slavery

02

 維稚が彰良に連れられて東京に出たのは、夏休み後だった。
 それまでにいろいろな準備があると彰良に言われ、時間は凄くかかった。
 けれど維稚は今まで暮らしていた家の荷物は何一つ持たされなかった。
 洋服から家具類まですべて彰良が準備をした。
 服を買うにも最低限の服を地元の有名な百貨店で買ってもらい、街のホテルで過ごした。
「くそっ、あんな酷いところに住んでいるなんて思わなかった」
 彰良が最初にそう言ったのは維稚がホテルに移った後だ。
 維稚は何が酷いのか分からなかったけれど、彰良が言うには離れの家が塀に囲まれ、さらには有刺鉄線で脱出が不可能にされていたことだったようだ。
 そこで維稚はそういえばと思い出す。
 彰良は維稚の家には来たことはない。
 大体が彰良に呼び出されて彰良の家に行くときは、父親が維稚が逃げないように車で送っていたし、学校からそのまま彰良に連れ込まれていたから、彰良が維稚の家にくる必要性がなかったのだ。
 てっきり維稚が逃げたことを周りの住人が彰良に言ったから彰良があんなふうに逃げられないようにするように命令をしたのかと思っていたがどうもそれは違うらしいのだ。
 維稚の生活環境は維稚が何とか自分で掃除をしたりしていたけれど、それ以外が酷い環境だった。
 家は離れとはいえ掘っ立て小屋だったし、隙間風はある上にエアコンなしで夏は暑さで外にいる方がマシというレベル。辛うじて風呂だけは付いていたのでそれで体は綺麗に出来たが、洗濯機がなかったので服は風呂場で手洗いするしかなかった。
 最低限の生活環境がないことについて彰良はかなり憤っていたらしい。
 維稚が嫌でも彰良の家に行っていたのはまともな物を食べさせてくれるのが彰良の側だけだったからだ。
 食事さえ、夕方に一食だけ菓子パンと水が与えられていた程度だった。昼食は幸い学校で給食が出ていたので朝を抜く程度で済んでいた。
 そのせいで成長期に必要な維稚の栄養は与えられず、それが成長に著しく影響を及ぼしていた。
 彰良によって病院に連れて行かれた時には栄養失調寸前だった。
 大学生になった彰良が側にいなくなったことで高校生になった維稚の昼食は給食が廃止されていたので食事はまともな物を食べられることは一切なく、夕食の菓子パンのみとなってしまっていた。
 それでも昼食が何とか食べられるようになったのは、浅見がいいところを見せるために維稚の親に虐待を匂わず言葉を口にしたため、外面をよくするために親が仕方なしに一日五百円のお金を与えてくれるようになり、それでまともな昼食が買えたことくらいだろう。
 浅見が下心満載でした中で唯一のいいところはそれだった。
 だから維稚は浅見には恨み辛みよりも食事を食べる環境をくれたことだけは感謝しているくらいだった。なので少し浅見のことは残念だった。
けれど結局はそれすら他人頼りであり、自分でその生活から抜け出そうとしなかった結果だったのかもしれない。


 維稚は東京に出ると生活環境はガラリと変わった。
 それまでの隙間風のある家ではなく、きちんとした家でエアコンによって夏は涼しく、冬は暖かくなった。
 食事は彰良が雇った家政夫が毎週やってきて作り置きをしてくれた。
 維稚はその人から初めて電子レンジの使い方を習った。
 そこに入れるだけで暖かくなる食品に維稚は感動したくらいだ。
「昔は使わせて貰えなかったから、こんなに便利だったなんて」
 維稚がそんな感想を漏らしたら、彰良がそれを聞いて舌打ちをしていた。
