Outer world
1
当麻慧琉(える)は、その日は一人になれた時間だった。
いつもは人が常に付き添っていて、外出なんてできなかった。
たまたまその日は付き添いの人が次々に出かけてしまい、大学の講義が中止になり時間が空いて一人になれた。
誰もいないという環境は自室のみとされるような環境で育っていた慧琉はその自由を満喫したくなった。
一生に一度できるかできないか。それすらも分からないような世界にいると、時々外の世界をちゃんと知りたくなる。
慧琉はいけないことだと分かっているのに、足を一歩踏み出した。
荷物は大学のロッカーに入れてしまい、身軽になって町を歩いた。
大学の町はとにかく派手だった。飲食店が多くあり、どの店も安すぎる。ラーメンが一杯二百五十円、弁当がご飯山盛りで三百円。利益があるかどうかも謎の安さで売られていて、慧琉はそんな中で珍しいものを見るように見て回り、その町を抜けた。
先にある道を歩いてウインドウショッピングを楽しみ、ただひたすら歩いた。
日が暮れても歩く足は止まらず、慧琉は持っていた携帯が鳴っているけれどそれを無視して歩いた。
携帯に出たらきっともう自由の時間は終わる。
それがとてもいやだった。
そして明るいところを目指した結果、特殊な界隈に紛れ込んでいることに慧琉は気付かなかった。
その町に入ると人に声を掛けられた。
「子供が来るところじゃないよ」
そう言って声を掛けてきたのは、百五十センチの慧琉よりも三十センチは背が高い男だった。顔は綺麗な顔をしていて、身体の線も筋肉が引き締まった美しい姿、ワイシャツにスラックスの姿は清楚で、とてもきちんとした人間であるように見えた。
「二十歳になっているので法的には大人だと思います」
そう慧琉が返すと、男は少し意外そうに慧琉を見てから言った。
「もしかして、この界隈初めて?」
「はい……といいますか。ここは何か他と違う気がしたのですが」
慧琉が男の質問にそう返したことで、男は何か思うところがあったのか、慧琉に言った。
「ここは、男と男が出会う場所。つまりゲイの集まる町だよ。君はゲイ?」
直接的なことを言われて慧琉は考えた。
「それは男の人と寝るということでしょうか?」
「そういう話をしている」
「今日はそのつもりできたのではないですが、男の人と寝ることはあります」
慧琉が正直に答えると、男はそれに興味を示したようだった。
「ここじゃ何だからちょっとそこの店に入ろう」
男がそう言い、目の前にあるラーメン屋を指さした。
何でだと思っていると、慧琉のお腹が鳴っていた。
「さっきからお腹空いてるってお腹が鳴ってるのだけど気付いてない?」
「あ……すみません、お昼から食べずに歩き回っていたので……でもお財布を持っていないのでお金がありません」
「奢るよ、それくらい。何だか事情もありそうだし、話を聞くよ」
男はそう言うと、目の前のラーメン屋に慧琉を連れて入った。
「らっしゃい、ああ先生、お久しぶりです。今日もいつものでいいですか!」
店に入ると同時に店主が男を先生と呼び、いきなり注文も取ってしまった。
店はそこまで大きくなく、カウンターとその後ろに二人が対面で座る席が三席あるだけだった。
ビルの隙間にできた小さな城という感じで、慧琉はそれが気に入った。
「ここの特性ラーメンは美味いからな。記念に食べていけばいい」
先生と呼ばれた男によって奧の席に座らせられて、すぐに出てきたラーメンを慧琉は奢ってもらった。
お金はなかったけれど、男が奢ってくれるというからそれに何の疑問も浮かばなかった。
食べ始めるとそれは初めての味で、慧琉は夢中になってそのラーメンを頬張った。無言で必死に食べる慧琉を見て、男も店長も嬉しそうにしている。
