immoral things
6
「なに、これ……」
二摩理葵の両親についての詳細な情報が載っているのだ。
そこには峰渉(みね わたる)、祥子の実子と書いているのだ。
「え、なんで……だって僕は……え?」
どういうことなのだと思い、峰渉と祥子の詳細を読む。
祥子は旧姓は山口といい、姉妹に英里という妹がいることが書いてある。
「え、え、つまり……水谷の思い人の姉がってこと?」
二人は同じく客船に乗って亡くなっていたけれど、子供が一人いることが分かっていた。名前は瑛介。そして妹の英里にも一人の子供がいることが分かった。
「え、つまり、従兄弟ってこと? 兄弟じゃなくて?」
養子団体には多田朝美が関わっていることが分かった。
閉鎖される前の養子団体とも繋がっていて、アメリカにあるけれど赤子であった瑛介は両親が旅行中に死去したので、施設に預けられるも両親の親類に引き取り手がいなかったので養子縁組に出されたと書かれている。
「つまり、水谷の言っていたことが嘘ってこと?」
理葵がそれを見て呆然としていると、またチャイムが鳴った。
慌ててインターフォンに出るとそこには高之瀬が立っていた。
「理葵、開けてくれるか?」
疲れ切ったような顔で高之瀬が言ったので理葵は慌てて玄関を開けに走った。
玄関を開けてすぐに理葵は高之瀬に書類を手渡しながら言っていた。
「僕ら、兄弟じゃない……! 確かに血のつながりはあるけれど……でも従兄弟で……兄弟じゃない」
理葵がそう叫ぶと高之瀬は書類を大人しく読み、そしてホッと息を吐いた。
「ああ、良かった……水谷がとち狂ったことを言い出して焦ったけれど、どうやら奴の嘘だったようだ……」
「そうだよ、そうだったんだよっ」
そう言うと高之瀬が言った。
「おかしいと思って、朝美さんの施設に行ってきたんだ……確かに水谷は調べに来たらしいけれど、似てるのは当たり前だって笑って……私と理葵は従兄弟だろうからって……」
「そうなの?」
「ああ、朝美さんはお前も一緒に引き取りたがったらしいんだ。身元も分かっているしな。けど、その前に松浦夫妻がもう面会をしてしまっていて、どうしても育てたいと言うし、夫婦は裕福だったから無理も言えなかったって……」
本当に養子団体まで乗り込んで話を聞き込んできたように言う内容は、調書に書いてある通りだった。
「じゃ、水谷が言ったことは嘘だったんだよね……?」
「ああ、嘘だ。そのことを突き付けようと、朝美さんのところに確認にいこうと言ったら、寸前で逃げられてしまってな」
高之瀬がそう言うので理葵はやっぱりそうだったのかと興奮した。
「……ごめんなさい、僕があんな嘘に釣られて……」
理葵は自分が泣いたことが全部恥ずかしいことだったと思えて、そして兄弟でなくてよかったと心から思った。
「いいんだよ。私も調査をまたしているとはっきり言えばよかった。けれど水谷が何をしてくるつもりなのかを聞くためには、ああやって出向くしかなかったんだ」
高之瀬は水谷の出方も見たかったし、理葵の暴走も止めたかったのだ。
高之瀬は落ち込む理葵の?に振れ、そこを撫でながら言った。
「こんなに泣かせてごめん……あのときはああするしかなかったけれど、一晩すれば興奮も収まるだろうと思って、一人にしてしまった」
散々泣いていたから酷い顔をしているのを理葵は思い出して顔を隠そうとしたが、それを高之瀬は許してくれなかった。
「私と兄弟だと悲しかったんだね。分かるよ。でもこの調査が本当なら従兄弟であることは間違いない。でも私はこの事実をなかったことにしたい」
そう高之瀬が言い、理葵は首を傾げた。
