彼方より
003
異世界人とバレるも常識を習う
宿屋の隣の男に襲われ、セックスを強要されてしまった俺であるが、あれから一晩経ちましたけど、男が離れてくれません。
「……あっ……も、やだっ」
俺がそう言って拒否しても男はやめてくれない。
なので中出しし放題で、俺の魔力は何とか増えて500である。
それで分かったこともある。
魔力が一回中出しされるごとに1増えるのかと思ったら、そうでもないってこと。つまりレベルが1上がるにはそれなりに中出しされないと上がらないわけ。
つまり、どんどん数字が大きくなれば中出しされる回数もどんどん増やさないと魔力のレベルは上がらないというわけだ……なんかすげー理不尽よな?
隣の部屋の男は、やっと目が慣れてきて顔が見えるようになった。
向き合ってみると、いい体をした男だ。
顔も悪くない。というかイケメン、めっちゃギリシャとかにある石像顔。整いすぎて引くレベル。なのに、気になることは一つ、角が生えてますやん……。
剃り込み辺りに角が二本生えてる。鬼でした。
でも人型をしているということは恐らく鬼人なんだろう。
「もっとだ……もっと」
「あ……んあっ……もっ……ああんっらめっああっ」
人間じゃないのでペニスも太いのか、長いし奥まで届いてるし、結腸抉じ開けて入ってくるし。
こんなのずっと咥えていたらアナルが壊れるって思ったんだけどさ。
ずっと気持ちがいいわけよ。
どうしようかこれ。
初日にこんな状態に陥ったら俺、逃げられないのだけども。
そう思いながらも、気持ちがいいので鬼人の兄さんといちゃこらしまくった。
俺も面食いよ、もうイケメンが一生懸命腰を振っていたら応えたくなるわけ。
そういうわけで一晩付き合ってしまったのだった。
「俺は、イヴァンという。お前、名前はなんと言う?」
やっと俺の中から出ていってくれた鬼人の兄ちゃん、もといイヴァン。
「……ハル」
「ハルか、良い名だ」
「どうも……」
俺は疲れ切ってベッドに横たわっていたけれど、イヴァンは俺の体を綺麗に拭いてくれた。お湯のサービスを使ったらしくて、バケツ一杯のお湯でしっかりと汗も精液も拭き取ってくれた。
俺の中に貯まっているはずの精液は、俺の中で消化されて経験値になってるのか、中に長く残っている感覚はしなかった。
「やはり聖女だな。これで淫乱が発動しただろう?」
「は? な、なんで?」
なんで淫乱が発動したのか知ってるんだこいつと思っているとイヴァンが言う。
「聖女の称号を持つものが性行為を行うと淫乱の称号も得るんだ。そうなると聖女の魔法階級が落ちて性行為をしなければ元の階級に戻れなくなる。男で聖女の称号を持つ者はそうそうないが、言い伝えではそうなっている」
「は? じゃ、俺の魔法階級……性行為しないと元に戻らないのか……なんで……酷い……」
「聖女だから仕方ない。とはいえ、お前は異世界からきたな?」
「……なんでそう思うんだ」
何でもバレてない?
こいつもしかして…………。
俺はそこでハッとした。
「お前、鑑定を持ってるのか?」
まさかのそれだろう。そうとしか思えない。
するとイヴァンは俺がそれにやっと気付いたことに笑ったのだ。
「そうだ。でもお前が隠蔽を使っていないせいで全部まる見えだ。普通は隠蔽を使うものだぞ?」
そう言われて俺が悪いと言われた。
とはいえ、俺に隠蔽の魔法がないのでそもそも使えないんですけどね!
