noise

3

 レストランに入った登和は太一を探した。
 すると太一は入ってきた登和を見つけて手を振っている。
「お一人ですか?」
 ウエイターに聞かれたけれど、登和は答える。
「あ、待ち合わせです。あの席にいきます」
「かしこまりました。ご注文は後ほど」
「はい」
 やりとりをして席に座ると太一だけがいた。
 楠瀧はいないのかとホッとしてから席に座った。
「いやほんと、こんな時間にごめんな。俺明日ちょっと用事があって日中無理だし。連絡先も聞く間もなかったからさ」
「あ、うん」
 太一は高校時代と変わらないような態度で話しかけてくるけれど、登和はあまり太一と関わりたくないのが本音だ。
 いくら柊平のところから逃げ切り、柊平も追ってきていないとはいえ、まだ何があるのか分からない。
 今回は父親が干渉しているから柊平は引き下がっているだけかもしれない。
 そんな状態で昔の友達と仲良くとはいかない。
「登和、あれから何かあった?」
「……え?」
 太一は慎重に話を始める。
「だって、登和は両親が離婚したからって、そこまで性格が変わるようなことはないと俺は思ってる」
 太一がそう言うので、登和はそれはそうだなと思った。
 父親に急に離婚すると言われた時は、ああやっぱりと思った。
 けれどその後、捨てられることや再婚相手に家を乗っ取られることまでもまだ我慢はできた。
「オジサンは連絡先を教えてくれなかったし、教師も引っ越し先の高校も教えてくれなかった。何で、離婚して家を引っ越しただけのことでお前のこと何もかも秘密にされるんだって分からなかった。だってその日まで普通に付き合いがあったじゃないか」
 太一の言うことはもっともで、登和だって引っ越した後も太一たちとは繋がっていたかったのだ。
 だから太一が憤る気持ちは理解出来たし、怒りは当たり前だ。
 教えてもらえなかったということは、父親は登和がどんな目にこれから合うのか知っていたことになる。
 連絡を取れないようにしたのは、携帯会社にデータを壊されてしまったことであるが、もしかしなくてもそれも柊平が依頼してわざとデータ移行できないようにさせたのかもしれない。
 その可能性を一度として疑わなかったことを登和は今更ながらに思い至る自分を少しだけ呪った。何で危機感もなかったのだろうと。
 あの時、一人暮らしすることを強行していたら、父親とて強引にことを進めることはできなかったのではないかとさえ思えてきた。
 実際、高校三年とはいえ一人暮らしをしている人だっているのだ。たった一年の違いで何があるのか。
 そこで登和はハッとする。
 その一年を売ったのかもしれない。
 登和の一年を柊平に売り、そして登和をおとしめたかったのかもしれない。
 登和は母親に似た顔をしている。けれど父親が自分の妻には何もできなかった。言われるがままに我慢させられ、浮気をしても何処吹く風。最後は邪魔だと言わんばかりに夫も子供も捨てて仕事を取ったのだ。さらにはステータスをあげるために向こうで結婚すらするのだという。
 そんな我が儘放題の妻にそっくりな子供など側には置きたくなかったし、酷い目に遭えばいいとさえ思っていた可能性がある。
「登和は随分変わったよね。暗くなってる……何かあったんだよな? 俺には話せないことなのか?」
「……人の過去を掘り起こしてどうしようっていうの?」
 登和は太一の無神経な探りに怒りを覚えた。
 絶対に知られたくない過去を持つ人に、それを話せと言い、聞いたらきっと引くだろうし二度と関わり合いになりたくないくらいのトラブルだ。
 それを恐らく太一は、他の誰かに喋る。
 あいつ、近親相姦していたと。
 昔の太一は信用していた。だって話せることばかりだったから。
 でも今の太一は信用しない。話せないことばかりだからだ。
「そんなに言えないことなのか? 俺にでも?」
「お前だから言わない。死んでも言わない」
「俺、だから? 何で……そんなに知られたくないことなのかよ」
 太一がそう言うけれど登和は太一の目を見なかった。
 そこに映る自分が汚らしいと思っていたし、浅ましいとさえ思っているからだ。
 もう昔ではないのだ。ことは起こった後で昔の登和ではない。
 そして柊平に見つからないためにはできるだけ静かに暮らすことだけだった。
「親に捨てられ、こんな都会に追いやられ、学校でも馴染めず、日々の暮らしもきつかった。そりゃ人だって変わるよ。だから何? お前が過去に戻って救ってくれるわけ? できもしないくせに僕の過去に口だししないでくれる? 救ってくれなんて望んでないし、僕のこと可哀想と見下してくるのはやめてくれる?」
 暗い性格になってしまった友人の辛いことを聞いて慰めて明るいときに戻そうと思っているのかもしれない。
 登和がそう吐き捨てるように言うと、太一は言葉を失った。
