Spell-bound

8

 その日から裕磨は少し変わった。
 会社で付き合いのあった人たちからは張り詰めていた空気がなくなり、人当たりもそこまで良くなかったけれどきちんと普通の会話もできるようになった。
 裕磨が変わっただけではなく、それは永山も雰囲気が変わった。
 それまでの厳しい姿勢は変わらないが、人と壁があった部分は少し薄くなったようだったし、今までよりは丸くなっていた。
 その二人の雰囲気が変わったなら、思い当たることは皆一つしかない。
 きっと上手く二人の関係が回り始めたことだけは分かった。
 裕磨は鼻歌でも歌いそうなくらいに上機嫌で仕事の引き継ぎ時には笑顔を見せるほどになっていた。
「あ、いいね、笑顔」
 急にそう秘書課の人に言われ、裕磨は自分が笑っているとは思わなかったのかハッとしたように口を押さえた。
「すみません」
「いいんだよ。そういう笑顔も大事だから。いつも難しい顔してたから表情も硬かったしね。いいよ、プライベートが順調だと仕事もよくなるからね」
秘書課の人はそう言い、裕磨の変化を喜んでいるようだった。
裕磨はそんな変化を少しの驚きと共に受け入れることになった。
峻によって裕磨の性格が変わってしまっていたが、永山によってまた変わろうとしている。
 重苦しかった峻への思いをあんな形とはいえ断ち切ったら、裕磨は何だか重い荷物を降ろした気になった。
「裕磨」
 秘書課で午後の引き継ぎをしたところで永山がやってきた。
「少し待ってください。引き継ぎ終わります」
「部屋で待ってる」
「はい」
 明日から永山は休みなので裕磨も付きそう予定であるが、永山は今日は仕事を早く終わらせて裕磨との時間を作りたいらしいが、裕磨は真面目に仕事をしているので邪魔をするわけにもいかない。
「早く行ってあげて。これ以上待たせるとボスがキレそうなので」
 打ち合わせもほぼ終わったところで秘書課の人が言った。
「はい」
 裕磨は仕事を持って自分の秘書室に入り、そこで仕事を片付けると社長室に戻った。
「永山社長、仕事が終わりました」
 裕磨はそう報告すると窓側で外を見ていた永山が振り返ってすぐに荷物を持つと裕磨の腕を引っ張って社長室を出た。
 ちょうど業務終了の五時の鐘が鳴っている中を社長自らが五時退社するのだから、周りもちょうどいいと残業はほぼなしで退社していく。
「永山……さん、そんなに急がなくても……」
「急ぎたいんだよ」
 永山はそう言い、裕磨を連れて永山の自宅に向かった。
 永山は高級なマンションに住んでいて、そこはコンシェルジュカウンターがあるようなところだ。裕磨はよく届け物をする時にカウンターまで来たことがあるが、部屋には上がったことはない。
「あの、部屋にいいんですか?」
 カウンターを通ってエレベーターに乗ったので裕磨は驚いてしまうが、永山は興奮しているようでそんな裕磨にキスをしてきた。
「あ……ん」
 あっという間に唇を奪われて裕磨はいつもと違う優しいキスにうっとりとしてしまった。
「……ふあっ」
「裕磨、可愛いな。ずっと思ってたけど」
 そう言われながら首筋を撫でられて裕磨はそれが気持ちよくて永山に身を委ねた。
 連れられて部屋までどうやって歩いたのかさえ裕磨は分からないまま、ふわふわとした気持ちで永山の部屋に上がった。
 部屋に入ったらすぐに服を脱がされた。
「シャワーを浴びてきなさい。あるモノは何でも使って構わないからね」
 言われながら脱衣所に放り込まれた。
 ふわふわした気持ちのままでシャワーを浴びていると、永山も裸になって風呂に入ってきた。
「ちゃんと洗ってるか?」
「え、あ、はい」
「そのまま立ってなさい」
 驚きながらも裕磨は言われたように立っていたら、体を永山が手のひらでもう一度洗っていく。
「あ、は……あぅ、あうぅ……」
 肌を手で撫でられるだけで裕磨は感じてしまう。
 永山の手の動きも洗う動きではない、明らかに快楽を与えるようないやらしい動きをしている。
