彼方より
047
終焉の業火、解呪作戦
「すまない、こんな騒動に巻き込んでしまって……」
カルロさんがそう言って謝ってくるけど、仕方ないよなと俺は思う。
どうやらフランコさんが言っていたことは半分は本当のことらしい。
「確かに大迷宮に挑むには我らの力が足りないことは事実だ……だがそれは……」
「呪われているからでしょ?」
俺はそう言った。
迷宮に潜るために彼らは能力を駆使している。
その中でそれまで問題なく使えていたものが呪いによって効果が薄くなってしまったら戦力がダウンしてしまうのは仕方がないことだ。
「ハルには分かるのか!?」
マッテオさんがそう言って驚いていた。
「でも、私たちには呪われたところはないって……そう教会でも言われたじゃないか」
サンドロがそう言って、有名な解呪師のところにも行ったと言う。
どうやら呪われているのではないかと思い、何回か解呪のできる人を探して呪われていないか確認してもらったらしい。けれど呪われていないと言われたんだとか。
そりゃそこらの解呪師じゃたぶん見えないと思う。
俺が聖女で呪いの類いに強いみたいだから見えているだけだと思う。
おそらくアッザームにだってカルロさんが呪われているとは見えてないと思う。
多分だけど、これは普通の呪いじゃなくて、旧神からの呪いだから解呪師では見えない呪いなのかもしれない。
俺の解呪はいかなるものもって説明してくれたから恐らくできるんだろうけど。
「そうは言っても俺たちの弱体化は明らかにあの時からじゃないか」
カルロさんがそう言うので皆が黙ってしまう。
どうやら自分たちが呪われているかもしれないとずっと思っていたのだ。
でもどの人に聞いても呪われていませんと言われてそれでも信じることができなくて迷宮に潜っている場合ではなくなったのだ。
百年それで頑張ったみたいだけど、大迷宮をとうとう撤退することになってしまったのだ。
皆力が昔ほど出ないのは呪いではなく、衰えなのではないかと思えてきたところだったらしい。
「えっと、じゃあ、とりあえず。皆さんの鑑定をしますね。それで何が呪われているのか書きますね」
俺がそう言ったら皆素直に鑑定をさせてくれた。
もう藁にも縋りたいくらいに困っていたんだろうね。
それにフランコさんみたいに思っている一員もいたんだろうし、実際辞めてしまった人もいたのだろう。もう引き留められるほどでもない力を誇示していくこともできなかったのかもしれない。
そんな時にレテカから新しい迷宮が百層目に達したかもしれないと聞いて最後の賭に出て戻ってきたわけだ。
そんな迷宮に挑むための準備中も不安だったんだろうね。
俺は鑑定した結果を本人達に書いて渡した。
【名前】カルロ・ラザーロ
【年齢】200歳
【種族】狼人族(ライカン)
【基準lv】 1200
【称号】 剣聖
【技能】 剣術(呪い) 鑑定 収納(呪い) 生活魔法(水) 火魔法
【運】 幸運(中)
【加護】 火の神イデアルニー・ゾー(中)
【生命力HP】 1400
【魔力MP】 1200
【職業】 冒険者 白金級 終焉の業火組織 組織代表
【名前】マッテオ・ポエリオ
【年齢】230歳
【種族】 矮人族(ドワーフ)
【基準lv】 1250
【称号】 金槌王
【技能】 鎚術(呪い) 剣術 生活魔法(火、水) 土魔法 風魔法
【運】 幸運(小)
【加護】 大地の神、土の神 ラツ・ユーノヘウロ(小)
【生命力HP】 1500
【魔力MP】 1200
【職業】 冒険者 白金級 終焉の業火組織 副代表
【名前】ロッカ・エドラス
【年齢】300歳
【種族】 (妖精族と狼人族のハーフ) 妖狼族
【基準lv】 1300
【称号】 弓王
【技能】 弓術(呪い) 剣術 収納(呪い) 生活魔法(水) 風魔法
【運】 幸運(中)
【加護】 なし
【生命力HP】 1600
【魔力MP】 1500
【職業】 冒険者 白金級 終焉の業火一員
【名前】ポール・サウス
【年齢】210歳
【種族】 巨人族
【基準lv】 1100
【称号】 盾王
【技能】 斧術 剣術 盾術(呪い) 防御魔法
【運】 なし
【加護】 なし
【生命力】 1800
【魔力】 500
【職業】 冒険者 金級 終焉の業火一員
【名前】サンドロ・ビルマ
【年齢】200歳
【種族】 狼人族
【基準lv】 890
【称号】 賢者(呪い)
【技能】 火魔法 回復魔法 浄化魔法
【運】 なし
【加護】 なし
【生命力】 900
【魔力】 1200
【職業】 冒険者 金級 終焉の業火一員
「こうなってます」
俺がそう言ったら全員が呻いてから叫んだ。
「くそっ技能が呪われてるじゃねえかよ!」
「やっぱり、おかしいと思ったんだよ!! 呪いのせいかよ!」
「俺のせいじゃない……おかしいと思った」
皆が口々にそう言って自分の衰えのせいではないと知って、ホッとしたと同時に納得がやっといったらしい。
