彼方より 002

隣は危険人物のせいで初期値に

 服屋を出た俺は、今度こそ冒険者組合に向かった。
 服屋の老婆に道を聞いたら、このまま門の方へ進めば黄色と赤の派手な建物があるからそこだと教えて貰った。
 そのまま二百メートルほど歩いて行くと、派手な黄色と赤の壁色をした建物があった。そこには旗などが立っていて冒険者組合と看板が書いてあった。
 とても広く、役所くらいの外観をしている。
 人が多く吸い込まれていっては吐き出されるので王都の冒険者組合は大きいらしい。
 そのまま入る人に続いていくと、中は本当に日本の役所みたいな感じだった。
 奥で組合員が作業している場所があり、手前にはカウンターがあってそこでは人が椅子に座って話しかけていたりする。
 受付の上には案内板があり、見ると初心者登録所や依頼受け付けなど、幾つにも別れていてそこには受付嬢が立っていた。
 意外にちゃんとしていて俺は驚く。
 へえ、もっとこう荒くれ者が飲んだくれているような場所を想像したけど、違ったなこれは。
 とりあえず、突っ立っていても仕方ないので初心者登録所の受付に向かった。ちょうど誰もいないようだったのでそのまま受付に話しかけた。
「冒険者証明書が欲しいのですが?」
 そう言うと受付嬢はニコリと笑って椅子に座るように言った。
「初めてですか?」
「はい、登録するようにと言われたので」
「そうですか。ではこちらに必要事項をお書きください。分からないことがございましたら、質問してくださいね」
 そう言われて紙を渡された。
 紙には登録する名前や出身地などを記載するようになっているのでそのまま書いた。
 しかし名前は藤本晴一とは書かなかった。
 ハルとだけ名前を書いて、苗字は空白にした。
 何となくではあるが本名は名乗らない方がいい気がしたんだ。
 勇者たちと関わる気が無い以上、本名で探られるのは面倒くさい。
 そう俺は後から技能が解放された、聖女なんでね!!
 何で聖女なのか分からないんだけどね!
 そう思いながらも冒険者として登録するにはどうすればいいのか迷う箇所があった。
 そう技能の部分である。
 正直に聖女と書くのはアホのすることであることは分かってる!
 かといって、鑑定持ちだと言うのも違う。
 では収納でどうにかなるかとなると、収納の大きさが分からない。
 さて困ったな。剣士でもないし、かといって回復は使えるのか? 聖女って何する人だっけ?
 そこでグールグルと悩んでいると、受付嬢が話しかけてきた。
「分からないところがございますか?」
「あの、ここの技能のところで……収納を持ってはいるんですが……大きさが分からないんです……」
「ああ、なるほど。収納ということは補助ということになりますね。容量に関しましては後で調べることもできますが、先に試験を受けられます? 最低限の荷物が入れば補助ということで登録可能ですよ?」
「じゃ、それでお願いします」
 そういうことで俺は収納の容量を量ることになった。
「収納持ちの方はたまにいらっしゃいますが、容量が足りない方が多くて先に測ることが前提になってますので」
「ああ、なるほど」
 確かにそう言われたら納得ができる。
 コップ一個しか入らないのに補助の仕事ができますとは言えないわけよ。
 俺としてはこの世界に詳しくないので、魔物とか出たら戦うなんてあり得ないからどうしても誰かに守って貰うしかない。そうなると収納が一番手っ取り早い技能になるんだよな。
 まあどれだけ入るのかは分からないけど。
 そう思って隣の部屋に入ると、大きな荷物が並んでいた。
「こちらが一般的な冒険者組織が持つ荷物になります。あとは宅配の仕事などがありますので、容量は大きいほど重宝がられますね」
 なるほどそういうことか。
 というわけで、最初は三百キロくらいの荷物からだった。
 あれよ、米袋三十キロを十個くらい。
 どうやって収納するのか悩んだけど、触って入れと思ったら荷物がすっと消えていく。
 そして頭の中に収納された米袋が入っていると分かる。
 でも一個ずつ触れないと入らないようでこれはこれで面倒ではある。
「全部入りましたね」
「そうですか。次は隣のまた荷物を入れてみてください」
「はい」
 言われた通りに隣にある米袋三十キロの二十個くらい。それもすっと入っていった。