「……そんなに辛いことがあったんだね……」
 その言葉に登和は怒りしか湧かなかった。
「これ以上、僕のこと詮索するのやめてくれる? それからもう関わり合いになりたくないから近づかないで」
 登和はそう言うと自分のドリンクバー分だけ支払ってレストランを出た。
 するとレストランの外には今やってきたのか楠瀧がいた。
「何で太一泣かせてんの?」
 そう言われて驚き、登和はレストランの窓を振り返った。
 窓際に座っている太一は泣いているように顔を伏せていた。
「……泣きたいのはこっちだ」
 登和はそう言うと楠瀧の横を抜けようとしたが、楠瀧が登和の腕を掴んで逃げられないようにしてきた。
「は、離せ!」
「お前、痩せたよな」
 急に楠瀧がそんなことを言ってきて登和はビクリとする。
「高校二年まで、お前筋肉もいい感じについて、運動だって得意で、大会もよく出ていたよな。なのに引っ越して今になるまでに、体つきが完全に変わってる。運動も一切できず、筋肉も生活に必要なものしかついてない。何があったらこんな酷いことになるんだ?」
 楠瀧の言葉に驚いた登和。
 楠瀧は県外に行ってからも恐らく太一たちとは会っていたのだろう。だから登和の様子も知っていたし、大会も見に来ていたようだった。
 自分の知らないところで楠瀧が見ていたとは思わず驚いて言葉がでない。
「登和、太一を巻き込まないようにわざと辛く当たってるだろう?」
 核心を突くように言われ、登和は動揺した。
「誰にも言えないことがお前に起こってる。今でもそれが続いていて、お前は俺たちを巻き込まないようにしている、そうだろう?」
 そう言われたらその通りだったし、太一には昔の何も知らなかった自分だけ覚えていてほしかった。
 今の薄汚れ、どうしようもない自分は誰にも知られたくなかった。
「俺はお前を助けたい。お前が困っているなら助けたい」
 登和の腕を引き寄せて楠瀧がそう言った時だった。
 泣きそうなほど嬉しい気持ちと、知られたくない気持ちの登和は、その腕を必死に振り払った。
「お前らなんかに、何かできるようなことじゃない……!」
 それなら自分で何とかできた。
 何の権力もない子供ができることではないのだ。
 登和は泣きながらそう楠瀧に言っていた。
 泣きたかったわけじゃない。でも涙は自然と出た。
 その絞り出すような声に楠瀧も登和の抱えている問題が相当根深いものだと知ったようだった。
 登和は腕を振り払った後、駅に向かって走った。
 昔はよく走っていたけれど、駅に着く前に息が上がってしまい、楠瀧が追ってこないのを確認してから登和は歩き始めた。
 繁華街の横を抜けて自宅に戻ろうとした時だった。
「よう、登和。久しぶりだな」
 急にそう言われて駅前で誰かに肩を組まれた。
 その声は、聞き覚えのある声だ。
「……しゅ、へい、さん……なんで……」
 その声は柊平の声で、見上げると確かに柊平だった。
 スーツは着ているし、浅黒かった肌は大分落ち着いているけれど、間違いなく柊平だった。
 何でここにいる。
 それだけが頭の中を回り、真っ白になった。
「仕事で通りかかっただけだ。いやあ、俺、溜まってんだよな~、久々にお前で発散させてくれよ。俺が教え込んだ体をよ」
「い、いやです……」
「そういうなよ。俺との相性最高に良かっただろう? お前もこうなってただろう?」
 そう言われて目の前に出されたのは良がり狂っている登和の動画だ。
 もちろん音は消してあったけれど、それだけで十分登和には脅しになった。
「さっきのお友達にこれを見せてやれば、お前の悩みも解決するだろうにね。ああ、何ならお友達も一緒ってのはありだな。ああいうの俺は好みじゃないけれど、他の誰かが気に入るかもしれないし?」
 どうやらあのレストランに柊平がいたらしい。
 そしてレストランでの太一との会話を聞いていたようだった。
 外に出ての楠瀧との会話や会っていたことは気付いてないようだったが、太一を巻き込んでしまう恐怖に登和は言った。
「あの人たちは関係ないから巻き込まないで」
「そりゃ、お前次第だろ?」
 柊平はそう言い、駅を過ぎた先にあるホテル街に登和を連れて行く。
 もう柊平との関係も終わったのに、またその関係を続けないと太一を巻き込むかもしれないのだ。
 やっぱり太一に会うのはやめておけばよかった。
 見ろ、自分の懐かしい気分のせいで太一を結局巻き込んでしまっている。
「……あなたが約束を守る保証があるんでしょうか……?」
 柊平がその約束を守ってくれる確証がなかった。
 登和の言葉に柊平は言う。
「俺はお前にしか興味はない。どうせ大学で会ってるんだろ? 様子を見れば分かるだろ」
 登和はそれは確かにと思う。
 あの明るい太一なら、何かあれば楠瀧だって気がつくだろう。
 それを信じるしかない。
