彼方より 037

イヴァンと二人で過ごす-聖女のことやイヴァンとレギオンの過去

「あ゛あ゛あんっひっい゛ってるっ、いってうからっあ゛あっもっらめえっあっあんあんあ゛あーあっひっあ゛っせいえきっなかっひあぁっああああんっ」
 今日も激しくイヴァンが求めてくるけれど、俺はそれを受け止めて、イヴァンを求めてる。
「ハル……ハルっ! 出る!」
「あ゛ひぃっ、らめっらめっ、せいえき中出しっ……あひっあ゛っ中はっだめっ……あ゛っあんあんあんあんっ! あ゛ああっ……あひっ、い゛っあ゛っああっ」
 精液を中出しされて俺は精液を受け止めて絶頂をする。
 何回も続くその行為は、俺たちには慣れたものだったけど、飽きるものでもなかった。
 イヴァンは獣のように俺を抱くし、俺はそれを受け入れて嬌声を上げるんだ。
「はぁっはぁっ……ぁ、あぁああん……やっ!? んっああぁあっあひぃっ! あっあんっ、あぁああ……」
 気持ち良くてどうしようもない。
 聖女の称号を貰ってからのセックスは、俺のアナルは感じれば濡れるようになっている。
 そこだけは女のように中から汁が垂れてくるのだ。それが粘っこくてローションのようになってしまって、ペニスを受け入れるのには十分な滑りになる。
 体はどんな物でも受け入れるらしくて、聖女はそういう物というのは読んだ。
 セックスが終わっても、イヴァンは俺から離れることはない。
 ベッドに横たわって眠るに眠れずに、複製してきた聖女の能力一覧を見ていたらイヴァンに聞かれた。
「聖女は誰が何の能力を持つのかは分からないのか」
「うん、毎回違うみたいだね。統計を見てもそうだし……俺の場合はたぶん聖女としては創造魔法とか鑑定収納あたりは特殊能力みたいだね。幸運も付いているから、技能の種類が多いかもしれない」
 これまでの聖女の技能は基本、回復か防御のどちらかである。
 俺みたいに祈りに意味があるようなことはなかったみたいだ。
 それにしても聖女の項目の少なさが聖女が対して活躍はしていないのを意味しているのかもしれない。
 それとも敵であっても引き込めるなら平気で寝るような役割を持っているかしたかもしれない。
 書き記すにしてもセックスで話が上手く纏まりましたとは言えないから、聖女の祈りとされているのかもしれない。
 そして全てが平和になった後、聖女の記載は一切が消えるのだ。
 勇者や賢者、英雄などは沢山子孫が残っていて、家系図すら残っている。墓だってあるし、何なら観光地にもなっているくらいだ。
 なのに聖女は墓すらない。
 ここまでして聖女の記録を作っている人も戸惑いを見せているほどに、聖女の平和後の詳細は綺麗にない。つまり勇者や英雄とも接触を断っていて、戻ってくることもなかったのだろう。
 でも幾つかの聖女はシリンガ帝国へ行ったという記載が多いのだ。
 最後の聖女がシリンガ帝国に向かったのは書斎の本にも書いていたから統計で見ると多いと言える。
「シリンガ帝国ってどんな国?」
 俺が聖女がシリンガ帝国へ向かったという記載が多めにあることをイヴァンに話すと、イヴァンは少し体を起こして説明をしてくれた。
「そうだな。俺はあんまり行ったことはないんだが、レギオンが言うには……帝王が全ての国らしい」
「偉いってことで?」
「いや、帝王が全ての街や村まで隅々まで手を入れるってこと。貴族も領主なども全ての権限が帝王に集まっていて、何をするにも許可が必要なんだ。魔導具なんか使って三日もおかずに色々と知らせないといけないんだ。冒険者組合も帝王の手が入っていて、ちょっと特殊らしいんだが、まあ独立した組織としてちょっとは自由だけど」
「何が問題?」
俺には帝国っていうくらいなのでそういうものかもしれないと思ったんだけど、イヴァンは何だかよい思い出はないらしい。
「ちょっとでも優秀な冒険者は傭兵としてすぐに勧誘されるんだ」
「……勧誘?」
 俺はそれに首を傾げた。
「もしかしてイヴァンも勧誘された?」
「ああ。それが結構しつこくて俺はシリンガ帝国に行く仕事はしたくないと言っているんだが、時々どうしても護衛の依頼があるから行くんだけど、そうしたら待ってましたと勧誘される」