「……本当に呪われていたんだな」
カルロさんも自分の力が衰えにあると思っていたみたい。でも納得はできなかったよね。
呪いによって彼らの力は半減したと言ってもいい。
それでも彼らは百年間試行錯誤してきて力の維持を務めてきた。
決して衰えからくると認めずにだ。
「納得してもらったところで解呪をするんですが……俺はさっき解呪を解放されたばかりなので急に上手くできるかは分かりません。でも絶対に皆さんを解呪してみせますので、何十回でも解呪をして成功させます!」
俺がそう言うと皆がパッと笑顔になった。
「それはありがたい」
「そうだ、一回程度失敗が何だ。大丈夫だ、私たちだって迷宮では成功ばかりではなかったんだから」
「そうだったな。そうだよな」
皆がそう言うので俺は全員に床にある絨毯の上に座って貰った。
「たぶん。呪いの力が抜けたら全身に疲労が残る。立っていたら倒れるかもしれない」
そう言うので床に座った方がいいだろうと思って座って貰ったのだ。
「それじゃ……」
俺は全員が座っている前に両膝を付いて座り、そして祈るように手を合わせてから解呪を願った。
お願いします、彼らの呪いを解いてやってください。この人達に罪はありません。
この呪いなんだけど、実は一人の愚行から行われていることが俺には伝わってきた。
それはあのフランコだ。
あのフランコは迷宮内で見つけた宝玉をネコババしたのである。
しかしその宝玉は実は呪われた宝玉で持っただけで呪いが発動して周りにいる者たちも呪われる厄介なものだったのだ。
だからフランコも呪われているどころか、呪いが一番かかっている人である。
その呪いは根源であるものに近付くと活性化していってどんどん呪いが重くなるのだ。
なので彼らが呪いを衰えと思うのは仕方ないことだったのだ。徐々に呪いが重くなっていっているのだからそう感じるのは普通である。
俺が祈っていると、段々とその呪いが解け始めた。
するすると知恵の輪を解くような感じで黒い物が這い出てきて絡み合いながら解き合いながら蠢いている。それはやがて一つの行き先を見つけたようにすっと部屋から抜け出ていった。
その先で階段を降りていたであろうフランコが転がり落ちたのが分かった。
分散されていた呪いが一気にフランコの中に戻ったのだ。
俺はそれでやっと目を開けた。
結構力を使ったなという疲れがあってちょっとフラッとしてしまったらアッザームが俺を支えてくれた。
「ハル、終わったか?」
「うん、終わったよ。全部できたみたい」
俺がそう言って周りを見ると、カルロさんたち全員が床に倒れている。
疲れ切った様子からして呪いが抜けるのはなかなかに辛いことだったろうに、誰も声を上げなかったのは凄かったな。
「ハル、ちょっと休んで。普通解呪ってのは一日一回、一人しかやらないし、強い呪いの場合は何回か日を分けてやるんだ」
そうアッザームに言われて俺はキョトンとする。
「え、じゃあ、一気にやらなくてよかったってこと?」
「そう」
「……そうか、でもできたからいいや」
疲れているけれど、それでも魔力の半分も使う呪いだったことは普通の解呪では絶対に解けない呪いだったんだろう。
俺はたまたま強い呪いを解呪できるように進化してくれたからできたことだけど。それがなかったらカルロさんたちは辛いままだったんだろうなと思うと、ここで解けてよかったと思った。
「カルロさんたち、大丈夫かな」
全員が疲れて倒れているから気を失っているんだと思うけど、俺も動けないのでそのままにしておくしかない。
「アッザム、全員大丈夫そうか呼吸を見てきて」
俺がそう言うとアッザームは仕方ないというように俺を床に寝かせてから一人一人確認をしてくれた。
「気を失っているだけだ。全員、気がつけば起きるだろう」
「そっか、良かった」
俺はホッとしたけど、アッザームは俺を抱えて膝に頭を乗せてくれた。
俺はそのままちょっと意識が遠のいていくのが感じた。
「寝てていいよ。俺がいるから」
アッザームがそう言うので俺はそのまま意識を手放したのだった。
それから俺が目を覚ましたら、終焉の業火の人達は全員起きていた。
「ハル、起きたかよかった」
「あんなに凄い呪いがかかっていたなんて。それを解呪するのは大変だっただろ?」
「疲れているなら回復薬があるぞ」
などと一気に寝起きに言われて俺はちょっと笑ってしまった。
「大丈夫ですよ、回復薬は自分で持ってますので」
俺はそう言って自分の収納から回復薬を取り出した。
適当に疲れていたから掴んで出して飲んでいたらカルロさんが不思議そうに俺を見ていた。
「珍しい色の回復薬だな。それちゃんと効果があるのか?」
そう言われたので俺はハッとして回復薬を見ると、最高位の回復薬だった。
人前で出すなって言われたのに……うっかり自分が飲むとかバカじゃん?
