Agnus Dei2 10

歪な者

紗和たちは結局、世間の目を避けるために高校を辞めた。
 注目を集めたくないのと、居所がはっきりしない方が誰にも気にもされないのではないかと思ったのだ。
 ある程度、神は世間の常識を知れたし、これ以上学生をやっている意味もなかった。
 膨大な知識を吸収する神は、この世の全ての情報を図書館やネットなどを通じて手に入れ、とうとう人の記憶を見ることもできるようになった。
 けれど紗和の失っている記憶を真っ先に見たらしく、どうやらなくした勾玉の行方が分かったという。
「何処にあるの?」
「お前の中にある」
 そう言われて腹をさすられた。
「は?」
「お前がうっかり勾玉を飲み込み、それを体に吸収させてしまったんだ。見つかるわけはないな」
「吸収……した?」
 そう言われて勾玉が入っているという腹を撫でた。
「あ、それで儀式の時に熱かったのかな?」
「そうなのか?」
「うん、何か文様は出てなかったけど暖かい感じでずっと、おかしいなって思ってたけど、燎が来たら消えたなあって」
 紗和がそう言うと、燎は笑った。
「ああ、なるほど。そういうことか」
「どういうことだよ」
 一人納得している燎に、紗和は噛みついた。
「私があの場に呼ばれるにしては、かなり強引に呼ばれたと思っていたが、勾玉と鏡が揃っていたのなら、私が燎の肉体ごと呼ばれたのも納得ができると思っただけだ」
 神がそう言うので紗和は聞き返す。
「つまり、鏡だけで呼ばれるのと、二つが揃っているのとじゃ、違うってことだよね?」
「そうだ」
「じゃあ、普通神の神具って、三つあるんじゃん。三つ目って何なの?」
 意外なことを神は言われたと思ったようで、知識にそういう話があるのを思い出したようだった。
「確かに三つ目があったとしても驚きはしないが、奴らは本気で二つしか持ってなかったぞ」
「ああそうなんだ、何でだろ?」
「恐らく、三つ揃ったら完全に封印をしてしまうんだろう。神颪をして神を使うわけだから、完全に封印しては奴らにとって何の利益もなかった。儀式を整えているうちに、三つ目の意味がなくなったんだろうな」
 神がそう言うので確かにそうだなと思い至る。
「じゃあ、三つ目は最初からなくて、一個は俺が吸収しちゃって、鏡は……」
「山のも洞窟のも私が割った。つまり私を封印できるものはこの世には存在しないことになったな」
 神は改めてそう言うと、それはこれから封印されるかも知れないと怯える必要はないのだと気付いたらしい。
 鏡のスペアがあるくらいだから、勾玉もスペアがある可能性もあったが、そもそも鏡はスペアごと破壊したし、三つ目がそもそも存在しないなら、神を留め置くものは絶対に存在しないことになったわけだ。
 しかし誰かが新たな封印装置を作ったら、それに封じられないとは言えない。
 神は自分は何者で何が目的で生きているのかさえもしらない。
 そもそも何故、稀人がいないと外で普通に暮らせないのかさえも知らないのだ。
 だが、それは分からなくていいと神は思う。
 自分が何かであったとして、紗和の側にいることに変わりはないからだ。
 この可愛い稀人である人間の側にずっといるのが燎と交わした誓約だからだ。
 そして今回のことで燎との魂が結合してしまい、完全に燎の体から抜け出すことはない事実も知ってしまった。
 このまま烏丸燎として人生を終えるのか、それとも神の力でいつまでも生きるのかは神さえ分からない。
 だからこそ、神は望むのだ。
 この可愛い稀人を自分と同じにしないといけないと。
 混ざることでいつまでも番でいられるのなら、何度も交わってそして溶け合えばいいとさえ思った。