「んんっ……は、あー……っひ、んっ……あぁっ……うあ……」
気持ちよすぎて裕磨は喘ぎ続けるも、永山は隅々まで手で触り、アナルも指で押しながら襞まで綺麗に洗っていく。
「くぅ、あぁっああっ、あっ、あっ……く、ふう、ううぅん……っ」
アナルを弄りながら、ペニスまで握られて扱かれると裕磨も永山の手を押さえて弱々しく抵抗をする。
「も……っ、だめ、それ……っはあっ……だめ……あぁ、あんっ……っ」
本気で嫌がっていたらもっと激しく抵抗するものだが、これは気持ちが良すぎてたまらないという抵抗だ。
「ああぁ……っ、んあっ、はぁ、はぁうっ……」
そんな裕磨の耳を永山は後ろからキスをして舐めていく。こそばゆい感覚に裕磨が実を捩るけれど、永山の指が一本、二本と裕磨のアナルに入ってくる。
「はぁ、ああ、んっ……あっ、んんんうぅっ……!」
「裕磨……」
 熱い興奮した息を吐きながら永山が裕磨をしっかりと触っていく。
 その声に裕磨は安堵する。
 ちゃんと永山に興奮してもらっているのが嬉しかった。
「あぁっ、やぁ、あ……っ!んんっ……んう――……っ」
裕磨が実を捩らせているともう三か所も攻められて裕磨は耐えられなくなった。
「あぁ、もうっ、ああ……っ」
「どうしたいんだい?」
「うあ、ぁ……いきたい、いきたいです……っ」
「イッていいよ……何度でも」
 そう言われて首筋にキスをされた。
「ひっあああぁ!」
 裕磨は派手に射精をして絶頂をした。
「はあぁ……っ……、あぅ……」
「裕磨、可愛くイケたな」
 少しぐったりとしている裕磨を抱え、永山は湯船に裕磨を寝かせると自分の体を素早く洗っている。
 そんな永山をぼんやりと見上げていた裕磨は自然と永山の体を見ていた。
 大きな胸板に背中の筋肉の動き。腕の太さや美しい足。全部を眺めてその体に似合う大きなペニスが既に勃起をしていることに気付いた。
 立派だなと思うほどの反り返りをしていて、裕磨はそれを見ているだけでうっとりとした。
 物欲しそうにしていると永山もそれに気付いたのか、裕磨の顔の前に自分のペニスを差し出した。
「好きにしていいんだぞ、裕磨の物だ」
 永山がそう言うので裕磨はそのペニスを手で撫でるように触り、そして亀頭を先に咥えた。
「んん~っ、ふっん、ん、ぅんんっ」
「……ふっ……裕磨にしてもらうのは、初めてだったな……」
「んあっ……、ん、んう、んっんんっ」
「美味しそうに舐めてるね……裕磨、美味しいかい?」
「んっ、おいし……ふっぅ、んぅ……ふぁっ、んっんっ、んっぅんっ」
裕磨は夢中で永山のペニスをしゃぶった。
 永山のペニスはガチガチになり始め、先走りがペニスから漏れ始めている。先走りの精液を裕磨が舐め取って飲み込んでいる。
「んっちゅっ……はぁ、ふぅっ……ふむぅっ、んんっ、んっ」
「裕磨、もういいよ……早く中に挿れたいよ」
「ふぁいっ、ん、ぅんっ、ああっほしい……」
裕磨が涎を垂れ流しながら、永山に顎を捕まれた。
 そしてゆっくりと立ち上がって自ら尻を向けて永山を誘った。
「ここに、欲しい……永山さんのおちんちん……ここに欲しい」
裕磨がそうして永山を誘ってくるから永山は興奮しきって裕磨にむしゃぶりついた。
永山が湯船に座り、裕磨はその永山に跨がって自ら永山のペニスに腰を下ろした。
「ああっああっ……おまんこっ……ああんっいいっおちんぽっいいっ……あああんっあああっ」
裕磨は自ら腰を振り、永山のペニスを味わった。
 奥までしっかりと挿入り込むペニスを感じながら、ゆっくりと動いていると永山が裕磨の乳首を弄り始めた。
「らめっちくびっあああんっおま○こしながら……ちくびっらめっああんっきもちいいっああんっあたまおかしくなる……ああんっ」
「ああ、いいよ、裕磨……もっと強く腰を振ってご覧」
「ひああぁっいい……っあっあっいい、きもちいっ……! あぁんっあっあっあんっあんっああーっ!」
 裕磨は言われた通りに腰を振り、奥深くに突き入れたペニスを中でこね回すように淫らに腰を更に振った。
