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6

 登和と楠瀧が太一と話をしたのは、夏休みに入ってからだ。
 やっと柊平が海外へと移住し、周りに何も起こらないことを確認してからだ。
「ああ、よかった。これでもう大丈夫なんだね?」
 太一の言葉に登和は頷いた。
「うん、怖い思いをさせたごめんね。やっと相手と話が付いたんだ。僕にも太一にも楠瀧にも近づかないって書類も作れたから、もう大丈夫」
「そっかー。登和も大変だったね……ずっとストーカーに苦しめられていたなんて……」
「うん、警察も直接被害がないから捜査もしてくれなくてね……大変だったけど、楠瀧が色々教えてくれてしてくれたから助かったよ」
「俺で役に立てたならよかった」
 楠瀧はそう言って優しく笑う。
 見つめ合い笑う登和と楠瀧を見ていた太一はゴホンと咳をしてから言った。
「お前ら付き合ってるよな」
 そう言われて登和は頷いた。
「まあな、俺はずっと登和に惚れてたし」
 楠瀧はそう言い、押して付き合い始めたという。
「ならいいんだけどな。前は振られたって泣いてたくせにと思ったのにな」
「あ、あのときはあまり楠瀧のこと知らなかったし、それでいきなり恋人にはなれないって振っただけで……」
 登和があのとき振った理由を言うと、楠瀧も笑う。
「だよな。いきなり明日から恋人になりましょうと言われて、はいなりますとは言えないよな。俺もアプローチが足りてなかったの反省したから、そこから始めた」
「まあそれで収まったならいいんだけどね……何かその、うん、まあいいや。二人がそれでいいなら」
 太一は何か言いたそうにしたが、それは自分が知る必要がないことだと思ったのか言うのを止め、そのまま二人にお詫びだと言われて奢られた焼き肉を堪能した。
 実は、登和の問題に関して楠瀧が解決したという内容がストーカーのはずがないということを太一は知っていた。
 太一を登和で呼び出そうとした時、太一は登和が柊平に何をされていたのかを知った。
 それは酷い虐待であり、そして今もまた柊平は登和を狙っている事実だ。
 柊平は太一にそれを見せた後に、登和を救いたいなら来いと言った。
 けれど太一はそれを救うのは無理だと答えた。
登和にはそのことに苦しんではいないということを知ったからだ。
 柊平からされたことを吸収して、登和は楠瀧を堕としたのだ。
 それを知ったのは登和と楠瀧が二人で三日間休んだ時だ。
 それで察した。あの二人はきっとそういう関係で繋がったんだと。
 救うのはきっと太一ではない。太一では救えない。だから諦めた。
 きっと登和は自分のところまで堕ちてくる相手が欲しいだけなのだ。そしてそこで一緒に堕落してくれる人がいいだけなのだ。
 そこに太一はきっと必要じゃない。
 楠瀧がきっと堕ちていくだろうから。
 そう思ったのでそれを見せられたことは秘密にしておくので、行くことはできないと言った。
 柊平はそれで何か察したようで、それ以上太一には近づかなかった。
 きっと太一はそういうところに堕ちてくる人ではないと分かったのだろう。
 このやりとりは登和にも楠瀧にも話していない。
 どうやら柊平もそれは言わずに去ったらしい。
 太一はきっと柊平は本気で登和が欲しかったのだろうなと思えた。
 登和は確かに堕ちたけれど、それは柊平の遙か先に行ってしまっただけだ。柊平はそんな登和を持て余してしまったのだ。
 けれど登和をコントロールできる楠瀧が現れ、登和はとうとうその楠瀧によって完全に落ち着いた。
 まるでそこが着地点だったと安堵したように。
 それは大人を利用してでも自分たちを守るためにどんな手も使うようなずる賢さを持って変貌することになったが、それでも登和にはそれが必要だった。
 親に捨てられて、叔父に犯され、そしてすべてに裏切られた登和が、楠瀧に再会してやっと現実を受け入れ行えた最終手段だったからだ。
 それを太一が否定できるわけもなく、かといって見捨てるなんてできなかった。
 登和は確かに変わったけれど、昔のまま真っ直ぐだ。
 楠瀧の愛に応えて、そして着地した登和は綺麗になっていた。