「もうバレてんなら意味ないや。そうだよ、異世界からきたよ、だからなに?」
「聖女は異世界人に多く出る称号だ。この世界で聖女が生まれたとしても、それは異世界人の子供だったとか、血筋あったとかそういう繋がりがあるくらいだ」
「なるほどね……それで今俺は隠蔽を使えないから全部あんたに見えてるってことね」
俺は不貞腐れてそう言っていた。
異世界二日目、最悪なことに男の隣で目が覚めるという状態だ。
これ以上、最悪なことがあるか。
「隠蔽は教えてやる。お前には鑑定があるだろう? その鑑定の能力の中に隠蔽があるんだ。じゃあ技能隠蔽と念じてご覧」
そうイヴァンに言われて俺は素っ裸のままで隠蔽の能力を使ってみた。
魔力が足りないかもしれないが、そこはイヴァンが手伝ってくれた。
「隠蔽」
そう念じてみたがよく分からん。
見えなくなったのかそうでないのか。
「よし称号などは見えなくなっているな。ハルの鑑定能力は俺よりも高いらしいな。俺の鑑定を使っても読めなくなっている」
「へえ、そうなんだ……」
さて俺は真っ裸であるから慌てて床に転がっている下着と服をかき集めて着た。
イヴァンはそんな俺をジッと見ていたが、その時に街の鐘が鳴り始めた。
一回、二回……七回、八回と鐘がなり止まった。
「八の刻か」
八の刻、つまり八時か。
「ちょっと聞いていいか?」
俺はちょっと分からないことがあったのでイヴァンに尋ねた。
さすがに俺を襲った手前、俺の言うことを無視することはできないらしく首を傾げている。
そこで俺は時刻や日付などの基本的なことを聞いた。
時間は二十六時間、一月は三十日、一年は四百二十日、十四ヶ月という感じ。
お金も銅貨、青銅貨、銀貨、金貨、大金貨、白金貨という順番で、どうやら銅貨は俺が昨日思った通りに十円くらいの価値、青銅貨は百円、銀貨は千円くらいの価値。金貨は一万円でそれ以上は大金貨が十万、白金貨が百万というところか。
お札みたいなものはなしで、銅貨以下になるものもないようだ。
基本的な買い物は銅貨、青銅貨、銀貨くらいで金貨くらいの価値になると高い買い物になる。
街の一般的な人が貰う給料が金貨五枚程度。共働きで金貨十枚だと家を借りて暮らせるらしい。一般的な家族が住む家の家賃が金貨三枚からで金貨五枚くらい必要になる。
その代わり食べ物は安くて、金貨二枚程度で一般家庭の一月分。
洋服などは中古品を買えばもっと安いものが手に入るので、金貨十枚あれば王都でも暮らしていけるらしい。
冒険者証明書を持っていれば街の清掃などの依頼を受ければ、金貨一枚程度貰えるので冒険者は結構割に合う計算だ。上手く回れば金貨三十枚は月に手に入るからだ。
この世界の人の平均的な寿命は種族に応じて違う。
例えばこの世界で一番の長寿だと言われているのが妖精族。その人達は千年は余裕で生きているらしい。その中でも特殊妖精族に至っては二千年も生きるという。あれよな妖精族、エルフが長生きなのは何処でも共通ってやつかな。耳が尖っているのも特徴らしい。
その次に鬼人族や矮人(わいじん)族、矮人とか小さい人って意味らしくて、俺の馴染みで言えば、ドワーフっていう人たちのことみたい。八百年くらい生きるんだって。
そして獣人が五百年から八百年くらい。獣人は狼だったり、犬だったり、猫だったり、猿だったり、種類は豊富。人型に近い顔をしている人ほど強くて長生きで、動物顔の人は短命だって。まだこの街ではあってないなと思っていたら、何でも王都には獣人は住めないんだって。
この国は人族優先国家で、獣人とか妖精族でも下に見られるらしい。王様はそういう方針らしくて、この国では人族以外は虐げられる対象みたい。
そして、その人族ってのが一番の短命で、生きても二百年くらいだって。
多分、差別は長生きできない腹いせだと思う。
俺は人族に見えるらしいけど、異世界人っての人族の上位種になるらしくて、寿命は人族より長くて、鬼人や獣人くらいは余裕で生きるらしい。
ああ、勇者って基本長生きだよな。
ちなみに俺は巻き込まれた者であるけど、その上で聖女の称号も得たので上位種になったらしい。
長生きか。これからこの世界で長生きするのかと思ったらちょっと遠い目をしてしまったな。
「大丈夫か」
「大丈夫じゃないです。色々と」
俺はとりあえず当面先のことは置いておくとして、すぐにしなければならないことを思い出す。
そう、この王都をまずは出ないといけないわけだ。
お金は幸いにしてある。
あとは地図などを手に入れて、街を移動しなければならない。
「地図とか何処かに売ってる?」
「冒険者組合で貰えばいい。国の地図と世界地図と冒険者なら誰でも貰える」
「そうか……なら……ぶっちゃけ、この国ヤバイ?」
そうイヴァンに俺は聞いていた。
どうヤバイとか色々な意味で聞いたらイヴァンは言った。
「そうだな、人族優位な国としては最近他の種族を迫害したお陰でもれなく産業が成り立たなくなり始めたな。冒険者も人族よりは亜人の方が多いのに、差別化するものだから地方にどんどん人が移動して、国まで跨いでの移動になってる」