 イヴァンはそれがしつこくて移動中もずっと付いてくるし、宿でもしつこく部屋に入ろうとしてくるんだとか。もう受けると言わせるために必死になって勧誘を繰り返すんだそうで。
「俺は断っているんだが……そこを更に無視して更に勧誘してくるから埒があかないんだな。それ以外は別に俺が住んでいるわけじゃないから悪くはないんだ。あの勧誘がなければ仕事で行くのはいいんだがな」
「住むのはないんだ?」
 俺がそう言うとイヴァンは首を傾げてから考えたことはなかったと言うように不思議そうに言った。
「そういや住むのは考えたことはないな」
「そうなんだ?」
「あそこ、暑さ寒さが結構極端なんだ。俺は寒いのが苦手だから、冬で完全に閉ざされる場所は好きじゃない」
「ああ……雪か。グノ王国も雪に閉ざされるから嫌だったのか」
「そう。レギオンは割と平気みたいだけどな」
 そういうわけでイヴァンの冬で寒すぎるのが嫌という言葉でセフネイア王国に住むことになり、さらにはレテカに行くことになったのだとか。
「そういえば、二人はどうやって出会ったの?」
「ん? 俺とレギオンか?」
「そう。何十年も一緒にいるとは聞いたし、その間に組織にいたことも聞いたけど、その前は聞いてないよ?」
 俺が興味津々で聞いてしまったからか、イヴァンはちょっと言いにくそうにしていたけど、話してくれた。
「実は、同じ女の部屋で思いっきり鉢合わせたんだ」
「そりゃまた……」
 イヴァンが言うには、こういうことらしい。
 女の部屋で寛いでいたレギオンの存在を忘れていた浮気性の女性がイヴァンを引っかけて部屋に戻ってきた。
 で、レギオンとは散々楽しんだ後だったからイヴァンとこれから付き合うと言ってレギオンを追い出そうとしたんだ。でもそれにイヴァンは女性の方がおかしいと反論してレギオンを連れて部屋を出てしまった。
 そしてレギオンはその日は女性の部屋に泊まるつもりだったので宿を取っていなかったため、イヴァンと二人で宿を取るしかなくなってしまった。
 で、同じ宿で別々の部屋を取ろうとしたら二人部屋しかなかった。
 それで二人部屋でいっかと二人で部屋に入ったらベッドは一つしかなく、出会ったばかりの二人は部屋で爆笑したんだって。
「女に騙されて行き着いた先が男と同じベッドで寝るってなったら笑うしかないよな」
 でも二人ともお互いに性癖は攻めであることを確認してから、ベッドは二人で使ったらしい。
「ふふ、仲良く寝たんだ?」
「疲れてたしな。でも翌日同じように冒険者組合に行くっていうから、ちょっと話をしたんだ。そしたらお互いまだ独りだったし、受けられる依頼が増えるからちょっとだけ組織を組んでみるかって話になって、それから解消はしてないな」
「よほど相性がいいんだね……今でも結局俺たちが増えているけど、イヴァンとレギオンは一緒にいるからねえ」
「俺たち二人が別の組織に入ってみたりもしたが、抜けるときも同じだったし、結局二人でいる方が都合がよかったからここまでこれできたが、レギオンが今回の依頼をアッザームとやると言い出した時はちょっとびっくりしたけどな」
 レギオンが他の人とも仕事をしてみると言って二人で仕事に向かったのは実は俺と以外だとアッザームだけなんだってさ。
 しかも今回は九日間のちょっと長めの時間だから、六十年間の二人だけの生活が変わり始めているんだろうけど、それでもレギオンから変わろうとしているのはかなりの進化みたい。
「あいつもいつまでも俺とだけよくしていたらダメだって思ったのかも。ハルと一緒にいるためには、俺たちだけでは足りないって気付いていたからな」
 イヴァンはそう言って俺の体を撫でている。
「俺たちは大事な物を見つけた。それがハルだ。そのためには俺たちは変わらないといけない。そう思って行動をしている。これは大一歩みたいなものだったんだが……ハルは結局二人がいない間にどんどん問題を起こしているし……俺一人では判断仕切れないから困ったもんだよ」
 イヴァンは一人で判断することをレギオンに求められたんだろうけど、俺が結構やらかしているせいで頭の中がパンクしそうなのだろう。
「ごめんってば」
「そういうところもハルだからいいんだ」
 イヴァンはそう言って俺にキスをしてきた。
 それを受けて俺はちょっと嬉しい気分だ。