「入りました」
「では最後の荷物も入れて見てください」
「はい」
 言われた通りに最後は米袋三十キロの五十個。
 どうやら合計百個が合格ラインらしい。
「入りましたね」
「大丈夫そうですか?」
「はい、全然大丈夫みたいです」
「では、それらは全部出してください」
「はい」
 入れた分を全部元通りに出して積み上げておくと、受付嬢がニコリと笑った。
「補助でいきましょう。ここまで入る方は珍しいので重宝されると思いますよ」
「そうなんですね」
 まだまだ余裕で入りそうだったけど、これくらいで珍しいならもうちょいくらいで様子見した方がよさそうだと俺は考えた。
 この世界の収納持ちがどこまで持てるものなのかも分からないし、何より収納を持っていることで面倒ごとには巻き込まれたくはない。
 受付に戻って補助ということで技能は収納で、その容量が百と書かれた。
「あの、名前のない村からきたのですが……出身地はどうすればいいですか?」
「ああ、空欄でも構いませんよ。村の名前がないことはよくありますし、自分の村に名前があることを知らない方も珍しくありません」
「なるほど」
 そこまで詳しい情報が欲しいわけではないのだなと俺は思った。
 まあ、王都の門を潜って入っている以上、検問を受けて入っているわけで、怪しいところはないというわけだ。
 道理で早く証明書を作れと言われるわけだ。
 この中にいる限り、俺は怪しくはないと言っているようなものだったのだ。
 あの兵士のおっさん、マジサンキュな!
 名前と補助であることと収納技能を持っていることと容量は百ということ以外は書かれていないが、そのまま登録はできそうだった。
「仮証明書がこちらになります。証明書は特殊な技巧で作られますので本日即配布はできかねます。明日の昼過ぎにはできますので再度こちらの受付にお越しくださいませ。それでは本日はお疲れさまでした」
「どうもです」
 仮証明書を貰ってちょっとホッとした。
 これで問題がなければ明日には冒険者証明書が貰える。
 そうホッとしたのも束の間、ハッとしてから俺は慌てて受付の人に聞いた。
「あの宿屋とかの情報みたいなのありませんか。泊まるところが分からなくて」
 俺がそう聞くと受付嬢は小さな紙で束ねられた冊子をくれた。
「この街の情報誌になります。こちらの四ページにある、南という宿屋が安全で安く泊まれますよ」
「ありがとうございます、助かります」
 親切に冒険者観光ガイドみたいなものを貰った。
 それによるとちょっと奥まったところにある宿屋で、狭い部屋だけど寝るだけならちょうどいい銀貨二枚で泊まれる宿屋だった。
 急いで俺は宿屋に向かった。
 泊まるところがないと知らない世界で野宿になるからだ。
 そんなの冗談ではない。
 幸い、南という宿屋では宿は取れた。
「一泊銀貨二枚だよ。食事は隣の食堂で別払い、お湯が欲しかったら銅貨一枚ね」
「じゃあ、三泊でおねがいします」
「はいよ、銀貨六枚ね」
 そう言われたので金貨一枚を出した。
「はいおつり。鍵はこれ、部屋は四階一番上の奥の角だよ」
 金貨一枚出したら銀貨四枚がおつりで戻ってきた。
 どうやら銀貨は千円程度の価値かもしれない。銅貨一枚なら百円程度かもう一つ硬貨がありそうだな。ということは金貨は一万円くらいの価値なんだろうな。
「どうも」
 俺は鍵を受け取って階段を上った。
 階段はしっかりとしていて、人の声は聞こえてこない。
 階段を上りきったら部屋は二部屋しかなかった。
 奥の部屋と言ったので奥への扉の鍵を開けて入った。
「お、狭い」
 部屋は二間くらいの広さだった。
 ベッドとベッドの横に机と椅子だけだ。
 トイレは部屋の外にあるようだった。
 気になって開けてみたら、全然臭くはなかった。
「どういう仕組みなんだろうな、これ」
 下水も臭くはないのでちょっと助かったが、風呂なしトイレは共有でこの安さなら何日か暮らせそうではある。
 その間に何とか方針を決めなきゃいけないが、とりあえずは寝床の確保に成功をしたことは喜ぼう。
 部屋に入って机に鍵を置いた。
 部屋が既に薄暗くなっているのでどうしようかと迷っていると角灯が机においてあるのに気付いた。
 しかしどうやって火を灯したらいいのか分からなくて四苦八苦してしまった。
 明かりどうやってつけんの?
