noise

2

薄闇の部屋の中。
 肌が擦れ合い、そして登和の嬌声が部屋中に響く。
「ひ、っぐ、ううっ……やだ、もうむり、おま○こ壊れる……こわれる……っ」
「登和~、壊れやしねえよ、ほら飲み込んでる」
「あぁ――っ、あぁっ……! ぃやあっ!おねがい、もうだめ、だめぇえ……ああぁ……っ」
 登和は柊平にペニスを奥まで突き入れられて絶頂をした。
 痙攣した登和の体と息の上がった呼吸を整えているけれど、それを強引に柊平のペニスはまだ硬く勃起しているままだ。
「ほら、腰振れよ……登和」
「うぅ……っや……できな……っは……っく……はあっああああぁ、あっ、あああ……!」
できないと言うと柊平が腰を振った。
 パンパンと肌がぶつかり激しい音が鳴り響く。
「やっ! あっ、ああんっな、はあんっは……っ、はぁ……っ、あん、ああぁ、んあぁ」
「お前は俺のペニスで喘いでいればいいんだよっ!」
「あ゛っあ゛あああっ! あ゛ひっ、そこっ、らめっ、あ゛ああっ、だめっしんじゃうっ、そこばっかゴリゴリしないれぇっ……! あ゛ーっ、あ゛ーっ、んっあああぁっ……!」
登和は自分でもどうしてこうなったのか理解ができなかった。
 引っ越しの日に眠ってしまってから登和は次に目を覚ました時は、柊平に十時間ほどに及ぶレイプをされた後だった。
 もちろん、逃げようとした登和であるが。
「金もない、住むところもない場所で、どうやって生きていくつもりだ?」
 そう言われた瞬間、一円の金も持っていない自分に気付いた。
 何もかもないのだと言われてしまい、登和は柊平の家から逃げることができなかった。
 そしてそのまま登和は柊平による陵辱の日々が始まった。
「あ! ああん、……あっ、あぁん……っああっ! あふ、ぅ……っ」
学校へ行っている時は自由になれるけれど、それ以外は柊平が仕事から戻ってくると常にセックスの相手をさせられた。
「んあぅ……! んああんっああっ……んぁ、ぁふっ……ん、やらっ……! ぁ、や、やめ、あんっ!」
「おらっ腰振れ、登和……できるだろうっ」
「んぁああっ……! やだっ……やめろ、やだぁあ……っ!」
「たく、従順にならないなあ……なら強引に十時間コースだぞ」
「はぁんっ!? あぁっ! あぁあっ! あああんっあんっあぁんっ!」
セックス中に抵抗をすると長時間絶頂をしまくるセックスで犯される。
 それは悶絶して最後には抵抗する気力すら奪ってくるもので、その無駄な抵抗はだんだんと登和に意味のないことだと知らしめることになってしまった。
「ふぁっ、あふんっ、ふ、んんぅっ……ぅあんっ、あっあっ、だ、め……っ」
柊平は登和の乳首を弄りながらアナルにペニスを突っ込んで奥深くで腰を動かし続ける。
「ああ、出る出るっ!」
「なかだし、ああぁ……っだめ、だめ……っ!あっ……いやぁああっ!!」
ドップリと中に精液を出され、それが奥まで挿入り込むように更にペニスで奥へとすり込んでくる。
「ああ……っやめて、っぁっあぅ、はぁんっ! ん、んぁ……っあ、お、おかひ、なるぅ……ああっああっ」
「いや、もっとすると言っただろう……ほら登和……これが気持ちがいいんだろう?」
「あぁっ、あ、ぁ、ぃ、いい、からぁ……っ、あぁ゛あぁあっ!」
柊平は登和の腰を掴んで乱暴に腰を振り続ける。
 それに揺さぶられて登和は嬌声を上げるようになっていた。
「ああぁあ……っ! ゃ、やめ、だ、ぁ、あぁっ、ああぁっ! や、やらぁ……っ! らめぇえ……!」
 誰も助けてはくれない。
 それが登和には分かっている。
 一人で生きていくには、それ相応のお金と仕事が必要だった。
 それすら何もない状態の登和が身一つで逃げるには土地勘もない場所で逃げ出しても堕ちる先はきっと同じだ。
 それだけは理解出来た。
 だからこそ我慢するしかなかった。
 大学へは行かせてもらえる。そうなれば一人暮らしをしていいと言った、あの薄情な父親の言葉を信じるしかなかった。
「あ゛っあ゛あああっ! あ゛ひっ、そこっ、らめっ、あ゛ああっ、だめっしんじゃうっ、そこばっかゴリゴリしないれぇっ……! あ゛ーっ、あ゛ーっ、んっあああぁっ……!」
「ここが気持ちよくてたまらないんだろうっ知ってるよ、お前は淫乱なんだよっ叔父のペニスで喜ぶようなやつなんだよっ」
「ああ……っ、あっ、あっ、ひぅっ! あ……っ! あぁっあっあっやっ、やぁ……っ、ぁん、ぁ、ふぅ……っん……っ、はふ……っは、ぁあん……きもちいいっああっいくっいくっああああああっ!!」
「はははったっぷり中出しだっ」
「いやぁあああっ! だめぇええ!」
たっぷりと柊平が登和の中で精液を出し、やっとペニスが出て行くと精液が溢れ出てくる。そしてそれを掻き出すようにまた柊平のペニスが勃起して登和のアナルに入ってくる。
「あぁ、ぁ、や、や、だ、だめ……だめ……っ あぁああ……っ! ああああぁ……っあぁあ……っゃ、ゃだ、やだ……お、おっきい……っ」
もちろんそれで柊平がやめてくれることもない。
 その日も登和は柊平に結局朝まで犯され続けた。


