Find the keys

3

 奈津は深い眠りについていたことに気付いたのは、目を覚ました時に外が酷く明るかったことでだった。
「ん…………ふ……な……けほっ」
 声を出そうとしたら想像以上に喉が渇いていて咳が出た。
 暫く咳をしてから、水と思い手を伸ばすとその手を誰かが握った。
 そして奈津は誰かがいることに気付いたが、急に唇に何かが触れ、驚いたままで口に液体が入ってきたのを受け止めた。
「んふ……んっ」
 水が冷たくて美味しかったから、奈津はもっと欲しくて握られた手を握り返したらまた水が貰えた。
「けふっ、はあ……」
 目に涙が溜まっていて前が見えないけれど、少しまだ朦朧とする頭で奈津は目を開いた。
 すると誰かが布で涙を拭いてくれて、奈津はやっと目の前に誰がいるのかが見えた。
「あの、ありがとうござい……」
 最後まで言葉は出なかった。
 見上げた先に見えたのは、恐ろしいほどの美しい男だ。
 見覚えがある、顔と瞳がしっかりと奈津を捕らえているのが分かった。
 それによって奈津の頭の中が混乱をする。
 驚くよりも先に、どうしてこうなっているのかが分からなかった。
 夢ではないことは目覚めている感覚があるから間違いない。
 けれど夢でないなら、どうしてここにこの男がいるのかが分からなかった。
 名前はカイル・サルヴァティーニ。
 日本に留学をしてきていて出会い、そして体の関係にまでなった男だ。
 ホテル業や様々な業界に影響のあるアメリカの実業家の息子だ。それ以前に、美しい男であるからよく経済誌に載るほどの有名人でもある。
 母親が女優だと聞いたけれど、その容姿を受け継いで俳優顔負けの美丈夫だった。
けれど、カイルとは四年前に別れていた。
 それも酷い振り方をした。
 一方的に自信がなかった奈津が、カイルの兄ギデオンの提案に載ったのだ。
 だからカイルには酷く恨まれているはずだ。
 カイルの視線がしっかりと奈津を捕らえていることに動揺を隠せないでいると、カイルが言った。
「覚えてないのか?」
「……え……?」
 何のことかと思っているとカイルが言う。
「懐かしさで熱い夜を過ごしたのに?」
 そう言われてカイルに肌を撫でられて、奈津は初めて自分が裸でベッドにいることを知る。
「……な……んで……だって」
 そして思い出す。
 出版社のパーティーに出ていたら酒の匂いに酔ってしまい、気分が悪くなったのでそのままホテルで休ませて貰ったのだ。
 泊まるように言われていたけれど、帰らないとグラードやファウストがいるので朝の食事の準備ができないからと部屋を借りて酔い冷ましをしたはずだ。
 その時にホテル側からクスリを渡され、そして部屋を移動した。
 使っていた部屋は先客がいるという話で、ホテル支配人の部屋の一部屋を貸してくれると言われ、そういうこともあるのかと甘えたのだ。
 どうしても気分が悪かったのもあり、あまり移動もしたくなかったからだ。
 部屋まで来た時にはもう覚えてない。
 ベッドに潜り込んで眠くて寝てしまった。
 だからカイルが言うような熱い夜を過ごしたという事実は絶対にないはずなのだ。
「ここは私の父が経営をしているホテルだ。名前を見ても思い出さないのか?」
 そう言われて奈津は目を反らした。
 それは招待を受けた時に真っ先に思い出したことだ。
 けれどホテルで開催されているパーティーに出たからと言って、カイルやギデオンたちに会うわけでもないと高を括っていたのだ。
 まさかカイルが日本のこのホテルに同時期に来ているなんて誰が予想できようか。
「……いるとは思わなかったから……」
 本当にそう思っていたからそう答えるとカイルはふっと息を吐いた。
「シャワーを浴びるといい」
 そう言われてバスローブを渡された。
