022-狂気的な闇

1

 その日は、十一時回った辺りでやっと客が途切れた。
 普段ならもう少し客が残っていて、十一時半にオーダーストップ、十二時に閉店しても客が一時間粘ったりすることはよくある。その日は雨が降っており、客もまばら、駅から少し離れたところにある居酒屋では、雨宿りの客は見込めない。
 チェーン店ではあるが、おじさんたちがよく集まる居酒屋でもあるが、平日月曜日の深夜で、雨が降っていればこんなものである。
「もう閉めちゃっていいよ」
 店長がそう言って先にレジを締め、会計を済ませると店の鍵を二ノ宮預けて、先に深夜銀行の預け先に急いだ。
 この日は店長の結婚記念日らしく、夫婦でこの後旅行に行くのだという。明日明後日が店が休みで、二ノ宮も平日のバイトが休みになるので、楽しみにしていたゲームでもしようと思っていた。
 身長百七十はない身長に、ショートの髪が少し伸びてきたので、明日辺り散髪にいかなければならない。細身の体で、女の子よりも細いのだが、大学生になっても子供みたいな体つきだと言われる。それでも笑顔で接客するので、男性客からは息子みたいだと言われて割と評価されている。そのお陰で、たった一年でバイト長になり、店長からの信頼も厚かった。
 この日はバイト長である二ノ宮が最後まで残り、室内をバイトが片付けてしまうと、鍵を確認して、表から鍵をしようとしていた。
 雨が酷く降っていて、傘がないことが問題だなと考えていた。
 ざーっと音が鳴っていて、なんだと振り返った二ノ宮は、サラリーマンが立っていることに気付いてびくりと体を震わせた。
 サラリーマンは百九十はありそうなほどの身長で、体格もよく、大学自体はアメフトでもやってましたといわんばかりのゴツゴツとした体型だった。きっとスーツもオーダーメイドでなければ、体格に合うものがないのではないだろうか。
 そんな男が後ろにそっと立っていたら、びっくりしない人間はいない。
「……す、すみません……お店もう終わったんですけど」
 二ノ宮がそう言うと、サラリーマンの男は慌てたように言った。
「忘れ物をしちゃって、手帳なんですが、テーブルに置いたままでちゃって」
 暗闇で影しか分からないが、そう言われて二ノ宮は思い出した。
「ああ、手帳の忘れ物。あります。取ってきますね」
 今日の夕方の一番目に来た客だ。テーブルに置き忘れた手帳は、そのまま店長が忘れ物入れに入れていたのを思い出す。それを取りに鍵を開けて店に入り直した。
 スマートフォンの灯りを頼りに、事務所まで戻る。箱を探して手帳を取ると、店の中に戻る。すると、さっきの男が店の中にいた。
 ドアが閉まっている。
「あ、ありました……これですか?」
 そういいながら二ノ宮が手にした手帳を男に渡すと、それを受け取った男はそれを見て頷いた。それを受け取りポケットに仕舞っている。
「よかったですね、じゃ、店を閉めるので出て……うわっ!」
 男を外へ出そうとしてドアを開けようと、男の横を通ると、男が急に腕を伸ばしてきて、二ノ宮を捕まえたのだ。
「なに……してっ」
 急に男に抱きしめられ、その腕から抜け出せない。
 男の腕から抜け出そうとするのだが、がっしりとした鍛えた体をした男の力は本当に男の力という力強さだった。
 二ノ宮はバイト以外に何か運動をしているわけではないから、圧倒的な力の差で、逃げることが敵わない。
(強盗!?)