慧琉の食べっぷりから美味しいということだけが伝わってくるのだろう、それだけでいいというように見守ってくれている。
「それで、何をしにこの町に?」
「……あの、歩いていたら辿り着いただけで。明るかったので」
「ふーん、それで男と寝ることだけれど、君はネコ?」
そう男が聞いてきたけれど慧琉は聞き返した。
「猫?」
猫に何の意味があるのかというように聞き返したことで男が説明をしてくれる。
「セックスにおける受ける側。つまり突っ込まれる方かと聞いている」
「おちんちんを突っ込まれる方」
慧琉がストレートに答えると、男はくくくっと笑う。
「まずな、そういうストレートに言うんじゃなくて、突っ込まれる役目をネコという隠語を使う。突っ込む方はタチという。両方できるのはリバ、男とだけなのはゲイ、女ともできるのはバイ」
「……へえ……だから僕はネコになるわけですね」
「そうなるな。それで俺はタチだ」
「はあ」
「そこで提案なのだが、ラーメンも奢ったし俺とセックスしない?」
男が茶目っ気たっぷりに言ってきたので、慧琉は何だか楽しくなってしまい、笑顔で頷いていた。
「はい、いいですよ」
慧琉は自分でセックスをする権利を選べる機会は生まれて初めてだったから、この男となら寝てみたいと初めてセックスに関して前向きに答えていた。
そんな慧琉に男は笑って言った。
「俺は北郷(きたざと)という。君は何と呼べばいい? 本名でなくてもいい。呼び名が欲しいだけだから、嘘の名前でもいい」
そう北郷に言われて慧琉は少し考えてから言った。
「エル……と呼んでください」
「そうか、エルね。いい名前だ」
北郷はニコリと笑って言った。
慧琉はあえて本名の方にしたが、少し言い淀んだせいで本名を名乗っているとは思われなかったようだった。
そして他人に「様」を除いたまま、家族以外に呼び捨てにされる機会が初めてで、妙な新鮮みを感じた。
何もかもが初めての経験で、慧琉は自分の思うままに自由に行動をした中で、生涯に残るような暖かい体験をすることになった。
ホテルは繁華街のラブホテルであった。
慧琉には全てが初めてで、ラブホテルの部屋が選べることに驚いた。
「部屋って綺麗ですね」
「何処が良い? 今は電気が付いているところが何処でも選べるよ?」
「え、自分で選べるんですか? わあ、凄い」
部屋が選べると分かって慧琉は真剣に悩んで部屋を選んだ。
なるべくガラスが少ない部屋だったけれど、風呂が透けガラスで部屋から見え、さらには窓硝子は外に囲いがしてあり、ベランダプレイができるようにベランダスペースが部屋の外にオプションであるような部屋である。
その部屋にはおもちゃも売っているし、軽いSMができるようにベッドには柵もついている。
部屋に入って早速、北郷がキスをしてきた。
それを慧琉は受け入れて舌を舐め合った。
「んふぅ……っぁふ、ぁん……っ」
慣れている行為であるのに、何だかどきどきが止まらないのは、慧琉に常に北郷が確認するように先を進めてくることだった。
「いやだったらそう言って。何も言わないなら先に進むからね、いい?」
「あ、……んっはい……あっ」
キスを顔中にしてもらってベッドに押し倒されると、服を脱がされた。
着ていた服を綺麗に脱がせて汚れないようにハンガーに掛けてしまってくれた。
とても丁寧な扱いに、慧琉はこのまま北郷に身を任せてもいいのだと悟った。
ベッドに寝転がらされ、首筋から胸までキスをされて、舌でそこを舐め取られた。
「あぁっ……ああ……っ」
乳首に舌が辿り着いて、それが乳輪を舐め、そして少し硬くなっている乳首を吸い始めた。
「あぁっ……あ、おっぱい、いいのぉ……っ」
北郷が乳首を吸い舌で舐め上げてくると、慧琉の身体も気分のよくなってくる。
今までだって同じような行為はしたけれど、ここまで丁寧に抱いて貰えるのは初めてかもしれない。