 その淫らな裕磨を見ていたら永山はぞくりとするほど裕磨の妖艶さに惹かれた。
「おまんこっ……いいっちくびもいいっああんっいいっ……ああんっいいっあああんっいいっいいっあぁっやっはぁっはぁあぁああんっ! ひあっらめっあっあんっああんっ!」
そういう裕磨に永山は裕磨を追い上げるように腰を突き上げた。
「んあっちくびっいいっらめっおま○こ突いちゃらめっ……ああんっちくびっいいっコリコリしちゃ……いいっああんっ……!」
乳首を弄りながら更に永山が腰を突き上げ始めたので裕磨は仰け反りながら強制を上げた。
 あまりにアナルの奥も、乳首も触られるところは気持ちがいい。ただ永山にしてもらうこと全部が気持ちがいい。
 特に永山が裕磨を好きだと言ってくれたから、裕磨の心も解き放たれて、初めて大事にして貰っていると思えた。
「ああ゛ああっ、ちくびっ……ああっだめ、おま○こしながら乳首いじられたらっ、あ゛あぁっ…いっちゃうからぁっ、ああぁぁぁっ」
「イけっ!」
 永山に突き上げられて裕磨は絶頂をした。
 痙攣して崩れ落ちる裕磨を永山は抱え、湯船の端に手を付かせると後ろから永山が更に深くペニスを突き挿れた。
「うあんっ、んっんっ……あんっ、だめ、ほんとに、おま○こっ、ぐりぐりだめっ、あっ、あああぁぁぁっ……いっちゃうからぁっ……おま○このなかかき回されてっんあっあぁんっきもちいいっっ……あ゛っ、あっああぁっあっあぁんっ……おま○こぐちゅぐちゅして……あっはああぁっんあ゛ひっ……あっあっらめぇっ……あっあ゛ああっ」
 裕磨は絶叫しながらもドライオーガズムで絶頂をしてしまい、快楽に痙攣をする。
 そんな裕磨は抱えて風呂から上がると、そのまま風呂を出て洗面所の大きな洗面台に手を付かせるとそこで後ろから裕磨をまた突き上げた。
「あひっ、はぁっ、あっあっあたま、おかしくなるっあひっ……あ゛っあんっあんっあっあっあっあんっ、おま○こかき回して……ああいいっきもちいいっ……あんあんあんっあああっ!」
 激しく裕磨を永山が突き上げてくるのを、鏡で裕磨は見せられる。
「裕磨見てごらん……ほら君はとても色っぽい姿をしているんだ」
 そう言われて映った自分の姿を眺め、蕩けきった自分の表情を見た。
 それはとても普段の自分とは思えないほどで、完全にセックスに溺れている顔だ。
「きもちいい、あはんっあぃ……っ! あっ! あは、はっあ、ぁ……っ、おま○こ……あぁあんっ! ひあっ、あっ、ああっ……らめっ、あっ、あぁんああぁーっ……、あひっ、んっ、ああっあああ~っ」
こんなになる自分を激しく突き上げている永山の姿も映って見えた。
 それはとても興奮しきった顔をした永山の姿で、裕磨に夢中になっている姿だった。
「あぁあんっ…きもちいっ、よすぎて変になるっ……、あっ、あひっ、あっ、あっ、あっ、あっ、あぁあんっああぁんっ、そんなっ舐めたらっ……いっちゃうっ、おち○ぽをおま〇こにハメハメで、きちゃうっ、ひぁっ、らめっ、だめっ、あ゛っひぁああっ」
「もっと感じて……裕磨……俺の裕磨……っ」
永山は裕磨で快楽を得ているのが見えて、裕磨は嬉しかった。
 この身体で誰かが幸せになれるなら、いくらでも差し出したいくらいだった。
 永山がこの裕磨を望んでくれるなら、裕磨はこんな自分も曝け出せてしても大丈夫なのだと思えた。
「ああっんっいいっ……おま○こっ……ああんっらめっおかしくなる……ああんっああいいっきもちよすぎるっあぁあっああんっ……おま〇こ、きもちいいっ……おちんぽっああっ……あっ、あああぁああんっいいっ、いいっああああっ!」
「裕磨もっと気持ちよくなっていて……もっともっと感じてほらこれが好きだろ?」
 奥を抉る様に突き挿れられて、結腸までペニスが挿入り込んでくる。
 永山のペニスが大きいけれど、更に長さもあるので反り上がると結腸に亀頭が入るのだ。それは普通のセックスで味わえる物ではないことを裕磨は知らない。