 いきなりのことに二ノ宮はまず強盗の線を考えた。売上金を狙ったのだろうが、あいにくそれはもう店にはない。だからまずはそれを伝えた。
「う、売上金は持ってないって!」
 そう叫ぶと、大きな手で口と鼻を塞がれた。
「うう゛っっ!」
 暴れても、周りの机や椅子をなぎ倒すだけで、どうにもならない。
 こんな駅外れの深夜に誰かが来ることはなかなかない。誰かに助けを求めるにしても、隣近所はすでに店は閉店していて、開いている店は十軒ほど離れた居酒屋だけだ。
 雨の足が強まったせいで、物音はすべてかき消されているかもしれない。
 居酒屋の建物を叩きつける雨は、雷を伴って吹き荒れる。まるで台風でも来たかのような荒れっぷりで、そういえば天気予報で豪雨になるかもしれないと言っていたなと思い出す。
 だが二ノ宮は、ほぼ足が浮いた状態で、入り口から奥の座敷まで引きずられていく。
 だんだんと目が暗闇になれてくるが、男の顔が分からない。バイトに来た時に帰るところだった男だったから、顔を見ても常連じゃなければ気付かない。
 冗談じゃないと暴れていると、急にお腹に痛みが走った。
「……ぐほっ」
 殴られたのだと分かったのは、その痛みのせいだ。胃の中がひっくりかえりそうなほどの痛みに襲われて、二ノ宮の体の力が抜けてしまう。
 重くなった二ノ宮を、男が軽々と抱え、座敷まで連れて行く。置かれているテーブルを隣のスペースまで、男が体で押し寄せてどかせ、空いたスペースに二ノ宮を寝かせて、二ノ宮の両手を取った。
 カチャリと音がして、腕に何かを巻き付けられ両手を縛られた。それを中央の仕切りの柱に縛り付けられてしまう。
「動かないでね、刺さっちゃうよ」
 男がそう言って、二ノ宮は痛みに耐えながらも動くことはできなかった。痛いのもあるが、刺さるという言葉が、相手がナイフか何かを持っていることだと分かったからだ。
 ビーッと布を切り裂く音がして、二ノ宮の服が切り裂かれた。中に着ていた下着も一緒に切り裂かれ、胸が開けるように服を広げられる。
 そこで始めて二ノ宮は、自分が何のために襲われているのかを理解した。
「やめろっ……!」
 ズボンのベルトを緩められ、一気に引きはがすように下着まで?ぎ取られた。
「いやだっ! やめろ!」
 必死に暴れると男は一回離れていった。誰かが来て逃げたのかと思ったが、男はすぐ側でごそごそと何かをしている。それが暗闇で見えないので、何をしているのか分からないが、右左とうろうろして、最後に布の擦れる音が聞こえた。
「誰か、助けてっ!」
 必死に叫んだが、それは豪雨の音で掻き消される。ニュースでは十二時半から豪雨が始まり、朝の八時まで続くという。つまり叫んでも商業街の外れの居酒屋での叫び声なんて、豪雨と雷で掻き消され、さらにはこんな日に外を歩く人間は早々いないという事態だ。
 もちろん、居酒屋は閉店していて誰も訪ねてこない。
「いやだっ! 誰かっ助けてっ!」
 レイプされるか、殺されるか。
 訳が分からずとにかく助けを求めた。
 だが男は二ノ宮に馬乗りになると、顔を一回叩いた。
 それが脳しんとうを起こしそうなほどの強さで、二ノ宮は一瞬放心してしまう。
 男はその間に、二ノ宮の口に何かを押し込んで、素早く何かを取り付けた。
「うっー……うーっ」
 ボールギャグというものだということは理解しなかったが、よくエロ漫画にでてくるやつだと気付いたのは、口は開いているのに息ができることと舌が触れ、形が分かったからだ。
「大丈夫だよ、痛くはないからね」
 男はそう言うと、二ノ宮の足を片方抱えて折り曲げ、そこに何かを通して膝を折り曲げたまま伸ばせないようにされた。それを両方の足にされ、M字開脚をしているかのような格好にされる。
「う゛ーっうう゛ー!」