どうやら豊かだった王都周辺の差別に耐え兼ねた人々が地方へと移動をした。そしてその産業などに携わっていた亜人たちが流出してしまい、人族だけでは成り立たなくなっていっている。
それで街が何だか元気のない古びた感じになっているのは、そうした活気がなくなっているせいだったのだ。
おーとこれは国が滅びる一歩手前まできているのかもしれない。
「亜人に優しい国はあるのか?」
「隣のセフネイア王国やシリンガ帝国などは亜人の国だ。そこなら差別はされてはいない」
「そうか……なら……」
セフネイア王国に移動するしかないか。帝国はちょっと怖いイメージだからな。
この国のあの王様を見てしまった以上、崩壊するのは早いだろう。
「ハルはセフネイア王国に行くのか?」
「……え、あ、うん、とりあえずこの国を出ようかなと」
「そうか。ならあっちで会えるかもな」
「は?」
「俺もセフネイア王国に行くからな」
そう言われておれはイヴァンを見るとイヴァンはとても和やかに笑っていた。
怖い、変態に狙われるってこういうことなのか。
あっちで会うとか言うけど、会えるわけないじゃん。どんだけ広いと思ってんの国というものがさ。
呆れたけど、俺はとにかく今はこいつと離れたいので適当に返事をした。
「はいはい、じゃあ部屋でてくれる。俺、この後用事があんの」
そう俺が言ってイヴァンを部屋から追い出した。
もちろん俺が力を加えても動かないはずのイヴァンが動いているのはイヴァンが出て行こうとしてくれているからだけれども。
「ハル、またね」
イヴァンはそう言うと俺の首筋にキスを落としてきた。
「ひっあっ……やめろっお前とはなんもなかったんだからな! 二度と近付くなよ!」
俺がそう言って扉を閉めるまであいつめちゃくちゃ笑顔で手を振っていた。
怖い、隣が強姦魔とか怖い。
とにかく俺は暫く部屋で悶々としていたのだけど、お腹が鳴ってハッとした。
昨日から何も食べていないことに。
慌てて持っていた鞄を取り上げて、その中に昨日あっちの世界で買ったパンが余っていることを思い出してそれを一気に二つ食べた。
本当は全部食べても足りないんだけど、もし何かあったら困ると思って一個取っておいた。
そして鞄を持ちかけてからふと気付いた。
「俺、収納持ちじゃん……」
鞄要らずのはずで、ゆっくりと鞄の中にあったパンを入れて見た。
パンはあっという間に収納されて亜空間に消えた。そして頭の中でインベントリみたいに何が幾つ入っているのかが思い浮かんだ。
便利じゃん、収納。
そういうわけで持っていたパンが六つ。それから財布代わりの金貨の入った小袋も収納に入れて見た。すると金袋と表示されるだけで幾ら入っているのか総合の表示しかされなかった。
あ、もしかしてバラバラに入れた方が表示されるのかと思ったので金袋を収納から出して、中身をそのまま収納してみた。すると金貨二十八枚、銀貨四枚が表示された。
「こっちが便利じゃん」
欲しいだけ思い浮かべたらそのまま手に出てくるからこっちの方が圧倒的に計算が速くなるだろう。
「よしよし、順調順調」
昼間で暇なので収納の性能を試した。
収納は部屋で一通り試してみたら、案の定宿の机も椅子もスッポリ入り、ベッドも簡単に収納された。インベントリの表示からして枠は百表示、一枠に金貨二十八枚が表示されているのでどうやら纏めて同じものは一枠で済む計算だ。
「なるほどね……」
部屋の家具を戻してから俺は部屋を飛び出した。
お腹も張ったし、暇なので街に出て街を見回って鑑定を試した。
看板が木だったり、鉄だったり、窓がガラスだったりと色々と鑑定していると鑑定の技能の階級があがった。
使えば使うだけ上がるようで助かる。
街の隅々まで鑑定をしまくったら十回以上も階級が上がっていた。
どうやら鑑定は最初からできているので、聖女の称号に淫乱がかかったことによりダウンしたレベルとは関係なかったようである。
自分を鑑定してみると、生活魔法のレベルは2に上がっていた。
基本的に能力は全部が初期値の100であるが、魔力だけは1だった。
しかしその魔力が聖女としての魔力と表示されている魔力と違った。
生活魔法で使う魔力と聖女として使う魔力が別計算になっているようだった。
「なるほど、生活に支障はないってことか……」
よくよく考えたら聖女としての能力が使えてしまったら、せっかく勇者召喚で酷使される世界から逃げられるのに、聖女の能力を知られたら引き戻されて奴隷のようにこき使われる未来しか見えないじゃん。
「やば、早く王都を出ないと」
俺は街の探索を終えて、昼が近くなったので街の露店で売っている美味しそうな串肉を二つ買って広場で食べた。
一つで青銅貨五枚、二つで銀貨一枚である。どうやら青銅貨が百円で銅貨が十円のようだ。
一つは収納に仕舞って一つだけ食べた。
「うっまい……」
ちょっと高いかと思ったが、それでも肉はちゃんとピリ辛のタレが効いていて美味しかった。
この世界の食べ物も意外にいけるのかもしれない。
そんなことを思いながら、食べた串をゴミ箱に捨てて冒険者組合に向かった。
冒険者証明書を貰わないことには街を出られないからな。
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