「いいっああっ……ああんっ……んっあっあああっああっああっんっああっんあっあっあ゛あっ……んっあっ、あ゛っ、あっあっあっあああっ! あっあああっ……あんっあっああっああっんあっあっはあっんっあっ、ああっあぁんっ」
何もかも永山に委ねて、裕磨はただただ気持ちよくなると楽になれた。
 それが永山を受け入れることだと気付いて、裕磨は自分の心が完全に永山に流れているのが分かった。
「いいっああんっおま○こっいいっきもちいいっああんっああ……ああんっ……ああんああいいっあ゛あっいいっ、らめっあ゛あっ、らめっ、おま○こゴリゴリしてるっ……ひっあっ、あんあんあんあんあんっああんっ!!」
「裕磨……ああ、たまらない……裕磨、気持ちがいいよ……」
「ああっ……らめっゴリゴリしちゃっ……ああんっおちんぽっおおきいいっああんっ……ああんっいいっ……きもちいいっおちんぽ……ああっ……いいっ気持ちいいっ……すき、すきっああんっああっあああんっ」
「ああ、中に精液を出すよ……っ!」
「あ゛ああっ……あっ、あ゛っ、だして、あ゛あああぁっあ゛っい゛っ、あっんっ、おま○こに精液だしてっ、いくっあ゛あ゛っあっらめっあ゛っんっ、あっ、あぁっ、いくっ、いっちゃうっ……あぁあああん!」
 絶頂と同時に永山が中出しをしてきて、裕磨はそれで更にドライオーガズムで絶頂をした。
 強く腰を打ち付けた永山は、中に精液を擦り付けるように腰を何度も振り続け、やっとペニスを抜いた。
 ぽっかりと空いたアナルからは精液がドロドロと溢れ出して床に垂れた。
 それを感じながら裕磨はホッとした。
 永山が裕磨を抱き上げてくれたので裕磨は永山に抱きついた。
「永山さんが、好き……」
 裕磨がそう言って永山をギュッと抱きしめると、永山がフッと笑う気配がした。
「私もだよ。裕磨……愛してるよずっと」
永山が優しく囁いてくれて、裕磨はホッとした。
 やっと心から誰かを思うことができる自分に裕磨は安堵を覚えたのだった。

 二人はやっと心からの恋人同士になり、誰にも邪魔されない時間を過ごした。
 裕磨は永山に言われるがままに、永山の建てた家に引っ越した。永山はこの日のために一軒家を建築していたというから、気合いの入れようが違った。
 裕磨は親にカミングアウトをして、永山を紹介した。
 裕磨の家族は峻という悪い男を知っていたから、ずっと心配だったらしいが、永山というきちんとした男が相手であるのを知ると、ゲイであろうがなかろうがそれは祝福してくれた。
 幸い裕磨には年の離れた兄がいて、兄が結婚をして子供がいるので孫の心配はさせないで済んだ。
 永山も自分の家族に裕磨を紹介したが、永山家はやっと永山の悲願だった思い人と恋人どころかパートナーになれたことを知って、裕磨のことを歓迎してくれた。
 どうやら永山はずっと裕磨のことが好きなことを親にも話していたらしく、それが念願叶ったことは嬉しいと言ってくれた。
 そして二人は周りにも祝福され、いつも通りの静かな日常の中に戻れた。
 あれから峻や女社長とは一切の繋がりがなく来ている。
 もう裕磨の心を惑わし鈍らせていた存在とは、縁すらも切れたようだった。
「徹さん」
 裕磨は永山を名前で呼ぶようになった。
 会社では永山社長と言って分けて呼ぶようにしているが、永山はその呼び名にしてくれと自分で言っておいて、時々耳が赤くなるほど照れる。
「まだ、慣れないな。嬉しいけれど」
「そう、僕はずっと普通に呼ばれていたから変わりないもんね」
 裕磨はそう言って永山に自分からキスをする。
 最近は裕磨も自信が付いてきたのか、永山に対しては積極的だった。
 それを受けながら永山は裕磨を抱き留める。
「可愛い、俺の裕磨」
「ふふ、はい、徹さん」
 二人は顔を寄せ合って幸せそうにキスをする。
 それがこれからの二人の静かな日常となったのだった。

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