Find the keys

8

 奈津がカイルに呼ばれてホテルの部屋に案内されると、そこには六十歳くらいの老人が座っている。
 銀髪になった髪をしっかりとオールバックにしてきちんとしたスーツを身にまとっている人を見て奈津はすぐにカイルの父親であるジャンカルロであることが分かった。
「初めまして、青柳奈津と申します」
 奈津がそう言うと、ジャンカルロも微笑んだ。
「奈津さん、初めまして私がカイルの父のジャンカルロです」
 名乗りあってからジャンカルロが謝ってきた。
「私の息子が酷いことをしてしまい、本当に奈津さんには申し訳がない」
「……いえ……それはあなたのせいではないので……」
 奈津にとってジャンカルロに謝ってもらう必要はないのだが、ジャンカルロにはある。
「過ぎたことと忘れることはできず……でもあなたに救われてもいる。カイルのことをどうぞよろしくお願いいたします」
「はい、俺こそ、よろしくお願いします」
 ジャンカルロはギデオンとは違い、経営では厳しいけれど日常的な表情はカイルに似ていた。
 穏やかで博識でそしてそれを傲ることはことは一切なかった。
 奈津にも親切で日本滞在中は一緒に各地を観光して回った。
 カイルが仕事をしている間も奈津が案内をしていたから、奈津はジャンカルロとカイルのことで話し合った。
「カイルは昔から兄に似て、酷く感情を表に出すのが苦手だった。だから優秀であるが故に、利用されることが多かった。それでもカイルがそれでいいならと思っていたが……日本に留学をしたいと言い出したのは、私の最後の妻が日本人だったからなんだ」
「あ、それで日本語が話せたんですね」
 道理で堪能な日本語を綺麗に話すと思っていたら、日本人から習っていたのだ。
「それで日本に行ってみたいと言うから、行かせてみた。そしたらカイルの瞳には感情がこもるようになった。きっといい出会いがあって、そして悲しみに暮れたのだろうなと思った。恋による失恋はよくあることだ」
「その時は、本当に俺のせいです。ごめんなさい」
 奈津がそう言ったが、事情を全部聞いたジャンカルロは言った。
「いいや。これこそ私が早く事情を知るべきだったことなのだ。そうすればギデオンの奴にあんなことはさせなかったさ。後悔は遅いけれど、もし私に先に打ち明けてくれていたら、カイルのことはどうにかしてあげられたと思っている」
 家を飛び出すことなく、援助を受けながらでも家とは関係がない生活をしていくこともカイルは選べたとジャンカルロは言う。
「あなたといるカイルを見ていたら、余計にそう思ったよ。私は御家大事を気にしすぎて、カイルもギデオンも駄目にしてしまったのさ。だからカイルだけでも奈津さん、あなたに救って貰えている」
 ジャンカルロがそう言うので、奈津はジャンカルロの肩を撫でた。
「いえ、あなたのせいではないのです。カイルとはあの時一緒になっていてもきっと駄目になっていたと思っています。カイルもそう言っています。俺たちは一旦別れて、そして自力で生きていくことを覚えたからこそ、上手くいっているんです……。カイルは自分で依存していた家族から離れないといけなかったし、ギデオンのことはあの人もいい年ですから自分のやったことは家族のせいにはならないです」
 奈津はあれからカイルの献身的な介護によって、ギデオンのしでかしたことは乗り越えていた。
「そう言って貰えると……嬉しいが……」
「そうだ。俺たちの家に来てください。カイルが今どうやって生きているのか見ていってください」
 奈津はジャンカルロがアメリカに帰る前に奈津の家に招き家庭料理を用意してもてなした。
日本の家庭料理をごちそうして、ジャンカルロは気分よく過ごせた。
 奈津が食事を作ると、カイルがそれを手伝っているのを見てジャンカルロは目を細めて微笑んでいた。
「ああ、暖かいね。カイルは幸せだろうね?」
 ジャンカルロは食事を終えて、のんびりとソファに座って話しているとカイルにそう言った。
「もちろんです。私を手放してくれてありがとうございます。私はここで貴方のように幸せになろうと思います」
 サルヴァティーニ家のことは、ジャンカルロは遺産を生前分与としてカイルに渡している。
 今回の訪問もそのことで動かせるお金をカイルに振り込んだという。それは父親としての最後の役割だった。
 残りの資産や物件は親族に渡るようにしてあるので、それで親族とは折り合いが付いているらしい。
 ただ静かに一緒に過ごしていただけで、ジャンカルロにはカイルがどうしてあそこまで執着して奈津を求めたのかが分かると言う。
「私も最後の妻との短い時間は凄く穏やかだったよ。そんな気分になれる奈津さんは、きっとカイルを幸せにしてくれるのだろうと思えたよ」
 ジャンカルロがそう言うとカイルは頷いた。
 そんなカイルを見るジャンカルロの目は完全に父親の目線だった。
「明日にアメリカに帰るが、見送りはせんでよいよ。仕事があるだろうし、お前たちの生活をしなさい。ここでお別れの挨拶としようじゃないか」
玄関先にタクシーを呼んだので、部下の人とジャンカルロはそこでお別れを言った。
「ええ、そうですね。また時間があればいらしてください。気軽にとはいかないかと思いますが……」
 奈津はそう言ってジャンカルロの手を握って言った。
「貴方に、感謝しています。カイルをこの世に授けてくださったからとても感謝しています……ありがとうございます」
 奈津がそう言うと、ジャンカルロは目に涙を浮かべて微笑んだ。
「私こそ、貴方の生まれた意味がちゃんとあることは保証しますよ。二人とも幸せになりなさい」
「はい」
 ジャンカルロは二人の幸せを願ってくれて、奈津はそんなジャンカルロのこれからの人生が穏やかであることを祈った。
 タクシーが去ってしまうと、奈津はカイルと一緒に家に入った。


