Distance Start in my life

9

「唯」
 告白した後、左部(さとり)が椅子を立って近づいてくる。

 もちろん何をしようとしているのかは分かっている。だから恥ずかしくて顔を上げられないし、返事も出来ない。今返事したら妙な声が出そうだ。

「唯」
 耳元で声をかけられて、びっくりして唯は顔を上げた。目の前に左部がいる。  
 向こうも少し緊張しているのか、声からして緊張しているのが伝わってくる。
 頬に当てられた手もなんだか緊張でふるえているから、なんだか左部らしくなくて唯はちょっとだけ笑った。

「緊張してるのがおかしい?」

「あ、ううん、こんな時も余裕なのかなって思ってたのと違ったから、安心しちゃったかな」
 唯がそう言って微笑むと、左部の緊張した手の震えが止まった。

「決めた、もう最後までやる」
「え?」

「異議はなしとみなす」

「え……ちょっと……」
 いきなり暴走しただした左部に唯は戸惑ったのだが、迫ってくる顔に目を瞑るとキスをされた。 

 ファーストキスをするような、優しいそんな子供なキス。
 左部のことだから、きっとすごいのだろうと思っていたから、これは予想外だ。

 そうしてくれるのは唯が初めてだと知っているからだ。
 左部は唯の顔を両手で掴んで、顔中にキスをする。くすぐったいと唯が顔を背け様とするが左部がそれを逃すはずもない。

「もう、くすぐったいってば……もう……」
 クスクス笑いながら、唯は左部の手を剥がそうとする。
 左部は唯の唇を舐め、上唇、下唇と甘く噛んで唯を誘う。答えるように、甘い息を吐いて開いた唇に、今度は深く食らい付く。

「……ん……」
 口内に侵入してくる舌を受け入れて、それに答える。
 これが左部の本気なのだろう。それでも優しいから泣きそうになってくる。
 そうしてキスをしていると唯は頭の中が真っ白になってきた。

「……あ……ん……」
 顔の向きを返る度に唯の声が漏れる。
 やっと唇が離れた時には、唯は左部の胸に倒れた。

「可愛いな唯」
「ん……そんなこと……ない」
 唯はやっとのことで息を整えるのだが、仕掛けてきた左部は平気な顔をしている。

 ぼうっとしたままの唯を抱き上げると、左部は自分のベッドに運んだ。
 ベッドに横たえると、ワイシャツのボタンを外し、脱がせていく。
 唯はどきどきしながらも、左部がしたいようにさせていた。

 す、するのかな……やっぱり。

 ちょっと怖いのもあるが、それよりも左部が自分をほしがっているのだと思うとそっちの方が勝って嬉しくなる。

 全部脱がせると、左部がまたキスをしてくれた。優しいキスはそのまま首筋に滑り落ち、ちゅっと音を立てて吸い取っていく。

 そうしながも手が胸の突起を攻めてくる。なで回し、指で捏ねてひっかく。それをされるとびくびくと唯の身体が震えた。まさか胸で感じるなんて思わなかったのもあったが、こんな感覚は初めてでびっくりした。

「……あ!」
「大丈夫、男でも胸は感じるもんなんだ」
 左部はにっこりとしてそういうと、胸の突起に吸い付いた。
 舐められると、さっきまでとは違う快感が襲ってくる。

「……ん。や……あっ!」
 それと同時に、左部の右手が唯の中心を握り締めてきた。

「んあ……んん、ああ……」
 左部は唯の鎖骨にキスマークを残すように強く吸って痕をつける。
 これは俺のだという証。男なら付けたくなるものだ。

「ん……あぁ……んん」
 さらに内股にも同じようにし、左部はそれに満足して唯自身を口に含んだ。
「あ! ああっ!」
 口で扱いて舌で巧みに舐めていくと、唯の声も高くなる。
 そのまま準備していたローションを取り出して、孔を刺激して、襞を撫で、指を一本入れる。何度も出し入れをして解して二本目を入れる。

「そ、そんなとこ……ろ、あっ!」
 しかし、左部の指を動かすのをやめない。

「……ああ、さ、さとり……」
「いって」
「いっちゃう……」
「イッていいよ……」
 急所をわざと刺激して、左部は唯をいかせた。
 イッたばかりなのに、左部が孔を刺激ことで唯の中心はまた勃ちあがってしまう。

「う……ん、っはあ……あぁ……」
 指の動きに合わせて唯の腰が揺れ始める。
「あ、ん……ああぁ……さとり」
「ん? 何?」
 意地悪をして左部はわざと唯を焦らせる。

「……おねがい……ん」
 また指で達するのは嫌だと唯が訴えてくる。
 お願いされるとは思ってなかったので、左部は嬉しくなる。
 熱くなって、密を零している己を唯の孔に当てる。先を忍ばせると、ギュッと締め付けられた。

「んんん……」
「……唯、息吐いて……キツイ」

「……あん、で、できな……ん」
 仕方ないと左部は唯の中心を握って強く扱く。そうすると唯の身体の力が抜けて左部の侵入がしやすくなる。その隙をついて、左部が一気に自分を押し込んだ。

「あーー!」
「くっ……きついな」
 荒い息を吐き左部が言った。

「き、きつい……?」
 荒い息をしながらも、自分がつらいのに唯はそう聞いてきた。

 潤んで上気した唯の顔を覗き込んで左部は微笑んでいる。

「唯、可愛い事言う」
「……ん」
 唯は左部を抱き締めた。

「う……ん、さとり、すき……」
 だからこっちがつらいのは気にしないで。
 そう呟かれて、左部は虚を突かれた。

 こういうときにそういうことを言うのは、もう暴れてもいいんだという証だと分からせないと、本当に困ったことになる。

「覚悟しろよ、そういうことをオオカミの前でいうとどうなるか」
 左部がそう言うと唯はきょとんとしていたが、どういうことになるかはまだ分かっていないらしい。

「覚悟しとけって」
 左部はそういって唯の腰を掴んだ。
 
   
「あぁん……あぁ、ん、はぁ、……あぁ」
 内部を熱くして、圧迫する力強い動きに唯の頭の中は真っ白になる。
 感じるままに感じる。
 声を上げ続けて、もっともっと、とねだる。
 左部の動きは荒々しくなり、激しく突き動かす。

「……ああぁ、もう……んっ」
「……だから言っただろ? そういうことをこういう時に言ったらいけないって」
 すでに四回目に突入しているだけに、唯の意識も飛びかけている。

 初めてにして初めての快感をもらい、しかも左部はセーブしながら、唯の意識を飛ばさないようにしているから、四回目となっている。しかし、もう唯の体力はない。

「も……だめ……あああ!」
 唯が達したところで、左部も達する。
 一緒に達したのはこれが最初だ。

 荒々しい息しながら、左部が覆い被さってくる。受け入れたままで唯は左部を抱き締めた。
 左部は唯にキスをして、顔を覗き込んで笑っている。

 その顔はとても色っぽくていい男だった。
 唯が記憶していたのはそこまでの記憶だ。後は意識を飛ばしてしまったから、何がどうなったかは覚えていない。

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