「あぁっあんっはげしっ……あっああっあっあんっあんっあひっあっやっああっ」
紗和を抱くことが好きだと燎は思う。
 番であることで紗和を見るごとに神である自分が性欲が湧くのは不思議だった。
 確かに人間が用意した儀式ではしていたことだったが、それが本来の目的ではない。性欲は人から生気を貰うのに一番簡単だから使うものだった。
 それがどうだ。
 稀人の生気は神でさえ逆らえないのだ。
「らめっ……あっあひっい゛っあっあんっらめっやらっ……あっあんあんああっ」
自分の体の下で喘ぐ可愛い紗和をペニスで突き上げることで喜ばせてやりたいと思うようになった。
「ああんっひっああっいっちゃうっ……あぁっいいっひっああんっ!」
「かまわん、イケ」
「あっああぁあっあひっあんっああーっ」
紗和が絶頂をすると中が閉まり、燎が精液を吐き出す。
 ほぼ人間と同じように絶頂をするのが不思議ではあるが、燎の知識と人間の体を使うことで人としての心地よさと快楽を感じるようになった。
「あっあっああっ……あっあぅん……あぁっんっ……ふぁっ」
「さあ、まだだ、もっとだ」
「はぁっもっやらぁ……ぁあ、んっ、やっ……、あぁんっあっああぁんっ! んっ、んぁっあぁっ」
「これで中を抉られるのが好きだろう?」
「らめっおちんぽっ……あっあぁああっあ゛ひっ、いっあっあんっらめっ、あっあんっあんっ」
奥を突き上げて腰を振る。
 触手がたくさん絡み、紗和のペニスを扱き、乳首さえも瘤の付いた触手でなで上げてやる。
「ひああぁっい゛ぃっあっそこっだめっ……あっあうっひああっあ゛ひっあっらめっああああんっ」
苦しいほどに感じるのか紗和は嬌声を上げ続ける。
 しっかりと燎の手を握ってくる紗和は、きっと神に抱かれているよりも燎と抱き合っていると思っているのだろう。
「あああっひあっらめっ……あっああぁっああんっ! あひっあんっあっあっあっあんっ」
それでも神は構わなかった。
 今は燎も神もお互いに混ざり合ってお互いの存在を近くに感じるほどだ。
 燎は確かにもうここにはいないけれど、トレースした姿が残り、それが燎としての形を保っている。
 そしてそれを紗和は感じることができるからこそ、神と共に過ごせるのだ。
 もし神だけの存在だけなら、紗和はきっとここまで神にとって都合のいい行動は取らなかったと言えた。
 紗和にとって何よりも大事なのは、烏丸燎であり、それ以上もそれ以下もないのだ。
「ああんっいいっ、きもちいっ、いいっ……あっい゛っあひぃっあああぁーっ……! あひっ、あ゛っひああっ……あっあんっあんっ」
「紗和、もっと感じろ……私を感じて……そして受け入れていけ」
「ひあっあっあんっあんっらめっ……あっあっああっあひっらめっ、中出しはぁっ……あっあっあんっ」
信じられないくらいに強く突き上げて、中で精液をまた出してやると紗和の体がしなり、そしてガクガクと痙攣をする。
「ああぁんっ、あぁっひぃんっなかっあんっ、ああぁあんっ」
紗和が中出しを気に入ってるのは燎の全てを受け取れる気がしているからだ。
 そしてそれは神によって見せられている幻影であり、紗和がどんどん人から離れて言っている証拠だ。
 神のものと混ざり番として交わり、そして人から離れていく。
 紗和はそうなっていることにはきっと気付いている。
 それでも燎といたいから、それでもいいと思っている。
 たとえそれが幻影の燎であったとしてもだ。
「あっああっやあぁっ……あ゛っああっ……あ゛ひっああっ、やっらめっ、あんっ」
「もっと奥で感じるといい」
「あ゛ああっ……ひっ、あ゛っ、らめっ……あ゛っうぁあっ、おちんぽっおおきすぎっ…あっああっ……ふあんっああっ!」
紗和が嬌声を上げて体を硬くすると、その力を押しのけて奥へ奥へとペニスが挿入り込んでいく。
 中で感じるようになった紗和は、どんどん淫乱に変わり、淫らに快楽に正直になっている。
 いい兆候で、神はそれを望んでいる。
 そのために人から離れた環境に身を置いた。
 学生をやめていても膨大な保険金や村から紗和の親が貰っていたお金は、それこそ紗和が一生を遊んで暮らしても使い切れない金額になっていた。
 神の富を与える能力は今や紗和一人に向いている。
 紗和には村による管理不十分によって賠償金が村の資産から払われている。それは億単位を超えていた。そして両親の保険金などを燎が資産運用したところ、株によって膨大な利益を得てしまっていた。
 一生金に困らないようにしたのだが、そのお陰で燎もまた同じように資産を増やしたので二人でこのマンションから出ないでひっそりと暮らし、時々旅行に行くだけなら何にも困らない生活を送れるのだ。
 紗和は知らないけれど、いつか気付くだろう。
 こうやって世間から離れ、ただ神と暮らす番としての生活。
 そこに紗和が燎以外も求めないなら、それはそれでいいと神は思った。
「あっ燎、いいっ……きもちっいいのっひっあっあっあ゛あああっあひっい゛いっあっあっあっあんっ!」
「分かってる……もっと欲しいんだな?」