「……あの服をくれたら帰ります」
「いや、服が汚れるから、シャワーを浴びろと言っている」
 カイルはそう言いジッと奈津を見つめている。
 その視線は熱はあるがそれでも観察するような目つきで、奈津はまさかと思った。
 体に違和感がある気がさっきからしていたけれど、それはないと考えたのだ。
 だが、カイルははっきりは言わなかったけれど、奈津の意識がない時に体を抱いていたのだろう。
 憎まれていると分かっているからこそ、甘んじて受けるしかないのか。
 でもきっとこれ一回の出来事で終わるはずだ。それでカイルの気が済むなら、仕方のないことなのかもしれない。
「部屋を出て目の前にあるドア、右側にシャワー室があるから入っていくといい。それが終わったら部屋の奥に進んで、そこにいるから」
 カイルはそう言うと奈津の?に手を当てて振れ、そして撫でてから部屋を出て行った。
「……は、あ、なんで……」
 懐かしそうに触る指先が、どうしてもあの幸せだった時間を思い出させてくる。
 カイルには憎まれているのだから、そう感じるのは奈津の思い違いだ。
「……シャワー入って……」
ベッドから起き上がると、アナルからドロリとしたものが垂れてきた。
「あ……っ」
 間違いない、カイルの精液なのだろう。
 それは奈津にとってショックでもあった。
 カイルはセックスをするときは必ずスキンを使ってくれていた。
 感染などが心配であるし、奈津の体のことを考えてと言ってくれていた。
 けれどそんな優しいカイルはもういないのだ。
 奈津を抱くけれど、それはきっと復讐なのだろう。
 そして奈津はシャワーを浴びながら、それを掻き出していく。
 いくら具合が悪くて寝ていたとはいえ、ここまでされても気付かないのはおかしいけれど、飲んだ薬の相性が良すぎて眠りこけていたのは事実だった。
「……なんで……」
 こんなところで出会ってしまい、さらには体の関係を持ってしまったのは奈津には信じられない。
 カイルがどういうつもりなのかを知るために、カイルに言われた通りにシャワーを浴びた後は奥の部屋に進んだ。
 するとそこには食事が用意されていて、カイルはその食卓に着いていたが、すぐに立ち上がって一つの席の椅子を引き、そこに座るように言ってきた。
「ここに座りなさい」
「あの、服を……返してください……」
「座りなさい」
 服だけくれればすぐに出て行けるのに、カイルは服をどこかに隠しているのか言うことを聞いてくれない。
 更に奈津に座るように言ってくる。
「奈津、座りなさい」
 急に名前を呼ばれて、奈津はドキリとした。
 呼ばれただけで心臓が飛び出しそうなほどに奈津は嬉しくて、そして悲しかった。
 二度と呼ばれることはないと思っていた名前、それを呼ばれたら逆らえなかった。
 おずおずと進み椅子に座ると、カイルは奈津の髪の毛を触って言った。
「髪を乾かしていないのか」
「すぐ、乾くから……」
「少し待ちなさい」
 そう言ってカイルは一旦奥に行った後、バスタオルを持って戻ってきた。
 そして奈津の頭にバスタオルを被せると、髪の毛を乾かし始めた。
 もうこれ以上何を言ってもきっとカイルは好きにするだけで、決して奈津の言葉は聞き入れてはくれないのだと分かってしまい、奈津はこのままカイルの好き勝手にさせてしまった。
 髪を乾かし終えてしまったカイルは温め直した食事を奈津に食べるように言った。
「食べなさい」
「……頂きます」
 言われた通りにすればいつか飽きて放り出してくれるのだろうと思ったが、カイルはそんな奈津の魂胆は透けて見えていたのか、食事が終わった途端に奈津を別のベッドに連れて行った。
 そこには皮の手錠がベッドの柱に縄で縛られていて、そこまで連れて行かれると奈津はそのベッドに放り出され、気付いたら腕を取られてあっという間に縛られてしまった。
