彼方より
046
薬材店とお買い物と終焉の業火の人達
鍛冶屋の人達との仕事を終えて家に戻ってきて、二日ほど皆でダラダラと過ごしていたら、硝子瓶ができたと言われたのでアッザームと取りに行った。
「確かに百本頂きます」
俺は受け取って収納にそれを仕舞った。
ヤードさんはそれを見ながらまだちょっと驚いている。
「しかし兄ちゃんの収納は相変わらず凄いな」
「あはは」
今回の硝子瓶代はこの間の坑道での魔物退治と収納の仕事でチャラになっている。
「瓶の在庫沢山あるんですね?」
俺がそう聞くと、ヤードさんが言った。
「こいつも注文品だ。この間噂していた白金級の組織、終焉の業火ってのが俺の店にきたんだよ」
「へえ、ヤードさんも有名になりましたね」
「へへ、お前に言われた通り、水薬を入れる方法を薬剤師に教えて俺の作ったガラスに入れて売ってみてもらったらバカ売れよ。それで瓶を作ってるのは誰だってことで俺の所に来たってわけだ。兄ちゃんのお陰でウハウハだぜ」
「ああ、そういうことになってるんですね」
俺は薬剤師のいる店には行ったことはないので、行くのもありだなと思い始めた。
よく考えたら通常の水薬なんかがどういうものか俺は知らない。
回復薬はレギオンに分けて貰っていたけど、あれもいい物らしいので一般的なものが分からないのだ。
そうして店を出ようかと思っていると人が店に入ってきた。
「おやじさん、頼んでいた硝子瓶、受け取りにきたよ」
入り口でそう言ったのはなんと終焉の業火の代表であるカルロさんだった。
「あ、どうも」
俺がそう声を掛けると、カルロさんはあっと気付いたようだった。
「なんだ、ハルじゃないか」
カルロさんは今日は二人連れだけど、マッテオさんとではなかった。
金髪碧眼の細めの体型の綺麗な人と一緒だ。一瞬女性かと思ったけど胸板が厚いので男性のようだ。
「お久しぶりです、カルロさん」
「ハル、誰?」
アッザームが他の男と話す俺を警戒してきたので俺は言った。
「ほら、終焉の業火の皆さんだよ。カルロさんは代表なんだ」
俺がそう言うとアッザームはカルロさんを胡散臭い物を見るように見ている。
まあ不審に感じているのはたぶん、カルロさんがアッザームよりも基準的なレベルが高いからだと思う。アッザームは鑑定を既に使っているだろうし、見えているはずだ。
カルロさんも見られていることには気付いているらしいけど平然としているし、俺と目が合ったらにっこりと笑っていたからたぶん鑑定されても平気で思いっきり見せているみたい。
【名前】カルロ・ラザーロ
【年齢】200歳
【種族】狼人族(ライカン)
【基準lv】 1200
【称号】 剣聖
【技能】 剣術(呪い) 鑑定 収納(呪い) 生活魔法(水) 火魔法
【運】 幸運(中)
【加護】 火の神イデアルニー・ゾー(中)
【生命力HP】 1400
【魔力MP】 1200
【職業】 冒険者 白金級 終焉の業火組織 組織代表
鑑定結果はこんな感じ。
生命力と魔力はアッザームには見えてないし、俺にしか見えない項目。
それでアッザームはというと。
【名前】アッザーム・アル=ガンダファル
【年齢】200歳
【種族】 ジニ族(見た目人族) ゾホニ・ヤーブの民
【基準lv】 920
【称号】 ヤーブの民 (聖女の奴隷) 魔法剣士
【技能】 剣術 生活魔法(火 水 風) 水魔法 火魔法 (聖女の祝福-収納)(聖女の祝福-隠密)
【運】 幸運(中)
【加護】 砂漠の神ゾホニ・ヤーブ(中)
【生命力HP】 1800
【魔力MP】 2000
【職業】 ジニ族→冒険者 銀級 炎炎組織一員 白金級
こんな感じ。
生命力と魔力が強いのはジニ族だからってところで基礎が違うんだと思う。
ちなみに聖女の奴隷の項目は隠匿されているので他の人には見えないようにして貰っている。俺が見えるのは俺が聖女だから信徒は見えるってことみたいだね。
「こちらは炎炎組織に俺と同時期に入ったアッザームです」
俺がそう言うとカルロさんはちょっと驚いている。
「よろしく、こっちの金髪はロッカ。ちょっと話をしたいんだが、待っててくれる?」
そう言われたので俺は頷いていた。
ロッカさんって人は妖精族っぽいのに、何故か頭に耳が生えている。
気になって鑑定をしてみたら。
【名前】ロッカ・エドラス
【年齢】300歳
