Agnus Dei3
6
村を出た匡季であるが、その日は一つ県を跨いだ先でホテルに泊まった。
というのも、朝早くに村を出たのはよかったが、鈍行で一日かかるような距離で、来る時はレンタカーで来た道を電車にしたせいで余計に時間が掛かったのだ。
とはいえ、ラブホテルくらいしか空いてない週末だったせいで陽大(ようた)とこんなところに泊まるのは少し気不味い気分だ。
「ごめん、こういうところしか空いてなくて」
そう言うと陽大は気にした様子もなく言った。
「構わんよ。ここが恋人同士が愛し合う場所というわけか。面白いものが沢山あるな」
陽大が触っているのは大人のおもちゃの入った販売機だ。
部屋に一つは必ず付いていて、お金さえ払えば好きなものが買える。ローター三種やバイブにディルドなども売っていて、買った物は持ち帰りも出来る。
だが陽大はそのドアに触れたとたん、お金も入れていないのに自動でドアが開いてしまっていた。
「ちょ、陽大……不思議な力は駄目だって……」
「開かないから仕方ないだろ」
「だから、ここにお札を入れて、入れたらランプが付くから欲しいのを押したら鍵が開くんだよ……勝手に取ったら窃盗なの!」
そういい陽大が説明するために適当に商品を取って陽大に渡した。
「あのね、最初に言うけど。緊急時以外の不思議な力は駄目! 他の人に見られても駄目! バレたらまたあの村に連れ戻されるかもしれないんだよ? 戻りたいのならいいけど……」
匡季がそう言うと陽大はふっと考えてから頷いた。
「見つからなければいいんだな?」
「まあ、バレなければいいけど、あとで面倒なことに巻き込まれないようにお願いするよ」
誰にも分からなければ何をしてもそれは神の領域の話だ。
匡季がそこまで関与することはなく、むしろ無知に近い匡季にはどう判断していいのか分からない。
とにかく汗をかいたのでそれを流してからやっと人気の無いところで話が進んだ。
「それで陽大は村を出てからどうするわけ?」
「そうだな。この世界をお前の記憶以外から見てみたいと思った」
「ああ、そっか。僕の記憶じゃ僕の知る範囲しか分からないもんね。それはいいとして、僕と一緒に住む? それとも陽大の好きな場所をどうにかしてみる?」
完全な神となった陽大がどんなことが出来るのか分からない。
とにかく居場所を何処にするのか尋ねると、陽大は言った。
「匡季、お前のその長方形の世界と繋がっているものを見せて貰えるか?」
急に違うことを言い出したので匡季はキョトンとする。
「長方形の……世界と繋がってる……あ、ああスマホ? あ、そっか町まで出たからWi-Fiが復活したんだ。僕のスマホならいいけど何するの?」
「それで知識を得るのさ」
匡季がスマホを取り出して陽大に渡すと陽大はそれに手を翳した。使い方は分かっているだろうに妙なことをしていると匡季は思ってみていると、一分ほどで陽大はスマホを手放して匡季に返してきた。
「それで何が分かったの?」
匡季は言ってスマホをテーブルに置いてソファに座った。
陽大はニッと笑ってから言う。
「ほぼここにあるものは全部と言っていいか。地球上にネット世界と繋がっているものには大体接触はできた。ところどころ障壁があって入り込めないところがあったがそこまで知る必要もないだろう」
そう言う陽大は完全に世界を知ったからか表情も一段と人に近づいたような表情に変わっていた。
物を知らない無知な神ではなく、人が知る必要のない情報すらもこの神は取得し、そして英知を得たのだ。
「あー……その先はたぶん、国の重要な機関とか兵器とかそういうものがあるから、接触したら逆にこの世界中の国から追われることになるからやめとけ?」
匡季は嫌な予感がしたので一応陽大に忠告をした。
「ほう、それはやめておいた方がよさそうだな」
陽大はニヤリとして笑っているけれど、それはそれでありかもしれないと思っているのかもしれない。
「いくら世界を牛耳ることができるとはいえ、狙われても死なないのかもしれないけどさ。僕を巻き込むのは勘弁してね。平和に生きたいんだ」
匡季がそう言うのだが陽大は言った。
「平穏とは遠い存在のようだが?」
「人の記憶全部見たからって……あんまり僕を不幸だと思わないでよ」
匡季の記憶に接触して全て覗いている陽大には匡季の昔のことなど全部分かっているだろうし、その時に匡季が思ったことなども分かっているのだろう。
「それでこれからどうするの?」