 大学へ行くために学校へは通った。
何とか勉強だけは頑張った。
 家に帰ると邪魔をされるから、図書室で粘りそこで予習復習をした。
 熱心だと勤勉だと褒められたけれど、そうではない。
 そうでなければ、いいところに就職ができないし、資格も取れない。
 事務の仕事の資格も取り、取れるものは何でも受けた。
 大学も希望のところに受かった。
 その間はさすがに柊平も邪魔はあまりしなかった。
 仕事が忙しいと平気で一週間ほどいなくなっていたし、戻ってくるとメチャクチャに登和を抱いた。
 だんだんと登和もこの関係が当たり前になってしまい慣れてきてしまった。
 けれど自分で求めることはしなかった。
 だが体が疼くときはオナニーをしたし、それはバイブを使ったりニップルにバイブが付いたものを使ったりするような変態チックなことをした。
 もうセックスに関しては戻れないところまできてしまい、登和はそれを受け入れるしかなかった。
 やがて大学生になると登和は父親に連絡を取り、一人暮らしをすると宣言した。
 それはあっさりと受け入れられ、親権は父親なのでマンションを用意してくれ、生活費も振り込んできた。
 止められるのが怖くて柊平には告げずに、荷物を一時間で持ち出せるように用意し、そして柊平が出かけている間に家を引っ越した。
 もちろん柊平が追ってくる可能性もあるから、警戒をしていたけれど、どうやら柊平の会社が少し危ないらしく、それで登和に構っている暇がないらしいことが分かった。
「何だ……あっさり」
 新しい家に荷物を積み込んでからホッとした。
 荷物はほぼ備え付けのあるマンションにしたので洋服や勉強道具だけ持ち込んだ。
 布団や食器類などは近くで買い込んだ。
 それで一人暮らしが始まると、登和はやっと穏やかな一人の時間を楽しんだ。
 大学が始まると大学とバイトで忙しくなった。
 バイトは近所のスーパーでレジ打ちだが、六時から十時までのバイトだったがそれでも気が紛れた。
 もちろん人を信用できなくなっていたから登和は大学では友達を作らなかった。
 だがある日のことだった。
「あれ、登和じゃん……マジ?」
 大学内を歩いていると急にそう言われて呼び止められた。
 声がした方を見るとそこにいたのは中学からの友人で高校も一緒だった仲が良かった大場太一だった。
「……え、太一?」
「そう、オレオレ、太一! マジ、登和久しぶり、元気そうじゃん!」
 そう言われても登和は戸惑った。
 登和は今は髪を伸ばし、前髪も目に掛かるほどで大きな眼鏡をかけて顔を隠して服もあまり目立たない普通の格好をしている。
 当時の登和を知っている人ならギリギリ見分けられる程度であるが、普通に登和だと思って声を掛けることはないはずだった。
「急に引っ越して連絡も取れないし……それに自宅に行ったらオジサン、別の家族と暮らしてるし……何が何だか分からなくて」
 太一がそう言うからそれには登和もそうだろうなと思った。
「あ、ごめん、俺も引っ越す前の日まで知らなくて……」
「え、マジで? じゃ連絡は?」
「うん……それで連絡は……携帯を買い換えすることになった時に、データ引き継ぎできなくて消失したらしくて……それで誰の連絡先も控えてなくて」
 恐らく頑張れば連絡先は見つかっただろう。
 例えば学校側に融通してもらって電話を繋いでもらうことだって無茶をすればできた。けれど登和はそれどころではなかった。
 その日を境に登和には地獄しか待っていなかった。
もう太一たちと対等ですらない。汚れた人間だと思えた。
 だから唯一覚えていた太一には連絡を取らなかった。
「マジで? うわあ、災難だな。まあ急に引っ越してこっちで馴染むもの苦労しただろうに……あのおっさん、引っ越し先の住所も教えてくれなくてな」
 どうやら登和の父親は旧友たちには住所すら教えなかったというのだ。
 徹底した情報を与えない父親は何を考えていたのか分からないが、もしかしたら本当に柊平の住所を知らなかったのかもしれない。
「そう、なんだ……ごめんね……」