「な、にするんですっ! やめてくださいっ!」
 奈津がそう言うのだが、カイルは奈津をうつ伏せにするとその体の上にのしかかり、もう片方の腕も革手錠で繋いでしまった。
「い、いやだ……」
 やめて欲しいと振り返ったら、カイルがそのままパンツからペニスを取り出して扱いている。
 大きく凶器のように反り返っているカイルのペニスを見て、奈津は信じられないようにカイルの名前を叫んでいた。
「やめて、カイル!」
 必死に叫んだけれど、それで止まってくれる相手ではなかった。
「やっと名前を呼んでくれたな、奈津」
 そのカイルの声が何故か嬉しそうに聞こえた。
 そして奈津のアナルにはローションが入れられそこにカイルのペニスが一気に挿入り込んできた。
「あっあっ……やらぁ……ぬいて、はぁ、ぬい……んぁあっ」
絶対に受け止められないと思ったけれど、やはり昨日寝ている間に受け入れていたからか、しっかりと受け止めてしまっていた。
「昨日、散々慣らしたからな……それでもキツいもんだ」
「ああぁあ……っ! あゃ、やめ、だ、ぁ、あぁっ、ああぁっ! や、やらぁ……!」
そう口では言っても、カイルを受け入れている奥がカイルのことを歓迎しているのが分かる。
 収縮して中がしっかりとカイルのペニスを包んで離さないのだ。
「ああ……っ、あっ、あっ、ひぅっ! あ……っ! い、や……っいやぁ……っ!」
逃げようとしても鎖で繋がれているから四つん這いになることしかできない。腰はしっかりとカイルに捕まれていて、前に逃げようとしても引き戻された。
「あぁっあっあっやっ、やぁ……っ、ぁん、ぁ、ふぅ……っん……っ、はふ……っは、ぁあん……っ」
段々と圧迫感から快楽が生まれ始めてしまった。
「あぁ、あぁ、あぁ、はっ、はぁっ……きもち、ぃ……っ」
カイルとの体の相性はとても良かったから、今でもそれは変わらないのだろう。
 何より奈津はカイル以外の男を知らなかった。それもあってセックスはこういうものだと思っていた。
 けれど誠意ある対応でセックスに及ぼうとした時にはあんなに抵抗感があったのに、今カイルに無理矢理犯されているのに、心がそれを受け入れてるのが分かってしまう。
 ずっと好きで、そして自分から酷い別れをしたのに、それでも好きでどうしようもなく、奈津はカイルにされること自体は無理矢理でも関係が持てることが嬉しかった。
「ひぁ……っ! あんっ! あっ、あぁあ――……っ!」
体が喜んで受け入れているから快楽はどんどん押し寄せてきて、そんなに擦られていないのに奈津は絶頂をしてしまった。
「あぅっ、ぁっあっあっあっ、やっ、おちんぽ……っ、やめてぇ……っ!」
「犯されて絶頂しているのに? ずっとこれを待っていたんだろう?」
「あっあぁん……っ! あっ、あぁああっ! あああっ! はぁっ、はぁっ、は、ぁあん……っ!」
絶頂をしてもカイルが絶頂をしていないから、まだまだ中を抉られ続ける。
「あぁああっ! あっあ、はふっ……ん、はぁあんん! んあ……っ、ああ……っら、めぇ……っ!」
やめてと口でいいながら、絶頂を繰り返し、口から涎を垂れ流して射精をする。そんな状態にされていくにつれて、奈津はだんだんとこれはきっと罰なのだと思った。
「あっんあっああっああっ……やだ、そこ……や……、ああうっ、ああ……ああっ……」
「この奥が好きだったよね? 今回はスキンもしてないし、中出しでどうだ?」
「ああ……っ、らめっ…ああっ! んっ……あ、ああ……っああ……!」
結腸の中まで挿入り込んでくるペニス、それがグジュグジュと音を立てて何度も入り口をこじ開けてきた。
「ああっ、や……っ、も……あっ、あっんああ!あっ……ああー……っやあ……っ、あああっ!だめ、だめ……!」
