Agnus Dei3

5

 不可思議様は阿羅漢から更に進化を遂げ、完全なる神となった。
 さっきまでの鬼の様相から人に近い形に変化を遂げ、長い髪が絶頂で果てている匡季の胸に降り注いでいる。
 体が大きいのはそのままで筋肉隆々なのは鬼の時と変わらないけれど、鬼の形相だった顔は人の優しい顔に変わる。それは世の中の美しいと言われる顔を模写したかのような完璧な美を持っている男の顔となり、匡季を見下ろしている。
 彫りが深い顔、目鼻は綺麗に配置され、醜かった鬼の形相からは想像すらできない美しさで匡季は目を見開いていた。
「うそ……急に人の姿に……ああっん」
 しかし不可思議様の変化したものは人の様相に近づいただけで、ペニスの形や触手などはそのまま変わりはなかった。
 何より腹の近くまで抉ってきているペニスはまた勃起しているのか中で存在感をアピールしているし、不可思議様の腰も止まらないようだった。
「我の物よ、我の妻よ、我の愛しき者よ。さあ、もっと我に近づいて完全に我の物へと近づくのだ。お前はここにきた。我の物となるべく。さあもっとだ、お前の全てを差し出すのだ。そうすればお前は我の物なり、我と同じ時間を生きるものになる」
 急に不可思議様が匡季に分かる言葉で肉声で話しかけてきた。
それでも力強く押し入って中出しをしてくる不可思議様の腰使いに匡季は翻弄されてしまい、また快楽の中に突き落とされた。
「ふあっあっ、あっらめええっ、激しくおちんぽでおま○こぐりぐりされたらっああんっきもちいいっああんっああんっああっ!」
「そうだ、そのまま受け入れるといい」
美しい男がそう言いながら自分を抱いていると分かると、匡季は心の底から嬉しくなった。こんな神に進化した男が自分を抱いてくれるなんてことはきっとこの先はないだろう。
 だから匡季はそのまま体を神に完全に預けてしまった。
「ああっんっいいっ……おま○こっ……ああんっらめっおかしくなる……ああんっああいいっきもちよすぎるっああん!」
「そうそのまま受け入れるといい。お前の気持ちがいいように何度でも繰り返してやろう」
「あぁあっああんっ……もっ許してぇっ……おかしくなっちゃうっ……、おま〇こ、馬鹿になっちゃうっあああっ……おちんぽっああっ……あっ、あああぁっ……らめっおちんぽハメるのはっ……おちんぽ……ああんっいいっいいっああああっ!」
「心地が良い、お前の中は。匡季という名か、良い名だ。匡季よ、これからは我だけに体を開くのだ。他の誰にも心も開いてはならぬ……我だけを見よ、我だけを信じよ」
「わかったから、ああ、いいっああっ……ああんっ……んっあっあああっああっああっんっああっんあっあっあっああっ!」
 完全に神となった不可思議様に匡季は全てを預けた。
 心も開いたとたん、その快楽は更に一段階上がったところまで匡季を連れていった。
「あ゛あっ……んっあっ、あ゛っ、あっあっあっあああっ! んあっん……あっあああっ……あんっあっああっああっんあっあっはあっんっあっ、ああっあぁんっ」
信じられないくらいに心が軽くなり、秋澄のことや家族のこと、悩んでいた大学のなど、その全てがどうでもよくなってしまった。
 それは諦めたどうでもよいではなく、解決する方法が見つかったと言えた。
「いいっああんっおま○こっいいっきもちいいっああんっああ……ああんっ……ああんああいいっ」
「そう気持ちよくなっていればいい、匡季は我のために全てを開くのだ。そうお前の世界を見せるのだ……いいぞそのまま体も開け。お前はこれから進化をする。人という枠を越えて我と同じ悟りの空間までやってくるのだ」
「あ゛あっいいっ、らめっあ゛あっ、らめっ、おま○こゴリゴリしてるっ……ひっあっ、あんあんあんあんあんっああんっ!!」
 内壁を擦り上げられて、さらに奥もどんどん挿入り込まれてしまい、下から這い上がってきたものが胃をせり上がってくるほどだ。
「おまんこ……ああっ……らめっゴリゴリしちゃっ……ああんっおちんぽっおおきいいっああんっ……ああんっいいっ……きもちいいっおちんぽ……ああっ……いいっ気持ちいいっ……ああんっああっあああんっ」
 もう人のセックスとは様相の違う、神同士の交わりのように光輝く中で匡季は最後の絶頂を迎えた。
「あ゛ああっ……あっ、あ゛っ、らめっらめええっ、あ゛あああぁっあ゛っい゛っ、あっんっ、、いくっあ゛あ゛っあっらめっあ゛っんっ、あっ、あぁっ、いくっ、いっちゃうっ……あぁあああん!」
