モノポリーシリーズ ブルー・ラグーン

6

 立夏は三月の最後の日に、アメリカに飛び立つ藍音の見送りに行った。
 藍音は盛大なことが好きだったけれど、あの事件後は大学の友人知人が全て離れてしまったせいで、悲しい思いをしていたようだった。
 けれど年代も違うけれど、立夏や壱伽、さらにはその恋人である宮辻など、様々な人が訪れてきて、藍音を見送った。
 それは藍音には意外だったようであるが、立夏は藍音に礼を言った後は離れたところで藍音と戸賀が話しているのを眺めていた。
 そこに壱伽がやってきて言うのだ。
「あれ、余裕って顔をしてる。もしかして、あの戸賀って人は告白済みってことかな?」
 そう壱伽に簡単に見破られてしまい、立夏は少し動揺する。
「あ、うん……まあ」
「それで返事は、まだってことかな?」
「……えっとね……これから後でね」
「あ、そっか。やっと観念するんだ。いやあ、長かったね、出会ってから一年くらい経ってない?」
「……はい、経ってます」
 正直にそう認めると、壱伽はそれには笑っている。
「いいんじゃない? 一年も我慢強く側で見ているだけで、手出しもしてこない理性がしっかりコントロールできる男って意外にいないもんだよ?」
 壱伽の言葉に立夏はそれはもう身をもって知っていることだと頷いた。
「ちゃんと伝えるよ。色々あって気持ちの整理も付いたから」
 立夏がそう言うと、壱伽はニコニコしている。
「うん、いいと思うよ。じゃ、藍音さんが飛び立ったら、ここで告白してあげなよ。きっとすっごく思い出にもなるし、暴走しないで済むと思う」
 壱伽の忠告通りに、藍音が飛行機で飛び去るまでは皆で飛行機が見えるところで見送り、空高くに飛行機が去ってしまうと、壱伽は知り合いを連れて人払いをしてくれた。
 まだ早い時間だったので、見送りの人は少なかったけれど、何人かいる中で立夏は戸賀を呼び止めてから話を始めた。
「僕はとても面倒臭くて、厄介だとは思う。望んでなくても何か面倒事は起きてしまうし……でもそれでも僕は……戸賀さんが好き、なんだと思う」
 立夏がそう戸賀に言うと、戸賀はまさかここで告白の返事をされるとは思わなかったのだろう、少し緊張したように身体が思うように動かないようだった。
「……それは、嬉しい……」
 やっと戸賀の口から出た言葉だったけれど、戸賀は顔を真っ赤にしていたし、嬉しいけれど手が震えている。
「戸賀さん……大丈夫ですか?」
 戸賀のそんな動揺した姿を見るのは、戸賀から告白をしてくれた、あの夏以来のことだ。
 戸賀は震える手を押さえてから言う。
「嬉しすぎて、心臓が止まりそうだ……手も震えているし、泣きそうだ」
 戸賀の感情が爆発しているようで、立夏は返事をしただけで戸賀がここまで喜んでくれるとは思ってもみなかった。
「い、言われたら、僕も何か緊張してきて……」
 さっきは自然と言葉を口にできたけれど、戸賀の緊張などが伝わってくると立夏も一緒にギクシャクとしてしまう。
 そう言い合っていたけれど、戸賀が言う。
「君を……立夏を、抱きしめてもいいだろうか?」
 戸賀のまだ戸惑う様子と、ちゃんと確認をしてくれる様子と、やっと名字ではなく名前を呼んでくれたことに立夏は笑って答えた。
「もう……明柊さんの好きにして、いいんです」
 お互いに名字で呼び合う仲だったけれど、戸賀が遠慮する心を一つずつとっていく様子に、立夏も合わせた。
 もう名前を呼んだだけで、二人で顔を赤らめて恥ずかしがりながら抱きしめ合った。
「場所が、人前であることを今日ほど感謝したことはないくらいだ」
 戸賀はそう言い、暴走しそうな自分を引き留めてくれる環境に感謝している。
 それには立夏も同じで、もしここが誰もいない環境だったら、きっと二人は思いの丈をぶつけ合いすぎてきっとおかしくなっていただろう。
 こうして冷静になれる時間をおくことは、二人には必要で、特に立夏を怖がらせたくない戸賀としては人前であるという自制が働くことが余計に有り難かったらしい。
 それから二人は赤い顔が収まるまで飛行機の発着を見ながら、暴走しすぎる心を抑えてから、電車で自宅に戻った。
 まずはいつも通りに、立夏の部屋に行き、買ってきた仕出し弁当を食べてから風呂に入りそれからベッドでお互いに向き合った。