「前はしたことがなかったな。ここで中出しをされたら、奈津はどうなるんだろうね」
「あぁ……っ!やだ……ああっ!あ!ぁあ―――ああ……っ、ああぁ……っあ……っ、んんっ」
「ああ、見てみたいよ、奈津が良がり狂うところを」
「んぁああっ! い……った! ぁんっあんんーっ! あん! はぁああん……っ」
グポグポと奥を抉られ続けて、奈津は嬌声を上げ始めた。
「やっ、あぁっそんっ……はぁっ、ああんっ! んっあぅっ……やっあぁっあぁっ、らめっ、んんっ、ひぁんっ……! あっ……あぁっあっ……お、おちんぽっあっやっ、あはぁんっ……」
奥まで強引に突き上げて一気に抜いてまた突き上げてくるから、奈津はカイルによって良がり狂わされた。
「あああぁ、あぁ、ん……あひぃっ、ああーっ、おま○こ、もう、あぁんっ……、あぁ、ああっあぁんっ! ぁっ、らめぇ……あぁんっあああぁーっ!」
「さあ、奈津見せて……淫らなところを。別れた男に犯されてイクところを」
「あぁああんっ、もっやらぁっ、いっちゃう、おちんぽっやらっいくっやらっあああんっあああんっあああんっ!」
信じられないほどぞくりとする快楽が押し寄せてきて、奈津は激しく体を仰け反らせて絶頂をした。
 そしてカイルは結腸にペニスの先を突っ込んで中で射精をした。
 奈津の中には精液が溢れ、たっぷりと出されてしまった。
「あぁんっ、あんっ、あんんあんっんっ、あぁっ、あぁん……きもち、い……いいっあひんっ」
初めての中出しをされ、奈津はその快楽で意識が飛びそうなほど感じた。
 そしてそのままドライオーガズムで絶頂をしてしまい、体は痙攣を起こした。
 カイルのペニスが一旦アナルから出ていくと、奈津のアナルからは精液が溢れてこぼれ落ちた。
 これでやっと終わりなのかと奈津が思ったが、それで終わりの訳もなかった。
「まだだよ、奈津。あの時別れたことを後悔させてやるから、しっかりと受け止めてくれ……奈津……もっともっとだ」
 絶望の意思を聞いて奈津は目を見開いてしまった。
 カイルは完全に壊れている。
 奈津を憎んでいるなら、抱くことはない。
 それで奈津が屈辱を感じるかといえば、あり得ないからだ。
 もっと酷いことをされてもおかしくないのに、奈津には辛くはないことばかりをカイルは望んでいる。
「あぁあっ……あぁっ、カイルのおっきいっおちんぽがぁっ……おま○こ、ごりごり擦ってっはあぁっ……んっあぅっ、きもちっ、いいっ……!」
「ほら、これが好きなんだろ? 他の誰よりもいいだろう?」
「あぁっ! あっあっあひぃっ……カイルのおちんぽっすごっあんっはぁっあぁんっ」
 もう奈津には逆らえるほどの気力もなく、ただカイルを受け入れ喘いでもだえるだけしか残されていなかった。
「あぁあっ……あっぁん……あぁあっあんっいぃっ……もっおくばっかり、おちんぽっらめぇえはぁああっ……」
「まだ終わりじゃないよ……奈津、もっとだ」
「はぁっ、はぁっ……やらぁあっ、もっ、おま○こらめぇっあん、おちんぽっああんっあんっぁあああぁんっ」
もちろん、このセックスだけでカイルが奈津を許すはずはなく、奈津はカイルが求めるがままに従うしか道がなかった。
 カイル・サルヴァティーニという人間をきっと奈津はよかれと思ってしたことで、壊してしまったのだ。
 なぜなら、カイルがもし正気だったなら、奈津にどんな酷いことをされていたとしても接触すら持たなければ関わり合うこともなく済んだことだ。
 それなのに部屋を変えるなど小細工をしてまで奈津に執着するのは、カイルの心に闇を作ってしまったせいだ。
 そして奈津はそのことを受け止めなければいけない立場だった。

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