「幸いと言っては悪いが、私たちは養子縁組のお陰で赤の他人だ。それを知っている人はごく僅かで私たちの今の状況を知らない。なら、このままでいれば私たちは付き合っていてもおかしくもなく、男同士であってもそのあたりはクリアできると思っている」
高之瀬がその事実をなかったことにして、このまま他人のままで恋人でいようと言ってくれているのだ。その方が詮索をされることもないし、誰にも迷惑はかけない。
そして親類縁者でそれを知っている人はおらず、水谷は杜撰な調査でこっちを騙そうとしたので従兄弟同士である事実には気付いていないという。
「つまり、何も変わらないってこと?」
理葵はそう思った。
今まで通り、二人は付き合っていく。もちろん女性ではないから子供を作るわけでもない。多少の倫理観には触れるけれど、それを超えても離れられるわけもなかった。
「理葵がいいと言うなら、そうしようと提案をしているんだ。もし駄目であるならそう言ってくれて構わない。私はここから出て行くし、理葵には二度と触れない」
高之瀬にそう宣言をされたら理葵は必死になって高之瀬に縋っていた。
「嫌だ! 別れるのは嫌だ!」
「理葵……」
「僕は、僕は最悪兄弟でもいい、それでも怜さんから離れられない。泣いて、泣いて、それでも諦められないんだ……っ!」
理葵がそう告げると、高之瀬はホッとしたように理葵を抱きしめた。
「そう言ってもらえて嬉しい……理葵、本当に愛しているよ」
「僕も愛してる……怜さんっ」
「ひ、あ、あ、あっ……っひっあっぁあっぁひぃっあっ……もっやぁっあっひぁあっ」
二人はお互いの気持ちを確かめ合ったら、抱き合うことで気持ちを更に高め合った。
「理葵、……好きだよ……」
「僕も、すきっぁあっ……あっ! あっあっあぁうっひぁっぁあん!」
「可愛く啼いて……たくさん愛してあげる……」
「あぁあうっ……あー! あっあひぃっひっあっあっ……あ――っ!!」
気持ちが良くて理葵が喘ぐと、高之瀬は満足したように理葵の中にしっかりと挿入り込んで理葵の中を堪能している。
「あああんっ!! あっ、ひぁっ、んぁっはぁんっ!!」
「理葵、気持ちがいいんだね……分かるよ、私も気持ちがいいよ……」
「ああああーっ! らぁっ、らめっ、はっふぅっ……あっ、ああぁっ」
アナルをこじ開けて奥まで挿入り込んでかき回してくる高之瀬のペニスはそれは大きくて、理葵の理性も飛ばしてくるほどだ。
「ああああぁー! すきっだいすきっあっあぁっ、あんっ、ふぁっ、ん……はあんっ!」
何があっても好きだと言えた。
この暖かい温もりを知ってしまったら、とてもじゃないがもう一人に戻れなかった。 それに一人に戻ったところで、恐らく逃げ出した水谷がまた余計なことをしてくるだろうし、誰もきっと助けてはくれない。
その恐怖を思ったら、実の兄弟であったとしてもそれはもう些細な問題だった。
まだずっと一緒に暮らしていたなら、もっと違う感情も異常性も覚えただろう。けれど離れて暮らしてきて、お互いに一切の干渉もしてこなかったのだから、血のつながりで引き合うのは仕方ないと言えた。
「あああっ、あぁっ、ああっ、あっ、ひぁんっああああっ!? あぁっ、あんっ、ひぃあっ! あっ、ああああーっ!」
「ああ、理葵……堪らないよ。絶対に離さないからね……ずっとずっと愛していくよっこうやってずっとね……」
高之瀬がそう言うので理葵は何度も頷いてその愛を受けた。
「あぁっ……嬉しい、あんっあっ、あっ、はぁんっ……ひゃっ、あぁっああっ……あああ! あっあんっ……あぁんっ、はぁっ……ああんっ」
理葵にとってもうこの世の全てが高之瀬で回ってもいいと思えた。
この人以外に誰を信じればいい?