体中を触手で撫で回し、紗和が満足するように快楽へと連れて行く。
「あひっらめっあ゛っあんっあんっあんっあっひっあああんっ……あ゛っひっらめぇっ……あっあんあんあんあんあんっ!」
恐ろしいほど感じて紗和は淫らに乱れ、燎の目を楽しませる。
「あんっあんっ燎、いいっあんっ! あ゛ひっんっあぁああーっああぁっ……、んっあっあっ!」
「紗和、可愛いな……もっと欲しがってくれ」
「あ゛ひっあひっんっあっあんっんっやぁっんっあ゛はっうあっんんっ好き、燎、きもちい、ふぁっ……ひぁっあっあ゛っいいっ……あぁんっ」
「そうだな、気持ちがいいな……私も気持ちがいいぞ」
「あぁあん……はぁっ、ぁ、ん……ん……、ふぅ、んっんんっ、ふぁっ、あん、ん……あぁっ……あ゛っらめぇっ……あっあんっ」
「もっと奥だろう……どんどん感じてもっと曝け出せ」
「あっぁあっ、んっひゃぁっ……あ゛っひっ、あぁっ、そんなっ、あんっあ゛ひっ……ぅあ、あっあぁんっ! あひっ、ぁあっ、あっあっあっ」
苦しいくらいに喘いでいるのに、紗和はそれでももっと気持ちよくなってしまう。
 その苦痛さえも全部燎から貰っている気がしているからだ。
「あひっ、あっぁっ、ふぁっ、あぁんっ! あぁんっいいっ、あんっあんっ、あっふぅっ、ひあぁっ」
「どうされるのが気持ちいいんだ?」
「んっあぁっあぅっ、おち○ぽでおま○こゴリゴリされるの気持ちいいっ……あっあひっあ゛んっあっあっんっ!」
「そうか、もっとして欲しいんだな?」
「ひっあっ、あんっいいっ、あぁっおま○こっ、おちんぽハメハメされてっあんっきもちいいっひああっんっ!」
 紗和がそう言うと、グインッと燎のペニスが結腸を超えた先まで挿入り混み、中を擦り上げてくる。
「あんっ!ぁあっ、あっ、あひぃっひあぁっあひっ、あ゛っ、おちんぽらめぇっ……おま○こ壊れるっあぁっあっ」
アナルには太い燎のペニスが更にアナルを広げている。隙間からは細い触手が挿入り混み、内壁を擦り上げて紗和に恐ろしいほどの快楽を与える。
「あんっ、あぁっ、燎っいいっ、いいよぉっ……あっひあああぁんっ!」
「紗和……」
「あぁっきもちいいよぉっあぁんっ! い゛いっあぁっいいっ気持ちいっ……ぁあ、はぁんっいいよぉっあんっあんっあんっ」
「また中で出してやる、孕むまで出し続けてやるよ」
「あ゛ああっいいっいい、おま○こきもちいいっ……あんっあんっあんっ、いくっあああっいくっ!」
紗和はしっかりと燎の手を握りしめて、激しく絶頂をした。
 それは潮を吹くほどの快楽で、更に中出しで感じてドライで絶頂をしていた。
 そんな紗和を見て、燎は目を細める。
 きっと燎が紗和の姿に感銘を受けているのだろう。
 いつもそうだ。
 この男は紗和のことには敏感で、そして紗和の些細なことに機敏に反応をする。
 いつでもそうしてきたからだ。
 燎は紗和をこんな運命に巻き込んだから、悪いと思って付き合ってくれていたけれど、段々と愛情が湧き、そして紗和の両親が村人に紗和を売ったことを知ったのだ。
 それから燎は紗和の絶対の味方として紗和を守ってきた。
 燎しか紗和には味方がいない。
 親ですら金に物を言わせてしまうあんな世界。
 壊れてしまえばいいと願ったのは、他の誰でもない燎だったのだ。
 そしてそんなことが叶ってしまい、神を引き寄せて依代として降ろしてしまった。
 神はその願いを叶え、そして紗和を絶対に守ることを約束して、燎の体を手に入れたのだ。
 ずっと見えていた。
 贄の存在と番の存在。
 九条紗和という人間が光って見えた。
 そして望んだ。
 彼らは自ら神に近づいた。
 燎が接触をした時、神は燎に少しの神の成分を移した。
 紗和に接触ができなかったのは紗和が勾玉を持っていたからだ。
 しかし勾玉が紛失したけれど、紗和の中に溶けたことは紗和だけの記憶にしかないことだった。
 てっきり崖から落ちたときに落としたのだと思ったがそうではなかった。
 そして神は燎の目を通して紗和の近くに居続けた。
自分の番。それを守るために行動するよう燎を少しだけ誘導をしたけれど、それよりも燎の思いは深かった。
 何よりも紗和を愛していて、紗和のために自分の体を差し出すほどの思いがあるとは神は思わなかった。
 そこまで深い燎の思いを知りたくて、トレースをしたら混ざってしまったのだ。
 それほどに燎の紗和への思いは深かったのだ。
 神はそんな燎から紗和への愛しさを学び、そして契約したとおりに紗和を守ることにした。
 けれど、それは神もまた紗和に側にいて欲しいから、紗和の体を作り替えてでも長く生きるように作り替え、燎と同じく人ではなくなっていく。
 番である以上、紗和は神と混ざった燎と同じ時間を生きていくのだ。
 きっとその方が紗和にとってもいいに決まっている。
 そう神は思っていた。

そうして二人は世間からひっそりと隠れた場所で過ごし、長い時間番としてともに生きることになったのだった。

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