 きっとこれからそういう恐ろしい部分は鳴りを潜め、出てくることはないだろう。
 それを信じて太一はこれからこの二人とよい距離を持って友達としてやっていくつもりだった。
そして太一が思った通り、日常は進み、登和は昔の友達たちと再会して交流を持つことになった。
 それはとても静かで穏やかで、周りも楠瀧が登和をずっと好きだったのは知っていたから、二人のことは簡単に受け入れた。
 登和は救われることなく、昔の無垢なところを捨てた人らしい感情を手に入れた。


 登和と楠瀧は今は登和のマンションに住んでいる。
 マンションは生前贈与でやっと登和のものになった。
 母親がアメリカで再婚して、その資産の遺産を生前贈与することで後々揉めることのないように手続きしたからだ。
 これで母親とは完全に縁が切れ、父親とも今回のことで大学卒業までの生活費と教育費だけ請求で親の枠割りを終える取り決めをした。
 楠瀧は実は一人で企業をしており、小さな会社であるがIT企業を立ち上げていて、その会社の会長に座っている。社長は友人を雇い、その人に任せているらしい。
 そのお陰で法律には詳しい人が身近にいて、色々と登和のために動けたようだった。
「ああぁっんっはぁっ……あっあんっあんっひあぁっあんっはげしっ……あっああっあっあんっあんっあひっあっああっああっ」
大学が休みに入る時は、休みはすべてセックスに費やすほど、二人は性欲が高かった。普段も二回くらいはするけれど、休みの日の前の日は日が暮れたら盛り始めて、明け方近くまで盛り上がってしまう。
 幸いなのは、このマンションの部屋が周りにマンションがない角部屋で、隣が長期出張中でずっと留守の家であることだ。そして防音がしっかりとされていて、大音量で映画を見ても他の部屋に聞こえない防音性があることだ。
 登和がこれを生前贈与でもらうのを選んだのは、その防音性が気に入ったからだ。
 これでどれだけ中でセックスに狂っていても誰にも迷惑をかけないのだ。
「いいっきもちいいっおま○こっあっあひっい゛っあっあんっ! あっあんあんああっああんっひっああっいっちゃうっ……あぁっいいっひっああんっ!」
「登和登和……ああ、中がすごい気持ちがいい……」
「あっああぁあっあひっあんっああーっあっあっ……あっあぅん……あぁっあぁんっあっああぁんっ! んっ、んぁっあぁっ」
ガンガンと突き上げられて登和は嬌声を上げて歓喜する。
 その奥を抉る良さは、楠瀧によって開発されたものだ。
 結腸に届くほどの長さを持つ人しか登和をここまで喜ばせることができない。
 登和は柊平を選ばなかった理由は、ただ単にペニスの違いだけだった。
それは最初に登和がそう楠瀧に言ったけれど、楠瀧はそれからも登和を愛してくれた。そこから登和は愛というモノを知った。
「楠瀧のっおちんぽっ……きもちよすぎるっあっあぁああっあ゛ひっ、いっあっあんっらめっ、あっあんっあんっひああぁっい゛ぃっあっそこっだめっ……あっあうっひああっあ゛ひっあっらめっああああんっ」
「ここまで挿れて出して、ほらほら……もっとカリをまで挿れて……」
結腸までカリが挿入り、そして出て行くだけでも登和は喘ぎ声を上げる。
「あああっひあっらめっ……あっああぁっああんっ! あひっあんっあっあっあっあんっああんっいいっ、きもちいっ、いいっ……あっい゛っあひぃっあああぁーっ……! あひっ、あ゛っひああっ……あっあんっあんっ」
「登和はもう俺のペニスがないと生きていけないんだよな……いいよこれでずっと抉ってあげるからな」
「ひあっあっあんっあんっらめっ……あっあっああっあひっせいえき中出しして……っ……あっあっあんっああぁんっ……楠瀧の精液ほしいっああぁっひぃんっああぁっあんっ、ああぁあんっ」
「ああ、ここで中出しされるの好きだよね……」
「あっああっやあぁっ……あ゛っああっ……あ゛ひっああっあ゛ああっ……ひっ、あ゛っ、なかだしっせいえき中出ししてっあああっ……あ゛っうぁあっ、おちんぽっせいえきちょうらいっ…あっああっ……ふあんっああっ!」
「もうちょっと抉ってからね。その方がもっと気持ちよくてキマるよ」