 暢気な感想だから怒られたのかと思ったが、どうやらそれすら使わせて貰えない生活だったことに憤ったのだ。
「お前の親はお前のことをなんだと思ってんだ」
 彰良がそう言うけれど、維稚からすれば何を今更な感じだった。
 彰良のせいで維稚の立場が家庭でなくなり、厄介者扱いになってしまったのだ。けれど維稚はそれを彰良だけのせいではないなと思った。
 周りがそういう空気にしてしまったのだ。
 親が言い聞かせて、そして彰良の親にちゃんと抗議を出来ていたら、少しは生活がマシになっていた可能性はあるわけだ。
 それを両親はしなかった。
 あの後、彰良は維稚の生活環境の悪さから親に対して虐待で訴えられたくなければ、維稚の親権を手放すことを求めた。
 彰良が連れてきた児童相談所の職員は離れの様子を見て、親に対して法律に違反していることを告げた。もちろん親は彰良のしてきたことを口にしたらしいが。
「ではどうしてその対価で貰っている多額の金で貴方たちだけが豪遊三昧していたんですかね?」
 と、金品を受け取っている事実まで罪に問えると言われた。
 彰良の父親は彰良のやっていることは知らないとし、そうと知りながら助けもしないでいた上、彰良が世話になっているからと援助したお金を維稚に還元していなかった事実にかなり強い拒否反応を示したらしい。
 そのせいで両親は会社をクビになり、さらには立場を使った横領まで見つかってしまったのだ。
 もちろんそれはしていないと親は言ったらしいが、それでも口座に会社員には稼ぎようもないお金が振り込まれていて、それが盗まれた会社の金と一致してしまったのだ。
 要は親は彰良によって嵌められたわけだが、親にそれを覆す無罪の証拠は何処にもなかった。
 また旅行三昧や高級品を買うために散財していたことも横領の事実になってしまったのだ。
 恐らく少量の横領はしていたけれど、巨額の横領はしていないのが本当のところなのだろうと維稚は思っている。
 結果、親は維稚の親権を手放し、彰良の父親が維稚の後継人となって維稚を引き取った。
 親は口座にあったお金を全額返し、会社をクビになり、街には居所はなくなってしまったが、街から出て行っても住むところがないため、そのまま持ち家に住み続けてるようだった。
 その関係で維稚の弟である二千華(にちか)も高住家に引き取られてそこで家政夫によって育てられていると聞いた。
「弟は三歳になったばかりか、維稚の態度次第では最高の教育を施してやれるが?」
 それが彰良にとっての最高の手札になったことは間違いなかった。
 維稚はなんとも思っていない弟のために、彰良から逃げることが出来なくなったのだ。
 さすがに三歳の弟に罪を被せられるほど維稚は弟を憎んではいなかった。
 もし彰良が身代わりに育つまでまって維稚にしたようなことをするようになったとしたら、後味の悪い結果にしかならないだろう。
「分かってます」
 維稚は彰良にそう答えてから言っていた。
「二千華には普通の十分な環境と教育をお願いします」
 自分の時のように食うに困らず、寒さや暑さに困らないままでいて欲しかった。
 維稚が犠牲になることで二千華はそれらの苦労をしないで済むのだ。
「分かった……お前の望むようにしよう」
 彰良はそう言うと、維稚が浅見に襲われてから二月ぶりに維稚の体に触れた。


「ああ、あああ! やあぁあっ……! や、だっ……あ、んんぅう!」
 こうなることは分かっていても、それでも維稚は彰良には抵抗をしてしまう。
 浅見にされたことを一瞬思い出したが、それでも彰良が言うのだ。
「俺を見ろ、維稚。お前を抱いているのは俺だ、高住彰良だ」
