050-全ては気分次第

1

 真柄和志(まがら かずし)は、その日、友人の八向と二人で温泉に出かけた。
「おおー、いい景色。雪山が見えるんだな!」
 和志は、部屋から見える山を見つめ、気分爽快というように窓を開けて言った。
 その温泉は、数人しか宿泊ができない秘境で、予約は二年先まで埋まっている穴場である。そんなところに宿泊、しかも男二人でできたのは、友人八向の両親のお陰だ。
 たまたま両親がこの予約を取ったところ、予約のミスで旅行日に取れていないことが分かった。温泉側は、特別に温泉宿の休日に当たる日に、わざわざ予約を入れ直してくれたのだが、その前日になって両親の知り合いが亡くなり、葬式が入ってしまった。当然旅行はいけないが、予約を取り消すのも前日では料金も全額負担になるため、息子の八向に話が回ってきた。
 しかし、翌日に急に旅行に出られる友人はそう多くはない。その中で、和志は温泉やお風呂が大好きで、絶対に行くと決め、バイトのシフトを別のバイトに変わって貰い、翌日を開けた。
 そうして飛び出すように東京から静岡の温泉秘境にやってきたわけだ。
 山奥にある温泉は、地元の鄙びた路線から更に温泉宿が用意したマイクロバスで一時間も山深く入ったところにある。
「こんなところ、二度と泊まれないぞ。早くても二年後だしな。やーほんと来て良かった」
 和志がそう言うと、八向はさっそく風呂に入る準備をしている。
「あ、真柄(まがら)は露天風呂にいくのか?」
「お前は内風呂なんだろ? せっかくの温泉なのに……勿体ない」
「や、俺、苦手だから、知らない人がいるのがどうしても……」
 八向は、温泉には行きたくなかったのだが、親に押しつけられて仕方なく来ただけである。しかし温泉の感想を言わなければならないので、できれば温泉が大好きな人と一緒に行くことを望んだので、和志が選ばれた。
 しかし、八向とは大学の講義やゼミが一緒なだけで、そこまで親しいわけではない。なので、八向は和志と一緒に入るのは、勘弁してくれと言ったのだ。
 この温泉には、部屋に個室の温泉が付いている。もちろん和志はそこにも入る予定であるが、まずは明るいうちに外風呂に行ってくるつもりだ。
 ここには、自然の中にある温泉や、普通の宿の温泉、個室温泉といろいろとある。なのに、今日の客は二組だけで、和志達以外には一組だけだ。
 元々五組くらいしか予約できない上に、休日を解放してダブルブッキングをした和志達と、お得意様の一組だけ。
 部屋も端と端に分けられているようで、廊下を歩いていても会わない。従業員にも用事がなければ会わない徹底ぶりで、食事は夜十八時、朝は八時半。用事があれば受付。という風に、従業員が表をうろうろしない。
 秘境中の秘境なので、従業員が四人くらいしかいないらしい。
 周りにも民家はないので、休館日は女将達も街にある実家に帰るらしい。
 そういうわけで、周りには山しかないのだが、気温が少し下がってきた秋の紅葉を見ながら温泉に浸かる権利を放棄する気は和志にはなかった。
「じゃ、俺、外の温泉に行ってくる~」
 三時に着いて、すぐに部屋に入ってから、十分もしないうちに和志は部屋を飛び出した。
 上機嫌で看板を見ながら裏口から外へと出る。少し歩いて行くと、川に降りる階段があった。そこから見ると、十メートル下の川の端に、温泉が見えた。
 階段に注意をして下まで降り、簡易に用意された脱衣所で服を脱いで温泉に入る。
 躰を洗ってからお湯に入ると、川の水が入っているのに、お湯がいい感じになっていた。逆上せない程度のお湯の熱さで、和志は、そのまま川の方を向いて、山を見ていた。
 紅葉が綺麗で見惚れていると、誰かがやってきた。
 ビクッとしたところ、相手は三十近いくらいの年齢の男性だ。鍛えた体は腹筋が割れている上に、腕なども筋肉が盛り上がっている。ジム通いが趣味と言われたら納得するような体作りをしている。
 堂々としていて、下半身も隠してはいなかったが、和志は少しだけ、大きなペニスだなあと思った程度だった。
 相手は和志と目が合うと会釈をしたので、和志も会釈をしたが声はかけなかった。
