。
 それでも高浪一人を持て余している自分には、リスクの高い出来事であると認識していたから、そんなリアルは望んではいけないと思った。
――――――今のところは。

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