 伏せた顔を上げられて目を開けるように言われた。
 目を開けるとそこには浅見ではなく、彰良が険しい顔をしている。
「あぁあっ、はぅん……っ、あ、あ、あっひぁあああっ! ぁう……っ、ぁ、う……っ」
久しぶりにしっかりと彰良の顔を見た気がした。
 既に半年ほど会っていなかった間に、彰良の体つきが更に大きくなっていた。筋肉が付いていて、幼かった体が完全に大人になってきていた。
 その力強さは更に増していて、維稚はその腕に押さえ込まれてしまった。
「あぁっ……、あ、ぁんっ、あっ……あつ、い……っん……っ、んは……っ」
「維稚……しっかりと感じろ、お前を抱いているのはこの俺だっ」
「んは……っ、ぁ、……は、はぁ……っ、や……はぁ……っ」
奥を抉じ開けられて突き上げられると、維稚は過去のセックスよりも力強くなっていることにも気付いた。
 その強引さは力強くなり、抱える彰良の腕も太く、もう普通に逃げるなんて無理だろう。
「ひんっあゃ、ん……、やめっちくびっ触っ……やあ……っあ、ゃ、やだ……っ」
「体はしっかり俺を覚えているな……この乳首もちゃんと勃起してやがるっ」
「や、ぁん……っあふ、……ぁ、あ、やだ……っあっ……、は、はっ、ぁ、ゃ……っやぁ……っ、ぁん、あぁっ、ああ……っ」
彰良の指で維稚の乳首をこね回されて乳首は完全に勃起していた。
ゾクリとすると感覚が生まれ、自分が快楽を思い出していることを知った。
「やぁあっ?! あぁっ、あぁん……っんはっ、あぁっ、あああっ! やぁ、らめぇ……っあああ、やぁ……っ!」
ゴンゴンと奥を突き上げられて維稚は快楽に嬌声を上げた。
 パンパンと奥を更にこじ開けられる感覚は彰良からしか味わったことはない。
 浅見の拙い強姦など、それこそ僅かな快楽しか得られなかったけれど、彰良が与えてくる快楽は想像していたよりも強烈だったことを思い出した。
「やぁあっ! あつ……っぅあ、あ……っやぁあっ! あ、あっ――!!」
「くそっ……本当に維稚を手放すとか……何考えてたんだ、俺はっ! こんなの無理だろうがっ!」
 彰良がそう叫び、結腸の中に亀頭を突き挿れてくる。
「ひぁあ……っあっ、あっ……あぁっ! ふぁ……ぁ、ん……んぅうう!」
抉じ開けられるだけで快楽を得るようになってから、半年も放置されていた体がそれを求めていることに維稚は気付いてしまった。
 快楽を覚えたからこそ、体がそれをよく思い知っていて、求めるようになってしまっていたのだ。
「ぅあぁあ! ぁひ……っ、ひぃい……っ、あっ、やっ、ああ……っ! いやだこれっ、あぅっ!」
「ここに精液出してやるよっ!」
「んは……っはぁ、はぁ、も、ぅあっ、も、ムリ……っ! ひぁああああっ!!」
 絶頂へと追いやられて、維稚はそのまま彰良の精液を受け入れて絶頂をさせられてしまった。
「あっあっあっあっ……! んひゃぁぅ……っ!」
維稚は奥に精液を吐き出されて、それでまたドライで絶頂をした。
 久しぶりに味わう絶頂感と、受け取った精液に体が想像以上に喜んでいるのが分かった。体はそれを求めていて、脳天を突き抜ける絶頂に全身が震えてしまう。
「やっ! あぁっ! な、やぁ……っ、止まらな……っ! あっ、あぁあっ!」
維稚が快楽に身を委ねた瞬間、維稚のペニスから透明な液体が噴き出した。
「あっ、あぁっ、ゃ、やだぁあ……っ! あっあっ、ダメ、ダメ、そ、そこだめ……っやめ、あぁっ!」
ビュービューッと吹き出すそれは潮吹きだった。
「ひぃ……っああ……っ、あ、あ、あ、あぁ……っ、あぁあっ……!」
「やっと維稚も潮吹きを覚えたか……はは、突き上げるたびに吹き出てるなっ」