水谷に騙され掛けたからこそ、余計にそう思えた。
「あはぁっ……、怜さんっすきっあっ……あぁん……ああぁ……は、ぁ……ああんぁ……あぁっあぁっ、あぁああんっ!」
「知ってるよ理葵、私の理葵、愛してるよ……可愛い理葵」
「あっ、やらぁっ……んっ、あっふぅっやっ……、そこは、やらぁ、んっ、はぁっ……」
「この奥が気持ちがいいのは知ってるよ、中で精液をたっぷり出してあげるよ」
「あぁんっ! あっ……はぁっ、はぁっ……あぁぅっ! やっ、あんっあんっあぁんっ」
理葵がそうされるのを好きなのは抱き合ってきたから分かると、強引に高之瀬は腰を振り、理葵を追い上げてくる。
「やぁあっ、あっふぅっ、あっあっ……ああーっ! あっはぁっ……んぁっ……はぁっはぁっ……あっぁあっ、んっひゃぁっ……」
理葵は高之瀬によって追い上げられてとうとう絶頂を迎えた。
「出すよ理葵っ」
「ああああぁーっ! あっ、あっ、あんっ、あんっぁあんっ!! ひゃああっ! あぁっ、あっあっ……はぁんっ、ぁあんっ」
高之瀬が理葵の奥深くで精液を吐き出し、理葵はそれを感じてまた絶頂をした。
「あは……もっと……怜さん、もっとして」
「大丈夫だよ、理葵の言う通り、もっとしてあげるよ」
「ああんっ嬉しい……」
理葵はそのまま高之瀬の手によってまた絶頂に導かれる。
その快楽に酔っていればそれだけで理葵は幸せだった。
その後、理葵は高之瀬の言う通りにいつも通りに過ごした。
暫くは高之瀬が水谷を警戒していたけれど、水谷はあのまま逃げていて、捕まらないままだった。
再度、理葵に近付いて嘘を振りまいてまで混乱させたことで、高之瀬が水谷に接近禁止命令を取ることにした。
水谷は支援団体の用意した家に暫く暮らしていたらしいが、あの日から逃亡していたようで荷物がかなり減っており、多額のお金も下ろしていたことも分かった。
通帳はスッカラカンになっていて、水谷は覚悟の逃亡をしたと支援団体も援助を諦めたという。
そういう報告が入ってきたけれど、水谷は見つからなかった。
「多分、嫌がらせしてあわよくばだったんだろう」
結論して高之瀬が出したのはそれだった。
理葵もそれには納得ができた。
「そうなんだろうね……僕の顔、似てたもんね……あの人に」
英里を好きだと言っていた水谷だったから、その英里の姉である祥子の子供なら似てても仕方ないレベルだった。
「僕も父親に似てれば良かったかも……イケメンだったし」
理葵は峰渉の顔も調書で見たので、そっちに似ていたらもっと男らしくて良かったと言った。
すると高之瀬はクスリと笑ってから言った。
「私はどっちでもよかったよ。理葵が理葵であるなら、きっとまた惚れるから」
そう笑って言われたら、理葵は真っ赤になった。
「もういいから……早く仕事いって~」
恥ずかしいと顔を隠しながら高之瀬を玄関まで連れて行く。
笑いながら高之瀬は従い、玄関に置いていた荷物を持った。
「分かったよ、行ってくるから理葵はゆっくり休んでなさい」
「はい、行ってらっしゃい」
「行ってきます」
高之瀬は笑って玄関から出て行った。
それを見送ってから理葵は寝室の掃除を始めた。
最近は高之瀬が理葵の部屋に入り浸っているので、高之瀬の私物が結構理葵の部屋にある状態だ。
「増えてきたなあ、そろそろ一緒に住むのもありかも」
そう言ってから理葵はまた顔を赤らめた。
「ははは、恥ずかしいなあ」
独り言を言って背広を仕舞おうとクローゼットを開けた。ハンガーに背広を掛けてから仕舞っていると、ふと寒いときに高之瀬がいつも着ていたコートが少し汚れていることに気付いた。
「あ、もう、汚れたまま突っ込むかな」
コートを取って汚れを拭き取ろうとして湿らせたタオルを持ってきた。
その汚れを拭き取ると、黒い汚れと土のようなものが付いてきた。