「奈津、本当にありがとう。父はとても喜んでいた」
「ううん、俺も会ってみて凄い良い人だって分かって嬉しかった。また会いたいね」
 奈津がそう言うので、カイルは微笑む。
 家の事から解放されたところで、親子の縁を繋ぐのは悪いことではないのだ。
「そうだね。今度の旅で父に会いに行くのもいいだろうね」
 そう言い合って、カイルは少し笑った。
 部屋の後片付けをして風呂に入った後、ベッドに潜り込むと、奈津がカイルを誘った。
「ねえ、カイル。このまま幸福な思いをしている時に抱いてくれると嬉しい」
 奈津はあの事件後、まだ心の傷が癒えないということで、カウンセリングで行為を止められていた。
「だが……」
「カウンセリングの許可は出たよ。ジャンカルロに会ってから、何だか心も穏やかになれたんだ。だから、カイルとしたい」
 奈津の気持ちが前向きになっているのはジャンカルロに会ってから変わったことだ。自分で望むのならば、好きなようにしても大丈夫だと太鼓判を貰ったのは、一週間あちこち東京観光をした後である。
 医者には必要なカウンセリングはこれで終わりで、これからは何か不都合がでたら来るようにと言う通院をしなくてもいいという状態にまで戻っていると言われた。
 奈津はジャンカルロに会って、カイルの話を沢山聞いて、そしてもっとカイルと愛し合いたいと思えたのだ。
カイルはそう言われて優しく奈津を抱いた。
 キスをして露わになっている肌の乳首に吸い付いて舐め上げた。
「やっあんっあんっ吸っちゃっあんっらめっなのっんああっ」
ジュルジュルと音を立てて吸うと、奈津は気持ちよさを感じて体を仰け反らせるけれど、それを押さえてカイルは奈津の乳首をしつこく吸った。
「ひああぁっ、乳首吸っちゃっ……あっあっあ゛っあ゛っあぁあっ」
これはカイルが教えたままの反応で、カイルは奈津は何も変わっていないと思った。
 癖も付いてなかったし、奈津がどれだけあの出来事を頭から追い出してくれているのかを感じた。
「あっあっあぁっ……ちくびっいいっ……あひっあっあぁんっ」
「うん、もっと気持ちよくなってて……」
「ああああぁんっ! ひぃあぁっ、ちくびっいい、いいぁっちゅうちゅう気持ちいいっああんっ!!」
奈津が気持ちよくなっているままで、カイルは乳首を吸いながら、奈津のアナルに指を這わせた。
「ああ、そこに……ゆびっああっ……ああんっ」
アナルに指が入り込んできて奈津はその気持ちよさに身を捩るけれど、カイルは指で
「ひあっあ゛っんぁっ……指っ……あ゛っんぁっあっああっ」
中を抉られているともっと大きな物が欲しくて、奈津はカイルに強請った。
「ああぁ……はぁ、はぁっ……あぁんっ……はぁはぁ……突いて、カイルの大きなおちんぽで俺のおま○こ突いてぇっ……」
 我慢できずにそう言うと、カイルは奈津の額にキスをしてから勃起したペニスをゆっくりと奈津の中に突き挿れてきた。
「はぁっ、はぁっ……ぁう……ん、ん…おおきい……カイルのおちんぽっああっ…」
「はあ、奈津……中が凄くうねっている。待ちわびていたんだね……」
カイルはそう言い、奈津が気持ちよくなっているのを確認してから腰を動かし始めた。
「まってた……あっあんっあんっ、もうっ、おま○こっ、ぐりぐりされてぇっ、きもちいいっ!!」
久しぶりに味わう圧迫感と、覚えている大きさと抉ってくる角度で、奈津はそれがカイルのモノであると認識出来た。
 そしてそれが嬉しくて、奈津はしっかりとカイルに抱きついた。
「はぁ……あん、んあっ、ああんっあぁっ、あんっ……らめぇっ、そこっ……あっ、ああぁっ!」
気持ちがいいところに当るから奈津は体を震わせて感じて、すっかり顔も蕩けていた。
 それはよく知っている奈津の気持ちがいいときの顔で、奈津はカイルに抱かれることで癒やされていた。
