slavery

01

 深津維稚(いち)は自分が何のために生きているのか時々分からなくなるような目に遭っていた。
維稚は小さい時から三つ上の近所に住む男によって性的な悪戯をされ続けた。
 悪戯をしてくるのは近所に住んでいる、名前は高住彰良(あきら)という不良だった。
 彰良の家は裕福な家だったけれど、成金の金融業をしているだけあり、乱暴な物言いをする人間が家に出入りをしていたので次第に彰良も口が悪くなり、粗暴だった。
 維稚は彰良とは昔は仲が良かった。
 父親が彰良の父親の金融会社の事務員として雇われていて、景気がいい時はよく家族ぐるみでパーティーをしたり、キャンプに行ったりするようになった。
 小さい時は親切に可愛がって貰ったので集まりに行くのは楽しかった。
 しかしそれが維稚にとって苦痛になってきたのは小学二年くらいからだった。
 彰良とは三つ離れているのだが、その彰良は何かと維稚の体を触りまくり、維稚が抵抗ができないのをいいことに体中を舐めたり、彰良の性器を口に咥えさせて扱かせたりとしてきたのだ。
 維稚はそれに抵抗を続けていたけれど、親はそれに気付かずに維稚はよく彰良と家に残されたりしていた。
 その時にはとうとう挿入までされ、体の関係になった時には維稚はまだ同性愛というものを知りもしない時だった。
 体だけは一丁前に快楽を覚えていき、維稚は彰良のおもちゃに成り下がっていた。
「維稚、おらしっかり腰触れ」
「はぁ……あっ……ぁ、はっ……は……っ、あぅ……う」
 体だけはしっかりと大きくなってきた時だった。
 性的なことは全部彰良から教えられ、維稚はアナルで彰良のペニスを受け入れて腰を振らされる。
「はぁ……あぁ、ああ……あっく、んぅっ……」
彰良の家には昼間は彰良しかいない。
 家政婦は家の人がいない間に掃除洗濯をしていき、料理はレンジで温めるだけにして彰良が戻ってくる前に全ての作業を終えている。
 そうしないと彰良が癇癪を起こして家政婦を犯すからだ。
 前の家政婦はそうやって彰良がおもちゃにしてしまったため、彰良の父親が家政婦の管理をして彰良が確実に学校へいっている時しか家に入れなかった。
 問題児の彰良は、実は頭が非常に良かった。幼いときは天才と言われ、三歳で中学生の数学を解いたりもしたらしい。
 らしいというのは、その後になって彰良が勉強以外の素行が悪くなってしまったのだ。
 天才に育てるために母親が彰良に英才教育をさせようとして彰良を無理に塾へ通わせたりした。
 小学生になると学校で彰良は同級生を殴り怪我をさせたのを機に暴力で周りを従わせるようになった。
 しかしその中でも一度も殴られるという暴力を受けてなかったのが維稚だけだった。
 彰良と維稚を一緒にしていると彰良が落ち着くのか、大人しくなったので周りは維稚にその重荷を全部背負わせてしまった。
「や……あっ、あ、彰良くんっふぁ、ああ……っふ、ああ……はぁっ、あ……」
「維稚、大分奥まで入るようになったな……やっぱ大人のおもちゃは有効だな」
 しっかりと奥までペニスが挿入るようになったのは高学年になってからだ。体がしっかりとできあがってくるのに合わせて彰良の形に合わせられた。
「ああっ、く、あっ、ひぁ……あは……あっ、ああ……っ」
「いつ突っ込んでもお前の中、気持ち良すぎだろっ」
「ひぁ、ああっ! あぁっ、やだ、や……ああっ」
グリッと奥を突き上げられるたびに体がビクビクと震えるのは絶頂を常にしているからだと知ったのはかなり後のことだ。
 まだ精通しきってない時から彰良に弄られ続けた体は自然にドライオーガズムを覚えた。
 そのせいで彰良は更に維稚の体に興味を持ち、セックスという行為に填まっていくことになってしまった。
「んぁっ……あっ、ああぁっやぁっ、あ、あぅ、うー……んっんんんっん!」
彰良は維稚をイカせるごとに腰つきが激しくなり、維稚を四六時中抱きたがった。
「あぁっ!ひ……っ はぁ、あ、あ、あ……っああっ、うあぁ……っあ、あぁっ……ああぁ……!」
「維稚、お前は俺から逃げることはできない。その手を伸ばしても俺にしか繋がってない」
「あぁっ、あっ、や、おちんぽっはげし……っ、ああっ!あっ、あーっ……!」
維稚がどれだけ助けを求めても、強引に彰良の家に連れ込まれて体の関係を結ばれてしまう。
 どれだけ嫌がっても彰良は抵抗する維稚を押さえつけて体で言うことを聞かせるのだ。
 彰良が不機嫌になると大人としては面倒臭いのか、大人の方から維稚を彰良に近づけた。酷い時には寝ている間に彰良の部屋に運ばれたことだってあるほどだった。