 俺、魔法とか使えないんだけども!
 そう俺が心の中で思った瞬間だった。
『暗さを感知しました。生活魔法が解放されます』
「……へ?」
 魔法、きたーーーーーーーーーーーーー!!
「て、生活魔法ってどういうこと?」
 普通の魔法ではなく、生活魔法。それは恐らく生活で役立つ魔法のことだ。
 つまり火を付ける種火だったり、水が飲める水が出たり、明かりが灯せたりするような魔法のことだろう。
 ん? 明かり、光魔法があるってことか!!
 俺はそれに気付いて角灯を指さして言った。
「光、灯れ」
 そう言った瞬間だった。
 急に目の前が真っ白になって目潰しでも食らったかのような光が溢れて出たんだ。
「ぎゃああ!! 眩しっ!」
 しかもその光がなかなか消えなかったせいで、俺は目潰しを食らって何も見えなくなった。
「うわああ」
 立っていられなくて座り込んでしまったら、急に部屋が叩かれた。
 コンコンと叩かれても返事しようにもできなくて困っていると部屋の扉が開いてしまった。
「大丈夫か」
 誰かが部屋に入ってきた。
 低音なので男の人だとは分かるが、あ、鍵かけるのを忘れていたな。
「……だ、大丈夫、です」
「少し落ち付け、いいか。光を消すと思え」
「……あ、はい、消す消す消す」
 そう俺が言うと光は消えたようだった。
「暴走したのか?」
「多分……」
「なるほど、急に隣が光るから何かとおもったぞ」
 そう言われてしまい、どうやら隣の部屋の客人が異変に気付いてやってきてくれたらしい。
「すみません、ちょっとヘマしました」
「そうか、ベッドに座ろうか。目が眩しさでやられただけか」
「はい、そうです」
 誰だか知らないけど、助かる。
 そう思っていると軽々と抱えられてベッドに寝かせられた。
 その時、ふっと何かのいい匂いがして俺はスンと男の人の匂いを嗅いだ。
すると同じように相手も俺の匂いを嗅いでいることが分かった。
「お前……まさか……聖女か?」
 男がそう急に俺の称号を当ててきて俺はビクリと震えた。
「い、いや違うし……なにそれ」
 俺はそう言って誤魔化したけど、首筋に当たる男の息がとっても荒いことに気付いた。
 俺はこれを知っている。
 男が性的に興奮している時の息遣いだ。
「……すまない」
 男がそう言うと俺はあっという間に服を剥ぎ取られてしまった。
「ちょっと待って……」
 幾らなんでもこの世界にきてまで男と寝ることになるのか!?
 ちょっと待て、待て、いやーーーーーこの人の股間がめっちゃ足に当たってる! いかんそれはデカすぎるってば!
「だ、誰かっちょっと!」
「叫んでも無駄だ……ここは防音の魔法が設置されている宿屋だ。音漏れはしない」
 嘘でしょそんな防音魔法とか知らんーーーー!!
 妙にハイテクなのなんなのこの世界!
 そうしている間にも男の指が俺のアナルに入ってる!?