【種族】 (妖精族と狼人族のハーフ) 妖狼族
【基準lv】 1300
【称号】 弓王
【技能】 弓術(呪い) 剣術 収納 生活魔法(水) 風魔法
【運】 幸運(中)
【加護】 なし
【生命力HP】 1600
【魔力MP】 1500
【職業】 冒険者 白金級 終焉の業火一員
妖狼族っていうのか、妖精族と狼人族のハーフって。へえ、見た目モフモフで可愛いんだな。
俺はそう思ったらロッカさんと目が合って睨まれた。
たぶん鑑定したのバレたね。失礼な行為になるし、向こうから俺を鑑定しても雑魚だから余計にかもしれないけど。
カルロさんはそれを受け取ると自分の収納に仕舞っている。
「俺の収納はこれくらいなんだよね。あまり大きくないからハルみたいに豪快には運べないけど」
そう言われてしまい、俺はちょっとだけ笑ってしまう。
俺の収納と比べたら駄目だと思います。
そう思いながらカルロさんと一緒に店を出た。
「それで何か話でもあるんですか?」
俺がそう尋ねるとカルロさんは広場の休憩椅子に座るように俺に言ってから、カルロさんは立ったままで俺に頭を下げてきたのだ。
「え、ちょっと」
「お願いなんだが、収納の拡張の仕方を教えて欲しい!」
そう言うのである。
「え、収納の拡張って」
「俺の収納は何故か育たないんだ……普通は荷を入れていけば育ってそれなりの大きさになるらしいのだが……俺の収納は解放された時からずっと容量が変わっていない……君の収納ほどとは言わないが……どうかもう少し大きくする方法が……知りたいんだ!」
そう言われてしまい、俺はふうっとその原因にとっくに気付いていて困ってしまった。
カルロさんの収納、何故か呪い付きになってるんだよね……。
何でか分からないけれど……たぶんロックがかかった状態なんだよ。
「あの、一つだけ聞いてもいいですか?」
「何なりと!」
「カルロさんは、何処かで呪いを受けたことはありませんか?」
俺がそう尋ねたらカルロさんもロッカさんも二人には思い当たることがないようだったがもしかしてと思うことはあるようだった。
「それからその時にいた全員、呪いに掛かってると思いますよ」
俺がそう言うと、カルロさんもロッカさんもまさかそんなことがというように戸惑っている。
「すまない、ハル。少し俺たちに付き合ってくれないだろうか。実は俺たち主要メンバー全員が百年前から技能が育たなくなっている。君には俺たちが呪われているって分かるんだね?」
「えっと俺の鑑定ではそうなってます。解き方は……」
さすがに分からないと答えようとしたんだけど、その時突然ナビゲーションが告げてきた。
『解呪の条件が揃いました。祈りによる解呪を解放します。成功しました。強力な呪いを感知、解呪を進化させます。成功しました。いかなる呪いも祈りによって解除ができます』
ナビゲーションの言葉に俺が途中で止まってしまったから周りが驚いている。
「どうしたハル?」
カルロさんがそう言うんだけど、俺の中のレベルアップがちょっと止まらない。
「女神の祝福だ……どうやらお前達には吉報になる解放だ」
アッザームがすぐに俺を鑑定してくれたようでそう言っている。
ちなみに俺にかかっている隠蔽は聖女の奴隷には何故か効かないんだよね……だからアッザームの鑑定でも俺の中の変化は分かってしまうんだよね。
【名前】ハル
【年齢】18歳
【種族】**人族
【基準lv】500
【称号】なし
【技能】鑑定 収納 生活魔法 言語理解 隠匿 祈り(浄化 解呪)
【運】幸運(大)
【加護】なし
【職業】冒険者 鉄級 炎炎組織一員
これが俺の隠匿した状態のもの。
鑑定能力がある人が見るとこう見える感じ。
祈りの浄化と解呪については隠さないことにした。
使う時があるし、祈りについて聖女だけしか持たない能力とは限定されていないからだ。
例えば教会の修道女にも祈りの浄化だったり回復だったりが付いたので恐らく特別な物ではなく、条件が揃えば解放されるものだと俺は思ってそう判断した。
種族がバグってるのは何でか分からん。
神族を隠蔽しようとしたらこうなるんだよね……何でかねえ。
「……ハル大丈夫か?」
アッザームに声を掛けられて俺はふうっと息を吐いてから言った。
「大丈夫、ちょっと急に都合良くきたからさびっくりしたんだ」
「そうか、それでやるのか?」