 多分、もう一組の客の一人だ。そうとしか思えない。だが親しくするような温泉宿ではないので、声を掛けないのがルールだと和志は思った。
 出るタイミングを逃したので、そのまま和志はお風呂に入り続けたのだが、相手も気にすることなくお湯に浸かり始めた。
 なるべく相手を見ないように、お湯に浸かっていたが、ふと気付いたら、相手が和志のすぐ側にいることに気付いた。
「……わっ」
 びっくりして思わず中腰で逃げようとすると、相手は和志の腕を掴んで、いきなり引き寄せてきた。
「……えっえっ? えええ?」
 相手にぶつかると目を瞑った。しかし、相手には確かにぶつかったが、痛くはなかったのでハッと目を開けると、相手の男の膝に和志が座っている形になっていた。
「ちょっと……あんた、何……ん?」
 引っ張った相手に文句を言おうとしたら、後ろから抱きついた男の手が、和志のペニスを握ってきたのだ。
「ちょっ……! 何してんだっあんたっんぁあやっだっ」
 和志は逃げようとするのだが、ペニスを握られていると、迂闊に行動ができない。潰されるのではないかと思うと、怖いのである。
 そんな怯えた和志の態度をいいことに、男は和志の首筋に唇を這わせて舌で舐めてくる。
「ひぁっ! んっ、ぁあんっやめ……っ なんでっ……んっあぁ」
 男は和志のペニスをニギニギと刺激しながら、空いた手で和志の乳首を捏ね回し始めたのだ。
「ひぃあぁっ! やっ、ちくびぃっ、ぁんっあぁんっやっなんでっ……おしりっ当たってる……っやっあぁっ」
 男が和志の尻の割れ目にペニスを押し当てて、腰を揺らしている。
「あああっ、やらぁっ、なんでっ、あっ、ひぁんっ」
どうしようと和志は思った。
ペニスを握られている以上、激しい抵抗ができない。けれど、このまま甘んじて、男の手を許すのはいけないと思う。けれども気持ちが良くなってきて、どうしようもなかった。
「ふぁあんっ、もっ、らめぇ……んあっ……」
 抵抗らしい抵抗をしないままでいると、男は和志のペニスを素早く扱き始めた。
「ああああーっ! ひあっ、あんっ、ああっ、あああんっ」
 なんとか中腰で逃げようとしていた足が力を失い、がくりと男の膝の上に全身を預ける形で倒れた。男はそれを受け止め、がっしりと腕を回して、和志のアナルに手を伸ばして、指をプツリと入れた。
「あああっ、やだぁっゆびぃっ、なんでっはいっるっ、あっ、ひぁんっごりごりしないでっあぁん」
 アナルに入った指はクネクネと動き、出たり入ったりと繰り返している。
「ひあんっ! あっ、そこはっだめっ……おゆっはいって……いやんっ」
 アナルに指を入れられ躰を硬くしても、ペニスをいいように扱かれて、躰の力が抜ける。するとアナルの指が内壁を擦り上げてきて、どうしようなく、腰が抜けそうになる。
 排泄物を出すところに入っている指が増えて、二本になると和志は知らずに躰の力を抜いて、それに合わせて腰を動かし始めていた。
 男は手を動かしながらも、和志の耳などを舌で舐め、耳の中まで犯してくる。
 ピシャピシャと粘った液体の音が耳に響いてきて、だんだんといやらしい気分になってくる。
「ひあぁ……っああっ、ああぁっ、らめえっ、いくぅの、いくからぁっ、もっ、ゴリゴリってしちゃらめぇっ」
 和志の勃起したペニスが、射精をしたがっている。しかしビクビクと震えるペニスを男は急にギュッと握ってきた。


2

「ああっ、なんでっ、なんでっ、あっ、いきたいっひぁんっ」
 和志は男に甘えるように、射精をしたいと訴えた。
 後ろを振り返ると、男が和志の唇にキスをしてきた。キスをした瞬間に舌が入り込んできて、和志の舌に男の舌が絡まってくる。
「んっ!? ふぁっ、んっんっ、んっぅんっ」
 キスで感じるなんてあるわけないと和志は思っていたが、唇を合わせているだけで、気持ちが良かったし、舌を絡められてしまうと、ゾクゾクとした感覚が背中を走った。
「んっちゅっ……はぁ、ふぅっ……」
 和志は夢中で男とキスをした。
 その間もペニスは握られたままで射精はできなかったし、アナルの中の指は更に増えて三本で広げられている。
「ぅんっ! んっ、んっ、んぅっ、んんーっ!」
和志は射精をできないままで絶頂感を味わった。