 二ノ宮は叫びながら腕を引っ張ってみた。しかし完全に固定されていたし、足は更に動かない。左右に振ることだけはできたが、それも男が足の間に張り込むまでだった。
 ふーふーっと興奮したような息遣いが聞こえる。男が興奮して息を乱しているのが聞こえて、二ノ宮の体は鳥肌が出た。怖いのだがそれ以上に気持ちが悪い。
「ずっと、ずっと見ていたよ二ノ宮くん」
 男がそう言った。
 見ていたということは、この居酒屋の常連だ。だが、さっき見た時、外見から男がどの常連なのか分からなかった。覚えてすらいない常連、それが酷く怖かった。自分が接客する常連ではなく、バイトが担当した常連だったのか。それとも――――――。
 ふと嫌なことが過ぎって寒気がした。
 外は豪雨で風も酷く、窓ガラスが雨に打たれて轟音がしている。車が走る音や酔っ払いの叫び声などは聞こえてこない。すべて天候が消してしまう。
 だが側にいる男の息遣いはしっかりと聞こえ、その男が二ノ宮を触る手が腰から腹を撫でながら這い上がり、胸を揉むようにいやらしく動いていく。
 その手がじんわりと汗ばんでいて、乾いた肌に吸い付くように張り付く。
「ずっと見ていた。大学に行く電車も同じにしたし、バイト帰りもずっと見守っていたよ……バイト中も元気ではきはきしてて、かわいかったけど、やっぱり触りたいんだよね」 男はそう言う。
 二ノ宮はやっとどの常連か思い当たった。バイト中も見られていたとなれば、複数人ではない。複数人で店員を眺めていたら、誰かが気がついて茶化すだろう。だから一人客でカウンターの隅っこにいた常連のことが思い浮かんだ。
 いつもバイトに来た時はいないが、裏で準備をしてから出てくると必ず隅っこの席にいた常連。話したことはない。だってカウンターには店長がいて、店長がすべて裁いてしまうから、フロアに出ている二ノ宮が関わることが少ないのだ。
 お会計も店長がやっている店のため、直接会話をしていない、接客もしないままの常連はさすがに覚えていることはなかった。ただ変わった人だなというので覚えていた程度だ。 そんな人にストーカーをされていたなんて思いもしなかったことだ。
 挙げ句、店長がいつも店を閉めているのに、今日、本当に久々に変わってやっている二ノ宮の時を狙ってきたということは、店長が旅行でいないこと、明日明後日、店が休みなのお知っているということだ。
 男は二ノ宮の首筋に唇を寄せて、首筋を舌で舐めた。ペチャペチャと二ノ宮の肌を舐め取り、キスマークを残すようにキツク吸い付く。
「う゛う゛っ」
 男の嫌な臭いがした。香水なのだろうが、とにかくそれが鼻を突く。普段ならいい香りだと認識するだろうが、今回は嫌な臭いとして記憶された。それが甘ったるく、臭いと感じるのは、相手に好意を持っていないからなのだろう。
 二ノ宮の不快な態度は相手の男には伝わってない。
 ピシャリピシャリと耳元で音が鳴り響いて、その音にぞわりとした感覚しか生まれない。鳥肌はとっくに出ていて、撫でられても吐き気しかしない。
「う゛う゛う゛う゛っ」
 首を振ると、飲み込めない涎が横から溢れて垂れる。男はだんだんと首筋から下がっていき、乳首に達する。
 男は二ノ宮の乳首をベロリと舐めてから口に含み、チューチューッと音を立てて吸い上げる。
「う゛う゛っ」
 最初は舐められているうちは何も感じはしなかった。だが、噛んだり引っ張ったりしているうちに、だんだんと妙な感覚が腰に抜ける。鈍痛のようなものだったが、それが快感であることに気付くことはなかなかできなかった。
 その時、二ノ宮のペニスが半起ちになり、先から先走りを出していた。男はそれを言わずに乳首を責め続ける。