 そう叫んだ瞬間、匡季のアナルから這い上がってきた不可思議様のペニスが食堂を駆け上がってきてとうとう口から出てきてしまった。
「……っ!!!!」
 悲鳴すら上げられないまま、串刺しにされたようになり、匡季はそれでも体が壊れていないことに驚いた。
 痛みのような辛いものはなく、串刺しにされても匡季は気持ちがいいと感じたのだ。
 その不可思議様のペニスはそのまま体の中を擦り続け、最後は弾け飛んだ。
 弾け飛んだペニスの残骸は全て液体となり、匡季の体を包んで全身にその液体を浴びることになった。
 体の中はもちろん、外側の体もその液体を浴びて、匡季は自分の体が違う物に変化していくのを感じた。
(ああ。これで僕は人ではなくなったのか……)
 不思議とそのことに恐怖も湧かず、感慨もなかった。
 ただ神に進化した何かと交わっていたからそれに巻き込まれただけだ。
匡季はそれでも自分の中の鬱憤になっていたものが晴れたお陰で気分は凄くよかった。
「はあ……気持ちがよかった……んふ」
 そう匡季が呟くとふっと唇に神の唇が触れた。
「え、あ、え?」
 急にキスをされて匡季が驚いていると、不可思議様が言った。
「番になればこういう風に愛情を示すものなのだろう?」
「つ、番って……どういうこと?」
 驚いて匡季が起き上がる。
「番は番。お前は我の妻ということだ」
 不可思議様は社の壁の方に用意されていた装飾品であろう着物を取り上げて、それを匡季のところに持ってきて匡季に立たせて着せた。
「お前の服は用意できないから、これで我慢して貰うしかない」
 そう言われて元に来ていた服を見ると、物の見事に切り裂かれてしまい着られるものではない形になっている。
「うわ、服……気に入っていたのに……」
 少しズレたことを言うので神は驚いているようだが、匡季にはこの全てが許容範囲を超えているので服のことくらいしか自分で判断できることがなかったのだ。
 気付いた時には不可思議様は着物を着ているが、どうやらそれは不可思議様が自分の力で服を具現化できるかららしい。ただ自分の体に密着する肌を服というものに見立て得るだけなので、実際には服を着ているわけではないようだ。
「これと同じものの方がいいのか?」
「そりゃ、着物は慣れてないし……」
 そう匡季が不可思議様の言葉に反応して言うと、不可思議様はふと考え込んでからその手を掲げた途端、さっきまで着ていた服がポンと現れたのだ。
「これなら同じ素材のものと似ているはずだ。これで我慢をしてくれ」
 そう言われて着ていた下着まで再生されたかのように一式が揃っていた。
「あ、ありがとう……助かる」
 匡季は服を不可思議様から受け取って、着物からそれに着替えた。
 脱ぎ散らかされた服は不可思議様の触手が食べてしまったので、ゴミは一応なくなった。
「で、これからどうなるんだ?」
 匡季は不可思議様が完全に復活してしまったことで、悪いことが起こるかも知れないと思った。
 わざわざ未完成の神を祭り、生け贄を捧げてきたということは、この村の宗教者たちはこうやって彼らの目の前で神へと進化する不可思議様が見たかったはずである。
 それが全く予想もしないところでその進化が起きてしまったのだから、この先どうしたらいいのか匡季には分からなかった。
 どうするんだと匡季が不可思議様を見ると、不可思議様は言った。
「ここを出よう。村を出るからお前と一緒にでよう。今から歩いて行けば朝一番のバスに乗れる。それを誰も見ている物はおるまい」
 そう言われてしまい、匡季は言われるがままに不可思議様と社を出た。
 不可思議様はそこで十分ほど何か捜し物をしていたようで、目的のものが見つかったのかすぐに社を後にした。
匡季が腕時計を見るとすでに早朝の四時くらいだった。
 隠して置いた靴を履いて不可思議様と一緒に痕跡を残さないようにして匡季がここまで辿り着いた洞窟に入った。
洞窟に入ってから何時間も彷徨ったのでまたそれくらい彷徨うのかと思っていたが十分もしないうちに元の洞窟の外へ出られたのだ。
「あれ洞窟に入って何時間も彷徨っていたのにあっさりと出られた」
 匡季は呆気に取られてそう言うと、不可思議様が言った。
「あの空洞は我の管轄内のものだ。時間は我の基準で進んでいる。だから村外のものが入り込んでも迷って死ぬようにできている。お前は何とか我の気を辿って我の場所にたどり着けたが、普通の人間だったら洞窟内で死に、動物の餌になっていただろう」