「は……あっぁ、あぁあう……っ! あ……っふ、っぁん!」
「ああ、いいね。そのまま素直に反応してて」
北郷がそう言うので、一瞬我慢した方がいいのかと思っていた慧琉は素直になって、身体の力を抜いた。
「あーっあ、ひっひぁ! あ、あ、……ぅぁ……あー……!」
北郷の手は丁寧に慧琉を扱ってくれる。
性急でもあるけれど、それでも大事そうにしてくれる。身体を傷つけるつもりが一切ないのが態度で分かって、慧琉は精神的に安定した気持ちになれた。
「あんっ……乳首、やぁっ……いっあんっちくびっあっ、あっああぁっ! ちくびらめぇっ、あんっあんっ、あっあっああっ!」
快楽が不快感や嫌悪感もなく湧くのは、本当に久しぶりだった。
セックスは数え切れないほどしたけれど、好みの相手と丁寧さで気分すらもよくなることは今までなかった。
「あっやっ乳首っへんっ……あっいあっあっぁんっあぁあんっ! あっあひっらめっあんあんっ! ちくびっ、あぁいいっきもちいっあっあぁーっ!」
ジュルジュルと音を立てて吸い上げられて、慧琉はそれだけでも達しそうなほど、快楽が襲ってくるのに気分を良くした。
「ふあぁっんっちくびっ……あっああっんっいいっ……あっあっ」
「大丈夫そうだね……慣れているようだし……だったらここも」
そう言いながら北郷はローションを付けた指を慧琉のアナルにゆっくりと入れてくる。
「ん゛あっ……あっ、あっ、指、待って、ん゛っぁああっあ゛あん゛っあああっ、おま○こに指、入ってああああっ」
「ああ、そういう感じにいっちゃうのか。誰が調教したのか知らないけど……まあ好きに言っていいよ」
「だめっそこに……ゆびっらめっ……ああんっ」
「このおま○こを今日使うのは、俺だから。しっかりと覚えていって」
そう言いながら北郷は慧琉のアナルを広げ、指でいいところを探り当てた。
「ひあっあ゛っんぁっ……指、だめえぇっ……あ゛っんぁっあっああっ」
そうしている間にも、慧琉は北郷の性器が大きくなっていることに気付いた。
他の人と同じように、大きくてそして黒光りをしている。それが反り上がってきて、硬くなっているのが分かった。形も申し分なかったし、何より慧琉を抱いてきた男の中で北郷が一番若いのではないだろうか。
その若さを慧琉は純粋に試したかった。
今までと違う何かを得られそうだったからだ。
「あ、あなたのおっきいおちんぽ、ぼくのいやらしいおま○こにっ、はぁっ、挿れてくださぃっ。挿れて、いっぱい、なかこすって、ぐりぐりってしてぇっ」
そう慧琉が言うので北郷はニコリと笑って言う。
「百点の煽り文句だね……いいよ……じっくり味わって」
北郷はすっかり準備のできた慧琉のアナルに、スキンを性器に付けてから突き入れてくる。
慧琉は慣れている行為であるが、今日は興奮が違った。
なんと言っても生まれて初めて自分から誰かとセックスをしてみたいと思ってしているセックスだったからだ。
「あっ、あっ……、ひっきたっおち○ぽっあ゛っ、あああぁぁっあ゛ひっ、深い……ああっおち○ぽ大きいっ、なにこれっ……、あっ、あっ、ふかいっああんっそこまでらめぇっ……、あっ、あ゛ああっああんっあああっ!」
ぴたりと填まってくるように北郷の性器は慧琉の形に合っていた。
それを締め付けるように内壁がその性器を抱いた時、北郷は甘い息を吐いた。
「はあ、いいね、ぴったりだ……見込んだ通りで嬉しいよ。君の身体はとてもいい具合だ。俺も楽しむよ」
北郷も慧琉と同じように感じているようで、お互いに身体だけは相性がよかったらしい。それがどんな快楽をもたらすのか、慧琉も知らないことだったし、北郷も知らないことだった。
北郷がゆっくり、しかし性急に動き始めて、慧琉は嬌声を上げた。
「あ゛ああんっああっ!! ああああっあっぁっあっ、いいっ、おちんぽっきもちいいよぉっ……、あああぁんっ」
