幽々抄
2
安藤千明は何事もなく布団に入り、そして寝始めた。
外はいつの間にか雨になっていて、午後に降る予定だった雨が今やってきたらしい。
その雨音は外から聞こえないけれど、窓に打ち付ける雨がガラスに飛び散っている。
けれど、その大きな嵐も聞こえないほどに千明は窮地に陥っていた。
寝ていたと思ったら息苦しい感じになってきた。
そこで目を覚ましたら、体がベッドに押しつけられていて、耳元で荒い息が聞こえた。
「ひっ……だ、ああっ……だれっああっ!」
ハアハアッと荒い息がする何かは、決して人ではなかった。
獣のような息の仕方で耳を何かが舐めている。
「あぁんっ……!あっ、あっ……」
怖いのにどうしても体を這い回る手の動きに翻弄されている。
体はどうやら長い時間そうされていたのか、もう乳首を弄られるだけで体が跳ね上がるほどだった。
「あ、あっ……あっ、もう……っなにこれっ……ああっ」
触られて捏ねられて、そして人の舌のようなザラリとした感覚が襲ってきて、それらが乳首や体中を舐め回しているのが分かる。
「はぁ……あぁっ……っは、なに、これ、うそっあぅ……っ」
必死にベッドから逃げようとしても、もっと違う力で押さえつけられてしまいどうにもできない。
「やぁっ、あぁ…………っんぁあ!」
暗闇でただひたすら体を弄り回られて、気付いたらアナルまで何かが挿入り込んでいるのが分かった。
「あぁ……そんな、ああっ……! ああぁ――っ!!」
ぐりぐりとアナルをこじ開けて挿入ってきた物が、中を擦り上げるようにしてうごめいている。
「やらぁんっ、あぁ、はぁっ、あふっ……」
これは何なのか。
幽霊にしては人を犯すなんておかしな話であるし、元々ここに住んでいた人は別にここで死んだわけでもなかったし、恨みがあったなんて話は聞いたこともない。
ただ人が買うまでに至らなかったのが不思議なだけで、買おうとした人が嫌になるような物件ではなかったはずだ。
それなのに、この何者かの気配がただひたすら千明の体を撫で回して犯してくるのは、どういうことなのか。
「はぁっ、はぁっ……んあぁんっ……あぁんっ……はぁっ、んん……」
こんな行為に意味があるのか、それとも何かの儀式なのか。
「あーあぁっあぁ……も、だめぇ……っあっ、だめ……いくっいくっ……!」
とうとう追い上げられて絶頂をしそうになった千明であるが、それを阻止するように千明のペニスが何者かの手によって強く握られた。
「そんな……!うっ、く……あ……っああぁ……んっ、ふっああぁ!」
イカせて貰えないという、状態にされて、体だけは絶頂をしたように痙攣をしている。けれど射精はさせてもらっていないので、当然辛くなってくる。
「あぁっ、あっ、ひどい……ああぁ――っ」
体中がガクガクと震え、堪らないほどに射精をしたいと思うようになった。
「はぁ、ああ、んっ……あっ、んんんうぅっ……!」
体中を這い回る舌のような感触、乳首をずっと弄り続ける人の指、アナルには長いものが挿入り込んで、それが出たり挿入ったりと繰り返している。
「あぁっ、やぁ、あ……っ!んんっ……んう――……っ」
もう抵抗できるほどの力もなかったし、なるようにしかならないままだ。
千明は思考をほぼセックスのような感覚に奪われていく前に尋ねていた。
「あぁ、もうっ、これ、なに……あんた何なの……ああ……っあああぁ!」
とにかくこれと会話が出来るかどうかを試みるしかなかった。
というのも、この得体の知れないものは千明の体を好き勝手にしてはいるが、傷つけようとはしていないのだ。
「ああぁ……っねえっなんで、こんなっはうっ……!ああぁっ、んっ、く……あっ」
尋ねるけれどそれを遮るように、挿入速度が上がった。
「あっ、あっ、ふ……んんっ、んあっうぁあんっ! あぁっ、あ……! ああ……っ、あっ、あうっああっやっ……、あぁ……っ」
まるで行為に集中しろと言われているかのような強引さに、何者かはこれを楽しんでいるらしいのだ。
しかしこれでこの何者かは言葉が通じるということが分かった。
「んぁ……っ、ぁん、やら、ぁ……っ、やめ、やめて、ああぁ、ひぁん、あぁ、ああぁ……っ、んあ、やぁ……っ」
ビクビクとしたアナルに挿入り込んだ物が、何かの液体を吐き出してきたのが分かった。