 そう言われてしまい匡季はもし不可思議様の気に召さないものだったらあそこで迷ったあげく脱水症状などで死んでいたかも知れないと知り、今度から余計なことには首を突っ込むのをやめようと思ったのだった。
 神を社から連れ出していいのか分からないけれど、とにかくこの村にいるわけにはいかないので村を早々に出るしかなかった。
 匡季がロッジの鍵をこっそりとキャンプロッジの郵便受けに返しにいったが、すでにロッジの管理人は村に行っているようで、誰にも出会わなかった。
「この辺りには人の気配はしない。どうやら村に全員が集まっているのだろう」
 不可思議様には人の気配を感じ取れるのか、誰にも見られずに村を出ることができた。村の入り口にいる警備の人間にも気付かれることなく、その道を通らず森の中の獣道を通って簡単に抜けられた。
 バス停まで歩きながら匡季は不可思議様の話を聞くことになった。
 不可思議様は匡季に似た服を表面で作って着替え、長い髪の毛は胸まである。前髪も長いのでいわゆるワンレンという髪型になっているが顔が美形であるから、よく似合っていた。
 動き方も人間のそれと変わらず、おかしなところは見受けられなかった。
 こんなに人に似ている異物でいいのか。
 そう思いながら不可思議様を見ているとスッと視線があった。
「不可思議様……って、そのままの呼び名でいいのか?」
 ふと呼びかけようとしてから匡季は気付いてそう不可思議様に問い掛けていた。
「ああ、確かに名で無い呼び名は今後しない方がいいだろうな」
「でもなんて呼べばいいの? 不可思議様は村の人がそう呼んでいただけなんだろうけど……本名は分からないよね」
「我の名は確かにない。それは呼び名が必要なかったからか、進化したことによって名が失われたのかもしれない。そうだな、お前がそれらしい名を付けるのはどうだろうか?」
 そう不可思議様に言われて匡季は真剣に悩む。
「名前……うーん、一生そういうのとは関わることはないと思っていたけど……犬、猫じゃないからそれらしくていい名前か……難しいからちょっと待って」
「構わん。じっくりと考えるといい」
 不可思議様がニヤリと笑って言うけれど、それは責任重大だった。
 とにかくこの不可思議様は鬼の姿の時は結構威圧感があったのに、今の人間の姿に近づいた時はまるで昔から隣にいる幼なじみのようだった。
 自分のこと我と言う変わったところがある程度で少し偉そうな感じで、それが特に問題になることはないだろう。
「陽大(ようた)とかどうだろ? 僕の名字は那由他っていうんだけど、これ数の何乗みたいな大きさの言葉なんだよね。秋澄とかも阿僧祇とか言うし、結構数に繋がっているから」
「その陽大は数と関係あるのか?」
「本当は国際基準の物にヨタっていうのがあるんだよね。でもヨタじゃ与太話とかになっちゃうし、そこに伸ばしを入れて、陽大にしてみたいんだ。最近の名前っぽいし、それに名字は僕の那由他を使った方が怪しくなくなるし、親戚の人だって言えば一緒にいても怪しまれないと思うから」
そう匡季が言うと、不可思議様はその名前を口に何度も出して馴染もうとしている。
「陽大、我は那由他陽大。うむ、これはこれでよいかもしれん」
「あとは喋り方。我とか、うむとか、しれんとか……そういう言い方をちょっと変えて貰えると不自然さはなくなるかな」
 そう言われ、不可思議様こと陽大は喋り方を気をつけるつもりはあるようだった。
「そうだな、お前と交わった時に得た知識の中に、自分のことを俺というものがあったな。お前は僕を使っているが、俺の方が合う気がする。あとは慣れしかない」
「そういう感じでいいと思う。まあ、昔の喋り方をしないようにすれば、多少偉そうでも誤魔化せると思う」
 とりあえずは村人から逃げる形になるので、匡季は陽大には言葉遣いを気をつけるようにお願いをした。
 そしてバス停に着くと、朝一のバスが到着した。
 終点の電車の駅まで約一時間のバスの旅はあっという間に誰にも怪しまれることもなく、目的地まで辿り着いた。
 村人は神の不在などには気付いていないのか、匡季を追ってくるようなこともなかった。
 こうして匡季は神の村から神を連れ去ってしまったのだった。

 

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