「立夏、無理はしなくていいんだよ?」
 いきなりセックスをしたいと言う立夏に、戸賀は慌てなくてもいいと言う。
「ううん、いつかすることなら、今でいい。明柊さんは僕に触れたくない?」
 そう立夏が首を傾げて尋ねると、それに戸賀が動揺して顔を赤らめる。
「いや、めちゃくちゃ触れたい……身体中舐め回して撫でてしまいたい……」
 率直に戸賀が言うと、立夏は赤い顔をしてから、戸賀の手を取った。
「それ、全部して。明柊さんが……したいこと全部僕にして……僕はそうして欲しい」
 立夏の言葉に戸賀が暴走しそうになる心を抑えてから、まずは立夏にキスをした。
 唇と啄んだキスを何度も繰り返し、長いキスをして、キスを知らない立夏が息が上がってしまうまでキスを繰り返し、そして顔中にキスを振らせる。
 どれだけ我慢していたのか分かるくらいに、戸賀は立夏に沢山のキスを振らせてくる。
その優しさがまた立夏の心に響く。
 性急にしたいであろうに、立夏を思いやったらそうはできないという戸賀の真面目で優しいところが垣間見えて、立夏は泣きそうなほど嬉しかった。
「あ、は……あぅ、あうぅ……」
ただキスによって高められる気持ちは、それまで立夏の中になかった性欲を呼び起こしている。
「んんっ……は、あー……っひ、んっ……あぁっ……うあ……」
「立夏……身体の力を抜いて……そう、ゆっくりでいい」
「あぁっああっ、あっ、あっ……ふう、ううぅん……っ」
 立夏は戸賀によって身体中を撫で回されて、戸賀の希望通りに舌で舐め回された。
 それは不快なことではなく、立夏は気持ちよくなって気分も悪くない。
「あ……っ、だめ、それ……っはあっ……だめ……あぁ、あんっ……っ」
「うん、ちゃんと反応してるね……よかった」
バスローブを開けさせられて裸にされているけれど、立夏のペニスが少し頭を擡げているのを戸賀は確認してホッとしているようだった。
そのペニスを手で捕まれて扱かれ、立夏は腰が抜けそうなくらいに感じてしまう。
「ああぁ……っ、んあっ、はぁ、はぁうっは……っ、はふぅ……っ、う……」
「うんそのまま、立夏、可愛い……思っていた以上に可愛いよ」
 戸賀が感極まったようにそう言い、立夏はそれを聞いてどんどん身体を開いていく。
「んんうぅう……っ、はぁ……あっ、あぁん……っ」
戸賀はどんどん進めていくのを立夏は受け入れ、やがてアナルまでローションを付けた指で弄られる。
 最初に洗ってくるようにと言われたから、自分でできることをしてきたけれど、それらもかなり勇気が要った。
 でもそれをしないことは戸賀にとって迷惑が掛かるし、立夏は戸賀との関係を先に進めたいから恥ずかしくてもしなければならなかった。
「あ、あっ……あ、い……っ、ああっはぁ……あぁ……っ」
アナルに戸賀の指がゆるゆると入っていく。
「息吐いて、そう、いいよ」
 戸賀は立夏を誘導してくれて、立夏は言われるままに息をして身体の力を抜いていく。そして戸賀の指は出入りを始めていき、その感覚に立夏は最初こそ圧迫感を覚えるもやがてそれすらも感じ始めた。
「はあっ、は……っ、んふ……っんん……ふ、ぁ……んっ」
だんだんと圧迫感になれ、それが気持ちよく感じるようになると、立夏は喘ぎ始める。
「ふ、うんっ……んっ、あ……は……っああっ……!はああ、んっ、んんっ、あん……っ、はぁんっ! あっ、あっ、あぁっ」
声が抑えられず、ずっと声が漏れてしまうから恥ずかしいと口を塞ごうとすると、それを戸賀に止められる。
「もっと、立夏の声を聞かせて……気持ちが良いって言うのを聞かせて」
 戸賀がそう言うから、立夏は戸賀も立夏がちゃんと気持ちよく思っていることを知りたいのだと安心した。
「ああ……っ、……あっ……ぁ……んっあっ、ぁん……!ああっ……ああ……もう……っ、んんんあぁ……! んぁあっ……ふぁ、あぁ……っ!」
アナルを擦られ続けると、だんだんと感覚が違ってくる。これがセックスをするための準備であることは分かっているけれど、それでも立夏はかなり恥ずかしかった。
 でもその恥ずかしい思いをしても、立夏は戸賀と繋がりたかった。
「あひぁああっ、ああぅ!!」