気持ちが良いときは嬌声を上げる方法しか習わなかったから、慧琉は気持ちが良いときは嬌声を素直に上げる。
それはとても淫乱な反応であると言われるが、男の人が喜ばないことは一度としてなかった。
「あぁっ……はぁんっ……あっあっああっ! あっあぁっ、ああっ……、らめっ、あーっ……」
「いいね、可愛いよ……そのまま喘いでて」
「あーっ……はっあぁっ、あっああぁっあっ! あんっ……あっあっあああぁあっ! あぁーっ……こんなの……らめぇっ、んっはぁっぁああっ」
奧をこじ開けられて、ちゃんと届いている奥で感じて、慧琉は北郷とのセックスが気に入ってしまった。
到底押しつけるような強引で、ただ乱暴なセックスではない、優しさや甘さがあるセックスというのを知らなかったから、こんなところにあったことを喜んだ。
「あぁっあっ、あんぅっ……、や、あぁっあーっ……ひっ、ああっ、あぁあんっんっんっ……はぁっぁ、あぅんっすご、いっ……ひゃぁっあっはぁっ、あぅんっ!」
いつも以上に素直に感じて慧琉は快楽を貪った。
自ら追いかけることなんてなかった行為に意味が生まれ、初めて慧琉は人並みの幸せの中でセックスができた気がした。
「あぁあああっ……あああっ、あぁああぁんっ……やぁああっ! あっいいぃっひぅっ、あっ、あぁんっ! あぅっあっあんっいいっ、んっ、ひああぁっいいよぉっ」
ただただ北郷を求めて、慧琉も腰を振って北郷を追い上げる。
「いい感じに手慣れているね……いいよ……もっとだ」
「うあんっ、んっんっ……あんっ、だめ、ほんとに、おま○こっ、ぐりぐりだめっ、あっ、んぁっ、いいっ…ふあっあ゛っああぁっ」
「気持ちよくておかしくなって……とてもいいよ。エル、いいよ……」
そう言いながら、北郷は慧琉の乳首を摘まんで引っ張った。
「あああぁぁぁっ……いっちゃうからぁっ……乳首と、おま○このなかかき回されてっんあっあぁんっ、いっちゃちゃうっ……あ゛っ、あっああぁっ」
「でも、これ好きだよね……中が締め付けてくるから……ねえ、好きだよね?」
「あっあぁんっ……おま○こぐちゅぐちゅされるのすきぃ……っ。おちんぽっちっ乳首も弄られていきたいっ……あっはああぁっんあ゛ひっ……あっあっもっとっ……あっあ゛ああっ」
その慧琉の言葉を聞いて、北郷はさらに性器を硬くさせて慧琉の中を抉ってくる。
その深さは信じられないくらい奥まで届き、他の人が届いていない部分まで届いているようだった。
「あぁんっ……いぃっ、あっ、らめっ、おちんぽっあっ、あっあっあっ……ふぁっ、ひぅっ、あんっああぁっあひぃっ、あんっ、あんっ、んっああぁっ! ああっらめっ、いっちゃう……から、おま○こらめっああんっあっ……ああっんっあああんっ……おま○こいいっ……ああんっきもちいいっああんっああっ」
こんな風に感じたことはなくて、慧琉は自分の知っているセックスと呼ばれるものが何だったのか、次第に分かってきてしまった。
これほど相手を思いやって大事にする人もちゃんといること。それが知れただけでも慧琉にとってはあの中から一時でも抜け出せたことに価値があるとさえ思った。
「あ゛っああっあっいくっ、い゛くっおま〇こ、いっちゃうっ……ひぁっ、あ゛っ、ひあん゛っあっ、あ゛ああっあぁっらめっ……ああんっおま○こっああんっおちんぽでいっちゃうっああんっいいっああんっ!!!」
卑猥な言葉を発しながら、慧琉は絶頂をした。
頭の中が真っ白になるほどの快楽が突き抜ける絶頂で、気分がよくイケたのは今日が初めてだろう。強制的にイカされるのではなく、自分のタイミングで絶頂ができることがここまで気持ちが良くなれることを知った。
「可愛くイケたね……でもまだ俺もイッてないし、まだまだだよ。夜は長いし楽しもうね」