「んぁああっ! あぁっ、あ、……ぃやあぁっ! ゃだ、やめ、やめて……っ! それ、やだ、も、……っぁ、あっ」
吹き出る潮を止めることもできず、維稚はまだ彰良に突き上げられている。
「ああっ! ぁ、あ、あっ! あぁっ……っやめて、っぁっあぅ、はぁんっ! ん、んぁ……っあ、お、おかひ、なるぅ……っぅあっ」
「おかしくなれ……もっとおかしくなれっ」
 彰良はしっかりと維稚を後ろから抱き締め、突き上げながらも維稚を求めた。
「あぁっ、あ、ぁ、ぃ、いい、ああぁ……っ、あぁ゛あぁあっ!」
悲鳴のような嬌声が上がり、維稚はただただ彰良によって快楽に突き落とされ続ける。どれだけ望んでも決して離して貰えず、萎えることを知らない彰良のペニスが射精をしながらでも硬いままで奥を抉じ開けてくる。
「ああぁあ……っ! ゃ、やめ、だ、ぁ、あぁっ、ああぁっ! や、やらぁ……っ! らめぇえ……!」
「維稚、体に刻め、お前は俺のものだってことをっ!」
「ああ……っ、あっ、あっ、ひぅっ! あ……っ! い、や……っいやぁ……っあぁっあっあっやっ、やぁ……っ、ぁん、ぁ、ふぅ……っん……っ、はふ……っは、ぁあん……っ」
「抵抗したって無駄だ。お前は俺のものだ、こうやって俺の手で喘いでいればいいっ!」
「あぁ、あぁ、あぁ、はっ、はぁっ……ひぁ……っ! あんっ! あっ、あぁあ――……っ! あぅっ、ぁっあっあっあっ、やっ、おちんぽ……っ、やめてぇ……っ!」
「やめるかっ! もっと感じろ!」
そう言い彰良は更に力強く突き上げ続ける。
「あっ! あぁん……っ! っあ、あぁああっ! あああっ! はぁっ、はぁっ、は、ぁあん……っ!」
「どうせ、お前の心は要らない、体だけでも俺に縛り付けてやるっ」
「あぁああっ! あっあ、はふっ……ん、はぁあんん! んあ……っ、ああ……っら、めぇ……っ!」
彰良はその時になって初めて維稚の心を拒否した。
 維稚にとって心なんてずっと潰されてきたからないようなものだ。それをずっと欲しがって結局諦めた彰良を維稚は静かな目で見てしまう。
 何を今更だ。
 最初に心を殺したくせに、それを求めていたなんて滑稽だ。
 死んでも彰良には心は靡かない。
 だってそのせいで自分は最高に不幸な人生を送っているのだから。
 愛なんて意味がないことを誰よりも知っているのは維稚だけだった。
「やっああっああっ……やだ、そこ……や……、ああうっ、ああ……ああっ……ああ……っ、らめっ…ああっ! んっ……あ、ああ……っああ……!」
 突き上げる彰良のペニスが完全に結腸を開いて亀頭は挿入り込んでくる。それがあり得ないほどの快楽を呼んで、維稚は狂いそうなほどにその波に呑まれた。
「ああっ、や……っ、も……あっ、あっんああ!あっ……ああー……っやあ……っ、あああっ!だめ、だめ……!」
「このままイケっ! 維稚っ!」
「あぁ……っ!やだ……ああっ!あ!ぁあ―――ああ……っ、ああぁ……っあ……っ、んんっんぁああっ! い……った! ぁんっあんんーっ! あん! はぁああん……っ」  
 彰良に言われたまま維稚は絶頂をしていた。
 信じられないくらいの絶頂の仕方をして、快楽が脳天を突き抜けた。
 その瞬間、気が遠くなるように意識が段々とゆっくり沈んでいく。
 そんな維稚を彰良が抱き締めて一言言った。
「維稚……どうして俺じゃダメなんだっ」
 そう彰良が言っている声が耳に残って維稚は困惑しながら気絶をしたのだった。

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