「なにこれ……、何かしみこんでるなあ。クリーニングに出さないと駄目かも」
シミは大分取れたけれど、完全に拭うことはできなかった。
コートをクリーニングに出すことにするからとポケットを探ると、そこには一枚の堅いカードのようなものが入っていた。
「……普通、カードをポケットに入れる?」
どうやら銀行のカードだったけれど、それを表に返した時に理葵は目を見開いた。
そして手が震えてしまったけれど、それは十秒で止まった。
理葵はそれを持ってすぐにリビングに戻り、コートは袋に入れてそこに拭き取ったタオルも入れ、カードはハサミで細かく切って黒い袋に入れてしまうと、コートに紛れ込ませて透明の袋に入れた。
心臓がはち切れそうに鳴って、あまりの大きさに他の音が聞こえないくらいにうるさかったけれど、理葵は急いで時計を見た。
まだ八時半。
間に合うと思い、急いで鍵を持ってコートを入れた袋に部屋中のゴミを入れ、コートだと分からないようにしてゴミの集積所に出した。
不安だったのでゴミ収集車が来るまでうろうろと近くの公園に行き、収集車がゴミを全部持って行くのを確認した。
もちろんゴミは全部収集車に放り込まれて押しつぶされていくのが見えた。
「これで、大丈夫、きっと大丈夫」
理葵は何度もそう言いながら部屋に戻り、他に怪しい物がないかを探したがそれ以上の持っていてはいけないものはなかった。
理葵はそれらを探し終えてから、シャワーを浴びて気持ちを切り替えた。
「僕のためなんだ、これはきっと僕のためだ」
恐らく水谷は生きていないのだろう。
調書もきっと嘘なのだ。いや調書は本物だ。祥子に子供がいたのは本当だが、あの沈没事件で遺体すら見つからずに亡くなっているのだろう。そして調書は誰かの思い違いで理葵を祥子の子供と書いてしまったのだ。恐らく先に祥子たちの身元が判明し、生きている子供が祥子の子供だとして認定されたのがそもそもの記録の間違いだったのだろう。
そしてそれが公式の記録として採用されて残ってしまったのだ。
だがその事実の矛盾に水谷が気付いてしまったのだ。
なぜなら、水谷は水谷と理葵のDNA鑑定をしてしまっている。
水谷と理葵にDNA鑑定で繋がりがあるという結果を持っていたはずだ。
だからそれは誤魔化せない事実である。
水谷と理葵にDNA鑑定で近い関係の親族であることが分かってしまったら、公式の記録こそが間違っていて、理葵と高之瀬が兄弟であることが確定する。
高之瀬が追加で調べた調査が間違っている事実を水谷だけが持っているのだ。
あの時の水谷の余裕は、それが分かっていたことによる余裕だったのだろう。
だから水谷に生きていて貰っては困るのだ。
それを知っている水谷には死んで貰うしかなかった。
しかしそれは全部、理葵を守るために高之瀬が仕組んだ計画なのだ。
知っている人がほぼいない。朝美という人も些細なことだと思っているはずだ。水谷が碌でもないことを知っているから、鬱陶しくて昔のことを思い出したに過ぎない。
面倒ごとはきっと嫌だから、これ以上こちらに干渉することはないだろう。
高之瀬が英里と水谷の兄洋介の子供である事実は知られてもいい。けれど理葵もまたその二人の子供であることは知られてはいけない。
理葵と高之瀬が兄弟である事実は絶対に知られてはいけない。
そして理葵がこの事実に気付いたことも高之瀬に知られてはいけない。
理葵は従兄弟だという嘘の調査を信じているふりをしなければならない。
そうしないと高之瀬との関係は終わる。
それだけは理葵は嫌だった。
一緒にいるためなら、理葵はその嘘を信じていくつもりだった。
だって知っている人は、もうこの世にはいないのだから。
理葵が買い物に行っている間に帰宅した高之瀬は、スーツを脱いでクローゼットにしまいながらふといつもおいてあったコートがないことに気付いた。