 いきなり戸賀の指が立夏のいいところを擦り上げてきて、立夏の腰が跳ね上がる。
「ああ、ここだね、ここを擦り上げると……」
「あぁっ、ぁ、ぁ、あっんっ……ああぁっ……はぁっ、だめぇ……っ ああああんっ!」
そこを戸賀によって擦られ続けたら、立夏はとうとう射精をしてしまった。
 ビューッと精液を吐き出すと、すぐに戸賀は立夏の唇にキスをしてくれた。
「ああ、可愛くイッてくれた……立夏可愛い……」
 立夏がイク姿を見て戸賀が興奮しているのが立夏にも分かった。
 戸賀のペニスははち切れんばかりに膨らんでいる。
 あれを自分は受け入れるのだと思うと、立夏は怖いと思うよりも、早く入れて欲しいと思うほどに興奮をした。
戸賀は慎重に長く丁寧に立夏のアナルを広げた。
三十分以上も弄られてどんどん拡張されて、やがてその指が出て行く。
「……ああ……んっ」
 戸賀は立夏にキスをしてから聞いた。
「大丈夫?」
「うん……大丈夫、続けて……」
 キスを受けながら立夏は言い、それに戸賀はキスで返す。
「じゃあ、挿入れるよ……そのまま息を吐いて、そういいよ」
「んんっ……はぁっ、あっあぁっ……」
 ゆっくりと立夏のアナルが広げられて、戸賀の亀頭が立夏の中に挿入り込んでくる。
「ん……っ! っあ、やっ、ん……ひあっ、ぁあっ」
「いいよ、息吐いて、そう、挿入ってる、いいよ」
 亀頭が挿入ってしまえば、後は中間の太い部分がアナルを広げていく。
 内壁をこじ開けて大きな異物が挿入り込むのを立夏は息を吐いて受け止めていく。
「はぁっ、ん、んっ、ぁん……まだ……挿入るの……んっ、ぁ、ん、はぁ、ん……」
「半分挿入ったところだからね、もうちょっと奥までいくよ……」
「ん、はぁ、ああんっおおきい……あぁっはぁっ、ぁんっ、あっ、ん……」
信じられないほど奥まで戸賀のペニスが挿入り込み、立夏はその圧迫感を愛おしいと感じた。
 壱伽が言っていた、「好きな人にされることは何でも許せるし、気持ちよくも慣れる。心が違ったらそういうことも違う」という言葉を思い出す。
正にその通りで、立夏はその言葉をやっと理解できた。
「ああ、挿入った……凄いね立夏の中、全部受け止めてくれた」
「あっ、あっ、あっ、あっ、あぁ……っ」
 奥まで突き挿入てから、深いところで何度か戸賀が腰を振って慣れさせてくる。
圧迫感しかないと思っていたのに、ちゃんとペニスで内壁を抉られるだけで、立夏は気持ちが良いと感じた。
「あっ、だめ、あ……うごちゃ、しちゃ……ぅあっ、あっ、い……あああっ」
「ゆっくりと動くね……」
「や……っ、ふぁ、あ……っふ、ぅ……はぁっ、あ……ふぅっ、ああ、あっ、ひぁ……は……っ、ああん……っ」
戸賀が腰を大きく動かし始めると、戸賀のペニスが内壁を擦りながら出て行き、そして広げながら押し挿入ってくる。その動きに立夏は息を吐いてしまうけれど、そのたびに口から声が漏れた。
「ひぁ、ああっ! あぁっ、あああ……っんぁっ……あっ、ああぁっあぁっ、あ、あん……あああっ」
それは自分で聞いても驚くほどの甘い声で、立夏は戸賀にされてる行為が気持ちが良いと感じた。
戸賀がそんな立夏の乳首も指で弄り始め、立夏はそれすらも感じた。
 乳首なんてただの飾りなのに、何故かそれが性器に変わる。戸賀に触られると何もかもが気持ちよかったのだ。
「だめ、ちくびっらめっもっらめなの……っ、あぁっ、さわっちゃや……やぁっ、だめ、ぇ……ひいぃ……っ」
 突き上げながら乳首を弄られ、ローションのお陰で挿入はスムーズに進むから、戸賀の腰の動きもだんだんと速くなってくる。
「はぁ……あっ……ぁ、はっ……は……っ、あぅ……うはぁ……ぁ、あ……っく、んぅっ……」
「立夏……立夏の中……凄い……気持ちいい?」
「あぁっ! ああ……っ はぁ、気持ち、いいっあ、あ、あ……はぅっ、うあぁ……っあ、あぁっ……ああぁ……!」
追い上げながらも寸前でイクのを止められて、また追い上げられることを繰り返されてしまい、三十分もただそうされているうちに、立夏はアナルが性器に完全に変わっていることを知った。
「あぁっ、あっ、や、ああっはげし……っ、ああっ!あっ、あーっ……!」
戸賀にペニスで突き上げられるのが気持ちが良い。