 本当に自分でも悪いなと思っているんだけど、俺でも何がダメで何がいいのかこの世界の事を知らなすぎるんだよな。
「それで、聖女がシリンガ帝国に向かって消息を絶っているって話だったよな?」
「うん、そうなんだよね。そのまま幸せに暮らして寿命を全うしていたらいいんだけど……」
 俺がそういう心配があると言うと、イヴァンもその可能性を考え始めた。
「基本的に勇者召喚が行われて勇者が何かをする時は国同士の争いが起きている時なんだが……統計を見るに、ロドロン公国、グノ王国、セフネイア王国が揉めている時ばかりなんだな。そこにシリンガ帝国は入ってない」
「あ、だからその三つのうちの何処かの国には愛想を尽かしているし、もう一つの国は戦った相手だから選択肢には入らないってことかな。その中で一番マシなのはセフネイア王国だけれど……」
「セフネイア王国が亜人の差別を法律で規制し始めたのは、二代前の勇者……二千年前の勇者が英雄として国を救った時に政令されたものだからな。それこそ最近でも人族からの差別はあるしな」
「それが聖女にとってはやっぱ嫌になるって感じなのかな」
「基本的に異世界人は亜人に興味があって優しいんだよ」
 イヴァンがそう言うので俺はキョトンとした。
「そうなの?」
「ああ、何故か亜人には詳しくて、見たら嫌悪せずに感激するらしいんだ。他の亜人に興味がないところで育った人間でもそんな反応はしないんだ」
「あー……そっか。あっちの世界ではファンタジーって言ってそういう作り話が沢山あって、それを見て育つからかもしれないな。最近は異世界に転移とか転生した話も人気だから……俺もこっちに来たのはそういうものかなと簡単に納得したかも」
 あっちの世界は色々と物語が沢山あって、全部読み切れないくらいに溢れている。
 気に入ったものを読んでいたけれど、中には無料で読めるものがあってと言ったらイヴァンは驚いていたけどね。
「なるほど、予めそういう環境があればそこまで慌てないわけか……」
「準備ではないけど中には異世界に来たかったって人もいるんじゃないかな? 俺は……こっちの世界の方が今は楽しいけどね」
 俺がそう言うとイヴァンが優しく笑ってくれるのでちょっと嬉しい。
 それもこれも聖女の称号のお陰ではあるんだけど。
 その聖女の力はどういうものなのかはまだ分からないし、俺は俺で今までの聖女とは違ったもののような感じ。
 でも聖女はこの世界の教会に属するものというのはそうみたいで、教会の人は聖女を敬っているよな。だから聖女自体は迫害されていないのは分かったんだけど。でもそうなるとそれでもシリンガ帝国へと行ってしまう聖女はどんな思いがあって旅だったのだろうか。
 セフネイア王国には聖女が召喚されたのは三回ほど。
 その三人共が国に聖女が残らなかったのだ。
 その代わり、他の国に召喚された聖女がこの国に来たことはあるようだ。
 でも来たことは書いてあってもその最後を書いたものはなかった。
 だって俺より少し前に来た聖女の墓も分からないなんて相当ヤバイ気がするんだよね。
 聖女が聖女らしく暮らしたりしなかったのか。
 全然情報がないよな。
 その割にはこの世界の人は聖女に対して悪い気持ちなどは持っていないんだよね。
 イヴァンは希望みたいに思っていたみたいで、レギオンも同じ感じだったし、アッザームも俺の事を連れ出そうとするくらいには聖女に執着をしていたよな。
 そういえば、アッザームにどうして聖女を連れて行こうとしていたのか聞いてなかったな。結局聖女の奴隷にしてしまってうやむやになってるし……。
「うん、分かんないってだけ分かったかも!」
 俺がそう言うとイヴァンが吹き出して笑った。
「身も蓋もないな」
「だって分かんないもん。あ、寧ろ教会の人達に聞いた方が言い伝えとか残ってるかもしれないな……」
「その可能性はあるな。教会が聖女と女神を同一化して崇めているところがあるからな」
「その辺から地道に調べるかな……」
 俺はそう思って聖女の一覧表を収納に仕舞った。
 その日はそのまま遅くまで俺はイヴァンとレギオンの昔話をイヴァンに強請って聞かせて貰って、沢山笑って疲れて眠った。


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