 頭の中が真っ白になりかけた時に、アナルに指とは違う、圧倒的に大きな異物感を覚えた。
「ふぁいっ、ん、ぅんっ、んんーーっ! んはっぁっやっ……んぁなか……はいってくるっやあぁっはいって……むりぃ……んぁあっ」
 和志はそう言いながらも、抵抗できずに自然とペニスを内部に受け入れるために息を吐いては、異物感に躰を震わせた。
「ぁんっ、ふぁ、おちんぽぉっはいって……っるっんぁあ……おちんぽっやぁ……ぬいてぇっ」
 深々と奥まで男のペニスが内壁を押し開いて入り、その感触が初めてであるのに、ゾクゾクと背中を震わせる和志に、男は和志の肩や首筋にキスを落としていく。
「やぁっ……はいって、るっ……おっきいおちんぽがぁ、おれのなかっぁっああんっ」
 和志は自分の手でそこを触った。アナルの位置に男の大きなペニスがしっかりと入り込んでいるのが分かる。
 和志はそれを抜こうとして腰を上げたが、すぐに男が腰を掴んで、引き戻すように和志を膝の上に戻した。そのせいでペニスが抜けかけて、押し入ったことになってしまう。
「ひぃっああああぁー! やっあぁっ、あんっ、ふぁっ、ん……はあんっ!」
 何回もその行動を繰り返していると、挿入をし、抜け、挿入をしてと完全にピストン運動になってしまっていた。
「ああああぁんっ! ああぁっ、あんっあんっ、はいってっぬけなっいっおちんぽっやらぁ……あっあんっあんっあんあぁこし……やらっだめっなのっああぁん」
 和志は必死になって、温泉の岩の縁に捕まり、なんとか立つことに成功した。男のペニスを抜け、和志は逃げようとして、足を上げた。
 だがそれを男が逃すはずもなく、和志はそのまま岩場に躰を押しつけられ、上げた足を男に抱えられて、背後から男に犯されることになってしまった。
「やらぁあっ、もっやっら、らめぇっあん、あんっぁあっあぁんっ」
男のペニスが再度入ってきて、奥まで一気に突き上げられた。男は今度は待つことはせず、すぐに腰を穿ち始めた。
「あ゛ぁあぁんっ! あぁっ、あっあんっあんっやらっやらぁっ! はぁっあんっあぁあぁんっ……やらぁらめっなのっ……んぁああっ」
 その時、初めて男が喋った。
「和志くんだっけ? 初めてなのにこんなに淫乱でどうするんだ?」
「あぁっ! ちがっうっあっあっあひぃっ……いんらんっあんっちがっうはぁっあぁんっ」
 男の声は低く、ぞくっとするほどの色気を持っていた。
 見るからに充実した地位を持っている男の気配がするのに、どうして旅先の温泉で人を犯しているのか不思議だ。
「知らない男のペニスで、あんあん言ってる子が、淫乱じゃないなんて、あり得ないぞ。私は淫乱が大好きだから、君はそのままでいいんだけどね」
「あ゛あっああぁっあひっあひぃっ! あっあんっあんっおちんぽっやらぁあっあぁあんっ!!」
「おちんぽ好きだろ? こうやってここを擦るとっ」
「ひあああぁんっ! やぁっもっやらっおちんぽっやらっあっあんっはぁあっ」
 ゾクゾクッとした感覚が一気に脳天まで突き抜けて、和志は射精をしていた。
 しかし、男は腰を穿つのをやめようとはしない。
 和志は射精をして気持ち良くなっているところを更に突かれて、嬌声を上げた。
「あぁあっあんっいぃっ……もっおちんぽっいいっはぁああっんあっ……おちんぽっごりごりするっのっいいっきもちいぃっ」
脳天に突き抜けた快楽の感覚を、和志は素直に声に出していた。
「そうだろう? 私のおちんぽは最高だろう? 君とは相性がとてもいいらしい。さあ、腰を振って、そういやらしくて、かわいいな」
「ああぁっ……あんっああっ、また、いっちゃっ……」
 いやらしくて可愛いという言葉に、和志は反応してまた射精をした。言葉で達するなんて、和志も驚きであるが、男は満足したように言った。
「どこが気持ちいい? 言ってごらん」
「んっあぁっあっ、全部っいいっ、おちんぽでゴリゴリされるの気持ちいっ……ちくびっあっあひっあ゛んっいいっ」
「じゃあ、乳首を弄られながら、ペニスを入れられてイッてごらん、和志」
「ひっあっいいっ、ちくびっあんっいいっ、あぁっおちんぽっごりごりされてっあんっきもちいいっ」
「……ふっ、淫乱和志、イケっ」