「ああ、ちょうど良かったからマンションを買った」
陽大がニコリとしてそう言うので匡季は首を傾げる。
「いや、お金ないでしょあなた」
「金は無くても買ったという記録は作れる。不動産会社の物件にアクセスしてマンションを買う契約にチェック。振込先がないから匡季の通帳に俺からの金を送金した記録を作り、それで払ったことになってる」
「は? ま、待って、それって偽造?」
「偽造では無いな、実際の怪しげな団体が洗浄して流している金をあちこちから別の通帳に入金させ、それを纏めてスイス銀行に俺の口座を作りそこに流す。そこからお前の銀行口座に俺から送金した。つまり足の付かない金というわけだ」
陽大の説明に匡季は頭が付いていかないが、どうやら盗んだ金は決して彼らが取り返そうとしても捜査もできない怪しげな金で、決して取り戻しには来られない使途不明のお金なのだ。もし取り戻そうとして警察を介入させればその組織の方が痛い腹を探られてしまうというわけで何もできないらしい。
「インターネット怖い」
匡季はそう呟いた。
スイスの銀行は外部からの接触もそうだが、どんな国の犯罪捜査に対しても顧客の情報を提供しないという鉄壁の不介入を貫く銀行が多くあるのだ。
それをあっさりと突破して書類を偽造して口座を作って金を振り込んだわけだ。
最近のシステムはほぼネットと繋がっているため、小さな入り口さえあれば陽大は入り込めるというのだ。
「つまりネットに繋がっているならどんな障壁も乗り越えられるのか。おっそろしい兵器になってるな、陽大は」
「だから外では秘密だぞ」
「あ、当たり前だ! 言えるわけないだろ!」
ただでさえ神という謎の存在なのに、加えてインターネット状なら無敵と言っていいくらいにどの探知もできない不正アクセスし放題とくれば、村の人間よりも世界のあらゆる組織と国が欲しがる存在になってしまったわけだ。
「……なんでも干渉出来るってのも問題過ぎる……」
匡季は陽大と話しているだけで頭がおかしくなりそうだった。
ただでさえ神という存在を持て余すのに、さらには世界にとって大犯罪者となり、世界を本当に手に入られるくらいのことも出来そうである。
「そ、そういうのはあんまり使わないでくれるとありがたいんだけど……いずれにせよ、証拠が残るしね……」
「それはない。記録は改ざんしてデータは消した。データというものは脆いな。紙や書類などは人の手を介さないと存在はできないが、データは接続しているだけでいくらでもねつ造を行えてさらにはそのねつ造をした記録のデータすらその場で消すことができる。消したという記録さえも消せる。俺の手に掛かれば工程すらも偽造可能だ」
「やだ、一流のハッカーみたいに言わないでくださいよ……もう……」
匡季はベッドに倒れ込む。
やってらんないと思うと同時に、世界中の情報を手に入れたのならきっと捕まるかもしれない手段は執らないだろう。それくらいの知識はあるはずである。
「そんなことよりも、お前と楽しみたいことがある」
陽大がそう言いながら匡季の寝転がっているベッドまでやってきて匡季に覆い被さる。
陽大は慣れたように匡季にキスをしてから、さっさと匡季の服を脱がし始めた。
それで匡季も察した。
陽大がしたいのは知識を得た状態でのセックスだ。
様々な志向があるセックスの部類でも陽大がしたいのは強引で力強さを求める類いだった。
「あひっあっあんっ、んっふああっいいっ、あぁんっんっあっあっあっあんっ」
抉る様な陽大のペニスが奥を突き上げ、さらに奥まで挿入り込んでいる。
匡季の体はその苦痛すらも受け入れやすく作り替えられたかのようにそれを受け入れ、もっと中まで抉って欲しいと匡季は思った。
「あっいっちゃうっ、あんっあひっあ゛っいっああっあっやああっぁっはぁっ、あぁ……」
「なかなか、快楽を得る行動であると認識するとよりセックスを楽しめるわけか」
「ひああっ! んっあっはぁっあぁっ、んっ、あ゛ひっあひっあんっあんっあんっふ、ぅ……ん、ん、んっんっ」
「随分とこらえ性のない体になっているようだが、匡季の中はさすがに専用になっただけのことはある。堪らないな」
どうやら陽大も気持ちよさは感じるようで匡季を穿つだけでもその良さは分かるようだった。
「ん゛っんんっ……んっふ、んっんっんん……ふぁっ、はあっ、あっはぁっんあっあぁんっあひっあっらめ、んっああっ」
「可愛いな、匡季。お前は本当に愛いやつよ」