 チュチュッと音を立てて吸いながら、もう片方を指で捏ね回し、プクリと立ち上がった乳首を指で押したり、引っ張ったりする。指で引っ張りながら、舐めている方を吸ったり、歯で引っ張っている時は、乳首を指で弾くようにするのだ。
 それが腰に抜け、ペニスがすっかり起ち上がってしまう。それが男の腹に当たり、男がわざと体を揺らしてペニスを擦るようにするのだ。
 暫くするとニチュニチュと滑った音がなるようになり、それが二ノ宮の耳にも届くようになる。
 ペニスが勃起していることくらい、もう二ノ宮も分かっている。そして男がわざと腹で擦りあげていることも分かる。だが、指摘はできないし、逃げることも敵わない。
「うううっう゛う゛っんんう゛っふっふっふっふっおっおっおっ」
 だんだんと抵抗する声から、喘いでいる声になってきていた。ボールギャグが邪魔で声が上手く出ないが、それでも口の端から零れまくる涎(よだれ)は、涙が流れているようにボタボタと畳を汚している。
 外は雨がまだまだ降り続け、風も伴ってゴウゴウと鳴っている。時々、店の窓をダンダンと慣らしているが、人が来るわけもない。
 男が乳首に到達してから、もうすでに十分は経っていた。男はなかなか乳首から離れることなく、二ノ宮は乳首がだんだんと気持ちよくなってきていることに気付いて恐怖した。
 さっきまで胸のただの飾りであったものが、たった十分弄られただけで、性感帯に変化するなんて、ほんの二十分前までは思いもしなかったことだ。
 まるで乳首をフェラするかのように追い立て、男は執拗に乳首を責めてきた。二ノ宮も十五分を過ぎた当たりから、何も考えられなくなり、集中する快楽の象徴になっているペニスを、男の腹に自らこすりつけるようにして、扱いてしまっていた。
 男はそれも何も言わずに、二ノ宮の好きにさせてやっている。
 だから、傍目から見るともうすでに何かのプレイ中のカップルに見えるくらいに、自然に行為に及んでいるような形になっていた。
 

2

 男は二ノ宮の乳首を揉みしだき、乳首をつまみ上げた。
「う゛う゛う゛~っ」
 二ノ宮の変化に、男は満足したように何かを取り出し、二ノ宮の乳首に取り付けた。
「う゛っっ!」
 何かに挟まれたように痛みを感じて、二ノ宮が暴れたが、ジンジンと痛む乳首もまた快楽の一旦であることに気付いて、二ノ宮はおののいた。
 男が二ノ宮の乳首につけたのは、洗濯ばさみのようなものだ。一応SMの道具として販売されているニップルに道具である。
 乳首を摘ままれたままにされ、そこから男は二ノ宮の体を舌で舐めて腹やへそを舐め取り、とうとう二ノ宮のペニスまで辿り着いた。
 ペニスを男に握られただけで、二ノ宮の体が跳ね上がる。ペニスはしっかりと勃起していて、先走りは二ノ宮の腹を汚していたほどだったが、それでも垂れるように溢れる。
 それを男が口をつけて吸い付いた。
「う゛うううううっっっ!」
 二ノ宮の腰が跳ねるようになるが、それを男が押さえつけるようにして、二ノ宮のペニスを口に咥えて扱き始める。
 ペニスを男の口腔に咥えられた感覚というのは、想像を絶するほど気持ちが良かった。もちろん二ノ宮はフェラチオなんてされたこともないし、他人にペニスを触れた記憶もない。だから初めての感覚に戸惑った。
 男の舌はペニスに上手く絡みつけるようにして、口でも扱いてくる。先端を舌でグリグリッと尿道を抉るように舐めたかと思えば、口に咥えて全体を扱く。
「う゛ーっう゛ーっ!」
 ネトリとした感覚にどうしても腰が揺れる。ただひたすら男の口に翻弄されて、とうとう二ノ宮は男の口腔で射精した。
 ビュービューっと勢いよく吐き出された精液を、男は口で受け止め、ゴクリと飲んでしまう。そしてまだ敏感なペニスを綺麗にするように、溢れた精液を舐め取りながら亀頭までも掃除するように舐め取った。
