insistence

1

 武下絢羽(あやは)は、昔から友達に恋心を抱く性質だった。
 男という生物学上の性別に不満はなかったけれど、絢羽の恋愛対象はいつでも同じ性別になる男だった。
 小学生の時は普通に「○○くん、大好き」と言っていたことが、年齢が上がることで気持ち悪いと言われるようになり、それは口に出してはいけない言葉だったことを知った。
 一人で思い悩んでいた絢羽の気持ちを慰めてくれるのがネットだった。
 それはネットでは調べれば大抵のことが理解できる世界だった。
 悩み相談のコミュニティーに入り、絢羽は自分が同性愛者であることを知った。
 つまり女性には興味は一切なく、恋愛対象が常に男であるから、そういう部類に自分がいるのだと理解できたことだけは、その後の人生を狂わせずに済んだ。
 絢羽はそれを現実世界では隠し、ネット上のみでそれをカミングアウトした。もちろん匿名だから何処の誰か分からない人の書き込みで、精々分かるのは都道府県くらいのものだ。
 そうしたところで情報を仕入れ、絢羽は大学生になるまでそれを上手く隠し通した。
 そして転機が訪れたのが大学の飲み会だった。
 たまたま隣に座った人が、ゲイであることをカミングアウトしている人だったのだ。
 名前は日高敦也という綺麗な顔のイケメンだった。けれど動作に少しオネエ系の動作が混ざっていて、周りはそれを面白いと思っていたようで、彼は女性には人気だった。
 同じ男を狙う女性とはライバルであるが、それ以上に情報交換の場となっていた。
 その日高の隣に他の男よけとして配置されたのが絢羽だった。
 友達の志田武史が参加をする時に女性に興味がないと断った絢羽を防波堤に使おうとしたのである。
 その目論見は後半になって上手くいくようになった。
「なんだかんだで、常識的なカップルしかできないよな」
 日高がそう言うので絢羽は頷いた。
「世の中それが普通なんだよ。いくらジェンダーの問題が公になってカミングアウトしてもいい世の中になっても、みんな普通がいいんだよ」
 絢羽はそう言って日高の愚痴に乗った。
「え、まさか……お前もこっち側?」
「まあ、一歩突っ込んでいる感じかな。カミングアウトはしてないんだ」
 絢羽がそう言うと日高はパッと表情を明るくさせた。
「いいね~、こういうの久しぶりかも。俺はカミングアウトしたら友達全部失ったパターンだから、別にカミングアウトすることはないと思うよ。その友達が好きとかじゃないかぎりな」
「それはないわ……、志田はいいやつだけど、恋人にしたいかとかあり得ないし」
「ははは、好みがあるんだよな。対象が男でもさすがに全部の男とかは選ばないっつーのな」
「それそれ」
 絢羽は日高と話していて楽しかった。
 その日も飲み会は二次会まで参加して、それから日高は絢羽の家に泊まった。
 そして酔った勢いで絢羽は日高と関係を持ってしまった。
 日高はタチで絢羽がネコになってしまったのは、日高が強引だったからだ。受けるのは初めてだと言うのに、絢羽は大学に入って一人暮らしをし始めたこともあり、オナニーでアナルを弄っていたことが日高にバレ、持っていたバイブや道具を使われて体中を責め立てられた。
「ああ、あああ! やあぁあっ……! や、だっ……あ、んんぅう!」
アナルを拡張するのに日高は時間を掛けて、挿入するまで実に二時間も掛けた。
 バイブで何度も絶頂をさせられて、絢羽はその快楽を覚えさせられた。
「あぁあっ、はぅん……っ、あ、あ、あっひぁあああっ! ぁう……っ、ぁ、う……っ」
「ああ、いい感じになってるよ、ここまでやれば俺のも挿入るな」
 散々体中をおもちゃで弄り尽くした時は、乳首にはニップルクリップをされたままだったし、その先にはローターが付いてて振動が常に乳首に伝わっている状態。
 ローターがアナルに挿入った状態でバイブを奥まで突き入れられていたが、そのバイブが抜かれて、やっと日高のペニスが挿入り込んできた。
「あぁっ……、あ、ぁんっ、あっ……あつ、い……っん……っ、んは……っ」
初めてのセックスなのに、絢羽は酔っているのもあって抵抗をしきれなかった。
 抵抗しようものならウイスキーを原液で口から飲まされてしまい、前後不覚になるほど酔わされたのだ。