「いや、ここで会ったのは何かの縁よ。俺も勉強頑張ったらここに入れたし、登和も頑張ったんだよな~、俺と偏差値は似てたからさ」
 太一がそう言って笑っていると遠くから太一を呼ぶ声が聞こえた。
「おお、こっち、あ、ちょうどいいや、ほら昔よく遊んだじゃん、登和がいたよ」
 そう言い、太一が人を呼んでいる。
 まだ知り合いがいるのかと焦る登和の目に飛び込んできたのは、楠瀧和慶だった。
「……登和?」
 楠瀧は心底驚いたというように登和を見た。
 まさかここで会うとは思わず、登和はドキリとする。
 あれから三年も会ってなかった楠瀧はいい男になっていた。顔もよく背も百八十以上はある長身で、少し筋肉質な体だった。女性なら放っておかないというようなイケメンである。
 一方登和はあの時の明るい少年からは明らかに違う、オドオドとした正反対の性格に変わっていた。向こうが分からないのは当たり前である。
「やあ、久しぶり、登和もこの大学だったのか」
「あ、うん……」
 気まずく思っていた登和であるが、楠瀧はにこりと笑って近寄ってきて、愛想のいい表情で話しかけてくる。
「何か全然変わったな。昔はもっと活発ぽかったのに」
「そうなんだよね。こっちにきてなんかあったかと言うくらいに大人しくなってるから全然気付かなかったけど……この間から誰かに似てるなあっと思ってたんだよねで、やっと分かった」
 太一がそう言うので、それには楠瀧は笑って言う。
「ほら、前髪もうちょっと切った方がいいよ。これじゃ前が見えないでしょ?」
 そう言いながら楠瀧が登和の前髪をスッと梳いて前が見えるようにした。
 正面から顔を見合わせることになってしまい、登和は慌ててその手を払いのけた。
「……っ!」
「あ、ごめんごめん。悪かった。でも、登和って眼鏡かけるほど目が悪かったっけ?」
 楠瀧がそう言うので太一もそれは驚く。
「高二まではかけてなかったよな?」
「あ、これは……伊達眼鏡で……こうしてる方が楽だから」
 誰かを見る時、眼鏡一つ挟むと落ち着いて距離が取れている気がした。そうやって高校三年の一年を過ごし、誰とも関わらずにきた。
 幸い転入した高校が受験真っ盛りの三年であったことで、誰とも仲良くならなくてもやっていけたから助かっていた。顔を隠したのは周りに見られるのが嫌だったのだ。
 あんな、はしたない顔をする自分の顔が登和は嫌いだったからだ。
「登和、この後時間ある?」
「えっと、講義が終わったらバイトあるから……」
「バイトしてるんだ。何時まで?」
「……十時……」
「じゃあバイトあたりにレストランあればそこで待ってるから、ちょっと話ししない? 明日大学休みだし」
 そう太一が言うのでそれを何とか断りたかったが、きっと断るのはおかしいのだろうと登和は思った。
 太一が嫌いなわけじゃない。
 ただ他人に高校三年の一年間を聞かれた時、何かうっかり言わないかが不安だった。あんな浅ましい姿で乱れていたことを知られたくない。
「……分かった」
 そう言ってバイト先の近くにあるレストランを指定した。
 家とは逆の方向であるが駅が近くて人通りも多い。
「じゃあ後で話そうな」
「……うん」
 太一は元気にそう言うと講義があるのか走って講堂に入っていった。
 それを追って歩いて行くと、後ろから付いてきた楠瀧がスッと登和の腰を触った。
「……あっ、え、なに?」
「遅れるよ?」
 急ぐ意味で押してくれたらしいのだが、腰をギュッと寄せられて登和はビクリと体を震わせた。
 楠瀧からは香水の匂いか、爽やかなソープ系の匂いがした。
 もうあれから三年も経っている。過剰な意識はやめようと登和は少し早めに走った。
 幸い、講義は別だったので廊下で別れたけれど、もしかして今日の話し合いには太一だけではなく楠瀧がくるのではないかと思うと少し憂鬱になった。


 その日、夕方からバイトに出てレジ打ちをして十時に上がった。
 帰りにバイト仲間に飲みに誘われたけれど未成年であることや人と待ち合わせをしていると言って断って駅に向かった。

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