 そのペニスを舐めている間に、男は指に何かを塗りつけて二ノ宮のアナルに指を一本入れ、それを何度か出し入れしていた。
 そんな二ノ宮の体を更に折り曲げ、胸まで付く形に折ると、男の目の前に二ノ宮のアナルが晒される。
 もちろん真っ暗で見えないはずだったのだが、街の灯りと街頭が窓から入ってきて、それが薄明かりになり、目がその薄明かりになれてきて、うっすらではあるが影が見えた。 二ノ宮の目にも男が何をやっているのかは見えてしまい、自分が尻に男が顔を埋めていて、アナルが舐められていることがはっきり理解できた。
「う゛う゛う゛――――――っ!」
 排泄をするだけの場所に、舌が入り込む。舌のザラリとした感触に締まりそうになるアナルに指が入り込みスムーズになっている。
 二ノ宮は痛みを感じないことをおかしいと思っていたが、どうやら男が先に塗った何かが痛みを緩和するクスリだったようだ。そのお陰で鈍い感触があるが、気持ちよいという感覚にはならなかった。だが男は前立腺を指で何度も突いて、萎えていた二ノ宮のペニスを勃起させた。
 十分ほど男は二ノ宮のアナルを舐め解すと、やっと顔を上げた。
 何も言わないでも、興奮している男の様子が分かる。
 普段から人と話すのが苦手なのか、男は最初に喋った以外のことは何も言わず、ただ行為に没頭しているようだった。何故だか分からないが、喋れないのではなく喋らないのではないかと二ノ宮が気付いた時、やっと部屋の中の現状がよく見えた。
 男が二ノ宮を縛った後、周りでごそごそやっていた理由だ。
 男は複数のカメラを持ち込み、それを三脚を使って固定し、二ノ宮を強姦しているところを撮影していたのだ。
 強盗ではなく、レイプだ。しかも下調べをした上に、計画性をもって狙ったレイプだ。偶然ではなく、最初からここで二ノ宮をレイプすることが男の目標だったのだ。手帳を忘れたのは、もし二ノ宮が早退していた場合の言い訳だ。
 カメラは暗視モードで撮影しているのか、赤いランプが見えてそれが撮影をしているという合図だ。
 男は二ノ宮のアナルから指を抜くと、そこに男のペニスをゆっくりと挿入をし始める。
「う゛っっっう゛っっ! う゛っ! う゛っ!」
 嫌だと二ノ宮が暴れても、男のペニスはアナルの中に入ってくる。散々嬲られて広げられた蕩けたアナルは、軽々と男のペニスを飲み込んでいく。奥で痛みを感じないのは、さっきのクスリの影響だ。じんわりとした鈍い重みを感じるだけで、痛みはなく、男のペニスを根元まで飲み込んだ。
 男はペニスをしっかりと飲み込んだ二ノ宮のアナルを、指で広げて見せ、しっかり入っていることを、アナルの襞(ひだ)が伸びきったところに指を這わせて何度か撫でた。 普通のペニスの平均よりは大きい、男のペニスだが、解されたアナルはそれを銜え込み、放さないように内壁が絡みついている。
「はぁはぁはぁはぁ」
 男の荒い息が聞こえる。撮影をしているからなるべく喋らないようにしているらしく、二ノ宮を追い詰める言葉は言わなかったことが、少し救いだった。
 だが、男がピストン運動を始めると、二ノ宮はもう何が起こっているのか理解した頭で、感じるだけの存在になってしまった。
 押し込まれる感覚に圧迫感があり、出て行く感覚にどうしようもないほど全身で快楽を得た。
 パチュパチュパチュと滑った音が聞こえ始め、アナルが男のペニスの形に広げられる。「う゛っ! う゛っ! う゛っ! う゛う゛っ!」
 男がペニスを好き勝手に動かしていると思ったが、二ノ宮の前立腺を擦りあげるように突き上げてきて、二ノ宮はひたすら喘いだ。
 口から出る言葉は苦しそうに聞こえるが、嬌声であることは間違いない。涎(よだれ)は畳に大きなシミを作るほど垂れ流した。
 男は二ノ宮を突きながら、二ノ宮の口にあるボールギャグを外した。