「あ゛あああっ! いくっいくいっちゃうっ……あっあんっあひっあああーっ」
 和志は、男が言ったように、乳首を弄られ引っ張られて、アナルの奥で男の精液を受け止めながら、また絶頂を迎えた。
 吐き出された精液が、岩に付いてそれが温泉の波に消える。
「はぁっ、はぁっあぁん……」
「可愛かったよ、和志……。またね」
 男はそう言うと、和志の尻を撫でながら、また和志にキスをしてから去っていった。
 和志はぐったりしたままで暫く岩の上で寝転がっていたが、寒くなって慌てて温泉に入る。
「……あっ……」
 するとアナルから男の精液が溢れて出てきてしまい、和志は慌てて温泉を出ると、側にある温泉の水道を使ってアナルを自分で洗った。
「あああぁっ! あああぁっ、あんっあんっ、い゛いっあぁっ」
アナルには指が簡単に二本入り、和志は精液を掻き出していたのに、最後にはアナニーになっていた。
 自分で乳首を摘まみ、アナルに指を入れてグチャグチャと自らの指で犯す。何も感じないと思っていたのに、想像以上に気持ちが良かった。
「あ゛あっ! いくっいくっ……あっあんっあひっんっ!!」
 そのまま和志は絶頂を迎え、初めてアナニーで射精をした。
四度も絶頂したせいか、酷く付かれていたが、和志はのろのろと服を着て、宿の方へ戻った。
 部屋に入ると、八向がぐったりした様子で寝ている。
 和志が戻ってきたのに気付いたように、顔を上げたが、酷く疲れているようだった。
「……のぼせた……」
「おれも……はあ、飯まで寝るか」
 時計を見ると四時半である。食事まで二時間はある。
 和志は、部屋の押し入れから布団を取り出し、八向の隣に敷いて、そのまま寝た。
 疲れた躰は一気に眠気をもたらしたが、和志はアレはなんだったんだと一瞬だけ考えたが、気持ち良かったし、もう二度とあることではないから、忘れようと心に決めて、八向にも言わなかった。
しかし男は言っていた。
「和志、またね」
 と。
 それがどういう意味を持つのか分かるのは、それからたった三時間後のことだった。
 

3

 謎の男に襲われ、温泉で初めて男に犯された和志は、旅行先の温泉宿で、三時間ほど仮眠をした。
「……十九時? ……うわっ飯の時間過ぎてる!」
 目が覚めて、周りが暗いことに気付いて、手元に置いていた携帯で時刻を確認してハッとして起き上がる。
 隣では八向がまだ寝ている。
「八向っ飯、飯にいかないと食いっぱぐれるぞっ!」
 ここは山奥の秘境。もちろんコンビニはないし、近場に食堂どころか民家すらない場所だ。宿から出される食事を逃したら、拝み倒して作って貰うしかない。
「……ん、え? あ、もう七時? 起こしてくれないんだね……ここ」
 食事の時間になっても呼びに来ないのには驚いたが、確か受付でそういうことを言われたのを思い出す。
 食事の時間は夜十八時とだけ言われた。客に干渉をしないのがこの宿のポリシーで、客から要請がなければ、ほとんど放置される形になる。
 乱れた浴衣を直して、二人で慌てて食堂と言われた座敷に行くと、従業員がそれに気付いて、食事を運んできてくれた。
「間に合った……」
 食事は十八時であるが、取り置きをしてくれるのはその日の二十時までと決まっているようだった。
「あのまま寝てたら危なかったな」
「二度寝してたら危なかった」
 新鮮なモノを用意しているという宿側の気持ちを考えると、作り直しさせるのは忍びない。
 幸い、遅れたのは一時間。ばたばたとやっているうちに宿側が食事を用意してくれたようで、温かな川焼き魚二匹にひじきの煮物、大根の浅漬け、山で採れた栗のご飯と、美味しい食事ができた。
 二人で黙々と食べ、最後にお茶を飲むと、八向が言った。
「真柄(まがら)、温泉、どうだった?」
 そう聞かれて、和志は焦る。
「あ、紅葉が綺麗で、びっくりした……き、気持ち良くて……うっかり長風呂しちゃって……そういうお前も、個室風呂はどうだった?」
 そう和志は慌てて話を逸らして、八向に問うと、八向は急に顔を赤くして言った。
「あ、うん、良かったよ。景色は見えないけど、外で……その……温泉に入るのは気持ちいいね……一人だとのんびりできちゃって、逆上せちゃったけど……」