「まあ、イヴァンとレギオンの知り合いだしね……たぶん黙っていてくれると思うんだ」
俺がそう言うとアッザームはちょっと呆れた顔をしたけど、止めることはしなかった。
イヴァンとレギオンの知り合いで、ちゃんと筋を通して聞いてきた相手の呪いを解いてやれる力を貰って俺が黙っているとは思わなかったんだろうね。
「カルロさん、それで、都合良く解呪が解放されたのでその時に呪われた人だけ解呪します」
俺は念を押した。
他の呪われている人がいても俺はそれを解呪しないと言ったんだよね。
「分かっている。今回は特別なんだね。それじゃその時にいた呪われたであろう奴らだけ呼んでみよう」
そう言われて俺たちは終焉の業火が根城にしている大きな屋敷に招かれた。
そこはこの街でも大きな屋敷だったけど、貴族の屋敷を買い取ったものらしい。
「ここに居着くことになりそうだから、家を買っておけば俺たちが潜っている間は、他の一員たちも路頭に迷わないで済むからな」
確か終焉の業火は五十人からなる集団らしいんだけど、薬剤師とか錬金術師まで揃っていて、自腹で回復薬とかも作ってると聞いたな。
カルロさんは今日買い込んだガラス容器を薬剤師に預けてから呪いを受けたという人を集めてきた。
その中にはマッテオさんも含まれていた。
「こっちは覚えてるだろう。マッテオだ」
「よう、ハル」
和やかにマッテオさんが話しかけてきたけど、他にきた三人は前にもあったけど、不審な顔をしている。
「こっちはポール、こっちはサンドロ。そしてフランコだ」
ポールは巨人族の男性。頭はハゲているのか剃っているかは不明だが、ハゲている人。身長も更に高く、230センチはあるんじゃないかなってくらいの大柄な人。でもちょっと人見知りしてる感じ。
サンドロさんは気が強そうな感じで俺を睨んでくる。狼人族で身長は二メートルにいかない感じの細めに剣士かな。
最後のフランコさんも狼人族。ここは代表が狼人族だからか結構多いのかもね。
そこに最初からいたロッカさんもいる。
どうやらこの六人が呪いを受けた時にいた人達らしい。
「俺はハルです。こっちはアッザーム。今日は頼まれて来ました」
俺がそう言うと全員がよく分からないという顔をしていたので俺は言った。
「皆さん、技能にあるものに呪いか掛けられている可能性があります、なのでそれを解呪するために来ました」
俺がそう言うと全員が驚いた顔をしていたけど、フランコさんだけ俺を鼻で笑ってた。
信じてない感じみたいだけど、たぶん彼には技能に呪われた部分はないんだなと俺は瞬時に察した。
「失礼ながら、その呪いがあるかどうか鑑定を掛けさせて貰います」
とりあえずカルロから事情は聞いていたのだろう、全員大人しく俺に鑑定をされてくれそうだったけど、フランコさんが言った。
「悪いけど、俺は呪われてるなんて感じないから、抜けさせて貰うよ」
そうフランコさんが言うんだけど、それに対してカルロさんが言った。
「俺の命令に従えないのなら、終焉の業火にはいられなくなるが、それでもいいのか?」
そうカルロさんが言うと、フランコさんが鼻でまた笑った。
「最近、この終焉の業火も何か上手くいかなくて、結局大迷宮から逃げてきたじゃないですか。そろそろ落ち目って事なんですよね。なので俺は他の組織に行くことにしますよ」
フランコさんがそう言う。
「お前、これまでの恩を仇で返しやがって!」
マッテオさんがそう言うんだけど、フランコさんは何処吹く風。気にも留めていない。
俺はそんなフランコさんをジッと見た後にカルロさんと目が合った。
俺は静かに首を横に振って彼に出て言って貰うようにお願いをした。
「分かった、今日限りフランコ・アルソは終焉の業火から追放する」
カルロさんがそう言うと、フランコさんはまた笑った。
「それじゃ、落ち目の皆さん、俺の活躍をこの街の貧困街ででも聞いててくださいね」
そう言ってフランコさんは部屋から出て行った。
「あいつ、引き抜きに合ってたのか!」
「羽振りが良かったが、あいつじゃないのか、宝物を盗んでいたのは!」
他の人達がそう口々に言い合うので俺はそれが収まるまで待つ羽目になってしまった。
フランコさん結構色々やらかしていたみたいだね……。
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