「あぁああぁあっ……んぁああっ! あっ!あっ! あっ!んぁああっ!」
 外した瞬間から二ノ宮の嬌声が周りに響き始める。その声は大きく、店中に響いていただろう。だが普段なら聞き咎める人間も外を通ったりするのだが、豪雨は相変わらず、周りの家の屋根や壁、窓を叩き続け、外を歩く人の耳も塞いでいた。
 閉店後の居酒屋でレイプが行われているなんて、誰も気付かないだろう。
「あっあ゛っあ゛っあ゛っんぁあぁっあぁっああぁあっ」
 口を塞ぐことがさっきまでできなかったせいで、口が勝手に開いたままになる。だから嬌声は止まらない。誰がどう聞いても、それは嬌声で、とてもレイプされている人間が出すような声ではないと言うだろう。
 朦朧とした頭のままで、二ノ宮は男のペニスに酔った。
 自らも腰を動かし始め、射精も勝手にしまくった。突かれるたびに精液が噴き出し、何度も何度も絶頂を迎える。
 男は一度も射精はせず、二ノ宮をひたすら絶頂に導いては、休む暇も与えずに突き続ける。絶倫であり遅漏なのだろう。先走りが出ている程度だ。
 二ノ宮がやっと理性を保っている状態なのに、男は興奮したまま腰を打ち付けてくる。こっちは何度も射精させられているのにっと二ノ宮が思っていると、男の突きが速くなり、最後に大きく奥まで突き上げてから精液を吐き出し絶頂を迎えた。
「っっ!」
 それと同時に二ノ宮も達した。
「んぁあああああああぁぁぁ――――――っ!」
 ガクガクと体を震わせ、最後には体が跳ねるほどの快楽を得て達したからなのか、体に伝わる快楽が止まらない。二ノ宮のペニスからは精液はもう出ず、空イキのような形になり、さらにはオーガズムにも達していた。
 男は満足したのか、種付けをするように何度かペニスを二ノ宮の内壁に擦りつけてから、アナルからペニスを抜いた。
 大量に吐き出された男の精液が、ゴボゴボっと二ノ宮のアナルから吐き出されてくる。それを男は撮影に収めるために、カメラを持ってアナルから吹き出る精液をしっかりと撮影していた。
 二ノ宮の体は、その精液が吐き出る衝撃すら快感に直結しているのか、体が何度も痙攣していた。
 二ノ宮の顔を男が取ると、気絶しているかのように目は閉じられていて、口からはだらしなく涎が出たままだ。
 男はそんな二ノ宮の体を反転させて、足の拘束を解いて腰だけ高く上げた状態にすると、後ろからまたペニスを挿入させた。
 二ノ宮はそれに痙攣する形で答えたが、目を覚ました様子はなかった。
 男はそれでも二ノ宮を何度も突いて勝手にレイプを続けた。
「うっ……あっ……うっ……」
 突かれるたびに二ノ宮の口から息が漏れるように嬌声が出る。気絶していても体はしっかり感じるようになっていて、快楽に堕ちていると言っていい。
 男はその姿にも興奮し、何度も突かないうちに二ノ宮の中に射精をした。遅漏の男にしては早漏というレベルで早く達した。男はそれに感動して、二ノ宮の尻に何度もキスをした。
 そして二ノ宮を仰向けにすると、また犯し始める。その時、足を肩に乗せ、その足に何度もキスを繰り返した。そのキスの痕が沢山できたほどだ。
 二ノ宮が気絶している間に、男は二ノ宮の体をあらゆる体位で犯し続け、それは明け方まで続いた。
 二ノ宮は疲れているのか、緊張から解放されたせいか、完全に気絶したまま起きることはなく、犯されたままだった。
 
 そんな二ノ宮が気がついたのは、翌日の昼だった。
 酷く疲れた体で起き上がると、そこは居酒屋の座敷。
 なんでこんなところで寝ているのか? という疑問が浮かんではっとする。
 店を見回し、座敷の中も見回した。そこには何もなく、畳すらなんともない。
 体を触って、破かれた服はなく、普通に同じ服を着ている。
 店の中は争った後はなく、店の入り口の鍵も閉まっている。