「慣れているようだな……」
「違うからっそうじゃないからってか、挿れんなってっ!!」
 慣れてるってか慣れてるけど!
 男に抱かれる側ですけど!
 昨日もしけ込んでましたけども!
 だからってこいつのチンコ、でかいのにっもう嘘だろ、挿入ってるっ!!
 何でローション使ってないのに、そんなに簡単に入るわけないだろうに!
 何で簡単に濡れたみたいに挿入ってんのよそのチンコ!
 俺はパニックになっていたけれど、男がこう言ったのだ。
「さすが聖女の称号を持つ男、濡れて挿入るようになるんだな……たまらんっ」
 そう言われてしまい、俺は何だかちょっと絶望だ。
 異世界初日に宿屋で隣の親切そうだった男に聖女の称号を持っていることを見破られて襲われるなんてあり得ないから!!
「あっ……ちょっ……まっ……ああっんっ」
「俺のを全部飲み込めるのか……お前、さすがだなっ」
 男はそう言うと腰を振り始めたんだ。
 待て待て待てっ……やばい、何これ、気持ちいいんだけど!!
「あっ……ああっ……まっ……ああんっんっあっなんでっ……あああっ」
「俺の相手は聖女しか務まらない……俺を……勃起させ、こうやって発情させることができるのは聖女だけだっ」
 男がそう言って激しく腰を打ち付けてくる。
 冗談じゃねえって思ってるのに、こいつの腰使いに息を乱される。
「あっ……ああっ……んあっあんっ……ああっ……ああああっ」
 ヤバイ、こいつのチンコ気持ちいい……あっちの世界でセックスした何倍も気持ちがいいんだけどっ!!
 何これ天国みたいな気分になるんだけどっ!!
 聖女ってそういうことなのか!? そんなバカなっ!!
 部屋中にパンパンと音が響いて、俺も嬌声上げてるし、男は気持ちよさで腰を全力で振ってくるし、乳首も指で引っ張られて気持ちいいし、俺どうなってんのよ!
 ダメだ、イカされる、初対面で顔すら見えていない男に強姦されてイカされるのか!!
「イクっあああっああっひあああああ!!」
「……うっあっ!!」
 俺は絶頂してしまった。
 それに合わせて男も俺の中で果てた。
 精液が中に渦巻いてきて、熱くてそれが体中に染み渡っているのが分かる。
 そして俺にしか聞こえないナビゲーションがなっている。
『精液を受け取りました。淫乱が解放されます。聖女と淫乱が同時に発生しました。報酬として精液を受けるごとに魔力が上昇いたします』
 なんでそんな最悪な魔力の上げかたになるのか説明してくれ!
俺は男とセックスして中出しされないと魔力も増えないってことかよ!
『魔力は初期値に再設定されており、1となっています。他の技能が施錠されました』
 魔力1!?
 さっきの光魔法はなんだったんだ!?
 初期値って俺、そういえば、技能なしだったから魔力もそこにリセットされたってこと!? 嘘だろ!!
 冗談だと言ってくれ、ナビゲーション!!

【名前】ハル
【種族】異世界人族
【年齢】18
【基準(lv)】999
【称号】聖女 999 神々に愛されし子 召喚に巻き込まれし者
【技能】鑑定 収納 闇魔法 光魔法 生活魔法(火、水、風、水、土、光、闇。攻撃には使えない魔法)転移魔法 祈り(回復 解呪 浄化 結界 防御) 創造魔法 言語理解 危険察知 隠匿 魔力感知
【運】幸運EX
【加護】******
【生命力】200
【魔力】99999

↓↓

【名前】ハル
【種族】異世界人族
【年齢】18
【基準(lv)】999
【称号】聖女 1 淫乱 1 神々に愛されし子 召喚に巻き込まれし者
【技能】鑑定 収納 生活魔法(火、水、風、水、土、光、闇。攻撃には使えない魔法)言語理解 隠匿
【運】なし
【加護】******
【生命力】200
【魔力】1


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