「あぁっそこっ……はぁっ、ああんっ! んっあぅっ……あぁっあぁっ、らめっ、んんっ、ひぁんっ……! あっ……あぁっあっ……きもちいいっ、あっ、あはぁんっ……」
「奈津、もっと気持ちよくなって……もっと」
「あああぁ、あぁ、ん……あひぃっ、ああーっ、おま○こ、あぁんっ……、あぁ、ああっあぁんっ! いいっ……あぁんっあああぁーっ!」
 奈津は気持ちよくてどうしようもないことを口に出し、嬌声を上げてカイルを煽ってくる。
「ああっ、カイル、すきっ好きっ、あ゛っあ゛っ、あっ、きもちいとこっ、ゴリゴリされてっんっあっあああんっ」
「私も好きだよ、奈津……」
「ああ……すきっ……すきっああ……きもちいいっああんっおま○こゴリゴリされて……ああんっいいっ」
「これが気持ちがいいんだね、もっと欲しがって」
「おちんぽっきもちいいっああ……いいっおちんぽっ……おちんぽっああんっきもちいいっああんっ」
パンパンと激しく突き上げてカイルは腰を強く振った。
 奈津はそれで快楽を得て、体を反らせてくるがカイルはそんな奈津を抱え上げてからベッドに押しつけて倒し、上から奈津の中を抉ってきた。
「あっあ゛っ激しぃっ……ん゛ああんっあ゛っあっあひっ……あ゛っあっあんあんあんっああっすごいっおちんぽっすごい……ああんっきもちいいっああんっあああんっあああっ!」
「ああ、……この先だよね……」
「あ゛あああっ……あぁっあっいいっ、きもちぃっ、おちんぽ、大きくて、おま〇この奥まで届いてるっあああっあぁっあっあっ」
奈津はそう言いながらカイルを抱き寄せて、顔を覗き込んで聞いてきた。
「ああ……きもちいい?……カイルもっ……きもちいいっ? ああんっ」
その最強に可愛く困ったような顔を見せてくるから、そんな奈津に笑いかけてカイルは奈津にキスをした。
「気持ちいいよ……奈津……ああ」
もっと奥まで抉る様に腰を振り、奈津を追い上げる。
「あああっ、おま○こっ……いいっ、おま○こにせいえき出してっあっあんっ、おま○こに、精液出してっ……あっあ、ああああっ」
「出すよ、奈津……」
 奈津の強請りに答えるように中で精液を出した。
「あ゛ああっ……あひっ、い゛っあ゛っ、ああっひっいくいくっあ゛っ、あ゛っあああああぁぁっ……!」
奈津はその精液を受け止めて、満足したように絶頂してそして優しく微笑んだ。
「……あ、は……カイル……愛してる……」
「奈津……私も愛しているよ……」
 奈津はカイルを受け入れられて嬉しいと少し泣いていたけれど、カイルはそんな奈津を宥めてから二回目に突入した。
 ずっとセックスをしてこなかったから箍が外れてしまい、気付いたら何時間も求め合ってしまったけれど、満足して二人は眠った。


 朝に起きた時は既に朝一番の飛行機でジャンカルロは日本を飛び立っていて、カイルのスマホには「また会おう」というメッセージが入っていた。
 それを奈津に見せると奈津はニコリと笑ってカイルに耳打ちをする。
「アメリカ行ったことないけど、今度会いに行こうね」
 奈津はそう言って、これは確定事項だとカイルに囁く。
 ジャンカルロは年であるから、飛行機は辛いだろうし、奈津たちは時間を自由にできるから会いたいなら会いに行けばいいと思ったようだ。
「そうだね。会いに行こう」
 奈津には家族がいない。
 父親はどこにいるのかも知らないという。
 だからせっかくこんないい家族がいるなら、カイルから取り上げることはしたくないと奈津は言う。だからこれも奈津が本気でそう思っている証拠だった。
 二人はその日はのんびりと過ごし、また日常に戻っていく。
 来年のクリスマスにはジャンカルロのところに行って正月を海外で過ごすのもいいだろうと計画を立てている。
 そんな楽しい気持ちを持ちながら、ささやかな幸福がやってくる日々を過ごしていくのだった。

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