 中学生になると高校生の彰良の力強い腕力に逆らえるわけもなく、維稚は彰良から逃げられる環境になかった。
 中学ではもう既に周りに維稚が彰良の性的なおもちゃであることは知られていたし、彰良は所構わず盛るため、誰かに見られたりもしていた。
 幸いなのは周りが維稚に構わないことだった。彰良が怖いから、陰口くらいで済んでいたし、それは維稚には全く意味がないことだった。
 残念なことに維稚は肉体的な暴力を振るわれて耐えられているからか、人の陰口くらいで精神はおかしくならないらしい。
 維稚の精神が図太くなってしまったのには、維稚の親が関係している。
 さすがに耐えられなくなって維稚が父親に泣きつこうとした時。
「いいか、お前は耐えるしかないんだ。俺たちはあの人達のお陰で生活ができている。ここから一文無しになって暮らしていけないし、今更家族仲良くなんて無理だ」
 そう父親に先に釘を刺されたのだ。
 父親は当然維稚と彰良の関係を知っていた。
 むしろ、維稚の存在で彰良の機嫌が取れていることで彰良の父親からボーナスを貰っているほど儲けていた。
 その生活は派手なもので、旅行三昧の親はその贅沢な生活を捨ててまで維稚を助ける気はなかったようだった。
 維稚は親にも見捨てられて、助けられることはなかった。
 そして維稚に弟が生まれたのは維稚が父親に相談をした翌年だった。
 両親は維稚を彰良に差し出してしまったので、弟を猫可愛がりをし、維稚を敷地内に掘っ立て小屋の離れを用意して隔離までしてしまった。
 維稚は親にも完全に道具としか思われなくなってしまったのだ。


そして維稚がその生活環境に耐えられなくなり、高校に入学する時、維稚は家出をしようとして家を抜け出した。
 しかしそれは街を出る前に近所の人によって阻止されたのだ。
「ダメだよ、あんたは絶対に彰良から逃げてはダメだ」
「早く家に戻りなさい。今なら彰良にもバレない」
 大人達にそう言われ、駅で捕獲されて離れに戻された。
 そこで維稚はこの街の人間が維稚を見張っていることに気付いたのだ。
 周りの大人は少なからず彰良の父親にお金を借りている関係だと気付いたのは、逃げ出そうとした時に話を聞いてしまったのだ。
 地域一帯で維稚を彰良に差し出すことで借金の返済を一部免れているのだという。
 維稚一人が犠牲になることでこの地域は生かされていた。
 維稚の周りは更に警戒が強くなり、逃げ出すことは不可能になってしまったし、父親にバレてしまい、維稚が隠し持っていた通帳も取り上げられてしまった。
 お年玉を貯めていたものだったが、かなり振り込まれていたので二百万ほど入っていたのだが、それも全額引き出されて残り数円しか入っていない通帳を渡された。
「お前は贄だ。絶対に逃げることは許さないからな」
 父親にそう言われ、夜は離れのドアに鍵を掛けられ、中から出入りが出来る場所には塀が作られてしまい、塀の上には有刺鉄線が張られ、維稚は刑務所の中にいるような環境に置かれた。
さすがに維稚も死ぬしか逃げる道がないことに気付いたが、死ぬのはこの環境においてもまだ怖かったのだ。