北郷はそう言うと更に慧琉を突き上げて追い上げてくる。
気持ちよく絶頂をした慧琉の身体は、更に貪欲に快楽を欲しがった。
「あっあっ、あっまたっらめええっ、激しくおちんぽでおま○こぐりぐりされたらっああんっきもちいいっああんっああんっああっああっんっいいっ……おま○こっ……ああんっらめっおかしくなる……ああんっああいいっきもちよすぎるっああん!」
「可愛いこと言う子だね……初心っぽいかと思ったけど、想像以上に淫乱系で嬉しい誤算だよ……もっと感じて……ここに俺を刻み込んであげる」
そう言われて慧琉は北郷に胸を撫でられて、乳首を吸われた。
北郷の手は心臓近くを撫でていき、慧琉はその動作だけで、胸がときめいてしまう。
「あ゛あっ……んっあっ、あ゛っ、あっあっあっあああっ! んあっん……ちくびっあっあああもっとっ……なめてっあんっあっああっああっんあっあっはあっんっいいっぺろぺろされるのっきもちいいっあっ、ああっあぁんっ」
乳首を舐められながら突き上げられて、慧琉はただひたすら悶えた。
「いいっああんっおま○こっいいっきもちいいっああんっああ……ああんっ……ああんああいいっ」
純粋に今セックスを楽しんでいると慧琉自身が思えるようなセックスができていて、慧琉はこのセックスはずっと心に残るのだろうと思った。
「あっ、あんあんあんあんあんっおまんこ……ああっ……らめっゴリゴリっ……ああんっおちんぽっおおきいいっああんっ……ああんっいいっ……きもちいいっおちんぽ……ああっ……いいっ気持ちいいっ……ああんっああっあああんっ」
「ああ、そろそろ……イケそう。スキン付けてるし中でいい?」
「あっいいっなかっだしてっあ゛っもっいくっいっちゃうっあっあっあっあ゛あ゛ひっあ゛っあ゛っあ゛っはぁああ……ぁん、も、らめ……あっあっやぁっらめっあぁんっあひぃっ……らめなのにぃっ……んっあっあっん゛っひっあっああああああっ」
「ああ、いい追い上げ方してくるね……ほんとう、当たりなんだけどエル……」
そう言うと北郷は慧琉を抱きしめて、しっかりと手を繋いでくれた。
それに慧琉は安心感を得て、また絶頂に向かった。
「あひっあ゛っあっいっいくっきちゃうっん゛っあっおま〇こでっ……なんかっきちゃうっ……あっあんっ、あ゛あああっ」
「ああっ……!!」
「あ゛ああっらめぇっイクっ……ん゛あっおっあっあひっ、い゛っ……らめっらめっ、いっちゃう、おち○ぽでっおま○こされていっちゃうっ…いっちゃういっちゃうっあっあっああっああああぁんっ」
慧琉が絶頂したのに合わせて北郷も絶頂をした。
アナルの中で暖かいモノがじわっと内壁に触れて、それだけでも慧琉は満足したように微笑んだ。
そして思ったのだ。
生だったらきっともっと気持ちよかっただろうにと。
さすがに知らない人に中出しをするような人ではなかったようで、スキンは使ってくれたけれど、少し物足りなさそうに慧琉がしていると北郷が少しだけ笑っている。
「中出しして欲しそうだけど、駄目だよ。知らない人にそういうことはしない主義でね。残念だけど、今晩一晩、この箱一杯に精液出すくらいにセックスしてあげるから、可愛くしてて」
北郷がそう言うから、相当な不満顔だったのだろうと慧琉は少しだけ恥ずかしくなるも、すぐに二枚目のスキンを付けて準備万端な北郷に笑みを浮かべた。
「……あの、もっとください……おま○こにあなたのおちんぽ……沢山下さい」
普段強制的に言わされている台詞を、まさか心から望んで言う羽目になるとは、慧琉も思いもしなかった。
けれど、何の後悔もなく、その言葉を口にできたことは、慧琉の日常が変わりゆく合図だったのかもしれない。
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