「やっあっあっああっあひっあひっやっああぁっもっらめっ……ああっあああんっ! あ゛あ゛ああっ! い゛っ……あっ、ああっ」
「まだまだ出来るだろう? もっとだ。何せここはそういうことをする部屋だそうだから? もっと楽しめるだろう?」
「あ゛っあんっきもちい、あんっおちんぽでゴリゴリ気持ちいいっあっひあぁんっ」
うつ伏せにされ、腰だけ高く上げられて強く突き入れられたら、匡季はもう完全に快楽に溺れてしまう。
「あっいいっ……きもちっいいのっひっあっあっあ゛あああっあひっい゛いっあっあっあっあんっ!」
「そう素直になるのはいいことだ。匡季、もっと俺に身を委ねるのだ」
陽大の言う通りに快楽を受け入れるとその快楽は何倍にもなって匡季に戻ってきた。
「あひっらめっあ゛っあんっあんっあんっ……あっひっあああんっ……あ゛っひっらめぇっ……あっあんあんあんあんあんっ!」
ゾクゾクとする感覚があっという間に匡季を絶頂させ、そしてまだまだ深くなっていく快楽へと誘うのだ。
「あんっあんっあんっ! あ゛ひっんっあぁああーっああぁっ……、あ゛ひっあひっんっあっあんっんっやぁっんっあ゛はっうあっん」
陽大は快楽に溺れる匡季を見下ろし、その全てを見ている。
匡季が本気で気持ちがいいと喘いで嬌声を上げているのはきっと繋がっている間はしっかりと伝わっている。
「んっあ、きもちい、ふぁあんっ……あぁっあっあ゛っいいっ……あぁんっいい……ああんっおちんぽっいい……ああんっああっ……きもちいいっああんっ……ああんっおま○こっああんっいいっ」
「さあ、もっと味わうのだ……我に与えられた快楽に溺れ、そして溶け合うのだ」
「あ゛あぁっ……おちんぽすごいっ、ああっ、あっ、やああっあっあんっあっあ゛ああぁっ……すきっおちんぽ……いいっすきぃっ……おま○こっハメハメされて、イキまくちゃうっ……あ゛っ……いい……おま〇こきもちぃっあぁあんっあんっ」
「これが好きなのだろう?」
「いいっきもちいいっおちんぽっああんっらめっらめっきもちいいところばっかっ……こすっちゃっああんっらめっああっ、すきっ好きっ、おちんぽしゅきぃっ……あ゛っあ゛っ、あっ、きもちいとこっ、ゴリゴリされてっんっあっあああんっ」
結腸まで挿入り込んで抉ってくる陽大のペニスは、形を変えて全ての臓器を冒すかのように蠢く。
痛みは感じないし、ただ快楽だけしかそこにはない。
けれど陽大と溶け合っているのだと分かる感覚があり、それが何よりも匡季を安堵させるものだった。
「ああ……すきっおちんぽっ……すきっああ……きもちいいっああんっおま○こゴリゴリされて……ああんっいいっおちんぽっきもちいいっああ……いいっおちんぽっ……おちんぽっああんっきもちいいっああんっ」
馬鹿みたいに性器を欲しいと気持ちがいいと言葉にして、匡季はただひたすら喘いだ。
疲れも何もかも飲み込まれて、悩みなんて些細なことだと思うほどだ。
「あっあ゛っ激しぃっ……ん゛ああんっあ゛っあっあひっ……あ゛っあっあんあんあんっああっすごいっおちんぽっすごい……あ゛あああっ……あぁっあっいいっ、きもちぃっ」
「さあ、中で我の生気を受け取るのだ。そしてその体は変化を続け、我のための者になる。贄とは番を選ぶまでのいわば都合のいい言葉。あやつらは殺してからしか贄を与えんからな……やっと我のところに生きた贄がきたのは、――――――ぶりよ」
神が何か大事なことを言っているけれど、それを頭の隅にすら置けないほど匡季は快楽に溺れた。きっとこれも忘れてしまうのだろう。ただこの時の快楽しか覚えられないのだ。
「ああ……おおきいっおちんぽっきもちいいああんったあんっあああんっ……きもちいいっああんっあっあっあっおま○こ……ああんっいいっおま○こいいっ……ああんっああんっ」
「受け取るがいい……我の精を……」
「あああっ、おま○こっ……ん、いいっ、おま○こに出してっあっあんっ、おま○こに、精液出きたっ……おま〇こでイってっあっ、あっあ、ああああっ!!」
信じられないほどの快楽はあの時と同じだ。
神が初めて匡季に触れた時、匡季は新たな扉を開いて違う世界にやってきた。
体が一から構成されていく気がして、そしてそれが心地よかった。
堪らなく気持ちがいいのでそれを受け入れる。
そして匡季は神の一族に近づいた。
「我の、番よ……我の妻よ……我と共にあれ」
神の言葉を聞きながら匡季は気を失った。
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