「あひっ、あっぁっ、ふぁっ、あぁんっ! あぁんっいいっ、あんっあんっ、あっふぅっ、ひあぁっんっあぁっあぅっ、おち○ぽでおま○こゴリゴリされるの気持ちいいっ……あっあひっあ゛んっあっあっんっ!」
 強引に押し挿入り、中を見だし続けることで登和の快楽の絶頂を高めてくれる。
 登和はそれが好きでそのせいで余計にセックスが好きになった。
「ひっあっ、あんっいいっ、あぁっおま○こっいい、楠瀧のおちんぽハメハメされてっあんっおま○こきもちいいっひああっんっあんっ!ぁあっ、あっ、あひぃっひあぁっあっ、あ゛っ、おちんぽいいっ……おま○こ壊れるっあぁっあっ」
登和の乳首にはニップルクリップが付けられ、その先にはローターが付いている。それが振動を与え、乳首も感じている。ペニスには射精ができないように尿道に管が入っている。
絶頂しても精液がでないけれど、潮吹きはする状態で悶絶しながら登和は嬌声を上げる。こんなことにすら慣れてしまった。
「あんっ、あぁっ、はっいいっ、おちんぽいいよぉっ……あっひあああぁんっあぁっすごい……っ、おちんぽっおっきくて、びくびくして、きもちいいよぉっあぁんっ!」
「登和は本当に俺のペニスが好きだな……いくらでもくれてやるからなっ」
「あ゛ああっいいっいい、おま○こきもちいいっ……あんっあんっあんっ、いくっあああっあああぁっ! あああぁっ、あんっあんっ、い゛いっあぁっいいっ気持ちいっ……ぁあ、はぁんっいいよぉっあんっあんっあんっ」
管を一緒に引き抜かれ、やっと射精ができる状態になって登和は絶頂をした。
 ガクガクと崩れ落ちる登和の体を起こし、更に楠瀧は攻め立てる。
「ああぁっすごいぃっ……ぁんっらめぇ、あっあんあんあんあんあんっあっん、んっんんあんっ! あっあんっあんっ、楠瀧のおち○ぽっいい、よすぎるっ……」
 中へ押し挿入り、更に奥へとグンと突き上げてやるとそれでまた登和の体は快楽に目覚め追い求めるようになる。
 狂ったからだがセックスをすることでしか愛情を感じない。
「ひああぁんっ! あっあんっあんっらめぇっあっああっあっああっ……やっあっあっあんっんっああぁっあああっ! あひっあっあっあ゛っあ゛ああっひああっあっあっあんっ」
強引に追い求められる、そして強引に押し入られることでしか愛情を感じない。
 これだけ思っているのだと知らしめる方法として強引に求めることでしか感じない。
 そうして登和はすでに柊平によって価値観を歪められていて、その価値観は直らないままだ。どれだけ楠瀧が愛していると言葉にしても登和は求められることでしかそれを実感しないと言う。
 だからこそ楠瀧は本気で登和を犯し、強引に奥で精液を中出しする。
 それだけ思っていると伝えるためにだ。
「ひああぁっ! あっあんっあんっあんっああんっあっらめっ……ひあっあっあっあっあぁんっ、おちんぽで、おま○こぐりぐりされてっああっきもちいっあんっあんっいいっ」
「もっと欲しいんだ、ほら言ってみろ、何がしてほしい?」
「あぁんっ……あぁっもっとしてぇっ、もっとおちんぽでハメハメしてっ、ああっはああぁ……楠瀧のおち○ぽで、僕のおま○この中で、精液を一杯中出しして……ああんっあぁっあっあっあんっ」
「大丈夫すぐに中出ししてやるからなっおおおっ!!」
「あぁっいいっ……おま○こぐりぐりっいいっ……あっああっおま○こっやっ、おま○こぐりぐりらめっ、あひっあんあんあんあんっあぁあっ! あんっいくっあっあっいっちゃっ……ああぁーっ……!」
絶頂をするのと同時に精液を奥で中出しをされる。
 痙攣しているところに熱いものを注がれたら、それはまた登和にとっての最高の愛情になった。
 そしてそれを登和はもっと欲しいと強請るのだ。
「きもち……いいっああんっもっともっとっ……ああんっいいっいいっああんっきもちっいいっああんっんあっああんっああっああんっ……あっあっああっ……あん……あんああっ……あんきもちいいっ……あんああっ」
「もっともっと、俺も登和をもっと感じたい、もっともっと深く深く」
 登和に付き合っている楠瀧はもう狂っていると言えた。
 登和を手に入れるのにはここまで狂わないといけないけれど、楠瀧はその狂気すら操り、登和を手に入れる。