「あ、おかえり」
理葵が買い物から帰ってきて寝室に顔を見せた。
「ああ、ただいま。理葵、ここにあったコート、どうした?」
高之瀬がそう訪ねると理葵はあっと声を出した後に顔の前で手を合わせた。
「ごめん、スーツを片付けていたら、落としちゃって、それで拾おうとした時に指をドアの角で切っちゃってさ、血がね思ったより飛んじゃって……駄目にしちゃった。拭き取ってたらどんどん悪化していって……それでね、来年コート新品買って返すからごめんね!」
理葵が淀みなく嘘を言うと、高之瀬はその嘘に気付かないまま、クスリと笑った。
「指は大丈夫?」
「うん、それは止まったから絆創膏で」
「そう、ならいいよ。わざとじゃないから弁償もいいよ」
高之瀬はそう言うけれど、理葵は弁償をすると言い切る。
「駄目、お気に入りを駄目にしちゃったから、もっといいの買って着て欲しい」
理葵が強く言うと、高之瀬はすぐに降参をした。
「オッケーそれでいいよ。それで夕飯は何にする?」
「あ、今日はね、お惣菜でコロッケがあってね。それとお味噌汁は作るね」
「そうか、じゃあお願いしようかな」
高之瀬が素直に甘えると、理葵は張り切ってキッチンに戻っていった。
そんな理葵を見ながら苦笑して、スーツをクローゼットにしまってからドアを閉めようとして高之瀬はニヤリと笑った。
理葵はきっと見つけたのだ。
そしてそれを知っても高之瀬を決して責めはしなかった。
あくまでうっかり証拠隠滅をしたと言った。
高之瀬はあの日、水谷が黙って消えれば解決すると気付いて、水谷を乗せて朝美のところへ行く振りをして持っていた睡眠薬を使って水に混ぜた。水谷は自分が殺されるとは微塵も思っていなかったようで、人の水を堂々と飲んだ。
そして眠っている間に高之瀬は知っている山道を上がり、誰も来ない山奥で水谷を殺した。
そして遺体を山の洞窟の奥にまで運び、そこに穴を掘って埋めた。
その穴は昔、殺人事件で使われ遺体が見つかった穴で、地元の人も気味悪がって入らない深い山の中だった。
埋めた後に石を乗せて掘った後を消し、足跡も消した。
万が一のためにその時履いていたスニーカーは、燃えるゴミに出した。
銀行のカードを持っていたのは、わざとだった。
理葵に見せてどう反応をするのか知りたかったのだ。
いつか理葵が気付いてそれを見た時、高之瀬を警察に売るのか、それとも証拠隠滅をして高之瀬を庇って嘘を吐くのか知りたかった。
理葵を失ったらきっと生きていけないと思っている高之瀬は、理葵が証拠隠滅をしてコートの中のものにも気付かなかったと嘘を吐いたことが嬉しかった。
どれだけ愛を囁かれるよりもずっと、理葵に愛していると言われた気がした。
「怜さーん、ワイシャツはクリーニングだから袋に入れておいてね」
理葵がそう大きな声で呼んでいるから高之瀬もワイシャツを持って寝室を出た。
「分かってるよ、理葵、愛してる」
高之瀬がそう言うと、理葵は言った。
「知ってるよ、僕も愛しているよ」
理葵はそう答えて笑った。
きっといけないことばかりだろうが、それでも水谷一人がいないだけで全てが綺麗に運命が回るようになった。
それからの理葵の人生は穏やかになり、高之瀬もまた出世して警察庁に戻った。
水谷の遺体は見つかることがないまま、あの穴が崖崩れで埋まり、二度と誰の目にも触れないままもっと深い闇に消えていた。
二人はお互いに吐いた嘘を死ぬまで持って行く。
その遺体の上に立つ幸せであっても二人にとって行く場所は同じだ。
死んで地獄に行くのもきっと一緒だろう。
それでいいと思えた。
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