 登和はそれを信じて、柊平の要求に応じた。
 そんな二人の後を楠瀧が付けているとは登和は気付かなかった。


「あぁああ~~っ……あひっ、おま○こらめっあへぇっ……ん゛っんあっあっあっあっあ~……ん゛ぁああっ…あっあっあんっあんっあんっあんっ」
久しぶりに受け入れた柊平のペニスは、登和を狂わせた。
 それまでこんなものがなくてもやっていけていたのに、柊平にペニスを挿れられた瞬間から頭の中でチカチカと光が舞い、頭がペニスのことしか考えられなくなるのだ。
 それは二ヶ月以上離れただけのことなのに、体はそのペニスを待ちわびていて、歓喜しているのが分かった。
「あ゛ああ~~っ……ん゛ひっ、いっい゛っんぁあっ、あっあ゛っあっおま○こっ、だめっだめっ、あぁあんっああんっ……ひっんっんあああぁっ」
「しっかり体が覚えてるな。やっぱ、お前の中たまらねえな」
中を深く抉ってペニスを突き挿れる柊平の腰使いに登和は口から涎を垂れ流し、自らも腰を振っていた。
「ひああっ……ん゛っひっいっ……あへぇ、んっああぁっん゛ぁあああ゛あぁっ、らめっ、い゛っいくっ、い゛っ……!」
「どんなに済ました顔しても、お前はこういう淫乱なんだよ、お前は淫乱で叔父のペニスで喜ぶやつなんだよ、しっかりと思い出せ」
「あ゛ああんっああっ!! ああああっあっぁっあっ、いいっ、おちんぽっきもちいいよぉっ……、あああぁんっ」
「そうだ、お前はおちんぽ大好きな変態なんだよっ」
「やらぁっ……はぁんっ……あっあっあひぃっ! あっあぁっ、あひぃっ……、らめっ、あーっ……」
 もう突き上げられるだけで登和の体がそれを喜び、はしたなく喘ぎ声をあげ、嬌声を上げる。そして絶頂をして痙攣する体はとうとう中出しされることで目覚めてしまった。
「あーっ……はっあぁっ、あっああぁっあひぃっ! あんっ……あっあっあああぁぅっあっやっ! あぁーっ……らめぇっ、んっはぁっぁああっ」
 こんなことを心は望んでいないのに、それ以外がすべて自分を裏切る。
 快楽に弱い体は、仕込まれた通りに覚え、そしてそれを忘れずにいた。
 柊平によって暴かれ続ける淫乱な部分を登和は受け入れるしか自分の心を保てなかった。
「あぁっあっ、あんぅっ……、や、あぁっあーっ……ひっ、ああっ、あぁあんっんっんっ……はぁっぁ、あぅんっすご、いっ……ひゃぁっあっはぁっ、あぅんっ!」
「こうされるのが好きだよなっ」
 前立腺を擦り上げながら奥まで突き挿れて腰を振られると、登和は耐えられないと嬌声を上げた。
「あぁあああっ……あああっ、あぁああぁんっああっ! あっいいぃっひぅっ、あっ、あぁんっ! あぅっあっあんっいいっおま○こいいっあああんっ!」
とうとう気持ちがいいという心を解き放し、散々抱かれて壊された時に戻った。
「あっあんっあんっ、もうっ、らめっおま○こっ、ぐりぐりされてぇっ、きもちいいよぉっはぁ……あん、んあっ、やぁああんっあぁっ、あんっ……らめぇっ、そこやぁっ……あっ、ああぁっ!!!」
「ははは、お帰り登和。それでいい……お前は淫乱で可愛いよ……俺の登和」
「あぁーっ、いくっ、おちんぽでいくっ! ひぃあああんっ、いっちゃうよぉっ! あっはぁあんっ! ああ、おま○こされてっいっちゃうっああんあんあんっ!」
「何度でもいかせてやるからイケよ!」
「あぁっいいっ……ああんっ! んっあぅっ……あぁっあぁっ、らめっ、んんっ、ひぁんっ……! あっ……あぁっあっ……お、おちんぽっでっ、おま○こぐりぐりって、あっやっ、あはぁんっ……」
「ほら、中出してやるからイケよ!」
「あああぁ、あぁ、ん……あひぃっ、ああーっ、おま○こ、あぁんっ……、あぁ、ああっあぁんっ! あぁああんっ、もっやらぁっ、いっちゃう、おちんぽでっいくっあああんっ!」
大きな快楽によって登和は絶頂をし、ドライオーガズムでさらに絶頂をした。
 それによって登和の中の常識は消え去り、登和は自分でも覚えていない記憶の時間に突入をした。
「もっとっ……あぁんっ、あんっ、あんんあんっんっ、あぁっ、あぁん……きもち、い……おちんぽ、もっとちょうらい……いいっあひんっ」
 登和は起き上がって柊平の上に跨がり、自らアナルに柊平のペニスを挿れて腰を振った。
「お前はそうじゃないとな。これからも可愛がってやるよ」
「あぁあっ……あぁっ、おっきいっおちんぽがぁっ……おま○こ、ごりごり擦ってっはあぁっ……んっあぅっ、きもちっ、いいっ……!」
 登和はこの日、朝方まで柊平とセックスに興じた。
 それは二ヶ月も放置されたセックスに慣れきった体がしっかりと快楽を思い出すのには十分な時間だった。
 登和はまた地獄に戻ってきてしまった。
 それも自分の意志の弱さでである。

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