 八向はそう言ってお茶を一気に飲むと、席を立った。
「と、トイレにいきたいから、先に行くね……」
 八向はそう言って和志の返事を聞く前に食堂を出て行った。
「……どうしたんだろ?」
 八向の様子が明らかにおかしいのだが、何がおかしいのか分からない。あまり親しくしてるわけでもないから、変に指摘するのも旅行の雰囲気を壊す気がして、和志はそれ以上尋ねなかった。
 それよりも自分も尋ねられたら困ることが起こっていたので、人のことを言えた義理ではなかった。八向もおかしいと思っていただろう。
「……っ 忘れよ……」
 そうは言っても、さっき弄っていたアナルが既に疼いている。
 和志はビクリとして、お茶を一気に飲んでから食堂を後にした。
 その食堂を出たところで、和志は驚いて足が止まる。
 先に出た八向が、途中の廊下で誰かにキスをされているではないか。
 和志はやっと八向の様子がおかしいのはこれかと気付いた。恋人と来たかったが、親の知らない大人の男と旅行に行くなんて言えるはずもなく、別のグループで来て貰うようにしたのかもしれない。何せ、この宿には上手く言えば一人くらい客が増えても、休日の予約は入っていないから融通はきくかもしれない。
 八向は和志に気付いた様子はなかったが、相手の男は和志に気付いた。
 長髪の男。年齢は二十五か、いってても三十くらい。長い胸までの髪を後ろで一纏めにしている。身長は八向より十五センチは高い。だから和志とも十センチは違う。
 顔はイケメンと言っていいが、ちょっとホストにいそうな感じで、夜の商売をしている人に見えた。
 そんなイケメンは和志を見て、ふんっと鼻で笑って八向を連れて、明らかに和志たちの部屋の方へ行ってしまう。
「……あっ……」
 部屋に行かれてしまっては、和志が行く場所がなくなる。そう思って声を掛けようとした瞬間、後ろから口を手で何者かに押さえられ、さらには躰も抱き留められた。
「……んんっ!!!」
 いきなり何だと、驚いて後ろを見ると、二度と会うことはないと思っていた、和志を温泉で犯したあの男だった。
「っ!!! んんんっっ!!」
 和志は男の顔を見て驚いて、逃げようとして暴れたのだが、あれよあれよという間に、和志達の部屋とは真逆にある、一番奥の突き当たりの部屋に連れ込まれた。
 部屋に入ると、男が手を離してくれたので、和志は逃げようとしたが、入り口には男が立っている。周りを見回して窓から出ようとしたら、その先は断崖であり、深い谷が見えた。
「死ぬよ、さすがにそこから落ちたら」
 男がそう言ったので、和志は男と向き合うことになってしまった。
「あ、あんた、何なの?」
 和志がそう言うと、男は名刺を出し、それをテーブルに置いた。
名乗る気があるらしいので、名刺を取る。見ると、名前や肩書きが書いてある。
 男の名前は、樋口滉(ひぐち あきら)。肩書きは不動産会社社長。住所を見ると東京の一等地。不動産会社は樋口不動産。
「なんで、不動産会社の社長が……あんなこと……わっ!」
 名刺を必死で読んでいたら、いつの間にか樋口が和志の目の前にいる。
 逃げようとする和志に、樋口は柔道の大外刈りのように、和志の右足を真っ直ぐに引っかけ、スッと和志の躰を床に押し倒した。
「……っ!」
 ズンッと音がして、和志は床に倒されて、一瞬、衝撃で息が止まる。
 その隙に、樋口が和志の浴衣の紐を取ってしまう。
 こうなったら、浴衣は肩に掛けているだけの布に成り下がる。
「くっ……なんなんだよっ……もうっ!」
「……ふっ、余り者同士、上手くやれているじゃないか」
 樋口がそう言う。
「……あの男、あんたの連れかよっ」
「あいつはあの子の方がいいらしい。私はお前がいい、和志」
 耳を舐めながらそう言われて、和志はその声に感じた。
「ひぃっあっ! もうなんで、余り者だからってあんたとセックス、しなきゃっ……んあぁっならないんだっもうっ……触るなっんはぁっ」
 耳や首筋にキスをしながら、樋口は和志の言うことを聞かずに、和志の下着を下ろし、ペニスを取り出している。


4

「あひっ、だから……もうっあっぁっ、ふぁっ、あぁんっ!」