 セックスが気持ちが良いといい、好きだという壱伽が言っていたことをまたここで実感してしまう。
立夏はきっとセックスを好きになってしまうのだろうと思えた。
 けれど、それは戸賀がゆっくりと立夏の身体を開いて、そして馴染ませてくれたからこそのことで、それを立夏は戸賀からの愛情であり、それを感じるからこそ心も満たされているのだと知った。
「ふうっ……!んっ、く……はあっ、ああ、あぁあぁんっ、あっ、はぁっ……あーっ、あーっ……あぁっ……あっ、いい……っ、い、い……っ」
奧をしっかりと突き上げてきた戸賀の動きに立夏は戸賀にしっかりと抱き付いてから言った。
「ああ……っ、ああっ、す、すき……明柊さんっすきっいいっあぁっ、すきぃっ」
どうしようもなく気持ちが溢れて、立夏は戸賀にそう言う。それに戸賀が微笑んでいるのが分かる。
「俺も立夏が好きだよ……っ」
「あ゛ああぁーっ……あひっ、あ゛っいっあ゛っんっいいっ、あああっひっああぁっ! あーっ……」
とうとう立夏は戸賀によって追い上げられて、絶頂をした。
 精液を吐き出して絶頂をするも、まだ中にいる戸賀のペニスは勃起したままである。
「ああぁっ……ふーっ……あっ、あっ……あ゛っ、あああーっ……あ゛っ、あ゛っ、ああぁっ……! あひっ、い゛っ、あっあ゛っ」
その戸賀のペニスを感じながら、立夏は自らも腰を振った。
 気持ちが良くてもっとしてほしいと態度で表すと、それまで遠慮して立夏に合わせてくれていた戸賀は一気に動き始めた。
「あ゛っあああっ! いまっ動いたらっ……あっあ゛っあんあんあんあんっ!」
激しく強く戸賀に求められて、立夏はそれに微笑んだ。
 ああ、ここまで強く戸賀に求められていることが今はただ嬉しい。
「ああぁんっ……すごいっ……あぁっあ゛っあーっあ゛あーっ……あひっ、んっあ゛っああっいいっ、きもちいっ……うぁっんっあっあぅっ」
戸賀の激しい動きに立夏も腰を振り、二人で激しく求め合った。
「立夏……立夏っ」
「ふあぁっあ゛っあんっ明柊さんっすきっすきっ……! ああっい゛いっ……明柊さんきもちいっ、んっあ゛っああっ」
「俺も好きだよ、立夏っ」
「あぁんっああっいいっ……あひっ、いっあ゛っあーっ、あーっ……」
「ああ、出るっ」
「あぁあんっ、気持ちがいいっ、きもちいっ……いいのっあ゛ーっ、あ゛あぁんっあ゛うっ、いくっいくっっ……いっあ゛っあんっふあぁっ」
 戸賀に追い上げられて立夏が絶頂をすると、戸賀も絶頂をした。
 立夏の中でコンドームをしていた戸賀のペニスから精液が吐き出されて、それが膨らんでいるのが分かるくらいに、戸賀は精液を吐き出していた。
「あ……ああんっ……はあっんっ」
 それすら感じて身体を震わせていると、戸賀がペニスを抜いて精液を吐き出したコンドームを外している。
「立夏、大丈夫か?」
 そう聞かれたけれど、立夏はそんな戸賀に自分から抱き付いて、その唇にキスをした。
「……うん、大丈夫だから、もっとして?」
 立夏が可愛く強請ると、戸賀の理性の箍が外れる音が聞こえた。
 もちろん、それは立夏にとって朝までずっと抱かれる羽目になったけれど、それはそれで立夏はもっと戸賀が好きになる出来事の一つでもあった。


 二人は四月に入って正式に恋人同士になった。
 戸賀が社会人として踏み出し、立夏は大学三回生で忙しい日々を送る。
 けれど、常に二人は側にいて、そして仲間に囲まれて幸せな日々を過ごしていくことになる。
 マンションから見える、立夏の実家跡は、別の新しい屋敷が建っている。どうやら、二分割して、二つの似た家が建っている。
 そのせいか、昔を思い出すこともなく、新しい景色になって立夏の目に映った。
 戸賀はマンションに住まいを移し、建てたばかりの家は貸し出したという。
 そうして生活環境が近くなって、二人はお互いの部屋を行き来して暮らした。
 立夏の未来はそこから開け、恋人ができたからなのか、それ以上のおかしなできごとは起きることもなく、戸賀との普通の生活に幸福感を得ていた。
 そして未来はこれから始まる。

【ブルー・ラグーン(カクテル言葉)ときめく心-誠実な】

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