「だ、大丈夫です俺が自分で作ったやつなので普通に効き目があります。それより皆さんは飲みましたか?」
俺はそう言って話を振ると、全員が回復薬を二本くらい飲んでいた。
「飲んだぞ、二本も。かなり疲れていたんだな」
「結構解呪ってしんどいのだな」
「そうだな、できれば二度と受けたくはないのだが。完全解呪されているのだろうか?」
そう言われて俺はもう一度全員の情報を鑑定した。
「うん、問題ないですね。呪いの表示もなくなっていますし、他に悪いところもなさそうです」
俺がそう言うと全員がうんうんと頷いていた。
「だよな、さっきから百年前の全盛期の力が更に強くなって蘇ったみたいに溢れてる気がしているんだ」
そうサンドロさんが言う。
そしてマッテオさんも頷いている。
「俺もだ、完全復活って感じに力がみなぎっている!」
「そうそう、今から狩りに行きたいくらいだ!」
ロッカさんがそう言い、それにポールさんも頷いている。
「どうせだし、大丈夫そうだったら迷宮の浅いところで力試しにいかねえか?」
カルロさんがそう提案すると、全員がそれに乗った。
止める人がいないので彼らは早速迷宮に向かうつもりらしい。
「今日一日くらい大人しくしておいた方が……」
俺は安静を推奨したけど、誰も聞いてなかった。
「ハル、無理だと思う」
アッザームがそう言うので俺はそれを見送ることになりそうだった。
なので俺は回復薬で完全回復した後、すぐに終焉の業火を出ることになった。
その時、玄関先で階段から転げ落ちて怪我をしたらしいフランコさんが運ばれていた。
どうやら階段から落ちて頭を打って気を暫く失っていたところを他の仲間に見つけられたらしいが、終焉の業火を出て行く羽目になったことをカルロさんに伝えられた一員はフランコさんに対して教会を呼んで運ばれていくか門前に放置されるのかどっちがいいと迫ったら、教会に運ばれていく方がいいと言って馬車を呼んでそのまま運ばれていくところだったみたい。
俺はそんなフランコさんを鑑定したところ。
【名前】フランコ・アルソ
【年齢】190歳
【種族】狼人族
【基準lv】 560
【称号】堕落の神サハト・セルタの呪い(大)→(特級) 運命の神ファ・ズザーの呪い(中)→(大) 剣士(呪い)
【技能】剣術(呪い) 火魔法(呪い)
【運】凶→大凶
【加護】なし
と言う感じになっていた。
どうやら俺が解呪した呪いはフランコさんが引き受けてくれたので解呪も早くできたみたいだ。
元々はあの人がやらかした呪いなので受けて当然の物が元に戻ったってことだ。
あの状態で怪我程度で済んでいるのは不思議だけど、明らかに最初に無断で鑑定をした時より呪いが進化しているのだけは分かった。
「あいつ、生きてるのが不思議なくらいだな」
アッザームがそう言うので俺が驚いて聞き返した。
「見えるの?」
「さっき、ハルが祈っているときに見えるようになったから鑑定の能力が上がったのかもな」
そうアッザームがあっさりと言うので俺はなるほどと思った。
そしてナビゲーションがまた告げた。
『解呪の成功の条件を満たしました。解呪の進化を発動します。成功しました。神々の呪いも解呪できるようになりました』
『極度の疲労を感知しました。祈りの回復を解放します。成功しました。体力、魔力の回復ができます。なお、進化の条件には達しませんでしたので、傷や切断された部位の復元など物理的な回復はまだできません』
ちょ……そりゃさっき気絶するほど疲れたから分かるけども!
急に進化して神々の呪い解放とかすんごいことできるようになっているし、回復ってことは回復薬要らずになるじゃん!!
いやでも回復薬はアッザーム達に渡すとして使えるけれども!
今日は大盤振る舞いだな、能力解放が!!
そういうわけで俺の本情報はこれだ。
【名前】ハル
【種族】 神族
【基準lv】 999
【称号】 聖女 淫乱 色情狂 神々に愛されし子 召喚に巻き込まれし者
【技能】 鑑定 収納(∞) 生活魔法(火 水 風 土 闇 光)
【技能】 言語理解 隠匿 祈り(浄化 解呪new 回復new)創造魔法
【運】 幸運
【加護】 ******
【生命力HP】 500→600 new
【魔力MP】 300→99999 回復
【職業】 冒険者 鉄級(収納 鑑定) 炎炎組織一員
めっちゃ回復したのやっぱり最高位の回復薬のお陰だね!
そして99000くらい使ってしまった呪い恐ろしかったな本当に!!
感想
favorite
いいね
ありがとうございます!
選択式
萌えた!
面白かった
好き!
良かった
楽しかった!
送信
メッセージは
文字まで、同一IPアドレスからの送信は一日
回まで
ありがとうございます!