 和志が樋口を拒否しようとすると、和志は樋口にペンスを扱かれ、乳首を舌で舐められてしまう。
「ひあぁっあひっ、ちくびっあ゛っ、らめぇっ……もっやめっ、あぁっあっ」
 樋口のザラリとした舌が、和志の乳首を舐め上げ、乳首はどんどん硬くなっていく。
 ゾクリとした快感が背中を駆け抜け、脳天を直撃する。
「あぁんっ! あひっ、ぁあっ、あっあっあっだめっちくびっぐりぐりっしなっいでっんぁあっ」
「ほーら、おちんぽが勃起した。先走りも出てきて、既にイキそうだな」
「あっああっ……やっあっあっあんっんっああぁっ」
「和志は快楽に弱いんだな。どこもかしこも敏感。どうやって今まで無事だったんだか……」
 そういいながら樋口が、和志のペニスを扱き上げ、更には乳首も捏ねている。
 自分で捏ねるよりも、他人が触っている捏ねている方が気持ちがいいと感じて、和志は口走っていた。
「あんっあっ、ちくびっ、きもちいぃ……、あっ、あっん……あっん」
「和志も私のおちんぽを触ってごらん……ほら、手で扱いてみて?」
 樋口はそう言うと、和志に自分のペニスを握らせた。和志は言われるがままに樋口のペニスを握り、余りの大きさに顔を赤らめた。
「あぁっすごい……っ、おおきくて、びくびくしてるっ……」
「手を動かして、こうやって、そう……気持ちいいよ」
 樋口に言われた通りにペニスを手で扱くと、樋口がはあっと気持ちよさそうに喘いだ。
「はああぁ……おちんぽ、おっきぃ、あっんっあっはぁっ、あぁ……」
 和志のペニスを樋口が扱き、樋口のペニスを和志が扱く。お互いがマスを掻き合った。
「ひあぁっあひっ、あ゛っ、らめぇっ……、あぁっあっああっ!」
「……んっ」
 和志が達したと同時に樋口も達して、お互いの精液が和志の腹の上で混ざり合う。
「ぁんっ、あぁ、はぁっ、あふっ……」
「和志はいい子だな……もっと気持ち良くなろう」
 樋口がそう言うと、和志は躰を震わせて喜んでいる。
「はぁあんっ、樋口のおちんぽでぇ……、ハメハメするの……? ああっ……ひぐち、おちんぽっするの……?」
 和志は絶頂を一回してしまうと、どうやら淫乱スイッチが入ってしまうようで、平気で淫語を口にするようになる。
 それが樋口を煽っているとは思わないから、更に淫語が口から出る。
「はぁ、硬くて、おっきくて、ビクビクしてるおちんぽっ……おれのケツま○こにハメハメするの? ……はぁっ……ああ、また大きくなってる……はっああっひぐち、すごいっああっ」
 煽られた樋口のペニスが、さらに大きく膨らみ、完全に勃起をした。それが全て和志の手の中で起こったことで、和志はそれに興奮して、自らも半勃起している。
「あぁあんっ、もっだめっ……いれて、樋口のおちんぽっいれて、せーえき、奥にほしい……っ!」
「なんて子なんだ……和志」
 まさかここまで和志が化けるとは思わなかった樋口である。主導権を握っているのに、この煽られようは凄かった。
「足を開いて、アナルを見せなさい。おちんぽしてあげるよ」
 そう言うと、和志はすぐさま、足を広げて胸の前で抱え、アナルがしっかりと見えるようにした。
樋口がすぐさまペニスをアナルに宛がい、一気に和志の中に入った。
「あぁっ! おれっおま○こにされちゃったっ……ぁあんっいいっ……ぁあっあっあっああっ」
「私専用の、おま○こになりなさいっ」
 ごりごりと樋口がペニスで、和志のアナルを穿ち始めた。
「あ゛ああっなるっ……ひぐちのおま○こになるのっ……っい゛いっひっ、あっあっおちんぽっあっあぅっあっ……いいっんぁあっ!」
 ペニスが内壁を擦り上げていく感覚に、和志は躰を反らして快楽を受けた。脳天を突き抜ける快楽が何度も押し寄せ、和志の思考回路を破壊していく。
「つ……っ、ギチギチに締め付けてきて……どれだけおちんぽを待ってたんだ……っ」
 樋口も和志がここまでの名器を持っているとは想像だにしていなかった。自分との相性も抜群によく、大きすぎると言われたペニスをあっさりと受け入れるくせにキツくて中がトロトロとした、今まで感じたことがない感覚に、樋口もまた思考回路がおかしくなっていた。