「ひ……ぃ、ん……っあ、ぁぅ……ひぃ熱、ぃい……っ」
中に熱さを感じたし、それがアナルから溢れて出ているのも分かるが、その液体らしいものは少し空気に触れるとすっと消えてしまっていた。
「あぁん……っ、も、おねがい……も、なんで、こんなことするのっあゃ、あ、ぁ、あっんひゃ、ひあぁあ……っぁふっ、ゃ、ぁ……っあ、あぁ」
また尋ねると今度は掴まれていたペニスが解放され、そのペニスを舌のような物が這い回り、ペニスを舐めているのが分かった。
「あぁ……っ、ぃ、いやあっ……はぁっ……もぉ、やめて……あぁ、はあぁっ……こ、こんな……っ、だめっん……」
まるでフェラチオをされているようにジュルジュルと音を立てて吸い上げられて、それによってあっという間に千明は絶頂させられ射精を強いられた。
「あぅあ、いくっあぁ、んあ、や、やめ……っ、ん、はぁ……ああっああああ!」
ビューッと勢いよく精液が吐き出されて、それが何者かの中に吸い込まれていく。
するとその生命体らしいものが急に歓喜しているのが分かった。
「……え、なに……あっあぁひっ、ひんっ! ゃ、やぁっ、っあっ、あっ、い、ゃ……っ、やめ……ああんっああっ」
その生命体が力を増したかのように、千明のアナルの中に挿入し始めた。
「あはぁ……っ、あぅ、んあ……ふああん……はぁっ……はぁ、あん……あぁ、やぁ……っ、あぁんっ……」
堪らないほどに感じてしまい、千明はもうこのまま何者かが気の済むまでされるがままでいるしかなかった。
「あぁはんっ! あっあんっああ……っぁ、ひぁ、はぁ……あぁん……ああん……んっ……」
何者かと呼んでいるが、それはどう考えても幽霊の類いである。
しかしそれは人だけではないようだった。
人の形をしているものと、それではない形の物が混在していて、まるで人と何か異物を混ぜ合った結果生まれたもののような気がした。
「あっ……! ぁ、……らめ、あんっああん……っ」
乳首を弄られながらさらに奥まで突き上げられている。
この何者かはセックスによって何かが得られるのか、それともこの思考しか存在しないのか、とにかくセックスに拘っている気がする。
食われるのかと思ったがそうではないようで、まるで千明の体を愛でるかのように大事に抱いている気がした。
「ああぁあ……っ! あぁ、あぁっ、ああぁっ! ああああぁぁ!」
気持ちいいと感じてしまう千明は、もうこのまま身を任せるしかないと思い始めた。
だって気持ちがいいし、特に何かあるわけでもなかったし、こんな体験でも作家としては自分の恐怖心を知る体験は貴重だと思えた。
そしてこの何者かは確実にこの土地に憑いているものであり、この家自体に住み着いたものであるはずだ。
前の人がどうだったのか分からないけれど、前任者は住み続けたけれど、その子供は誰も相続しなかったことを考えると、子供たちにはこの家を相続すらしたくない理由が存在したのだ。
こうなることが分かっていたからこそ、出て行って二度と戻らなかったのかもしれない。
「ああ……っ、あっ、あっ、ひぅっ! あ……っ! いい、ああいい……っ!」
色々と考えていても、もっと気持ちがいい感覚が襲ってきてしまい、段々と考えるのは後で良いかと思えるほどに快楽に千明は堕ちていくのが分かった。
「あぁっあっあっやっ、やぁ……きもちいいっ、ぁん、ぁ、ふぅ……っん……っ、はふ……っは、ぁあん……っ」
自ら腰を振り、動きに合わせて体をくねらせ始めた。
セックスは大分前に経験はあるが、その時千明は女性に笑われた。
肝心なときに萎えてしまい、結局舐めて貰っても勃起は復活しなかった。それからだ。
千明はもしかしなくても、女性ではセックスができない人なのではないかと思った。
それから一人で悩んでいたけれど、初めて幽霊らしい物によって射精をさせられた。アナルに異物を突き入れられての射精である。
そこで千明はああっとやっと納得ができたのだ。
「あぁ、あぁ、あぁ、はっ、はぁっ……きもち、ぃ……っあんっ! あっ、あぁあ――……っ!」
千明はゲイであり、アナルで感じることでしかセックスが出来ない性癖の持ち主だったのだ。
それに気付いて、何となくであるが千明はホッとした。
異常ではない。よくあることだと思えたのだ。
「あぅっ、ぁっあっあっあっ、ああいい……っ、きもちいい……っ!」