「んは……っ、ぁ、……は、はぁ……っ、や……はぁ……っ」
もう抵抗するほどの気力も思考力もない状態で絢羽は日高のペニスで奥を突かれた。
「ひんっあゃ、ん……、やめ、ああああ……やあ……っあ、ゃ、やだ……っ」
中にはまだローターが挿入っていて、それが奥を突き上げてきて振動がどうしようもないくらいに快楽を呼び寄せた。
「や、ぁん……っあふ、……ぁ、あ、やだ……っ」
「大丈夫、ちゃんと気持ち良くなれてるって、絢羽は才能あるじゃん。雌ま○こにはなれるよ……こうやって知っちゃったらもう男のペニス無しじゃ生きていけないらしいよ」
 日高がそう言い、絢羽はその通りかも知れないと思った。
 本当に突き上げられることが気持ち良くて、自ら腰を振ってしまっていた。
「あっ……、は、はっ、ぁ、ゃ……っやぁ……っ、ぁん、あぁっ、ああ……っ」
口では嫌だと言っているけれど、到底嫌だと思っているようには見えなかっただろう。
「やぁあっあぁっ、あぁん……っんはっ、あぁっ、あああっ! やぁ、らめぇ……っおま○こ、やぁ……っ!」
「やべえわ、絢羽のま○こ最高に名器だわ……こりゃたまらねえよ」
 日高はそう言うと絢羽を突き上げながら、絢羽の動画を撮影している。
「やぁあっ! あつ……っぅあ、あ……っやぁあっ! あ、あっ――!!」
もう撮影されていることを抵抗も出来ないほど、絢羽は酔わされてしまっていた。突き上げて少しでも抵抗しようものならまたウイスキーの原液を飲まされる。
 けれど完全に酔い潰したら反応がないのでつまらないのか、微妙な調整で絢羽は眠りに落ちないようにされた。
 日高は絢羽の体を楽しんで、一晩中絢羽の中を突き上げ続けた。
「ひぁあ……っあっ、あっ……あぁっ! ふぁ……ぁ、ん……んぅうう!」
リビングでずっと犯され続け、絢羽は体を日高によって開発された。
 翌日になっても大学は休みだからか、日高は絢羽に酒を飲ませて色んな場所で絢羽を犯した。
「ぅあぁあ! ぁひ……っ、ひぃい……っ、あっ、やっ、ああ……っ! いやだこれっ、あぅっ!」
結腸の中にローターが挿入り込んでしまい、それが中を揺さぶることで絢羽はとてつもない快楽に陥った。
「んあは……っあぁ、あぁ、も、ぅあっ、も、ムリ……っ! ひぁああああっ!!」
「絢羽……お前、本当に才能あるぞ。ネコに向いているなんてもんじゃない……絶対にこっちで男を満足させることができる淫乱な体だ……」
「あっあっあっあっ……! んひゃぁぅ……っ!」
 日高はそう言いながら絢羽を突き上げ続け、中で何度も精液を吐き出していく。
あまりに酔ってとうとう絢羽が潰れても、日高は止まることもなく絢羽を起こして犯し続けた。
「やっ! あぁっ! な、やぁ……っ、止まらな……っ! あっ、あぁあっ!」
目が覚めても日高は絢羽を犯すことは辞めず、風呂に入っても食事をしていても絢羽の中にペニスを突き挿入れ続けた。
「あっ、あぁっ、ゃ、やだぁあ……っ! あっあっ、ダメ、ダメ、そ、そこだめ……っやめ、あぁっ!」
三日も同じことを繰り返していたらさすがに絢羽もその快楽に慣れてきてしまった。
「ああ……っ、らめっ…ああっ! んっ……あ、ああ……っああ……!」
パンパンと勢いよく突き上げる日高は、完全に絢羽の体を作り替え、セックスをしていないと物足りない体へと仕上げてしまった。
「ああっ、や……っ、も……あっ、あっんああ!あっ……ああー……っやあ……っ、あああっ!だめ、だめ……!」
絢羽はドライオーガズムで達してしまうほどで、潮も吹き、尿も漏らした。
「あぁ……っ!やだ……ああっ!あ!ぁあ―――ああ……っ、ああぁ……っあ……っ、んんっ」
たった三日前までそんなことを知らないで生きてきたのに、三日で絢羽はセックスなしでは生きていけないくらいの快楽を思い知った。
「んぁああっ! イッてるから……っあああ! ぁんっあんんーっ! あん! はぁああん……っ」
「ほら、最後にたっぷりと中出ししてやるよっ!」
「いやだ、やめて、せいえき出さないでっ……いやあっ、おま○こにせいえき出さないでぇえ……!」
「出る……っ、くうっ……」
「ああっ、やだ、や、あ、あ、いく、いくっ、いっちゃ……あぁっ、やだあああぁぁ――……っ」