 どういうことなのか。自分は夢を見たのか。それも最悪な夢を。
 そう二ノ宮が思った瞬間、アナルの中からドロリとしたものが溢れて下着を少し汚した。
 それが何なのか、二ノ宮は知っている。
 急いでズボンを脱いで、アナルに手を当ててそれを側にあったタオルで拭き取った。アナルの中には夢の通りに男に精液をぶち込まれた形跡がある。
 二ノ宮はその場に座り込んで、どうしようと悩んだ。
 男はこのまま何もなかったかのように、片付けていってくれた以上、公になることは嫌がっているということだ。レイプをしたのだから、当然といえば当然だが、店の中の畳を変えたり、片付けるという精神はどういうことなのかと、訳が分からない。
 二ノ宮はそのタオルを店の外にあるゴミ入れの中に叩き入れ、店に施錠してから家に逃げ帰った。

 だがバイトに行く度に、あのレイプ犯の男が店に来るようになっていた。
 明るいところで見る男は相変わらずカウンターに座っていて、二ノ宮とは何の接点もないようではあったが、男はその帰りの二ノ宮を捕まえて何度か脅してセックスを強要してきた。
 そのうちに、二ノ宮はバイトを辞めた。
 男はそれでも二ノ宮に執着をして自宅に訪ねてきては二ノ宮を犯していくようになった。
 二ノ宮は逃げる場所がないままに、男に追い詰められ、とうとう自ら男の自宅に足を運ぶようになった。
 男はバイトの変わりだと言って、二ノ宮に多額のお金をくれていたが、それは二ノ宮の痴態を売ったお金の一部であることは、二ノ宮も薄々気付いていた。
 やがて大学を卒業すると、男は、これも卒業だと言って二ノ宮を解放した。
 どうやら現役大学生にしか興味がなかったようで、二ノ宮はそれから外れたことで逃れることができた。

 その後十年経って、男が監禁強姦脅迫などの容疑で逮捕されたニュースが流れたが、二ノ宮のところに警察がくることはなかった。
 あまりの被害者の数に、十年以上も昔の人間の所在を調べ上げることができなかったようなのだ。それでも百件という近年の被害者の数から、十年前の被害者である二ノ宮にまで辿り着いても、二ノ宮はもう闇に葬った過去として扱っていて、警察には協力はしなかっただろう。
 そんな二ノ宮は、男から教わったセックスのノウハウを使って、優しい恋人を手に入れていた。

 今度、彼の国に引っ越し、二度と日本には戻らないつもりだった。そんな時に流れてきたニュースだ。
「そんなニュース気になるのか?」
 彼が眉を顰めてそういいながら、チャンネルを変えたがっていた。
「……ん、まあ、ちょっとね……でももういいよ一回見たし」
 二ノ宮がそう言うと、男はチャンネルを時代劇チャンネルに変えて、将軍様が暴れるドラマを見ている。
 そんな彼を横目に、ベランダに出てから、二ノ宮はほくそ笑んだ。
 やっとアイツが捕まった。
 何度も何度も警察にあの男を調べるように投書を続けて十年だ。
 相手にもされないことは分かっていたから、匿名で送り続けた。警察が一応調べるしかないように何度も何度も送り続けた。
 最後は月に一回程度になっていたが、警察はやっとアイツに辿り着いて逮捕をした。
 百件という被害者の数に、少しだけ胸が痛くなったが、それでもこれから被害者は生まれない。
 日本を去るたった一日前に、こんな奇跡が起こるとは思わなかったのだ。
 だから嬉しくて泣いた。
 それを見た恋人が、日本を離れることを寂しがっていると勘違いして慰めてくれたけれど、それはそれで慰められることになった。
 
 もう二度と日本には戻らない、そして投書もしないで済む。
 心は狂ったままであるが、あの闇がやっと光に照らされて、心から消えてくれた。

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