「ん゛ああっ、あっあんっあんっらめぇっ……おま○こっ、すごい、楠瀧のおちんぽっ……んっあっあっひあっ……ああんっああんっ……いいっ……いいっああっそこっあんっああっ」
「ここだろ、分かってるよ……ほらここが気持ちがいいんだよな?」
「んあっ、あっ、ふぁあっ、おち〇ぽっ……楠瀧のおち〇ぽ、太いおちんぽ……ビクビクおちんぽっすごいっんあっああっおちんぽっいいっきもちいい、おくっああんっ……ああっ……おくっ……ああんっおくがあっきもちいいっああんっひああっ……いいっきもちいいっ……いいっ……きもちいいっ……ああっあああっ……いいっんっ……いいっ」
 結腸まで突き挿れて欲しいと登和が強請り、それを楠瀧は実行する。
 グポッと大きな音がして結腸までしっかりと楠瀧のペニスが挿入り込んでいる。それを感じて登和は嬉しそうに嬌声を上げる。
「ああっ……おちんぽっ……ああんっきもちいいっああんっあっあっ、んはぁあっ!ぁっんひ! もっとぉっぁん! おちんぽ、いいのぉっあひぃああんっ!」
「もっとだよ、もっと、登和もっとだ!」
「おま○こっ……いいっああんっ……いいっきもちっいいっ……ああんっああっああっああっぁはっ……はぁんっんっぁん! おちんぽぉっ……おちんぽ凄いぃいい……っ」
「ああ、たまらない、ここにたくさん中出ししてやるからな……っ!」
「おちんぽいいっああんっ気持ちが良い……いい……いいっああんっあっあっいいっああんっあっ、あっ、ぁん! んふぅっぁおま○こに精液中出ししてくださいっああっひ! ひぁっ、あーっあーっ!」
「出る出るっ!! 受け取れっ」
「はぁんっあっあぁああっ! おちんぽせいせききたっ……っ凄いい、いいのっ! あああああっんんっ!!」
 登和は精液を受け取り、それで絶頂をした。
 たっぷりと中出しをしてもらって登和は微笑む。
 これを受け取ることで愛を感じると登和は嬉しそうに楠瀧の頬を手のひらで包んで引き寄せキスをした。
 登和からのキスは初めてだったので楠瀧は驚いたけれど、やっと普通の愛情を示す行動をし出した登和に合わせるようにキスを繰り返した。
 愛情を注げば、きっと登和は少しは狂気から戻ってくる。
 楠瀧はその時にも登和の隣にいたいと願い、登和はそんな楠瀧を好きにさせた。
 季節が変わっていっても登和の側には楠瀧がいて、小さな幸せから全部を取り戻すように、静かな生活を続けた。
 大学を卒業して就職をしても、二人はお互いに時間を作って狂ったようなセックスをしながらも、それでも日常は穏やかに過ごした。
 登和はそんな日々を大事だと思えるようになって、楠瀧の誕生日には進んでプレゼントや旅行を計画するようになり、楠瀧に愛情を示し始めた。
 そうした時間がやってくるようになり、友人の太一もやっと手放しで二人の関係を喜んで見守るようになった。
「登和、これ」
 ある日、楠瀧が出してきた書類を登和は見た。
 それはこの市にある同性愛者のパートナー制度の書類だ。
 色んなことが融通されるもので、登和はそれを楠瀧が出してくるのを意外そうに言うのだ。
「こういうのに拘らないのかと思ってた」
「そうでもない。使える制度を使って登和と繋がっていたいとずっと思っている」
「ふーん、いいよ。書くよ」
 登和はそう笑って言うと、楠瀧は喜んだ。
 そうして二人は正式にパートナーになった。
 偏見はまだ多いけれど、二人はそんなことは気にしなかった。
 世間も変わりつつある。
 自分たちもこうして変わっていくのだと思うと登和は、やっとその変化を受け入れられるようになっている自分に気付いた。
「楠…和慶、愛してるぞ」
 登和がそう言い、書類を仕舞っていた楠瀧がフリーズした。
 けれどすぐに復活して言った。
「俺も、登和を愛してる! すっごく愛している!」
 そう言って抱きしめられて、登和はその腕の中で生まれて初めて芽生える愛しさを感じた。
 きっと自分は大丈夫だ。この愛を信じていればきっと大丈夫。
 もう狂気のノイズは聞こえない。

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