「ああっ……あっいっいぃっ……っケツま○こっごりごりして……っあああっ」
「こんな躰になったら、もう一人ではいられないなっ」
「あ゛ああっ! いいっいぃっ……あっあんっあひっあああーっ」
 パンパンと強く突くたびに、和志が嬌声を上げてくる。それは抑制されていた声を隠すことなく、全て口に出した結果だ。
「ああぁっすごいぃっ……ぁんっもっらめぇ、あっあんあんあんあっあん――――――っ!!」
 和志が我慢仕切れずに、一回目達する。
 吐き出された精液が和志の顔にかかっている。それがまたエロく見えて、樋口を煽ってくる。
 樋口はさらに強くペニスで突いて、和志の中に精液を吐きだし、達した。
「はぁああぁんっ!! なかにぃ、お○んこに、いっぱい出てるよぉっあぁっおれも、れちゃうぅっ!」
 和志は精液が吐き出されるのを感じて、二度目の絶頂を迎える。ピュッとペニスから出た精液が口にかかったが、和志はそれをペロリと舌で舐めとった。
 それを見た樋口は、すぐに和志に深いキスをした。
 口には和志が舐め取った精液が入っているが、それを舌で絡めて二人で舐め取っていく。
「あっ……あんっ……あぁんっ……」
「はぁはっ……和志」
 そうして舌を絡めてキスしながら、やっと樋口が和志の中からペニスを出した。
 樋口はぐったりしている和志を抱えるようにして、個室温泉に連れて行く。
 和志の浴衣を脱がし、樋口は和志を膝に乗せて足を広げると、和志のアナルを広げ、中にお湯が入るようにしてシャワーをかける。
「ひああっ、あっあんっ、だめっだめ……っ、あっあぁ……っ」
「お昼のも少し残っていただろ? 掻きだしておかないとな」
シャワーを当てたままで指を突っ込み、掻き出すようにして手を動かすと、和志が喘ぎ始める。
「ああっ、んっ、あっ、あっ、ふあっ、あんっ……はぁっ、んっああぁっ」
 和志の腰が少し動き出し、指の動きに合せている。
「あんっあんっああぁっ……だめっ、ゆびっやらしすぎっ……あっひっぅんっ!」
 シャワーが和志のペニスを刺激するように当てられて、和志はアナルを樋口に弄られながら達した。
「あっああっ……んっ、ふっ、あっ、んっんっ……はぁっ、んぅっ……」
 和志はそのまま床に下ろしてもらった。
 しかし物足りなくて、横で躰を流している樋口のペニスに顔を近付け、開いている足の間に入って座り、樋口の凶悪なペニスを口に咥えた。
「ん……っ、ん……ちゅ、う……ぁ、あ……」
 舌で舐め、喉の奥まで飲み込みながら、頭を上下させて口で扱いた。
「んんっ、んーーっ、んむううぅ」
 ペニスを舐めていると、樋口が和志の乳首を指で捻り上げてきた。
「ひあああっ! あ゛っあ゛っうっひぃっあっあんっあああっ……!」
「乳首だけでもイケそうなほどだな。イケっ!」
 そう言いながら、樋口は和志を抱き寄せて、乳首に歯で噛みついた。
「ああああ――――――っ!!」
 乳首を噛まれただけで、高まっていた和志はすぐに達した。
「あひっ、いっ……あっ、んっ……はぁっはぁっ……」
 その後は、風呂の中に入り、向き合って和志は樋口にまた犯される。膝の上に座る形で、樋口のペニスを受け入れ、ゆっくり揺らしながら、乳首をずっと吸われた。
 その時間は二十分を優に超え、和志の快楽も限界に達していた。
「ひ、っぐ、あうっ……やだ、もうむりっ壊れる……ちくびっこわれる……っ」
乳首だけでも達することができる和志の躰を面白がった樋口は、挿入を遅くして、乳首をしつこく舐めて吸って転がした。
「ああっ……、いっ……く、いく、からっ……やだぁ、いっちゃううぅ」
そのままの状態で、和志は二回達しているのだが、またイカされた。
「ひぐち……おねがい、もうだめ、だめぇえ……ちくびっやぁっああぁ……っ」
 そう言ったので、樋口がやっと乳首から口を離して、挿入に専念をした。
「もうだめ、おちんぽっいって……おちんぽっなかでっいってええぇ……あぁあああ――――――っ!」
「は……っく……はあっ」
 強く締め付けられて樋口はやっと達した。絶倫気味の二人であるが、散々した結果、満足してセックスは終わった。
 樋口はぐったりしている和志を解放して、躰を綺麗に洗ったり、服を着せたりし、最後は布団まで用意して寝かせてくれた。