 日高は最後にたっぷりと絢羽の中に精液を吐き出すと、やっと満足しきったようにペニスを抜いて大きく息を吐いた。
 その間の淫らなセックスの状況を日高は常に録画を続け、膨大な動画と写真が日高のスマホに残っている。それを絢羽は気付いていなかった。
 その後、日高が満足して帰っていくと、絢羽は少しだけ後悔で泣いた。
 日高の目的はセックスができる同性が欲しいだけで、こうやって飲み会で引っかけた男の自宅に入り込んで犯しまくっているのだろう。
 特にカミングアウトをしていないゲイなど格好な餌食と言えた。誰にも相談できないし、自業自得で泣き寝入りするしかないことなのだ。
 警察なんて絶対に相談できないし、親にも言えない。
 絢羽も同じように誰にも相談は出来なかった。
 そのまま絢羽はそれからもう三日休み、大学は一週間休んでしまった。
 心配した志田が三日目に連絡をくれたけれど、絢羽は。
「ごめん、ちょっと家のことで忙しくて、うん、あと三日くらい休むよ」
 そう言って誤魔化した。
 あまりに酷い顔をしていたので三日でそれが直ってくれるのを絢羽は願った。
 自業自得過ぎて警戒心も持たなかったせいで、好奇心にも負けた結果だ。
 もう誰も信じないと絢羽は思ったが、次の日に日高から連絡がきたのだ。
『俺、お前のこと好きになった。付き合いたい』
 と、凄く真面目な日高の言葉に、絢羽は少し迷った。
 酷いことをされたけれど、日高は真面目に付き合いたいと言い出した。
 そしてそのまま家で会うのは怖いのでファミレスで日高と会ってみると、日高は最初に頭を下げてきた。
「本当に無理矢理でごめん、誰にも渡したくなくて夢中になりすぎた……きっと嫌われていると思うけど、それでも俺、やっぱり絢羽のこと忘れられなくて……」
 行き摩りでセックスをしてしまったけれど、そのあまりの良さに日高が絢羽に惚れたというのが今回の謝罪に繋がっているようだった。
 絢羽もふと考えた。
 このまま付き合っていけば、あんな乱暴なことはされないのかもしれない。
 それに日高の顔に惹かれて、家に招いてしまったからこそ、日高のことは嫌いではなかった。
「もちろん、絢羽がいいと言うまで触らないから……、だからデートから付き合いをやり直したい」
 日高がそう言うので本当に日高は絢羽に惚れたのだろう。
 絢羽は考えさせてくれ、三日後に返事をするとその日は断って家に帰った。
 考えを纏めるために絢羽は部屋を掃除して、綺麗にした後、案外自分はそこまで傷ついていないことに気付いた。
 セックスで屈辱を味わったというけれど、実際は快楽を与えられすぎて自分の感情が追いつかなかっただけなのだ。
 セックスというモノを甘く見ていたせいで、振り回される自分が怖かったのだ。
 けれど日高がそれを見抜いて、絢羽に乱暴したのは絢羽にも責任があった。
 セックスをするつもりがなかったのなら日高を家に招かなければよかったのだ。
「僕……少しは期待をしていたのかも……」
 セックスに興味があり、日高と出来ればいいと思っていたのかもしれない。
 そういう関係になれれば、気持ちも固まるかも知れないと思った。
 だから日高の言う、デートからの恋人関係になることを一度は経験してみようと絢羽は思った。

 それから日高に付き合うと返事をしたところ日高は凄く喜んだ。
「やった、嬉しい。あ、でも周りにあんまり知られると困るよね。だから友達ってことで最初はあちこち出かけてデートをしよう」
 ニコリと笑う日高は、あの日の男らしい顔はしていなかった。
 そのデートを凄く穏やかで、食事をして映画を見たり、遊園地に行ったりとするだけで、夜には自宅に帰れた。
 そのデートが二週間続いても日高はセックスのことを持ち出さなかった。
 本当に絢羽がいいと言うまでしないつもりらしいのが伝わってきて絢羽はホッとしたと同時に日高に対しての好意が段々と生まれ始めていた。
 愛情も生まれ始めて、日高といる日々が楽しくなってきた時だった。
 それは急に絢羽を貶める出来事としてやってきたのだった。

感想



選択式


メッセージは文字まで、同一IPアドレスからの送信は一日回まで