アナルというのは人として、感じやすい排出器官であるから、昔からそれを使った自慰行為は存在したし、それを使ったセックスもある。
ただそういう傾向を問題とし始めたのは最近の宗教関係の概念のせいであり、日本では割とあることとして書き物に残されていたりする。
だからそういう性癖であることを認識できさえすれば、個人的には問題はない。
「あっ! あぁん……っ! っあ、あぁああっ! あああっ! はぁっ、はぁっ、は、ぁあん……っ!」
まさか幽霊もどきに性癖を暴かれるとは思わなかった上に、今されていることさえ気持ちがいいと感じている。
堪らなく感じて、そして段々とそのやり方に慣れてきている。
気持ちがいいように腰を振っていると、堪らなく感じるのだ。
「あぁああっ! あっあ、はふっ……ん、はぁあんん!」
ジュプジュプと液体が空気と触れる音が聞こえる。それなのに一向にベッドは濡れないし、液体はアナルから溢れているけれど、ベッドが濡れることはなかった。
「あっ……もう、好きにしてっ……! ああ、あうっ……んあっあああ!」
千明がそう叫んでしまうと、何者かは歓喜したようにうめき声を上げた。
「おおおおおおおおおっ!!」
それは人の声ではなかったし、よく言われている幽霊などの声でもないだろう。
もう獣の叫び声としか認識できない叫び声であったが、千明はもう気にしなかった。
「ああっ奥……っああっああっ……そこまで……ああ……、ああうっ、ああ……ああっ……」
さらにアナルの奥まで挿入り込んでくる物体は、奥の奥まで挿入り込んでいて、結腸まで届いている。その物によって犯されていくのだが、それでも千明は気持ちがよかったからどうでもよくなっていた。
「ああ……っ、いいっ…ああっ! んっ……あ、ああ……っああ……!」
ゴンゴンと奥に突き入れられるだけで、千明は快楽に突き落とされていく。
それでも気持ちがいいから千明は腰を振り、そしてそのものを受け入れる。
「ああっ、や……っ、も……あっ、ちくびっあっんああ! あっおくっ……ああー……っやあ……っ、あああっ! ああああ……!」
堪らなく感じて千明はとうとう何者かに対して心を開いてしまった。
「あぁ……っ! きもちいい……ああっ!あ!ぁあ―――ああ……っ、ああぁ……っあ……っ、んんっんううっ……」
口の中まで何かが這い回って、その口の中に何かを出された。
それをそのまま飲み込んでしまったけれど、それによって千明はその何者かが見え始めた。
「んぁああっ! あぁんっあんんーっ! あん! はぁああん……っ」
抱きついた何者かは、いわゆる幽霊の集合体のようなものだった。
一人二人ではない、そうしたもので結合し、色んな物が混ざっているのは確実だった。
「んっあぁあーっ、おくっだめっ……あ゛ひっ、んっあ゛っあんっあんっあんっ」
ただひたすら何者かの性欲に溺れ、体を預けることが千明にはとても気持ちがよかった。
楽になれる気がして、さらに体を開いたらそこに何者かが入り込んできた。
「あ゛っあ゛あああっ! あ゛ひっ、そこっ、らめっ、あ゛ああっ、だめっしんじゃうっ、そこばっかゴリゴリしないれぇっ……! あ゛ーっ、あ゛ーっ、んっあああぁっ……!」
受け入れられたことが嬉しいのか、その者たちが喜び、千明の体を貪るように犯してきた。
「――はぅ……っ、く、くぅううん……っ! んんっ……は、ぁん! あぁあ……っ!」
その感じるままに千明は腰を振り、そしてどんどん求めた。
与えられる快楽にただ身を委ねるだけではなく、もっとと求めるとそれらを与えられた。
「ああっ、やだ、や、あ、あ、いく、いくっ、いっちゃ……あぁっ、やだあああぁぁ――……っ」
何者かの性欲に晒されて、吐き出されたものを受け取って、千明は絶頂をした。
どくどくと脈打つ液体は、アナルから零れていくけれどそれらはすべて乾いて溶けていき、ベッドを汚すことはなかった。
「あー……っ、あは……あっ……あっ……あう……」
散々セックスをして、何者かが面白いように犯した。
けれどそれだけで満足して去ってくれるようでもなく、その者たちは一つの人の形になると千明が気を失うまで犯した。
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