 やっと我に返った和志は、恥ずかしさのあまりに部屋に戻ろうとすると、それを樋口に止められる。
「なに?」
「あっちもやってるから、寝るところはここしかないぞ?」
 樋口にそう言われ、抱き寄せられてしまい、一緒に添い寝された。
 和志は、もうこれは旅先の出来事で、事故なのだと思うことにした。考えるだけ無駄な気がした。
 強姦だし、レイプであるが、合意した部分が多く、はっきりと訴えることができないからだ。
「明日は、早いから寝なさい」
 うんうん唸っている和志に、樋口が言い、和志の目に手を当てて目を閉じさせた。
 和志はふうっと息を吐いて、そのまま眠った。


 次の日、和志は朝早くに目を覚まし、樋口が寝ているのを確認してから部屋を抜け出した。
 自分の部屋に戻ってみると、八向も八向と一緒にいた男も何処にもいない。
 ほっとしたやら、何だかなと思いながら部屋で片付けをしていると、八向が戻ってきた。
 部屋に入ってきた瞬間、双方が顔を真っ赤にしてそっぽを向いたのだが、和志が先に聞いた。
「……八向、金髪のあの人と一緒だった?」
「あ、うん。……真柄(まがら)は、あの黒髪の方の人と一緒に?」
「あ、うん、まあ……そのなんて言うか……事故っていうか……」
 和志がそう言うと、八向も息を吐いて言った。
「そう、旅行先で羽目を外しちゃっただけだよね……俺たち」
「だな……帰ったらなかったことになるんだよ、きっと」
 そう二人は同じ思いでいた。
 これは旅行先で羽目を外した自分たちが食われただけの話なのだ。だから、忘れてしまえば終わる。旅行が終われば、想い出になって消えていくものなのだ。
 二人はそう納得して、朝食を食べ終わると宿が用意したマイクロバスに乗って、駅まで戻り、帰りの新幹線に乗った。

 早朝の新幹線で、その人達に会うとは思わずに。

「も、だめ……いっちゃう……っおちんぽでっ、いっちゃ……あはあぁっ!」
新幹線のトイレに入った時に、樋口が何処からか現れて、和志と一緒にトイレに入ってしまう。
 小便をするのを勝手に手伝われた挙げ句に、ズボンを下ろされて、挿入された。さすがに生ではなかったが、コンドームをしていたから気を遣ったのであろうが、それでも新幹線のトイレの中で犯されるとは、和志も予想はしてなかった。
「ああっ……、いっ……く、いく、からっ……やだぁ、いっちゃううぅ」
「いきなさい、ほら、便器に吐き出せばいい」
 便器に押しつけられるように立ったままでペニスを挿入され、和志はそのままの状態で、射精をする羽目になった。
「ああっ、やだ、や、あ、あ、いく、いくっ、いっちゃ……あぁっ、やだあああぁぁ――……っ!」
 ビシャッと精液を吐き出して、和志が達すると、アナルの中で樋口もコンドームの中に精を吐き出した。
「も……何なんだよ……樋口……」
「今日はまだ暇なんだろう? ホテルに行くからついてきなさい」
「はあ?」
「私は、和志とは相性がよいらしい。まだまだしたりないから、これからも付き合ってくれ」
 樋口がいきなりそう言い出した。
 これからも、と樋口は言った。
「温泉でセックスした人、皆に同じこと言ってそう……」
 和志がそう言うと、樋口はそれを否定しなかったが、代わりにこう言った。
「和志が付き合ってくれたら、もうしなくて済むことだ」
 自信満々に言われ、和志は苦笑する。
 堂々と言われたら、もう返す言葉は一つだけだ。
「本当にどうしようもない大人だな……それで八向も同じように口説かれてるってこと?」
「あっちはあっちで相性が良かったらしい」
「ふーん、そっか」
 自分だけハッピーエンドにならなくて良かったと、和志は思った。
 和志の荷物を樋口が取ってきて、隣の車両の樋口の隣に移った。八向はそのまま、あの男と一緒に乗っているらしいが、その後のことは、和志にも、大学で成果を聞くまでは分からないままであった。
和志は、その日を境に樋口と付き合い、その付き合いはずっと続くことになったのだった。

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