 そんな維稚に友達が出来たのは維稚が高校生なった時だった。
 彰良は大学のため東京に出てしまい、やっと維稚の日常生活に彰良の影が消えた時期だった。
 転校生だった浅見喜弘は維稚が周りから避けられていることに気付いて、クラスメイトに逆らってまで維稚に近付いた。
「やめた方がいいって、今はあれだけど、いつか後悔するって」
 そう言ってクラス代表で委員長が止めに来たが、浅見はそれに真っ当な返事をした。
「全員で寄って集って無視するとか、あり得ないんだけど?」
 浅見はそう言い放ち、維稚に近付いてきた。
 維稚は最初は同じように浅見を無視した。
 それでも浅見は諦めずに近付いてきた。
「もう君はあいつとは会ってもいないし、繋がってないんだよね」
 噂が本当であることは街中が知っていることだった。
 けれど高校の一学期中、彰良は東京から戻ってくることはなかった。
 どういうつもりだったのか分からないけれど、東京で誰か代わりを見つけたか、東京の魅力にやられたかしたものだと思っていた。
「繋がりも何も……僕はあいつの連絡先すら知らないよ?」
 それは本当だった。
 東京に出た彰良は連絡先を一切教えなかった。
 携帯電話もスマホも維稚には与えられていなかったので、そもそも連絡先を残すことを失念していたのかもしれないが、維稚はその煩わしさからは逃れられていた。
 浅見はそんな維稚と彰良の隙間に上手く入り込んだ存在だった。
 それは油断だったろうか。
 それともそうなるしかなかったのか。
 維稚は浅見に強引に家に上がり込まれて襲われた。
飲み物に痺れ薬を仕込まれてしまったのだ。
「んぐ……っ、んんうっ」
 維稚が意識があるまま押し倒されていて、浅見はそれまでの優しい友人の笑顔から雄の顔に変わっていた。
「ああ、最初からずっと狙ってたんだよね……どうせ成金の慰みものだったんだから……誰が相手でも一緒だよねっ」
「んふぅっ、うっ、くふ、う、うう……っ」
 無理矢理アナルにローションを入れられ、そこに慣れていないペニスを突き入れられていた。
「ふ、う……っ、くぅ……」
「あれ? なんだあんまり使い込んだ感じはしないね……本当に成金野郎に捨てられてたんだ? あははっ大丈夫これからは俺が飼ってやるよっ」
「ふうっ……!んっ、く……はあっ、あぅ、あぁ…… ……っ」
 強引に押し入られてしまい、ペニスで感じることを覚えさせられているせいで、彰良以外でも維稚は感じることが出来た。
「あぁんっ、あっ、はぁっ……あーっ、あーっ……!」
 前立腺を突き上げられれば勝手に体が反応したし、快楽に連れて行かれる。
「あぁっ……あっ、いや……っ、い、いや……いやああっ!!」
 やっと声が出るようになったのは一時間以上も浅見に好き勝手に犯された後だった。
 その時だった。
 急に暗くなった部屋に明かりが灯り、維稚の上にのしかかっていた重みが消えたのだ。
「……あうっ……」
 ドガンッと普段聞いたこともない音が部屋の奥でして、その音の方を見ると浅見がダイニングのテーブルと椅子に突っ込んでいるのが分かった。
 維稚は何が起こっているのか分からず混乱した。
「てめえ、何、人の物に手を出してやがるっ!!」
 ジャリッと靴で上がり込んできていたのは彰良だった。
 久々に見た彰良は髪の毛が赤い色に変わっている。なので一瞬誰か維稚には分からなかった。
「ざけんなよ、殺してやる!」
 彰良はそう言うと倒れている浅見に飛びかかり、何度も浅見を蹴り上げている。
 維稚はそれを止めようにも体がまだ痺れていて動けなかったのでどうにもできなかったが、大きな騒ぎを聞きつけた父親がやっと維稚の離れにやってきて惨劇に気付いて止めに入った。
 彰良は怒りが収まることもなく、父親と数人の近所の人に抑えられ、浅見はその間に連れ出されたが、あれは恐らく何カ所も骨折をしているだろうと思うほどに足も腕も変な方向に曲がっていた。
 維稚はそれを見てから少しだけホッとした。
 これで浅見は二度と維稚には近付かない。恐らくこのことはなかったことになるだろう。そう思ったら裏切られた気持ちはどうにか収まりそうだった。


 その事件後、維稚は高校を退学した。
 彰良が維稚のことを手放せず、東京に連れて行くと言い張ったからだ。
 維稚は放っておいて貰ってもこうなるならもう彰良の側でも同じだと思った。
 浅見はあの後、維稚に対して賠償金を払った。
 かなり彰良が無理をしたらしく、そもそも浅見の怪我は問題にされなかった。治療費は彰良の父親が支払ったらしいが、もし彰良を訴えるなら維稚の強姦に関して警察に届け出ると強気に出たところ、浅見の両親がそれだけは困ると彰良たちの提案に乗ったのだ。
 浅見は海外に飛ばされてしまい、寄宿舎のあるスクールに放り込まれることになり、怪我は全治三ヶ月かかるらしい。折れた肋骨が臓器を傷つけていたらしく、かなり苦しんだ上で一ヶ月間病室にいる住人に見張られた上、元々住んでいた九州の町の病院に転院をしたらしい。
 あれから維稚も学校に行っていないので周りが何を思っているのかは知らないが、こんな街はもう維稚も捨てることにした。
 彰良はごねた割には維稚があっさりと付いてきたことに機嫌を良くしていたが、維稚がそれ以上彰良に心を開くことはなかったのですぐに機嫌は前のように戻ってしまったのだった。

感想



選択式


メッセージは文字まで、同一IPアドレスからの送信は一日回まで